リコーGXR【第8回】

　3月28日、GXRの機能拡張ファームウェア第3弾が公開された。リコーではGR DIGITALシリーズでおなじみの取り組みだが、GXRでも、早くも3回目を数えるアップデートになるとは感慨深い。

　今回の目玉は、追尾AFと新しいシーンモードの追加だろう。このうちシーンモードについては、「ミニチュアライズ」、「ハイコントラスト白黒」、「ソフトフォーカス」、「クロスプロセス」、「トイカメラ」が一気に追加された。いずれもリコーCXシリーズでおなじみのシーンモードであり、そのうちハイコントラスト白黒とクロスプロセスは、GR DIGITAL IIIでも以前から利用できた。

　これまでGXRのカメラユニットは、この手のシーンモードを搭載していなかった。せいぜい「ポートレート」、「夜景」、「スポーツ」、「遠景」といった、カメラ設定の組み合わせをまとめたモードがあるだけで、特定の表現を具体化したようなシーンモードについては、CXシリーズとGR DIGITAL III（特にCXシリーズ）にまかせてきた経緯がある。シーンモードにおける最近の業界トレンドは明らかに後者なので、歯がゆい思いをしていたGXRユーザーも多かったはずだ。それがここに来ていきなり解禁。「だったら最初から装備していてくれれば……」という思いもある反面、こうしてこまめに愛機をパワーアップしていくのもまた楽しいものだ。

シーンモード選択画面。ミニチュアライズを選択した状態	ハイコントラスト白黒

ソフトフォーカス	クロスフィルター

トイカメラ

　アップデートは前回と同じ。ダウンロードできるすべてのファイルをSDメモリーカードのルートディレクトリに入れて、カメラユニットを取り付けた状態のGXRに挿入。上ボタンと再生ボタンを同時に長押しすると現れるメニューに従って操作すれば、完了する。各カメラユニットごとにこの操作を行なう必要があるのはあいかわらずだ。

　ファイルフォーマットはJPEGのみ。RAWでは記録できない。感度、ホワイトバランス、アスペクト比、画像設定（スタンダード、ビビッド、ナチュラルなど）、ディストーション補正、フォーカス、手ブレ補正などは個別に設定が可能だ。もちろん、設定した内容をマイセッティングにまとめて登録しておける。

• 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。

■ミニチュアライズ

　特定範囲を大きくぼかすことで、シフトレンズ的な表現を再現する。CXシリーズに搭載されているものと機能的には同じだ。GR DIGITAL IIIにはないので、GXRとGR DIGITAL IIIを併用する人にとっては、気になるシーンモードかもしれない。

　ぼかす範囲を3段階から選べる上、その位置を動かせる。しかもぼかす方向を横と縦から選べるなど、この手の機能としては凝ったものとなっている。

　最近の写真共有サービスにおいてティルト/シフト系のエフェクトは、遠景をミニチュア風に見せるというより、通常のシーンで積極的に使う作風が増えている。そういう意味では、いまだからこそ人気が出そうなシーンモードだ。

ミニチュアライズ（横方向、通常幅） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm	ミニチュアライズ（横方向、最小幅） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約2.9MB / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm

ミニチュアライズ（横方向、最大幅） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm

ミニチュアライズ（縦方向、通常幅） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.3MB / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm	ミニチュアライズ（縦方向、最小幅） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約2.6MB / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm

ミニチュアライズ（縦方向、最大幅） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm

■ハイコントラスト白黒

　GR DIGITAL IIIとCXシリーズにも搭載されており、画像設定で選べる「白黒」より、さらにワイルドな雰囲気を強調したものになっている。コントラストを「MAX」、「-1」、「-2」から選べる。

　気になったのは、撮影前のライブビューと撮影結果で明るさに差があること。ライブビューでは若干暗く、撮影後は適正露出になる。慣れることもできそうだが、極端に暗いシーンだと注意したい。

プログラムシフトモード / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約4.2MB / 4,288×2,848 / 1/1,070秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm	ハイコントラスト白黒（コントラスト:MAX） / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約4.5MB / 4,288×2,848 / 1/1,070秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm

ハイコントラスト白黒（コントラスト:-1） / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約4.5MB / 4,288×2,848 / 1/1,070秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm	ハイコントラスト白黒（コントラスト:-2） / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約4.5MB / 4,288×2,848 / 1/1,070秒 / F2.8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm

■ソフトフォーカス

　ソフトフィルターを使ったような効果が得られる。CXシリーズに搭載されているが、GR DIGITAL IIIにはない。効果を「強」と「弱」から選択可能。露出がそのままだと、全体的に色が濃くなった。画像仕上げはナチュラルで撮影している。

プログラムシフトモード / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約3.9MB / 2,848×4,288 / 1/1,410秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm	ソフトフォーカス（ソフトフォーカス設定:強） / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約1.9MB / 2,848×4,288 / 1/1,410秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm	ソフトフォーカス（ソフトフォーカス設定:弱） / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約2.5MB / 2,848×4,288 / 1/1,410秒 / F5.6 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm

■クロスプロセス

　CXシリーズ、GR DIGITAL IIIともに搭載されているシーンモード。

　カラーバランスの崩れ方が特徴で、ベーシック、マゼンタ、イエローから選択可能。また、コントラストと周辺減光もそれぞれ3段階から選べるなど、新規追加のシーンモードの中では、最も複雑な設定が可能だ。

プログラムシフトモード / GXR / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/73秒 / F5.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 23.6mm	クロスプロセス（色調:ベーシック、コントラスト:普通、周辺減光:OFF） / GXR / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/73秒 / F5.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 23.6mm

クロスプロセス（色調:マゼンタ、コントラスト:普通、周辺減光:OFF） / GXR / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/73秒 / F5.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 23.6mm	クロスプロセス（色調:イエロー、コントラスト:普通、周辺減光:OFF） / GXR / 約3.8MB / 3,648×2,736 / 1/73秒 / F5.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 23.6mm

クロスプロセス（色調:ベーシック、コントラスト:+1、周辺減光:OFF） / GXR / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/73秒 / F5.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 23.6mm	クロスプロセス（色調:ベーシック、コントラスト:+2、周辺減光:OFF） / GXR / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/73秒 / F5.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 23.6mm

クロスプロセス（色調:ベーシック、コントラスト:普通、周辺減光:弱） / GXR / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/73秒 / F5.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 23.6mm	クロスプロセス（色調:ベーシック、コントラスト:普通、周辺減光:強） / GXR / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/73秒 / F5.1 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 23.6mm

■トイカメラ

　CXシリーズにもあるシーンモード。調整項目は、周辺減光が3段階に加え、トイカラーのON/OFF。トイカラーをONにすると、色収差を模した縁取りが輪郭部につく。四隅に行くに従い、縁取りは目立つようになる。

　なお周辺減光は、アスペクト比を1：1などに変更しても、四隅に効果が加えられる。

プログラムシフトモード / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm	トイカメラ（周辺減光:OFF、トイカラー:ON） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.3MB / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm

トイカメラ（周辺減光:弱、トイカラー:ON） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.3MB / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm	トイカメラ（周辺減光:強、トイカラー:ON） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.3MB / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm

トイカメラ（周辺減光:OFF、トイカラー:OFF） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/870秒 / F5.4 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 6mm

　以上、新シーンモードをざっと試してみたが、画像処理に長時間待たされるわけではなく、総じて快適に撮影できた。露出補正や感度設定などを行なえる点もうれしい。

　なお、撮影設定メニューの「+通常撮影」をONにしておくと、エフェクトがかかっていないJPEGが同時に保存できるのも安心だろう。ただ将来的には、JPEG保存だけでなく、RAW同時記録にも対応してほしいところだ。

　ハードなイメージ一辺倒だったGXRに、こうした遊べる要素が増えたのは好ましく思う。ただ、P10 28-300mmカメラユニットに関しては、ますますCXシリーズとの差別化が難しくなった。個人的にはさらに小型になるなどの改革がない限り、CX系を購入する可能性がほぼなくなったと感じる。もちろん、オールインワンパッケージのCXならではの良さもあるにはあるのだが……

　何はともあれ、自分の持っている機種が機能拡張で進化し続けるのは楽しい。早くも次の機能拡張ファームウェアの登場が楽しみだ。

■カメラユニットごとに新シーンモードを比較

プログラムシフトモード / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約4.2MB / 4,288×2,848 / 1/870秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm	ミニチュアライズ ※デフォルト / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約3.7MB / 4,288×2,848 / 1/870秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm

ハイコントラスト白黒（コントラスト:MAX）※デフォルト / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約4.5MB / 4,288×2,848 / 1/870秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm	ソフトフォーカス（ソフトフォーカス設定:強）※デフォルト / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約2.4MB / 4,288×2,848 / 1/1,000秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm

クロスプロセス（色調:ベーシック、コントラスト:普通、周辺減光:OFF）※デフォルト / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約4.2MB / 4,288×2,848 / 1/1,000秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm	トイカメラ（周辺減光:OFF、トイカラー:ON）※デフォルト / GXR / GR LENS A12 28mm F2.5 / 約4.0MB / 4,288×2,848 / 1/870秒 / F8 / 0.0EV / ISO200 / WB:オート / 33mm

プログラムシフトモード / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 10.5mm	ミニチュアライズ ※デフォルト / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.1MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 10.5mm
ハイコントラスト白黒（コントラスト:MAX）※デフォルト / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 10.5mm	ソフトフォーカス（ソフトフォーカス設定:強）※デフォルト / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約2.2MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 10.5mm
クロスプロセス（色調:ベーシック、コントラスト:普通、周辺減光:OFF） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.5MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 10.5mm	トイカメラ（周辺減光:OFF、トイカラー:ON） / GXR / RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC / 約3.4MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 10.5mm

プログラムシフトモード / GXR / RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F8.7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 8.7mm	ミニチュアライズ ※デフォルト / GXR / RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC / 約3.2MB / 3,648×2,736 / 1/620秒 / F8.7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 8.7mm
ハイコントラスト白黒（コントラスト:MAX）※デフォルト / GXR / RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC / 約3.7MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F8.7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 8.7mm	ソフトフォーカス（ソフトフォーカス設定:強）※デフォルト / GXR / RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC / 約2.2MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F8.7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 8.7mm
クロスプロセス（色調:ベーシック、コントラスト:普通、周辺減光:OFF） / GXR / RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC / 約3.6MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F8.7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 8.7mm	トイカメラ（周辺減光:OFF、トイカラー:ON） / GXR / RICOH LENS P10 28-300mm F3.5-5.6 VC / 約3.2MB / 3,648×2,736 / 1/570秒 / F8.7 / 0.0EV / ISO100 / WB:オート / 8.7mm