オリンパス「XZ-1」にPEN用“魚眼コンバーター”を装着する
Reported by糸崎公朗
オリンパスのコンパクトデジタルカメラ「XZ-1」に、自作アダプターを介して同社製魚眼コンバーターレンズ「FCON-P01」を装着した。同じオリンパス製でも、FCON-P01はPENデジタル用(マイクロフォーサーズ用)標準ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II」専用で、XZ-1とは互換性がない。しかし実際に合体させるとなかなかに合ってるし、描写もまずまずだ |
■同じメーカーでも互換性のないシステムを合体
前々回のこの連載で『オリンパス「XZ-1」用マクロアダプターを自作する』をお届けした。
この記事では、XZ-1が搭載するレンズは大口径で、ワイコンを装着してもケラレて使えないと書いた。しかしその後いろいろ試すうち、PENデジタル用の標準ズーム「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 II」専用の魚眼コンバーターレンズ「FCON-01」が、XZ-1にケラレ無しで使えそうなことがわかった。
FCON-01(2万1,000円) |
それと同時に、記事の読者からTwitterで「XZ-1のアダプター取り付けネジには、ケンコーの46mm径のフィルターリングが装着できますよ」と教えていただいた。ところが前々回の記事に書いたように、ぼくが持っているケンコーの46mm→52mmのステップアップリングは、XZ-1の取り付けネジに緩すぎてはまらなかった。
そこでショップの店員さんに頼んで、店頭にあるケンコー46mm→52mmのステップアップリングを現物合わせでXZ-1にはめてみたら、きちんと装着できたのである。どうもリング類は同じ規格でもロットによって寸法のバラツキ(もちろん基準の範囲内での)があるようだ。
ともかくこのリングを利用すれば、XZ-1にいろんなレンズを装着した実験ができるだろう。ということで今回は、XZ-1にFCON-01を装着する方法を考えてみた。
ところで、XZ-1にわざわざPENデジタル用の魚眼コンバーターレンズを装着する理由は何だろうか? そもそもFCON-P01はM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 IIに最適化した設計されており、他のレンズとの相性はもちろん保証されていない。
しかし画質が多少犠牲になったとしても、技術的な実験も写真表現の1つだとぼくは思っている。写真術の黎明期、ダゲールもタルボットも写真家自身がカメラや感光剤の研究開発をしていたのであり、ぼくらもまたその歴史的系譜を生きているはずなのだ。
まぁ、大げさな話はともかく(笑)ぼくとしては魚眼ならではの広角マクロの効果にも期待している。XZ-1の撮像素子はマイクロフォーサーズに比べて面積が小さく、魚眼コンバーターレンズを装着した際、より深い被写界深度が得られるのだ。
―注意―
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XZ-1とFCON-P01。同じオリンパス製ながら、規格が異なる両者を合体させるのが今回のテーマだ | まずこのようなリングを用意する。手前左がケンコー製ステップアップリング46mm→52mm。その他はジャンクパーツから適当な厚みの52mmリングをセレクトした。手前右がニコン製「K2リング」(生産中止品)。奥の2つは52mmフィルターのガラスを外した枠 |
XZ-1のアダプターリング取り付けネジに、ケンコー製ステップアップリング46mm→52mmをねじ込む。本文にもあるように、同じ規格でもメーカーやロットによってXZ-1にはまらない製品もあるので要注意だ | 残りの52mm径リングを重ねてねじ込む。電源ONするとリングの縁からレンズが飛び出すが、現物合わせしながら調整し、この寸法に決定した |
FCON-P01をリングに装着する部品を自作。手前は1mm厚のABS板をドーナツ状にカットした部品。奥の2つは1mm厚ゴム板を帯状にカットした部品。寸法は現物合わせで割り出す | リング状部品の裏表に両面テープを貼る。今回は“可逆改造”とするため、部品の接着には両面テープを使用する。改造は現物合わせで行なうので、失敗しても元に戻せる方が気が楽だ |
両面テープを貼ったリング状パーツを、アダプターリングの先端にはめ込む | FCON-P01の基部の外周に、ゴムパーツを巻き付ける(両面テープを使用)。ちなみにFCON-P01の裏側はレンズが奥に引っ込んでおり、XZ-1のレンズとのクリアランスを見極めながらアダプターリングの厚みを調整した |
FCON-P01をアダプターリング先端にはめ込むように接着する。レンズフードの位置を傾けて装着すると、画面隅がケラれてしまうので、慎重に位置を調整する | FCON-P01に巻き付けたゴムパーツの外周に、もう1つのゴムパーツを巻き付ける |
Lマウント用フォクトレンダー「12mm F5.6」専用のビューファインダー(コシナ製)と組み合わせると、シルバーのコーディネートがなかなかカッコイイ。ただし12mm F5.6用ファインダーの方が画角が広く、実用にするには慣れを要する。 | 昆虫などの広角マクロ用にストロボを装着したところ。ストロボは前回の記事と同様、サンパック「PF20XD」に自作ディフューザーを装着している。小型ながらマニュアルで光量が選べるので、マクロ撮影には重宝する。ディフューザーの効果によって、レンズの直前まで光を回すことができる |
今回制作した魚眼アダプターと、以前制作した高倍率マクロアダプターを交えたXZ-1の自作システムを並べてみた。ちなみにXZ-1本体にはリコー「GR DIGITAL」用のストラップを装着してみたのだが、なかなか似合っている(笑) |
※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
■テスト撮影
FCON-P01を装着すると35mm判換算28mm相当の画角が、画角120度のセミ魚眼レンズになる。いつものように金網チャートを撮影し、絞りを開放から最小まで1段ずつ絞りながら比較してみた。
画質は開放F1.8から非常にシャープだが、周辺の画質は落ちる。F8では回折現象のため若干画質が落ち、しかも画面周辺の画質の低下も改善されない。さすがに純正レンズの組み合わせより画質は劣るようだが、この独特の描写も“アートフィルターのひとつ”と捉えればいいだろう(笑)
※共通設定:XZ-1 / 3,648×2,736 / 0EV / ISO100 / マニュアル / WB:オート / 6mm
ワイコンなしの比較画像 | F1.8 | F2.8 |
F4.0 | F5.6 | F8.0 |
ちなみにFCON-P01の取り付け角度が曲がると、画面隅がフードでけられてしまう |
■実写作品(路上観察)
魚眼レンズは何というか楽しい雰囲気に写るので、ぼくとしてはシビアな“写真作品”を撮るよりも、観察や発見の面白さを記録するのに向いているように思える。そこで今回はまず“路上観察”の視点で、JR金町駅周辺の街並みを歩いてみた。東京郊外の西側に住んでいるぼくとしてはあまり行ったことのない地域だが、なかなか情緒のある良い街並みだった。
実は、ぼくの街を見る視点はここしばらく「反-反写真」モードに固定されていたのだが、久しぶりに路上観察モードにカチッと切り替えてみた(笑)。カメラのモードダイヤルと同じように、撮影者のモードも切り替えることができれば、多彩な表現が可能になる。
■実写作品(昆虫観察)
コンパクトデジカメと魚眼レンズの組み合わせは「広角マクロ」の撮影にも適している。今回はまず金町駅から徒歩30分の水元公園で撮影してみた。初めて訪れたが、非常に広大で自然豊かな公園で、都内にこんな場所があったのかと驚いてしまった。ただ初めての場所だと虫のいるポイントが今ひとつ分からず、1日の撮影では作例の枚数が足りない。そこで勝手知ったる自宅近所の国分寺市内でも撮影してみた。
■デジタルカメラとガイガーカウンター
ここからは今回のカメラ改造に直接は関係ないが、この連載のもう1つのテーマ「写真とは何か?」に関する話題をひとつ。実は最近ぼくはガイガーカウンターを購入し、都内を中心に各所の放射線量を測定している。これがどのように写真と関係しているのか?
ガイガーカウンターとは、ガスが封入されたGM管に飛び込んだ放射線の数をカウントする装置だ。一方デジタルカメラはCCDなどの撮像素子に飛び込んだ可視光線の量を数値化し、映像に変換する装置だ。そしてガイガーカウンターが捉える放射線も、カメラが捉える可視光線も、同じく「電磁波」の一種である。
という具合に比較すると、ガイガーカウンターとはカメラの一種であるとも言えるのだ。ガイガーカウンターが示した数値は、目に見えない放射線量を示した“写真”だとも考えることができる。
最近、ぼくはアメリカ製ガイガーカウンター「GM-10」を購入し、都内各地の放射線量を測定している。パソコンに接続すると自動的にグラフを作成してくれるのだが、まさに見えない放射線を視覚化するカメラでもある。水元公園の草地の上は、都内の他の場所より高めの数値が出たのでちょっと気になった。詳しいデータはぼくのブログに掲載してるので、興味のある方はご覧いただければと思う |
現在は関東地方も東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射能で汚染されているといわれており、目に見えない放射線量という“真実”が知りたいと思うのが人情だ。そこでぼくは昆虫などの自然科学写真を撮る同じ感覚で、写真撮影の撮影の合間に放射線を測定している。
ただしガイガーカウンターが示す数値(マイクロシーベルト/時)は機種ごとにバラツキがあり、信頼できないといわれている。そこでぼくは自分のガイガーカウンターが示す最も低い数値(マンションの高層階で測定した自然放射線量)を基準に、その倍数を読むようにしている。
これまで自分が住む国分寺をはじめ、新宿、池袋、神奈川などで測定したが、だいたい地上1mの高さで基準(自然放射線量)の約1.3~2倍の範囲内で、どこもだいたい同じくらいだ。
ところが今回の撮影ついでに測定した水元公園は、ぼくが測った7月3日だと地上1mの放射線量が基準の3~3.5倍程度、虫がいた草地の上が4~5倍程度だった。都内の他の地域では草地や芝は基準の1.3倍程度なので、これに比較するとちょっと高い。実は、ネット上では水元公園は放射線量が高いといわれており、その情報とも符合する。
このデータをどう判断すべきかは、ぼくは専門家ではないので何も言うことができない。しかし写真によって真実を伝えるのが写真家ならば、知り得たデータも伝えるべきで、それもまた“表現”なのだとぼくは思う。示されたデータは各自の知識や価値観で判断すればいいのだし、それは写真の解釈だって同じだろう。今回は掲載写真の注意事項も兼ねて、編集部の理解のもと、この話題に触れてみた。
■告知
●「マクロフラッシュ撮影に役立つ! 手作りディフューザー講座」
コンパクトデジタルカメラで楽しめるディフューザーを作り、実際に街に出て撮影するワークショップ。マクロ撮影に適した設定の仕方や操作方なども紹介する。参加には予約が必要。講師は糸崎公朗氏。
- 会場:リコーフォトギャラリーRING CUBE
- 住所:東京都中央区銀座5-7-2三愛ドリームセンター8・9階(受付9階)
- 会期:2011年7月16日(要予約)
- 時間:13時~16時
- 参加費:3,500円
【2011年7月12日】記事初出時、XZ-1のアダプター取り付けネジを「48mm径」と記載していた箇所がありましたが、正しくは「46mm径」です。
2011/7/11 00:00