OLYMPUS PEN E-P3【第2回】

高感度ノイズ低減とシャープネスの設定について考えてみた

Reported by 北村智史


 効果を弱めたローパスフィルターと新エンジンの「TruePic VI」の組み合わせによる「ファインディテール処理」は、E-P3の売りのひとつだけれど、E-PL2もそこそこローパスフィルターが弱めだったこともあって、思っていたような劇的な違いは感じ取れなかった。

 個人的にはむしろシャープネスの線がちょっと太いように感じられるのが気になっていて(もちろん、ピクセル等倍で見たときの話である)、もしかすると、そのあたりのセッティングをいじったほうが、E-P3の持ち味が引き出せるのではないかとも思えるのだ。

 で、いじるのはもちろん、「高感度ノイズ低減」と「シャープネス」だ。「高感度ノイズ低減」は、E-P3の使用説明書によると「高感度撮影時のノイズ低減レベルを選択」できるものだが、実は低感度撮影時にもきっちりはたらいている。ちなみに、E-620の使用説明書によると「通常は[標準]に設定し、高感度撮影では[強]に設定することをおすすめします」とあるが、こういう記述はE-P3の使用説明書には見当たらない。

 この手の機能はたいていの場合、エッジの部分をぼかすことでノイズを目立たなくするもので、処理のレベルを上げるとノイズは減るものの解像感は低下することになる。なので、「ファインディテール処理」の恩恵をめいっぱい受けたいのであれば、「高感度ノイズ低減」は弱くしたほうが有利なわけだ。ただし、感度との兼ね合いもあるので、「Off」がいいか「弱」がいいのかはテストしてみないとわからない。

 一方の「シャープネス」は、エッジのコントラストを上げて解像感を高める処理で、A4サイズくらいのプリントで見るのを前提にするなら「シャープネス」の線が多少太めでも問題はない。というか、たぶんこれくらいのほうがいい結果になるんじゃないかと思う。が、ピクセル等倍で写真を見るのに慣れた目にはちょっと太すぎる。

「ファインディテール処理」のうまみを最大限に引き出すには「高感度ノイズ低減」を「Off」にするのがよさそうな感じである。その場合、「シャープネス」の設定は少し下げたほうがよさそう。個人的には「-1」が手ごろかなと思う

 それに、初期設定は「高感度ノイズ低減」が「標準」であることを前提にしているだろうから、そちらを「Off」なり「弱」なりに下げるのであれば、こちらも控えめにしたほうがバランスはいいはず。もっとも、これはピクセル等倍での観賞を基準にしての話であるから、プリントするときにはAdobe Photoshopとかで適度にシャープなりアンシャープマスクなりの処理をやらないといけない。また、量のほうも、「-2」がいいか「-1」がいいかはテストしてみないとわからない。

 問題は、この手のテストはやろうと思うとけっこう大変だということ。なにしろ、「高感度ノイズ低減」は「オフ」、「弱」、「標準」、「強」の4とおりで、「シャープネス」は「-2」、「-1」、「0」、「+1」、「+2」の5とおり。これを各感度ごとに検証する必要がある。さすがに感度は1EV単位でやるにしても、ISO200からISO12800まで7とおりだから、全部で「4×5×7=140」とおり。

 撮るのはそれなりに辛気くさいことだけれど、それほど大変なわけではない。問題は、そんなのを全部見たがる人がいるとも思えないってところである。なので、載せるのはベース感度のISO200のとISO1600の2パターンだけにしておく。「高感度ノイズ低減」が高感度域でどういう写りになるのかを見ていただいたほうがいいと思うのと、E-P3の個人的我慢のめいっぱいがISO1600だからというのが理由である。

 で、撮ったのを見た印象は、やはり「高感度ノイズ低減」は「Off」がいちばん良さそう、である。ISO200の「シャープネス」が「0」の画像を見比べると、「高感度ノイズ低減」の「強」以外はあまり見分けが付かないのだが、「シャープネス」を「-2」で撮った画像を見比べると、若干だけれども「高感度ノイズ低減」を「Off」で撮ったカットがいちばんディテール再現がいい。

 ISO1600では、「高感度ノイズ低減」が「弱」でも明確な画質劣化が見てとれる。家並みだけなら「弱」でもいいような気もするが、樹々の描写は「Off」だけが許容範囲。もちろん、ノイズ低減処理を行なわなければそれなりにザラツキ感は出てしまうが、個人的には解像感のほうを優先したい。なので、「高感度ノイズ低減」は「Off」に決定である。

 一方の「シャープネス」は、「-2」だとちょっとふわっとしすぎな感じ。撮ったのがコントラストの低い条件だったこともあるが、もう少しシマリが欲しい。と言って、エッジの線が太くなりやすい「0」にはしたくない。もしかしたら、もっと解像力のいいレンズ(M.ZUIKO DIGITAL ED 12mm F2とか)なら「-2」もありかもしれないが、とりあえずは「-1」をデフォルトにしてようすを見ることにしようと思う。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

・感度/ノイズ低減比較

共通データ:E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R / 4,032×3,024 / 絞り優先AE / 1/50秒〜1/40秒 / F8 / 0EV / WB:太陽光 / 58mm

ISO200 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:-2ISO200 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:-1
ISO200 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:0ISO200 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:1
ISO200 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:2ISO200 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:-2
ISO200 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:-1ISO200 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:0
ISO200 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:1ISO200 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:2
ISO200 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:-2ISO200 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:-1
ISO200 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:0ISO200 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:1
ISO200 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:2ISO200 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:-2
ISO200 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:-1ISO200 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:0
ISO200 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:1ISO200 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:2

E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F4-5.6 R / 4,032×3,024 / 絞り優先AE / 1/400秒〜1/320秒 / F8 / 0EV / WB:太陽光 / 58mm
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:-2ISO1600 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:-1
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:0ISO1600 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:1
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:Off / シャープネス:2ISO1600 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:-2
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:-1ISO1600 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:0
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:1ISO1600 / 高感度ノイズ低減:弱 / シャープネス:2
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:-2ISO1600 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:-1
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:0ISO1600 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:1
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:標準 / シャープネス:2ISO1600 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:-2
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:-1ISO1600 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:0
ISO1600 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:1ISO1600 / 高感度ノイズ低減:強 / シャープネス:2

・作例
前に長期レポートをやったE-510でも似たような傾向で(当時は「ノイズフィルタ」だった)、やはりオフのほうが解像感がよかった。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / 1/30秒 / F8 / 0.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / 9mm鬱蒼としてますが、地下鉄の駅から徒歩10分圏内です。E-P3 / M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4-5.6 / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / 1/40秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / WB:太陽光 / 9mm
とりあえずのセッティングとして「シャープネス」は「-1」に下げてみたけど、レンズやシーンによっては「-2」もありかなぁ。E-P3 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH. / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / 1/800秒 / F2.2 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 20mmとにかく安いんだから、なんか買ってけ的アピールがすごいお店でありました。E-P3 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH. / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / 1/400秒 / F2.8 / 1.0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 20mm
パスタやピザは分かるけど、オリジナルフードってどんなんだろう、と思いながら撮った。E-P3 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH. / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F3.2 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 20mm初期設定の状態だと、コントラストの高い部分のエッジの線の太さが気になったが、このセッティングなら問題なさそうな感じ。E-P3 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH. / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / 1/400秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 20mm
ビルの外壁のオブジェ。シカもしくは怒れるカマキリ。E-P3 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH. / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / 1/125秒 / F4 / 0.3EV / ISO200 / WB:太陽光 / 20mm大通公園は頻繁にいろんなイベントをやってたりして飽きない。家の中をのぞき込む子どもが離れた隙をねらって撮った1コマ。E-P3 / LUMIX G 20mm F1.7 ASPH. / 4,032×2,688 / 絞り優先AE / 1/200秒 / F3.2 / 0EV / ISO200 / WB:太陽光 / 20mm


北村智史
北村智史(きたむら さとし)1962年、滋賀県生まれ。国立某大学中退後、上京。某カメラ量販店に勤めるもバブル崩壊でリストラ。道端で途方に暮れているところを某カメラ誌の編集長に拾われ、編集業と並行してメカ記事等の執筆に携わる。1997年からはライター専業。2011年、東京の夏の暑さに負けて涼しい地方に移住。地味に再開したブログはこちら

2011/8/31 00:00