2011年12月の発売から8カ月が経過したPowerShot S100。量販店のポイント還元などを踏まえれば、およそ3万円ほどで購入できるようになってきた。
私の手元にはリコーGR DIGITAL IVやペンタックスOptio WG-2といった個性派コンパクト機もあるのだが、ほとんどの日はバッグにPowerShot S100を入れっぱなし。iPhone 4Sのカメラもよく使うし、毎日デジカメに用事があるわけでもないのだが、とりあえず手元にあると安心なのだ。
それだけ身近に接しているカメラなので、使っていていろいろと思う部分もある。今回は私が自分なりに工夫している操作方法について紹介したい。
■コントローラーリングを「前ダイヤル」にする
昨今の高級コンパクトと呼ばれるデジタルカメラの操作系は、方向キーやホイールに加えてダイヤル類も積極的に採用するなど、各社が趣向を凝らしている。いずれも「カメラらしい操作感」や「直感的な操作性」というのがアピールポイントだ。PowerShot S100も、レンズ鏡筒部に特徴的なコントローラーリングを備えている。同シリーズでは2世代前からの特徴だ。
コントローラーリング |
工夫のポイントとしては、カメラらしい操作スタイルが、必ずしも全てのカメラに適するとは限らないということだ。例えば絞り優先(Av)モードのデフォルト設定では、絞り値の変更はコントローラーリングで行なう。擬似的に絞りリングを操作すると考えれば、カメラらしく直感的な操作スタイルといえる。左手を下から添えて、レンズのリングのように扱うのが設計者の意図する使い方だろう。
しかし、コンパクトデジカメで左手を下から支えるように持つのは、私にはちょっと馴染まなかった。コンパクトデジカメの場合、カメラのサイズ・形状的にも右手でのホールドが主になる。そうすると、わざわざ左手をひっくり返してリングの下に持っていくのが億劫に感じたのだ。
そこで思いついたのが、絞り値(Tvモードのシャッタースピードも同じ。以下同)の変更はアクセスしやすい背面のホイールに割り当て、コントローラーリングには露出補正を割り当てるというデフォルトと前後が逆の設定だ。
さらにコントローラーリングは、左手は人差し指と親指でカメラの上下をつまむ持ち方のまま、シャッターを押す右手の人差し指を伸ばして「前ダイヤル」的に扱ってみることにした。
コントローラーリングのコンセプト的に正しいと思われる持ち方 | 私が使いやすい持ち方。右手側のグリップが役立つ |
メニューから登録機能を変更する |
この設定では主となる絞り値のパラメータ変更がラクになっただけでなく、操作ステップの省略にも繋がった。コントローラーリングに露出補正を割り当てていると、露出補正値を変更するときに露出補正ボタン(方向キー上)を押さなくても直接コントローラーリングを回すことで設定値を変えられる。デフォルト設定では、一旦背面の露出補正ボタンを押して表示をアクティブにしてからホイールを回さなければならない。
コントローラーリングで絞り値を操作するデフォルト設定。露出補正がアクティブになっておらず、方向キー上を押してからホイールを回す必要がある | 背面ホイールに絞り値を割り当てると、どちらもダイレクトに操作できるようになる |
■グラフィカル要素は必要か
話はS100から逸れるが、昨今の高級コンパクト機やノンレフレックス機では、露出設定や撮影モードの変更時にグラフィカルな表示が目立つ機種も多い(パラメーターのアニメーション表示など)。私としては、どうにかあれをオフにできないものかと常々思っている。
例えば撮影画面からワンボタンで呼び出せる設定メニューも、呼び出すたびにアニメーションで待たされるのは矛盾を感じる。画面表示が簡素だとサービス不足な印象を与えるのかもしれないが、見た目はともかく撮影者の操作に俊敏に反応してくれるほうが、カメラとして飽きずに長く付き合えると思うのだが、いかがだろうか。
特にカメラ性能に力が入っている機種において、ほかの部分でその使い勝手をスポイルされてしまうのは残念でならない。ぜひ、設定メニューの奥深くでいいので、電子音やヘルプガイドのようにそれらのグラフィカル要素もオン/オフを選べる仕様を検討していただけたらと思う。
また、各社の方針もあると思うが、特に高級志向の機種ではファームウェアアップデートによる機能追加がもっと積極的にあってよいだろう。PowerShot S100で思い当たるのは、ズームレバーを用いたステップズーム、起動時の焦点距離(ズーム位置)プリセット機能、ISOオート上限変更など、次モデルの買い替え動機にはならないような細かな機能でも、ファームアップによる予想外のプレゼントとなれば嬉しい。発売後の機能拡張は根強いファンを持つリコー機が好例だ。
■結局、小さいのがありがたい
直近ではPowerShot S100のライバルとされそうな高級ズームコンパクト機の話題も豊富だ。S100と同じく24mmスタートで望遠端まで明るいパナソニック「LUMIX DMC-LX7」や1インチセンサーに注目が集まるソニー「サイバーショットDSC-RX100」など、それぞれキャラクターが違うカメラではあるものの、高級志向のレンズ固定式デジカメとしての賑わいを感じる。
また、“キヤノンのミラーレス”こと「EOS M」も発表となった。コンパクトなサブ機を求めるEOSユーザーの期待はかなりのものだろう。EOSシステムならではのサブ機体制としては、センサーサイズ違いの予備ボディを持つか、EFレンズが使えるEOS Mか、ストロボを共用できるPowerShot G系がパッと思い当たるところだ。
私個人としては、日常使うカメラは「持ち出せば撮影に失敗がない(結果に後悔しない)カメラ」と「どんな時でも持ち歩けるカメラ」の2台が適すると考えている。一眼レフカメラのサブにノンレフレックス機を検討する場合、ノンレフレックスもそれなりに嵩張るからと両方とも持ち出さなくなるようでは、勿体なく感じる。
そう考えると、力を入れずに毎日持ち歩けて、それなりに満足な結果を得られる万能コンパクトカメラというのも魅力的だろう。センサーサイズや望遠側のスペックに大きな特徴はないが、PowerShot S100は身軽に付き合える高級志向機という点において、いまだ最有力候補のひとつというのが私の見解だ。
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2012/7/30 00:00