拝見!プロのカメラバッグ

石黒美穂子さん:軽量な装備に合う意外なバッグとは

手提げカゴに一眼レフ!

 プロのカメラバッグを紹介する本コーナー。今回は雑誌などで活躍している石黒美穂子氏のバッグに迫る。

石黒美穂子氏。この手提げカゴも立派な“カメラバッグ”だ

 ライフスタイル系雑誌や女性誌を中心にインテリア、料理、旅行といった分野の撮影を手がけるフリーランス写真家の石黒氏。そのカメラバッグは我々が想像するものとはちょっと違うものだった――。

 石黒氏は名古屋市の出身。名古屋市立工芸高校のインテリア科で家具の製作などを学んだ。高校までは特に写真に関心があったわけではなかったが、卒業後に入社した印刷会社で暗室の仕事を学ぶうちに写真に興味を持った。音楽が好きだった石黒氏は、その頃から好きなミュージシャンのライブなどの撮影をプライベートで行うようになる。

石黒氏の作品。ライフワークにしている魚眼レンズによる自撮り

 「そうしているうちに、写真を仕事にできたらいいなと思って上京したのです。そしてスタジオエビスで1年間アシスタントを経験しました。ちょうどバブル期で、女性誌の創刊ラッシュもあってハードな頃でした。スタジオ時代のバッグはゼロハリバートンですね。645判のカメラが3セット、ポラバック、35mmカメラまで含めるとゼロハリが3つという時もありました」

現在メインで使用しているf.64とロープロの小型バッグ
カメラはニコンのDX機で揃えている。「D7100は高感度の画質がいいので助かっています」。シグマの魚眼レンズのほか、パノラマ写真を撮るためのブラケットも。充電器も常に持ち歩くとのこと。レンズは純正にこだわらず、タムロンの高倍率ズームも愛用している

 スタジオエビスを退職した後、ロンドンに1年間滞在し、作品撮影を行った。帰国してからはフリーランスとして活動している。

 フリーになってデジタルカメラを使うようになるとバッグはだんだん小さなものになっていった。現在はデジタルカメラオンリーとのことで、ロープロとf.64の小柄なバッグを使用している。

 これらのバッグは、以前に撮影小物を運ぶのに使っていたもの。どちらも10年来使っているそうだ。今はD300とD7100を収めているのだが、仕切りをまったく使わずにそのまま入れるのが使いやすくなるポイントだという。「男性は仕切りをきっちり使う方が多いと思いますが、私は仕切らずに入れる方がいいですね」。

バッグの仕切りを外して使うのが石黒流
機材を入れたところ。キルティングポーチも活用する

 そして、「ロケの時はハンドバッグに機材を入れることもあるんです」と見せてくれたのが、買い物などで使われる手提げカゴ。これで現場に行くと意外性で驚かれることもあるという。石黒氏の撮影スタイルは多くの場合1人で行う身軽なスタイルで、アシスタントは用意しないとのこと。

なんと手提げカゴをカメラバックとして使うという。確かに出し入れはしやすそうだ
四角いので見た目よりも収納力はある

 石黒氏は自らを「ギョギョリスト」と呼び、ライフワークとして魚眼レンズを使った撮影も多く行っている。石黒氏の場合は、自分もフレームに収まる自撮りになっているのがポイントだ。

 最近では、魚眼レンズで撮影するインタラクティブな360度パノラマ(QuickTime VR)にも積極的に挑戦し、アーティストのイベント会場などの撮影も行っている。そのため、機材の中にはパノラマ撮影用のブラケットや水準器が含まれている。

機材を包むキルティングポーチの内側にレンズ拭きを安全ピンで付けるというアイデアを教えてくれた。「レンズ拭きは無くしやすいのでこうしておくと便利です」

 プロのカメラバッグというと“大きなバッグに機材がぎっしり”というのを想像するが、今回紹介した石黒氏のように軽量の機材でフットワークを活かすのも機材の使いこなしの1つだと感じた。

 また、手提げカゴを常用するなんて、いかにも女性らしい発想だと感心した。カメラバッグには見えないというメリットもあり、例えばカメラ女子の皆さんなどは、参考にしてみてはいかがだろうか。

石黒氏の作品が見られるWebサイト

「ギョギョリスト&パノラマニア ダイアリー」
http://mishiguro1964.blog.fc2.com
360度パノラマとギョギョギョ自撮りの両方が楽しめるブログ

「カフェグローブ 週末ベーカリー」
http://www.cafeglobe.com/author/ishiguro_m/index.html
パン愛好家として様々な街のベーカリーを取材した連載記事

本誌:武石修