交換レンズレビュー

M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO

極めて高い描写性能 待望のハイクラス超広角ズーム

今回はOLYMPUS OM-D E-M5 Mark IIで試用した。発売は6月26日。価格税別17万円

オリンパスの「M.ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F2.8 PRO」は、4/3型センサーを搭載するマイクロフォーサーズカメラに対応する超広角ズームレンズ。同社製のマイクロフォーサーズ用交換レンズのラインナップ中にあって、あらゆる状況下で優れた高画質を提供するという「PROシリーズ」に属している。

35mm判換算で焦点距離14mm相当という超広角な画角をワイド端とし、全ての焦点距離でF2.8の明るさを誇る大口径でありながらも、高い堅牢性と小型・軽量を達成していることが大きな特長。

すでにラインナップされていた、標準ズームの「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」と望遠ズームの「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」に、6月26日発売の本レンズが加わったことで、PROシリーズのズームレンズは、超広角から超望遠までの幅広い画角をF2.8の大口径で通して完成させたことになる。

デザインと操作性

本レンズの全長は105.8mm、最大径は78.9mm、質量は534gとなっている。同じくオリンパス製でフォーサーズに対応した超広角ズームの「ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0」(スーパーハイグレードクラス)は、全長が119.5mm、最大径は86.5mm、質量は780gである。

フォーカスリング、ズームリングを含め外装は金属製で高級感が高い。11箇所の密閉シーリングが施され防塵防滴性も万全。突出した前玉を持ちながらコンパクトに仕上がったデザインは秀逸である
もちろんマウント部も金属製で高剛性である。レンズ後方にファンクションボタン(L-Fn)を備え、好みの機能を割り当てることができる
オリンパスOM-D E-M5 Mark IIに装着したイメージ。オリンパス製の小型ボディとの組み合わせでもバランスがよく使いやすい

ZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0は一眼レフ用の交換レンズなので、これにフランジバック分の厚みが加わり、なおかつ開放がF4であることを考えると、ミラーレス機用の交換レンズとして設計された本レンズがいかに小型軽量に仕上がっているかがわかるだろう。

鏡筒は、さすがオリンパスが誇るPROシリーズのレンズに相応しくシッカリとしており、「小型・軽量のボディながら、ホコリ、水滴の浸入を強固にガードする密封シーリングが施されおり、耐低温性にも優れる」との明言通り、使っていて非常に信頼と安心できる確かな造りを実感できる。

前玉が前面に突出したレンズ構成で組み込み式のレンズフードを装備しているため、ねじ込み式のPLフィルターやNDフィルターなどでフィルターワークをこなすことはできないが、14mm相当という超ワイドな画角で高画質を達成するための光学設計として、これは致し方がないことと思える。

レンズ構成は11群14枚、EDレンズや非球面レンズなど多種の特殊レンズが多数採用された贅沢な設計だ。フードは組み込み式でねじ込み式のフィルターは装着できない

他のPROシリーズ交換レンズであるM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROやM.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PROと同様に「MFクラッチ機構」を備えており、フォーカスリングを手前に引くだけの簡単な操作で、AFからMFへ素早くフォーカスモードを移行することが可能だ。MFに移行すると最近の交換レンズでは珍しい距離目盛が現れるため、被写界深度の深い本レンズで置きピンのスナップ撮影などを行う場合、大変有効に活用することができる。

MFクラッチ機構を備えており、フォーカスリングを手前に引くだけで、簡単にAFからMFへ移行できる。MF時は距離目盛が現れるので、目測でピントを合わせる置きピンのスナップ撮影などに便利だ
かぶせ式のレンズキャップが付属。フードに対してロック機構があるので不用意に外れる心配はない

遠景の描写は?

レンズ構成は11群14枚。EDレンズ(特殊低分散レンズ)を1枚、スーパーEDレンズ(EDレンズの特性をさらに向上させた特殊低分散レンズ)を3枚、EDAレンズ(特殊低分散非球面レンズ)を2枚、非球面レンズを1枚、DSAレンズ(大偏肉両面非球面レンズ)を1枚、HDレンズ(高屈折率&高分散レンズ)を1枚と、驚くほど多種の特殊レンズがふんだんに採用されている。

まさにオリンパスの光学設計の粋を結集したともいえる贅沢な光学系の成果として、遠景での実写で得られた結果はすこぶる良好であった。いまどきの超広角レンズであれば描写性能は押し並べて優れているものだが、それにしたところで、本レンズはワイド端、テレ端とも絞り開放から画面の四隅まで色ズレや諸収差の発生はほとんど見られず、抜群に解像性能が高いことに驚かされた。

厳密にいえば、絞り開放時の解像感はF4以上に絞った場合に比べればやや甘いのであるが、それも画像を拡大して比較すればわかるという程度の極わずかな違いである。

F11以上に絞ると回折の影響で解像性能は低下していくものの、オリンパス製ボディ(今回はOM-D E-M5 Mark IIを使用)に搭載された画像処理エンジン「TruePic VII」の適切なファインディテール処理によって画質の低下は最小限に保たれている。

絞り値に関わらず常に画面全体で安定した高画質を得られることは、本レンズの光学設計が極めて優れた次元にあることを物語っている。

また、絞り開放では周辺光量の低下がいくらか見られるが、中心から周辺にかけて緩やかに暗くなっていくため、作画上それほど気になるものではなかった。周辺光量の低下は1段絞り込んだF4にすればほぼ解消される。ボディ内の画像処理で周辺光量が補正されていることも考えられるものの、それを差し引いても14mm相当の超広角レンズとして優れた成績だといえるだろう。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
広角端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。(共通設定:OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 7mm)
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
広角端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。(共通設定:OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 7mm)
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―中央部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。(共通設定:OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm)
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16
望遠端―周辺部
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。(共通設定:OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm)
F2.8
F4
F5.6
F8
F11
F16

ボケ味は?

本レンズの最短撮影距離はズーム全域で0.2m。フォーサーズ用超広角ズームのZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0、および、マイクロフォーサーズ用超広角ズームの「M.ZUIKO DIGITAL ED 9-18mm F4.0-5.6」の最短撮影距離がともに0.25mであることから、本レンズは近接撮影能力においても性能進化をしていることがわかる。

最短撮影距離が0.2mとなると、レンズ先端が接触しそうなくらい被写体に近づくことができ、14mm相当の超広角であっても小さな被写体を大きく写し、背景を大きくぼかすことが可能だ。

超広角レンズの背景ボケは、二線ボケなどの発生によって硬く煩く感じられることがままあるが、本レンズではいずれのズーム域でもそのようなことはなく、素直で柔らかな前後のボケを得ることができた。

ただし、本レンズは焦点距離の短い超広角ズームであることと、比較的小型の撮像センサー(4/3型センサー)を搭載するマイクロフォーサーズ規格のレンズであるため、被写界深度は相当に深く、被写体から数m離れた場合、背景が大きくぼけることはあまり期待できない。

とはいえ、同一画角での被写界深度が35mm判フルサイズやAPS-Cサイズより深いことは、逆に考えると、前述のMFクラッチ機構を利用した目測での素早いスナップ撮影が行いやすいともいえる。こうしたレンズの特性は積極的に活用して、より有効な撮影の手段としていきたいものである。

広角端
絞り開放・最短撮影距離(約20cm)で撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/1,250秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 7mm
絞り開放・距離数mで撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/500秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 7mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/100秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 7mm
望遠端
絞り開放・最短撮影距離(約20cm)で撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm
絞り開放・距離数mで撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/1000秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm
絞りF5.6・距離数mで撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/250秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm

逆光耐性は?

強い光源である太陽を画面の左上に配置して、太陽を画面内に入れた場合と、太陽が画面内にギリギリ入らない条件で撮影をした。いずれもゴーストやフレアが最も発生しやすい厳しい逆光条件である。

結果としては、ワイド端では太陽が画面内入った状態でも入っていない状態でも、青緑色の小さなゴーストが光源を起点として対角線上に数点並んで発生した。テレ端では、画面に太陽が入っていない状態ではゴーストやフレアの発生は見られなかったものの、画面に太陽が入った状態では光源の近くに比較的大き目の白いゴーストが、画面の中央下付近に赤く大きなゴーストが発生した。

本レンズは前玉が前面に大きく張り出した形状であるため、太陽が画面に入っていない場合でも宿命的に前玉が直射光を拾いやすのであるが、それでもゴーストやフレアの発生は最小限にとどめられており、超広角レンズの逆光耐性としては立派であるといえる。

また、ゴーストは直線的に小さく並んだ素直なタイプなので、作画の上でも発生を予測しやすくコントロールしやすい。フォーサーズ用超広角ズームのZUIKO DIGITAL ED 7-14mm F4.0は強い光源の反対側に虹色の目立ったゴーストが発生しやすく、作画上コントロールが難しかったことを考えると、ゴーストの発生率、またその自然さという意味で、格段に逆光耐性が向上しているといえるだろう。

広角端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/2,000秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 7mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/1,250秒 / F5.6 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 7mm
望遠端
太陽が画面内に入る逆光で撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/1,250秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/800秒 / F5.6 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm

作品集

35mm判換算で14mm相当という画角はヒトの視角を大きく超えるウルトラワイドである。最短20cmの近接撮影能力を生かせば迫力のある遠近感の強調が可能だ。

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/500秒 / F2.8 / +0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 7mm

引きのとれない狭い室内でも被写体を広く捉えることができる。状況にあわせて画角を細かく調整できるのはズームレンズのいいところ。

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/160秒 / F2.8 / +0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 9mm

テレ端は28mm相当というなじみのある画角なのでスナップ撮影もしやすい。F2.8の大口径も有効なスペックのひとつで、薄暗い条件下でもISO200で1/800秒の高速シャッターを切ることができた。

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/800秒 / F2.8 / 0EV / ISO200 / 絞り優先AE / 14mm

絞り開放から画面周辺まで安定した高画質であるのが本レンズのウリだが、F5.6〜F8に絞ればさらに解像感の高いハイスペックな画質を得られる。コントラストが高くクリアな描写であるのもオリンパスらしくて好ましい。

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/200秒 / F8 / -0.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 11mm
OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/250秒 / F5.6 / -0.3EV / ISO200 / 絞り優先AE / 12mm

木漏れ日は太陽の直射という逆光状態で露出補正を+1.7にまで上げて撮影。非常に厳しい条件ながら画質は一切破綻することなく撮ることができた。本当に描写性能が高く、取り回しのよいレンズだと感心する。

OLYMPUS OM-D E-M5 Mark II / 1/50秒 / F3.2 / +1.7EV / ISO200 / 絞り優先AE / 13mm

まとめ

本レンズの開発が発表されたのは、確か2年ほど前のことだったのではないかと記憶している。発売まで随分と時間がかかったが、登場した本レンズの出来栄えを見るにつけ、長く待った甲斐があったものだと思うのである。

一番の特長は何といっても極めて高いその描写性能だろう。超広角レンズで問題となりやすい画面周辺での色収差やコマ収差などはほとんど見られず、絞り開放から四隅まできっちりシャープで解像感に溢れている。先行する他のPROシリーズレンズ同様、実に安心・安定した高画質である。

さらに、F2.8通しの大口径ズームでありながら小型軽量を維持しているところも素晴らしい。同社のOM-DシリーズやPENシリーズなどのミラーレス機に装着した時のバランスが絶妙で、操作性のよさや取り回しのよさは、他社製の超広角ズームと比べても群を抜いているといっていい。

税抜きで17万円という価格は、簡単に手が出るものではないが、その価格に似合うだけの実力は十分。マイクロフォーサーズ用の超広角レンズとしては、スペック的にも実用的にも他に並ぶものがない唯一のレンズだ。多少の無理をしてでも是非手に入れたいと強く思った。

曽根原昇

(そねはら のぼる)信州大学大学院修了後に映像制作会社を経てフォトグラファーとして独立。2010年に関東に活動の場を移し雑誌・情報誌などの撮影を中心にカメラ誌等で執筆もしている。写真展に「エイレホンメ 白夜に過ぐ」(リコーイメージングスクエア新宿)など。