切り貼りデジカメ実験室
リコー「GR」にオリンパスPEN用魚眼コンバーターを装着する
Reported by 糸崎公朗(2013/7/11 00:00)
純正品以外のコンバージョンレンズを試す
リコーがペンタックスと一緒になってペンタックスリコーイメージングになった、と思ったら今度はリコーイメージングに社名変更になるそうだが、ともかく満を持した新製品リコー「GR」が発売中である。
みなさんもうご存じの通り、GRはボディはコンパクトでも、極小サイズセンサーを搭載したいわゆるコンパクトデジカメとは異なり、大型のAPS-Cセンサーを搭載したデジタルカメラだ。この意味で、GRはそれまでの「GR DIGITAL」シリーズの後継機のようでいて、全く別のカテゴリーのカメラだとも言えるのだ。
いや、デジタルカメラの世界は概念そのものが次々に刷新されるから、例えば「コンパクトデジカメとはなにか?」と言いった定義付けが実に難しく説明に困ってしまう。
しかし、そもそもリコーのGRブランドとそのコンセプトは、フィルムカメラの「GR1」からカテゴリーを超えて連綿と続いているのである。今回の新製品GRも、GRの伝統であるコンパクトサイズのボディを実現しながら大型のAPS-Cセンサーを搭載しているのであり、メーカーの熱意と技術力の高さは賞賛に値する。
これに敬意を表して、こちらも何か工夫をしなくてはいけない気分になってしまったのだが……あろう事かオリンパスPEN用魚眼コンバーターレンズ「FCON-P01」を装着することを思い付いてしまった。これは普通に言えば“暴挙”なのだが、幸いペンタックスリコーイメージングさんにもオリンパスさんにもそのような記事の執筆を許可していただき、感謝する次第である。
さて、FCON-P01は本来は「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II」と「同II R」専用で、装着するとワイド端で画角120度のセミ魚眼レンズとなる。実は、このFCON-P01をオリンパスのコンパクトデジカメ「XZ-1」に装着した記事を、この連載で書いたことがあるのだが、なかなか良い結果が得られている。
そこで試しに同じFCON-P01をGRに装着して試写したところ、これもなかなか写りが良いのだ。GRには28mm相当のマスターレンズが21mm相当の超広角に変換される高性能のワイドコンバージョンレンズ「GW-3」が用意されているが、それとはひと味異なる面白い写真が撮れそうだ。
ところでFCON-P01をXZ-1に装着した際は、アダプターの自作が必要だったが、コンバーターレンズそのものは無改造で済んだ。しかし、GRに装着した場合はどうしても画面の隅にケラレが生じてしまい、FCON-P01そのものの改造が必要でちょっと面倒だ。
実は今回の改造は無駄骨を折って遠回りしてしまったのだが、そのあたりの紆余曲折も楽しんでいただければと思う(笑)。
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テスト撮影
テスト撮影はカメラを三脚に固定し、絞りを1段ずつ変えて行なった。ただし誌面の都合上、ノーマル状態(28mm相当)とのワイドコンバージョンレンズ「GW-3」装着時(21mm相当)の結果は参考として1枚ずつ掲載する。
まず画角を比較すると、ノーマル状態の28mm相当よりも21mm相当のワイドコンバージョンレンズGW-3装着時のほうがかなり広いことがわかるだろう。しかしこれを上回る広い画角が、魚眼コンバーターレンズFCON-P01装着時に得ることができる。また、歪曲収差が補正されていないセミフィッシュアイレンズのため、直線が歪んで写っていることも確認できる。
画質に関しては、ノーマル状態の28mm相当も、21mm相当のワイドコンバージョンレンズGW-3装着時も、画面の隅に渡るまで申し分のない描写だと言える。
肝心のFCON-P01装着時だが、画面中心は絞り開放からなかなかにシャープだ。しかし画面周辺の画質は多少崩れ、この傾向は(不思議なことに)絞りを変えても変わらない。
ともかくメーカーの異なるレンズを組み合わせたにしては、なかなか良い結果が得られたと言えるだろう。GRのレンズ性能がもともと優秀なのはもちろん、FCON-P01もその描写をあまりスポイルすることなく画角を変換(コンバージョン)している。
実写作品と使用感
実写は「広角マクロ」による昆虫撮影と、一般撮影の2パターンで行なってみた。
これまでのGRシリーズは、極小サイズ撮像素子と高性能広角レンズの組み合わせによって、被写界深度の深い広角マクロ撮影が得意なカメラだった。これに対し大型のAPS-Cサイズ素子を採用したGRは、絞り込んでもそこまで被写界深度が深くならず、最短撮影距離もGR DIGITALシリーズの1cmから10cmへと伸びてしまった(それでもこのクラスのカメラとしては頑張っているが)。
しかし魚眼コンバーターレンズFCON-P01を装着すると、合成焦点距離が短くなったぶん被写界深度が深くなる。また焦点距離の変化に伴いピント位置も移動し、最短撮影距離も短縮されるのだ(このあたりの理屈はややこしいが)。
画質はピントの合った部分はシャープであり、申し分のない写りだ。画角は180度に満たないセミフィッシュアイレンズだが、虫が写る大きさと背景の入り方のバランスがちょうど良く、なかなか使い勝手がよい。
ピントはMFで固定し、ストロボを併用しながら飛んでいるチョウなど追いかけながら撮ると、ご覧の通りの「飛翔写真」が撮れる。この手の撮影方法は、昆虫写真家の海野和男さんがフィルムカメラ時代に開発したもので、ぼくもその伝統を引き継いでいると言える。
一般撮影については、今回はちょっと悩みすぎたせいか今ひとつ煮え切らない結果になってしまった(笑)。歪曲収差が補正されないクセの強い描写のレンズだが、被写体にピタッとはまれば面白い写真になるはずである。画質は立体的な被写体を撮ると画面周辺の崩れが気にならず、良い結果が得られるようだ。
カメラとしての操作性だが、GRはすこぶる快調だと言える。撮像素子が大型化した分、これまでのGR DIGITALシリーズより多少鈍重になるのでは? と予測していたが、これは見事に裏切られた。全体的なレスポンスはむしろ向上しており、細部にわたって“改良された”と実感できるカメラに仕上がっている。