デジカメアイテム丼

たった4,980円の全周魚眼レンズカメラを使ってみた

パノラマVRも手軽に作成

 読者のみなさんは魚眼レンズを使った経験はあるだろうか。念のため簡単に説明させていただくと、魚眼レンズとは約180度の画角をイメージサークル内に写し込むことができるレンズだ。

お値段はなんと4,980円!

 もともとは天体観測や雲量測定のような学術用途、あるいは監視カメラのような特殊な業務用途に考え出されたものだ。画面内に被写体をどう結像させるかにより、細かくはいくつかの方式があるのだそうだ。

 また、イメージサークルが画面対角線より小さく円形の画像を得られる全周魚眼レンズと、イメージサークルが大きく矩形の画像になる対角線魚眼レンズに区分することができる。

 いずれにせよやや特殊なレンズであることから、使った経験のある方はそう多くはないのではないか。特に全周魚眼レンズはカメラメーカーの現行製品ではキヤノンとシグマに用意されているのみであり、対角線魚眼レンズでもそれなりの値段がする製品が多い。

 とはいえ、いまでは各社デジタルカメラに画像処理を行う「魚眼風エフェクト」(画角が広がるわけではなく魚眼レンズ風のゆがみを作り出すもの)が搭載されており、数年前にはペットの写真を対角線魚眼で撮影して鼻を大きくする写真が流行ったこともある。

 さらにスマートフォン用のアタッチメントやアプリが多数販売されているところを見ると、魚眼レンズに興味を持っている人は、おそらくたくさんいるのだろう。

「もう少し本格的なものを使ってみたいと思うけど、ちょっと手が出せないな」と思っている方に検討してほしいのが、これから紹介するインタニヤの「Entapano(インタパノ)C-01」だ。全周魚眼レンズがついた小型のデジタルカメラで、お値段は4,980円(!)。筆者のキーの打ちまちがいでは決してない。

シンプルなデザインと操作性

 C-01の寸法は高さ55×幅100×奥行き45mm(レンズキャップ装着時)、重さは実測約115g。プラスチック外装で、たいへんシンプルなデザインだ。

 操作自体もシンプルで、撮影にあたっては背面にある電源ボタンを押して起動させてから、ボディ上面のシャッターボタンを押すだけ。露出もホワイトバランス調整も自動で、カメラがデイモードとナイトモードを自動切換えする。

 被写界深度が深いのでピント合わせも不要。ボディ上面には水準器を備えている。等距離射影方式のオリジナルレンズ(Entaniya Fisheye 1.4mm F2.2)の画角は183度で、最短撮影距離は50cm。

 デジタルカメラとしては、センサーサイズは未公表で記録画素数は9メガピクセル(3,334×2,224ピクセル)。記録形式はJPEGで、記録媒体はMicro SD(SDHC対応で最大32GB)。インターフェースはMini USB。バッテリーは内蔵型でUSB給電。

 もともとは不動産物件の記録撮影などの業務用途を想定して売り出されたとのことで、カメラに詳しくないユーザーにも簡単に扱うことができることや最小限の機能に絞られていることは、いかにもその分野の“業務用品”らしく思える。

上面は水準器とシャッターボタン、水準器右は撮影中および書き込み中に作動するLED。水準器左はデイモードおよびナイトモードを示すLED
インターフェースはMini USB。充電もこちらから行う。専用コードが付属する。使用メディアはMicro SD。なお日付合わせはユーザーがテキストファイルをMini USBカードに保存してカメラに読み込ませる
電源ボタンは背面。ONにすると青いLEDが点灯する。バッテリ容量が不足すると赤いLEDが点灯する
レンズのピント調整(フォーカスアジャストシステムと呼称)が必要な場合はレンズを慎重に回して行う。簡単に動かないようにきつく締めてある。筆者は念のためにテープを貼ってレンズ位置を記しておいた

「シンプルなデザインと操作性」と書いたが背面液晶モニターを持たず、ファインダーも備えていない。パソコン上からのモニタリングにも対応していないので(メモリーカードを入れたままパソコンに接続すればパソコン上で画像の確認はできる)、撮影時は「だいたいこんな感じかな」という要領でカメラを構えてシャッターを構えることになる。

 とはいえ、水平は水準器でわかるうえにピントは被写界深度に収まるので、そう困らない。

 ちなみに、ピント合わせは不要だが本番撮影前にレンズの調整を行ったほうがいい場合がある。試し撮りを行ってピントがあっていなかったり、あるいは左右のどちらかの像が流れる場合には、Webサイトにある説明に従いレンズを回すと調整できる。気温の変化などで動く場合があるようだ。

意外なおもしろさにハマる

 筆者は安価な外国製対角線魚眼レンズは所有しているので、魚眼レンズ自体はまったくの未経験ではないつもりでいた。だから、円周魚眼レンズを持つC-01の撮影もそう大変なこととは思っていなかった。ところが、何ごとも経験してみないとわからない。「シンプルなデザインと操作性」の洗礼を初日に受けた。

 レンズの画角は183度ある。いっぽう、肉眼で見えていても注意して見ているのは180度の広さもない。見えてはいても注意していないものは、見えないのと同然なのだろう。そのことに気づかされたのは撮影後だ。

 まずカメラの保持に注意しないと自分の指を写し込んでしまう。また、水平に注意を払わないと自分の靴先や三脚が写り込む。カメラ自体の操作は簡単だが、撮影にあたっての注意事項は意外と多いかもしれない。

 とはいっても、慣れれば難しくはない。学術的な観測や業務の写真ではないならむしろ、意図しないものも積極的に映し込むほうが予想外の楽しさがあるのではないか。

  • 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
  • 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。

トホホな失敗例

カメラを握る指や自分の足、あるいは三脚を写してしまうので、意図して狙うのではないなら要注意!
広角レンズのセオリーを覚えているだろうか? 「一歩前に出ろ」としつこく教わったことを思い出した

撮影のコツ

シャッターボタンは触れる程度でレリーズできる。緑のランプ点灯中はぶらさないように注意
三脚の基本的な使用方法ではないことを承知のうえで、2本の脚を前にしエレベーターを伸ばして撮影。こうしないと三脚の脚や雲台を写してしまうからだ
カメラはツインプレート(いわゆる「鉄ちゃんプレート」)の端に固定してみた
360度パノラマVR撮影時は、時計回りに3枚のカットを撮影する。ただし、三脚の中心を軸にするのではなくレンズを軸とする。レンズ真下の地面に印をつけて三脚ごとカメラを動かした。ちゃんと印は撮影後に剥がしましたよ
本来は水平に撮影すべきなのだが、三脚を写しこんでしまうのでカメラを上向きにして撮影することにした
雲台の上向きの角度がわかるようにテープを貼った。自宅で試行錯誤した結果の三脚を写し込まないぎりぎりの角度がこれだった
ノートパソコンを持って行き撮影の合間に充電をかねてチェックした

 シャッター速度などがどの範囲まで作動するのかは記述されていないが、日中に撮影したカットで最も速いシャッター速度は1/8,000秒。いっぽう、夕方撮影したカットでいちばん遅いシャッター速度が1/2秒だった。この状況で写るかな、と思いながら試してみるとけっこうしっかり写る。楽しさは予想以上だった。

作例(日中)

川沿いの木。輝度差が大きくないように考えたほうがいいようだ
神社の境内にて。白い空を木で隠す
同じ場所から横を向いた
撮影中に現れた猫

作例(夕方)

川越にある有名な時の鐘を狙った。日没後のこのくらいの暗さまでなら撮影可能だった

専用サイトからパノラマVR画像を作成可能

 C-01の楽しさは円周魚眼レンズによる写真を手軽に撮影できることだけではない。インタニヤのサイト内にある「無料パノラマVR自動作成サービス Entapano F」を利用すると、Web上で利用できる「パノラマVR」画像に変換できる。

変換サイトのインタパノF

 このパノラマVR画像とは「ヴァーチャル・リアリティ」の略。「パノラマムービー」とも言う。Flashを利用してWebブラウザ上で任意の方向に画面を動かして見ることのできるパノラマ画像のことで、Googleストリートビューなども用いられているものだ。自治体の観光協会のWebサイトなどで目にされた方も多いと思う。

 高精度なパノラマVR画像を本格的に作成するにはレンズ交換式デジタルカメラと魚眼レンズ、専用の雲台を使いつつ専用ソフトで変換するために、本来はれっきとしたプロの仕事だ。

 C-01とインタパノFを組み合わせると、十分に高精度なパノラマVR画像を手軽に手に入れることができる。作成できるのは180度パノラマ画像と360度パノラマ画像。180度画像は1枚の画像から、360度は時計回りに撮影した3枚の画像から作成する。

 180度パノラマは通常の撮影のとおり。360度パノラマを少しでも高精度にするには、三脚や一脚などを利用しつつ、かつ「レンズを中心に時計回りに回転すること」(「三脚の軸」を中心にするのではない)だ。そのための雲台やブラケット、あるいはホールディンググリップも世の中にあるが、筆者はアナログな手法(つまり目測)で行った。

 変換サイトの操作は難しくない。画面にしたがって画像をアップして行くだけだ。変換に成功すると、インタパノのサーバー上に6カ月保存される、表示用URLが示されるほか、ユーザーが各自で利用できるようなデータのダウンロードが可能になる。

180度パノラマの作例

360度パノラマの作例

楽しみ方はまだまだありそう

 C-01には手軽に入手できる円周魚眼レンズとしての楽しさがある。軽量で気軽に持ち歩けるカメラであるため、レジャーの場などさまざまな状況で試してみたくなる。

 また、簡単に作成できるパノラマVR画像も、たいへん興味深い。思い返せばGoogleストリートビューのサービスが開始されたときに、まず自分の知っている場所を検索してみたという方は多いと思う(筆者はまず自宅を検索した)。見慣れた場所が自分の撮影したパノラマVR画像になるのも新鮮だった。

秋山薫

(あきやま かおる)1973年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。月刊カメラ誌編集部員、季刊カメラ誌編集長を経験。編集者・写真家として活動中。現在は私鉄沿線情報誌編集部に勤務。Kindle電子書籍「ぼろフォト解決シリーズ」の執筆・編集も行っている。