交換レンズレビュー

Speedmaster 50mm F0.95

アンダー10万円のフルサイズ対応大口径レンズ

 ミタコンやレンズターボでおなじみの中一光学から、35mmフルサイズ対応の大口径レンズ、「Speedmaster 50mm F0.95」が登場した。

今回はソニーα7で試用した。焦点工房で販売される。価格は税込99,800円の予定

 ソニーEマウントを採用したMFレンズで、35mmフルサイズ対応だからα7/7Rでケラレなく撮影できる。50mm F0.95といえば、ライカの現行レンズ、「ノクティルックスM F0.95/50mm ASPH.」と同じスペックだ。片や120万円以上するのに対し、Speedmaster 50mm
F0.95を取り扱う焦点工房は、税込10万円以下での販売を予定しているという。

 ちなみに焦点工房によると、中国で製品発表後、ファーストロットは3日で完売したそうだ。スペックもさることながら、価格面でもインパクトの大きいレンズである。

デザインと操作性

 中一光学はAPS-Cミラーレスやマイクロフォーサーズ向けに、「ミタコン35mm F0.95」という大口径レンズをすでにリリースしている。いずれ35mmフルサイズの大口径レンズが登場するという予測はあったものの、50mm F0.95での真っ向勝負は大口径レンズにかける意気込みが伝わってくる。

フィルター径は58mm。銘板の「0.95」が誇らしげだ

 レンズ構成は7群10枚。1枚の高屈折低分散ガラス、4枚の超高屈折ガラスを採用し、贅沢な作りの大口径標準レンズだ。最短撮影距離は0.5m。絞り羽根は9枚である。

 マウントはソニーEマウントを採用し、APS-Cイメージセンサーおよびフルサイズイメージセンサーに対応する。MFレンズなので電子接点はなく、ピント合わせと絞り操作は手動だ。絞りリングはクリック感のない無段階式で、これは動画方面での用途も念頭に置いているためだろう。

MFレンズなのでボディとの電子的な連動はない。絞りとピント合わせは手動

 フォーカスリングと絞りリングはともに十分なトルク感があり、絞りリングの方がいくぶん重い動作になっている。フォーカスリングは無理に力を入れる必要がなく、開放F0.95でも微細なピント合わせが可能だ。

 ピントの山はそれなりにつかみやすいが、やはり拡大表示を使わないと開放でのピント合わせは厳しい。特に開放の近接撮影では被写界深度がきわめて浅く、EVF上でじっくりとピントの山を見据えることになるだろう。体が若干前後するだけでもピントが外れるので、落ち着いてピント合わせするように心がけたい。

金属製のスクリュー式レンズキャップが付属している

遠景の描写は?

 描写傾向を遠景撮影から見ていこう。開放F0.95はさすがに甘さを感じるが、滲みはスペックのわりに抑えられている部類だろう。

 F2まで絞れば滲みが消え、コントラストもよくなってくる。周辺減光はかなり大きく、F2.8から四隅が明るくなり、F5.6でほぼ気にならないレベルになる。

 周辺部は多少解像感が甘くなるものの、極端に流れるようなことはない。絞れば全域にわたってシャープな描き方だが、大口径レンズらしさを感じるのは、やはり開放からF2あたりの緩さのある描写だろう。

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以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F0.95
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F16
以下のサムネイルは四角の部分を等倍で切り出したものです。
F0.95
F1.4
F2
F2.8
F4
F5.6
F8
F16
共通設定:α7 / +0.7EV / ISO100 / 50mm(NDフィルター使用)

ボケ味は?

 ボケ味はなだらかで、絞り込んでも嫌な固さは感じない。開放でのボケ量の多さは格別で、中距離で背景がうっすらとボケる様は大口径標準レンズならではだろう。

 状況によってぐるぐるボケが発生するが、それを抑えようという意志は伝わってくる。このぐるぐるボケが発生するとボケが絵画的になり、アーティスティックな描写が好きな人は気持ちがのってくるはずだ。なお、開放では周辺部の玉ボケがレモン形になる。

絞り開放・最短撮影距離(50cm)で撮影。α7 / 1/320秒 / F0.95 / -0.7EV / ISO100 / 50mm
絞り開放・距離数mで撮影。α7 / 1/320秒 / F0.95 / -0.7EV / ISO100 / 50mm
絞りF2.8・距離数mで撮影。α7 / 1/250秒 / F2.8 / 0EV / ISO100 / 50mm
絞りF4・距離数mで撮影。α7 / 1/640秒 / F4 / 0EV / ISO100 / 50mm

逆光は?

 太陽を写し込んだ状態では、フレアとゴーストがいくぶん目立つ。ややシャドウが浮き気味だが、コントラストの低下に悩むほどではないだろう。

 フレアとゴーストが最大になる角度を選んでこの状態なので、必要以上に太陽の位置を気にせずに済む。太陽を外せば逆光下でも堅実な描写となり、気後れせずに様々な角度から被写体を狙えるはずだ。

太陽が画面内に入る逆光で撮影。α7 / 1/250秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 50mm
太陽が画面外にある逆光で撮影。α7 / 1/200秒 / F5.6 / +0.7EV / ISO100 / 50mm

作品

中距離で前後をうっすらとボカし、大口径レンズならではの浮遊感のある描写を狙う。α7 / 1/1,250秒 / F0.95 / 0EV / ISO100 / 50mm
開放で手前の鳩にピントを合わせた。背景が大きくボケるが、標準画角なので撮影状況が伝わってくる。α7 / 1/2,000秒 / F0.95 / +0.7EV / ISO100 / 50mm
開放撮影では状況によってぐるぐるボケが発生する。大口径オールドレンズファンが好みそうな描写だ。α7 / 1/640秒 / F0.95 / +0.7EV / ISO100 / 50mm
F1.4まで絞るとシャープになるが、適度に軟らかさが残る。色再現性は素直なテイストだ。α7 / 1/320秒 / F1.4 / -0.7EV / ISO100 / 50mm

まとめ

 アンダー10万円の大口径標準レンズと聞き、はじめは価格相当の描写をイメージしていた。しかしながら、いざ使ってみると想像以上に手堅い描写だ。開放はF0.95のわりにシャープで、滲みもよく抑えられている。大口径レンズの利点である開放を、積極的に使っていけるだろう。

 周辺光量落ちは多めだが、雰囲気づくりに興を添えてくれる。欲を言えば開放近辺でもう少しコントラストが強いと、合焦した被写体がより際立って見えるだろう。とはいえ、アンダー10万円というコストパフォーマンスは相当なもので、大きなボケを楽しみたいという人にとって、圧倒的な魅力に満ちたレンズだ。

澤村徹

(さわむらてつ)1968年生まれ。法政大学経済学部卒業。ライター、写真家。デジカメドレスアップ、オールドレンズ撮影など、こだわり派向けのカメラホビーを提唱する。2008年より写真家活動を開始し、デジタル赤外線撮影による作品を発表。玄光社「オールドレンズ・ライフ」シリーズをはじめ、オールドレンズ関連書籍を多数執筆。http://metalmickey.jp