切り貼りデジカメ実験室
リコーGXR用「フレネルレンズユニット」を作る
Reported by 糸崎公朗(2013/9/6 12:00)
フレネル博士の「フレネルレンズ」で撮ってみる
フレネルレンズというものをご存じだろうか? 商品としては「カード型ルーペ」などと称して、文具店や100円ショップなどで売っている。
このレンズは通常のレンズを同心円状に細分し、平面上に配列した特殊構造になっている。これによって薄型軽量が実現できる。フランスの物理学者オーギュスタン・ジャン・フレネル(1788-1827)によって発明され、それが名前の由来になっている。
カメラに詳しい人ならご存じだろうが、フレネルレンズは一眼レフのファインダースクリーン使われ、周辺光量アップの役を果たしている。またカメラのストロボ発光部にも、光の拡散用にフレネルレンズはよく使われている。
このように、フレネルレンズはカメラの各部に利用されているにもかかわらず、写真用レンズとして利用されているという話を聞いたことがない。
ということにふと思い当たり、今回は100円ショップで売られていたフレネルレンズを使い、どんな写真が撮れるか実験してみた。
カメラボディはリコー「GXR MOUNT A12」を使用し、工作用紙でレンズ鏡筒を制作した。図面の代わりに各パーツのスキャン画像も掲載したので、興味のある方はちょっと遅い“大人の夏休み工作”としてチャレンジして欲しい(笑)。
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実写作品
さて実写だが、その結果には自分でも驚いてしまった。「ソフトフォーカスにも程がある」といった描写で、何もかもがファンタジックな濃霧に包まれた写りになってしまう。
もちろん、取り立ててシャープな描写を期待しているわけではなかったが、ここまでスゴイとは思わなかった。あらためて調べてみると、フレネルレンズは原理的に回折現象により画質が低下し、撮影レンズには向かないらしい。
実は、画質向上のため絞りを入れる実験もしてみたのだが、描写はほとんど変わらなかった。そこでヘタな小細工はせず、絞り開放だけで撮るシンプル仕様にしたのだ。
この描写はピンホール写真に似てるとも言えるが、フレネルレンズの方が圧倒的に明るく、手持ち撮影が可能な点に違いがある。
ともかくフレネルレンズが描く視覚世界は思いのほか奇妙で、これはこれで面白いと言えるかも知れない。