OLYMPUS OM-D E-M5【第3回】

雨も水しぶきもへっちゃら! 夏のアウトドアに連れ出そう

Reported by 礒村浩一


 「OLYMPUS OM-D E-M5」が発売された3月末から始まったこの長期リアルタイムレポートも、かれこれ既に4カ月近くとなる。前回の第2回目のテーマが「春の花々を撮る」だったわけだが、気がつけばずいぶんと間が経ってしまい、もうすっかり夏となってしまった。もちろんその間もいろいろなシーンでの撮影にE-M5は大活躍している。最近ではE-M5のみを携えて出かける機会も増えすっかり相棒のようになっている。

 さて今回はE-M5の特徴のひとつ、防塵防滴性について実際の撮影シーンを交えてレポートしていこう。一般的にカメラといえば精密な電子機器であり水濡れは厳禁な製品のひとつに挙げられる。だがこのE-M5は、同じくオリンパスのデジタル一眼レフカメラ「E-5」と同等な防塵防滴処理が為されているため、多少の雨や水しぶきでも問題なく撮影ができるということになっている。

 実はこれはとても驚くべきことだ。先にも述べたようにフィルムカメラの頃から、精密製品であるカメラを雨の中で濡れながら使用するなどといったことはまず考えられなかったからだ。これは雨天でも撮影を行なわなければならないプロカメラマンでも同じで、いかにカメラを濡らさずに撮影するかに細心の注意を払わなければいけなかった。ましてやアマチュアカメラマンの多くは雨が降っているだけで撮影を諦めていたことだろう。かくいう私も雨の中での撮影はいつも以上に気を使わなければならず、決して嬉しいことではなかったものだ。

 ところがこの状況を一気に変えるカメラが登場する。オリンパスから2003年に発売されたデジタル一眼レフカメラ「E-1」がそれだ。それまでにもプロ機と呼ばれるカメラのなかには防塵防滴を謳う製品もあったのだが、雨に濡れながらの撮影では非常にリスクが高く実際にトラブルに繋がることも多かった。したがってカメラを濡らさない為のカバー類は欠かせなかったのだ。しかしこのE-1はまさしく雨に濡れながらでもまったく問題なく使用できる驚きのカメラであった。

 実際に私もこの「E-1」を使用するようになってからは、大雨だろうが台風だろうが撮影をしない理由とはならなくなってしまった程だ。以来、オリンパスのEシステム一桁シリーズは「E-3」、「E-5」と一貫して防塵防滴性を受け継いでおり、特にネイチャー系の撮影には欠かせないカメラとして選択している。

 ここで話をE-M5に戻そう。オリンパスのフラグシップ機E-5同等の防塵防滴性能を与えられたE-M5は、ミラーレス一眼でありながら多くの一眼レフカメラ以上の耐候性を得たことになる。これによってカメラにとって大敵な雨のなかでも、濡れた花々や森の木々、水しぶきを浴びる岩肌など潤いのある被写体を積極的に撮影することができる。カメラが濡れないようにと気を使う必要がなくなるだけで雨天の撮影は格段に楽になり、ひいては作品撮影の幅も集中度も大きく広がるのだ。私にとってもこの高い防塵防滴性能がE-M5を導入した大きな理由の一つとなっている。

雨が降りしきるなかで撮影した紫陽花。濡れた花が非常に麗しい。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ / 約8.5MB / 3,456×4,608 / 1/80秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 33mm雨に濡れた木々の葉も美しい被写体だ。これは梅雨のはじめに撮影したものなので、葉の緑も若々しくてとても気持ちよい。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ / 約9.5MB / 3,456×4,608 / 1/60秒 / F6.3 / -0.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 50mm
この写真を見てもらえれば判るように、この日はかなり強い雨の日だった。もちろんこのような雨のなかでもE-M5は元気に働いてくれる。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ / 約9.3MB / 4,608×3,456 / 1/13秒 / F6.3 / +1.3EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 22mm
防塵防滴は雨の為だけではない。山を流れる渓流や滝の撮影でも威力を発揮する。岩場に跳ねる水滴をかぶりながらでも、水面ギリギリまでアングルを下げて撮影することだって可能だ。
川の水流にギリギリまで近づき撮影したもの。防塵防滴ではないカメラでは怖くてここまで近づくことはなかなかできない。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ / 約9.0MB / 3,456×4,608 / 1/125秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO800 / 絞り優先AE / WB:オート / 17mm勢いよく落ちる滝に近づいて撮影。水量のある滝では辺り一面が水滴によって囲まれてしまう。滝の撮影ではビニール製のシャワーキャップ等をカメラにかけて撮影することが多いのだが、E-M5ならばそのような必要もない。E-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ / 約10.9MB / 3,456×4,608 / 1/25秒 / F8 / 0EV / ISO400 / マニュアル露出 / WB:5,300K / 12mm

雨の降る中での撮影を可能にする強固な防塵防滴システム

 E-M5の防塵防滴性能を活かすには、組み合わせて使用するレンズも防塵防滴に対応したものである必要がある。現在オリンパスのマイクロフォーサーズレンズにおいて防塵防滴に対応したレンズは「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ」のみとなる。このレンズはキットレンズとして多くのE-M5ユーザーが使用していることと思う。なお、ダブルズームキットに同梱されている「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II R」と「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R」は防塵防滴には対応していないので注意が必要だ。

 バッテリーグリップである「パワーバッテリーホルダーHLD-6」を装着した状態でも防塵防滴性能を維持することができる。これは雨中での撮影時には非常に頼もしいことだ。長時間撮影していてバッテリー切れとなった際に、濡れた状態でカメラのバッテリー室の蓋を開けてバッテリー交換を行うのは非常にリスクが高い。その点、HLD-6を使用していればバッテリーをあらかじめ2個搭載しておくことができるので、バッテリー交換の頻度を下げることができる。また、縦位置レリーズボタンを通常と同じように使えるのも嬉しい。雨天など曇り空のもとでの撮影では露出もあまり稼げず、スローシャッターになりやすい。バッテリーグリップを使用してしっかりとホールドすることがブレ防止にも効果的だからだ。

E-M5にM.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZとHLD-6を装着。滝の近くで撮影していたおかげでずぶ濡れになってしまった。もちろん問題無く撮影が可能。ワイルドだろー(笑)。

 雨に濡れてもへっちゃらなE-M5だが、そのためには幾つか事前に確認しておかなければいけないことがある。カメラの電子接点をカバーするゴム蓋は確実に閉じておこう。万が一閉まりが緩いとそこから水がカメラ内部に侵入してしまう恐れがある。また濡れた状態のままでのレンズやメモリーカード、バッテリーの交換は避けたいところだ。どうしても交換が必要な場合はタオルなどでしっかりと水を拭い、雨や水滴がカメラにかからない場所で行うようにしよう。またE-M5は決して“防水カメラ”ではないので、絶対水の中に浸けてはいけない。間違って川などの水中に落としてしまうことのないように細心の注意を払おう。

 以下は外観からわかる防塵防滴対策だ。これ以外にもボタンやダイヤル部などにはシーリングが為されていて徹底的な対策が撮られている。

バッテリー室の蓋には太めのゴムパッキンが貼付けられている。こによって水がバッテリー室に侵入することを防いでいる。端子部のゴム蓋。水が侵入しないようにしっかりと閉めておこう。つまりリモートケーブルは使用を避けざるをえない。
ファインダー上に位置するアクセサリーポート。付属のフラッシュやオプションのコミュニケーションユニットPENPAL PP-1などを接続するためのポートだ。普段はゴム製のパッキンで塞がれているので、この存在に気がついていない人も結構いそうだが、やはりしっかりと閉まっていることを確認しておこう。防塵防滴対応のレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ」のマウント部。水や埃の侵入を防ぐゴムのパッキンが周囲に貼付けられている。E-M5のマウントにはパッキンはない。
E-M5底部にあるバッテリーホルダーとの電子接点部。ここにもしっかりとしたゴム蓋がはめられている。パワーバッテリーホルダーHLD-6も防塵防滴に対応。E-M5と接合する面には細かな起毛が張られている。ただし周囲にゴムパッキンはないので起毛までは水が侵入して濡れることもある。
HLD-6のE-M5との電子接点部。この周囲に太めのゴムパッキンが埋め込まれていることで、電子接点への水の侵入を防いでいる。HLD-6のバッテリー室。蓋と接する部分にゴムパッキンが埋め込まれている。その割には開け閉め時でもゴムの弾力のような抵抗も無い。

 E-M5をはじめマイクロフォーサーズ機にはアクセサリーとして、フォーサーズ規格のレンズを装着して撮影することができるマウントアダプターが用意されている。そのなかでもE-M5と同時に発売された「フォーサーズアダプターMMF-3」は、防塵防滴対応のフォーサーズ規格のレンズと組み合わせることで、E-M5の防塵防滴性能を活かすことができるアダプターだ。

E-M5にオリンパスのフォーサーズレンズ「ZUIKO DIGITAL ED 50-200mm F2.8-3.5 SWD」を「フォーサーズアダプターMMF-3」を介して装着。MMF-3を使用すれば防塵防滴対応のシステムカメラとして使用可能。同じくMMF-3を使用して「ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWD」を装着。これだけ濡れても全く撮影には問題なし。フォーサーズレンズの高性能レンズをE-M5で使用できるのも嬉しい。
E-M5+MMF-3+ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWDで撮影する筆者。ご覧の通り結構な雨模様のなかでの撮影でした。雨天の撮影では自分の雨対策も万全に。

レンズ表面の水滴対策には撥水フィルターの装着がオススメ

 雨に濡れても全く問題なく撮影が可能なE-M5だが、実は唯一困ったことがある。それはレンズに付いた水滴の処理だ。当然レンズに水滴が付いたままだと写真に水滴が写り込んでしまう。そこで水滴を拭い取る必要があるのだが、これがなかなか難しい。

 いったんレンズに付着した水分はレンズペーパーやレンズクロスで拭い取ろうとしても、レンズに白っぽい跡が残ってしまい、なかなか拭き取ることができない。当然そのままで撮影すると像が滲んで写ったり、空の明るい部分がフレアっぽくなってしまう。この現象はレンズを保護する為のフィルターでも同様に問題となる。水滴を拭う為にフィルターを拭けば拭くほど白い滲みを広げてしまうことにもなりかねない。

 この問題に対処するために私が見つけた方法は撥水性を持ったフィルターを使用するというものだ。ガラス表面に特殊な撥水コーティングを施したこのフィルターには水や油を弾いてしまう効果がある。実は水滴を拭った際に残る白い跡は、ガラスに付着していた微小な油によるものなのだ。それを、水を拭くと同時にペーパーなどでガラス面に塗り広げてしまっているのだ。しかし撥水フィルターであれば水と一緒に油も残さずきれいに拭き取ることができる。これによってクリアな撮影画像を得ることができる。これがなかなか優れものなのだ。防塵防滴に強いE-M5だからこそ、ぜひともオススメしたいアイテムだ。

私が使用している撥水フィルターはマルミ光機の「DHGスーパーレンズプロテクト」。特殊なコーティングのおかげで付着した水滴が丸まってしまうほど撥水性が高い。同時に油も弾くので軽く拭き取るだけで曇りもなくクリアな状態でいられる。同じく撥水効果のあるPLフィルター「DHGスーパーサーキュラーP.L.D」もオススメ。
ZUIKO DIGITAL ED 12-60mm F2.8-4 SWDに装着した「DHGスーパーレンズプロテクト 52mm径」。フィルターに付着した水滴は弾かれて広がることなく、レンズクリーニングペーパーやレンズクロスでキレイに拭うことができる。
一般的なプロテクトフィルター(右)と撥水フィルター(左)。どちらも同じように水滴をレンズクリーニングペーパーで拭った。右は油が残っていて白い跡が見られるが、左は白い跡はなく非常にクリアだ。ペーパーの残り毛はブロアで簡単に吹き飛ばせる。
白い跡が残った一般的なプロテクトフィルターで撮影したもの(左)は、像が全体に滲んでしまっている。一方、撥水フィルターを使用して撮影したもの(右)は滲みもなく非常にクリアだ。左右ともE-M5 / M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ / 約8.2MB / 4,608×3,456 / 1/160秒 / F6.3 / +0.7EV / ISO400 / 絞り優先AE / WB:オート / 37mm

撮影後はお手入れもしっかりとしておこう

 ビショビショに濡れてしまったE-M5。撮影後にはしっかりとお手入れしておくことが大切だ。まずはタオルなど柔らかく吸水性の高い布で全体の水分をしっかりと吸い取る。この際にはパワーバッテリーホルダーHLD-6も取り外して隙間に水が残らないようにしっかりと拭いておこう。ダイヤルやボタンなどの細かい隙間に残っている水はエアダスター等で水を吹き飛ばすとよい。全体の水分を取り除いた後に電池室の蓋のパッキン部分やレンズマウントなど開口部を慎重に拭う。取り外したレンズ側のマウント部や、フィルターとそのねじ込み枠なども忘れずに拭っておこう。

濡れたカメラはすぐにカメラバッグには仕舞わず、しばらくは各パーツを外したままで埃の少ない室内などで陰干ししておこう。写真ではカメラマウントが開放されているが、陰干しの際にはキャップは閉めておいたほうがよい。

ハードなアウトドア撮影にも耐えられる、見た目以上にタフなヤツ

 高い防塵防滴性能を持つE-M5は雨などの水滴だけでなく、砂埃など細かいダストの侵入も防いでくれる。これにより撮影のフィールドが飛躍的に広がるのは間違いない。オリンパスが得意とする撮像素子のダストオフ機能と合わせ、多少埃っぽい場所での撮影でも大きなトラブルとはならないだろう。E-M5はその外観から、ともすれば見た目重視なデザイン先行のカメラと捉えられがちが、実はマグネシウム合金でできたボディの堅牢さといい、非常にタフなヤツだなのだ。ぜひとも夏本番を迎えたいま、アウトドアでの撮影にガンガン連れ出していただきたい。







礒村浩一
(いそむらこういち)1967年福岡県生まれ。東京写真専門学校(現ビジュアルアーツ)卒。広告プロダクションを経たのちに独立。人物ポートレートから商品、建築、舞台、風景など幅広く撮影。撮影に関するセミナーやワークショップの講師としても全国に赴く。近著「マイクロフォーサーズレンズ完全ガイド(玄光社)」「今すぐ使えるかんたんmini オリンパスOM-D E-M10基本&応用撮影ガイド(技術評論社)」Webサイトはisopy.jp Twitter ID:k_isopy

2012/7/27 00:00