ニッシンジャパンは1959年創業のストロボ専業メーカーであり、国内コンシューマー市場へは2007年に参入。第1弾の「Di622」は、TTL対応のガイドナンバー44(ISO100・以下同)タイプをリーズナブルな価格で提供したことで話題になった。次々に登場するデジタル一眼レフカメラの新製品に対応するため、本体にファームウェアアップデート用のUSB端子を搭載したのも特徴だった。
その後、ガイドナンバー20の小型クリップオンストロボ「Di28」を発売。2008年にはガイドナンバー22(照射角35mm)・ガイドナンバー33(照射角105mm)の「Di466」をリリースするなど、積極的な製品展開を行なっている。
そんなニッシンジャパンの最新モデルは、フラッグシップの「Di866プロ」だ。バウンス発光機構はもちろん、ガイドナンバー40という最上位モデルにふさわしいスペックを実現。さらに今までのクリップオンストロボにない、独創的な機能を豊富に搭載している。
E-TTL II/E-TTL対応のキヤノン用と、i-TTL対応のニコン用を用意。価格は4万9,750円で、大手量販店では4万円前後で販売しているケースが多い。
まず目をひくのが、背面のカラー液晶ディスプレイだ。クリップオンストロボの液晶ディスプレイはモノクロと相場が決まっており、しかも特定ボタンの長押しで設定メニューに入るなど、前時代的なインターフェイスが定番だ。確かに新機種が出るたびに少しずつ進化が見られるものの、iPhone/iPod touchを思わせるDi866プロのトップ画面は、他の追随を許さないインパクトがある。
クリップオンストロボへのカラー液晶ディスプレイ搭載は、おそらく業界初の快挙だろう |
基本的な操作は4方向ボタンとその中央に設けられたSetボタンで行なうタイプ。基本的な使い方は、トップ画面から「A」(AUTO)アイコンを選ぶだけ。この状態ではDi866プロ側からは何も制御できない。
被写体によって発光量をシフトさせることが予測される場合は、「TTL」アイコンをを選択する。左右ボタンを押すことで、-3EVから+3EVの範囲での調光が可能。1/3段ステップで指定できる。最近のカメラなら、ボディ側での調光補正も可能だが、ストロボの十字ボタンを押すだけという手軽さも捨てがたい。
トップメニュー | AUTO | TTL |
Manual | Av | Multi |
ワイヤレスTTL制御も可能 | SettingではマイTTLやモデリング発光の有無などを設定できる |
本体の角度に応じて表示が縦横に切り替わる |
もちろんフラッグシップモデルらしく、マニュアル発光(1/1〜1/128)、外部自動調光(F1.4〜F16)、マルチ発光(1/8〜1/128)も可能。いずれも操作は十字ボタンで行なう方式で、大変わかりやすい。この手の設定はカメラ側の液晶モニターで行なう流れも出てきているが、本機のようにストロボ側のディスプレイをグラフィカルにするやり方もひとつの手だろう。いずれはタッチパネル操作も取り入れて欲しいところだ。
機能面でのトピックも多い。例えば、キヤノンおよびニコンのワイヤレスTTL制御システムに対応。マスター、またはリモートに指定できる。1〜4chのチャンネル設定や、A〜Cまでのグループ分けも可能だ。もちろん、一般的なスレーブ発光も行なえる。
またバウンス発光時には、本体前面のサブ発光部をキャッチライトとして使用できる。ガイドナンバーは12。1EVステップでの光量調整も行なえるなど、なかなか使いでのある機能となっている。
バウンス発光に対応 | ガイドナンバー12のサブ発光部を搭載 |
Di466から受け継いだ「マイTTL設定」は、TTLの調光レベルを好みの発光量にシフトしておける機能。また、電池はマガジン収納式となっており、別売の「バッテリーマガジンBM-01」(本体にも1つ付属)もアイデア品で、BM-01に電池をセットしておけば、素早い電池交換が可能になる仕組みだ。着脱はスムーズ。ニッシンが呼ぶ「クイックローディングシステム」という名称は妥当なものだと感じる。
照射角は24〜105mm以上(35mm判焦点距離)。自動ズーム機能も搭載。ワイドパネル、キャッチパネルもちゃんと装備している。
電源には単3電池4本を使用し、ニッケル水素充電池(エネループにも対応)、アルカリ乾電池、リチウム電池などをサポート。フル発光時のチャージ速度は約5.5秒、発光回数は約150回(ともにアルカリ乾電池使用時)。チャージ音がほとんどしないので、静かな場所での撮影に向きそうだ。外部電源も使用できる。
バッテリーマガジンによる「クイックローディングシステム」を採用する | バッテリーマガジンのBM-01。電池をセットしておけば、素早い電池交換が可能だ |
シューへの取付けはネジ留め式 |
キヤノン580EX IIが5万7,000円前後、ニコンSB-900が6万1,000円前後で販売されていることを考えると、コストパフォーマンスは大変高い。機能面に着目すればかなりお買い得なアイテムといえるだろう。発表会取材で何度も使っているが、調光精度にも問題は感じない。
ただし、シューへの装着方法がネジ留め式なのは少し古めかしいし、肝心の液晶画面の視野角が狭く、操作の反応速度が少し遅いのも残念な部分だ。バウンスヘッドの動きが固く、操作に力がいるところも気になった。いずれも割り切れば我慢できるレベルであり、価格を考えれば妥協できないこともない。
なおニッシンジャパンでは、Di866を購入して応募したユーザーの先着200名に対し、バッテリーマガジンBM-01を1つプレゼントするキャンペーンを行なっている。申込期間は11月30日まで。
左がDi866プロ、右がニコンSB-900。大きさはあまり変わらない。ボディはともにD700 |
2009/10/8 00:00