Canon EFレンズ 写真家インタビュー

絞り開放から高画質。広角11mmは新しい世界を見せてくれる

星景写真:中西昭雄 with EF11-24mm F4L USM

オーストラリア・ケアンズの郊外、廃線となった踏み切りで、南十字星が沈むタイミングを見計らって15分間の露光をおこなった。さそり座の天の川はまだ天高く、超広角レンズが程よく画面に収めてくれた。
キヤノンEOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 14mm / マニュアル露出(F5.6、15分) / ISO 800
この秋、夜明け近くに東の空から昇ってきたしし座には、金星、火星、そして木星と3つの惑星が華を添え、とても賑やかな星空だった。焦点距離16mmでは、かなり余裕をもってしし座の全景を収めることができた
キヤノンEOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 16mm /マニュアル露出(F5.6、15秒) / ISO 3200 / 天体写真用編集ソフトで補正
夜明け間近、南アルプスの上空には冬の星座たちが輝いていた。絞り開放でも画面周辺まで星像がよいと、赤道儀を使わなくても撮影が可能になる。
キヤノンEOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 14mm /マニュアル露出(F4、20秒) / ISO 6400
冬の星座には明るい一等星が多く、さらには淡いながらも天の川がその中を横切るため、とても見ごたえのある夜空となる。焦点距離を14mmにセットし、そんな冬の星座たちを一毛打尽にしてみた。
キヤノンEOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 14mm /マニュアル露出(F4、20秒) / ISO 6400 / 天体写真用編集ソフトで補正

好評のうちに終了したインタビュー連載「Canon EF LENS 写真家7人のSEVEN SENSES」。撮影のプロによる作品は、いかがだっただろうか。

引き続き今回からもさまざまな撮影ジャンルのプロ写真家にインタビューを試みながら、プロの作品とEFレンズの実力、撮影ジャンルの魅力などをお伝えしたい。

初回は天体写真家の中西昭雄さんに、「EF11-24mm F4L USM」を使って星景作品を撮影していただいた。他にないスペックを持つ新感覚の超広角ズームレンズとして注目のこのレンズ、中西さんの感想はいかに?

聞き手:笠井里香

EF11-24mm F4L USM

天文少年が気づけばプロ作家に

−−写真を始めたきっかけ、また星景の撮影を始めたきっかけを教えて下さい。

小学生のころから写真は好きでした。「いま目の前にある光景とまったく同じシーンはないんだ」という思いがあり、それを写真に残したいと、父の持っていたカメラでスナップ撮影をしていました。

星に興味を持つようになったのはその後で、小学校5年生のときのことです。理科の授業で星の動きについて学んだとき、先生が当時渋谷にあったプラネタリウムの存在を教えてくれたんです。後日、父にそのプラネタリウムに連れて行ってもらい、いざ投影が始まると、そこには満天の星がありました。「星ってこんなにたくさんあるんだ!」ととても感動しまして。それを機に、星についての本を読むようになりました。

中西昭雄さん。有限会社ナカニシイメージラボ代表取締役。微弱光撮影装置のエンジニアであり、日本で数少ないプロ天体写真家。東京オリンピックの年に生まれ。光学と印刷の町、東京都板橋区で育つ。

月刊天文ガイドという雑誌があるんですが、小学生の私にはとても難しい内容だったんです。でも、その本に掲載されているさまざまな広告のなかに、望遠鏡の広告がありましてね、それがとても欲しかったんです。

中学生になると、理科クラブで年に何度か学校に泊まり込みで望遠鏡を使った天体観測をやってくれて、先生がとても熱心な方で、天体観測で撮った写真を理科室を使って現像、プリントすることも教えてくれました。

その後もずっと趣味で天体観測や星空の撮影を続けていて、大学生のときに月刊天体ガイドの編集部に行ってみたんです。せっかく来たんだからと歓迎してもらい、編集スタッフという感じのアルバイトをするようになりました。イベント取材などの小さな記事でしたが、写真も撮りましたね。

それと同時に、コマーシャルフォトグラファーのアシスタントのアルバイトもしていました。土日には、ブライダルの撮影もやっていましたから、学生なのにとても忙しかったですね。

そうして稼いだアルバイト代で、機材を揃えていったのです。

大学を卒業するときに、写真を撮ることを仕事にするか、就職するかでとても迷い、結局就職しました。設計製図用のマシンを作っている会社で、10年間働きました。

バブルが崩壊したのをきっかけに、会社で希望退職者を募る動きがあり、いい意味での潮時かなと考え、好きなことでやっていってみようと会社を辞め、退社後1年半くらいで有限会社ナカニシイメージラボを設立し、現在に至ります。天体撮影だけでなく、天体などの微弱な光を撮影装置を作って販売する会社で、営業から何から全部自分でやっています。

同時に、プロの天体写真家としても活動を続けています。

ノイズの少なさからキヤノンを選んだ

−−通常撮影をする際の機材について教えて下さい。

望遠鏡を使って撮影すると1,000mm相当以上の超望遠撮影になりますが、いわゆる星景写真では広角レンズを多用します。広角レンズは、EF24mm F1.4L II USMが私にとっての標準レンズです。EF16-35mm F4L IS USMやEF8-15mm F4L フィッシュアイ USMも使用します。

ボディはEOS 6DとEOS 5Dsを使用しています。EOS 6Dは軽くて手頃な価格帯ですし、高感度画質もよいです。EOS 5Ds RではなくEOS 5Dsなのは、星というのは小さな点で写るため偽色が出やすく、ローパスフィルターが必要だからです。

−−星景撮影でのセオリーというのはあるのでしょうか? カメラの設定などを含めて教えて下さい。

撮影はすべてマニュアルで行います。ピントはライブビューで拡大表示しながら確認しますね。

星景撮影でのベーシックな露出設定は、まず天の川がきれいに見えるような場所にいるという前提で、ISO400、絞りF2.8、シャッタースピードは4分です。感度がISO1600まで上げられるようであればそれが1分で済みます。私は状況によって、ISO6400まで感度を上げて撮影することがあります。

ダークノイズは露出時間が長いほど、また気温が高いほど、ISO感度が高いほど多く出てしまうんです。ですから、撮影は冬の方が向いています。天体撮影、星景撮影では、とにかくノイズとの戦いなんです。露光時間が長くなればなるほどノイズも増えますから、新しいカメラの方がノイズも少なくなっていますし、キヤノンのカメラはノイズが少なく、最終的にキヤノンを選んだという経緯があります。

「長秒時露光のノイズ低減」は大抵はONにしています。これは露光後に、露光した時間と同じ分だけシャッターを閉じてノイズを撮影し、撮影画像からノイズを減算してくれるものなのですが、ONにしないで撮影したものと比較するとはるかにきれいになり、はっきりと効果があることが分かります。

夜が更けると共に、冬の夜空のを彩った星座たちは西の空に傾いてゆく。背景の山々は南アルプス、そして前景は麓の田んぼや民家の灯りだ。超広角ズームレンズならではのダイナミックな画面構成がマッチする。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM / 14mm / マニュアル露出(F4、20秒) / ISO 6400

−−カメラ、レンズに求める性能をお聞かせください。どういった基準で機材を選んでいるのでしょうか。

カメラ側の性能としては、連写はしませんから、そういった機能は必要ありません。高感度のよいものはありがたいですね。

また、星景撮影では、できるだけ明るいレンズというのが重宝します。やはり暗いなかでの撮影になりますから、できるだけ明るいレンズの方がファインダーを覗いた際にもよく見えるんです。ピント合わせ、構図も作りやすいですからね。また、周辺まで像がよいレンズを選んでいます。

−−撮影時は、RAW+JPEGでデータを残していますか?

比較明合成をする場合は枚数が多くなるため、基本的にはJPEGのみです。ただ、星景写真や星空写真の場合には、保険の意味でRAWを同時記録することもありますが、できるだけRAWデータに頼らないようにきちんと設定をしたうえで撮影していますね。

シャープで逆光にも強く、コマ収差も抑えられている

−−今回、EF11-24mm F4L USMを使っていただきました。撮影していてどんなところが気に入られましたか?

特殊な画角のズームレンズなのに、画質が良くて驚きました。約5,060万画素のEOS 5Dsの力も引き出せるレンズだと思います。絞り開放での画質もいいですね。この画角でよくこの性能を出せたなと感心します。ピント合わせもマニュアルでの操作になりますが、トルク感もちょうどよく、操作もしやすいですよ。

防塵防滴なのもうれしい点です。湿度の高い夜には結露を防ぐため、レンズにヒーターを付けて撮影をします。最近ではモバイルバッテリーから接続してヒーターをつけるものが出回っていて、皆さんよく使っていますね。それでも夜露でびっしょりになることもありますから、防塵防滴なのはとても重宝します。

また、レンズが曇ってしまったとき、レンズには良くないなとわかっていながらも、撮影前に前玉を直接拭いてしまうことがあります。EF11-24mm F4L USMはフッ素コーティングされていますから、水滴がつきにくく、静電気を帯びにくいのでホコリなどをあまり寄せ付けないんです。その点でも星景撮影には向いていると思いますね。

−−コマ収差は気になりますか?

天体写真というのは収差に関してはとてもシビアなんです。というのも、星の軌跡を収める場合は別ですが、星は点として写っている状態が理想です。コマ収差が大きいと星が放射状に流れることが多く、尾を引いているように写ってしまうんです。

EF11-24mm F4L USMは、超広角でこれだけレンズ前玉が大きいにも関わらず、コマ収差がかなり抑えられているなと感じましたね。コマ収差に限らず、球面収差や色収差も含め、さまざまな収差が良く抑えられています。ワイド端11mmでの撮影や、絞り開放での撮影でも収差が気にならないレベルになっていると思いますよ。もちろん絞ればさらによくなります。

ソフトフィルターを用いると明るい星がにじんで写り、星座が分かりやすくなる。ただし、周辺像が若干悪化することを知っておこう。
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM /11mm /マニュアル露出(F5.6、900秒 )/ ISO 640
フィルターポケットのサイズに合わせてシート状のソフトフィルターをカットする。後玉にキズを付けないように注意しながら装着しよう。

−−11-24mmというかつてないズーム域のレンズですが、焦点距離域についてはいかがでしょうか?

とても広い画角で撮影できるのは魅力です。これまでならあきらめていたところまで入れられますからね。いままでであれば魚眼レンズを使用するような場面でも、このレンズなら撮影できます。しかも魚眼レンズと違い、地平線が歪まないというのはとてもいいですね。ピシっと水平を出して撮影すれば、目に写る光景がそのまま写し込めるわけですから。

特に下から見上げたような光景にはとても合うと思いました。たとえば、山のなかで空を見上げたとき、たくさんの木立の隙間から見える星空、そんな光景をそのまま収めることができるんです。

木立の枝葉も仔細に写しながら、その奥で輝く星たちもしっかりと再現してくれて、これまでの星景写真とはひと味違った表現ができるようになると思いますね。

満月の夜、カラマツ林の中から夜空を見上げる。月明かりは強 烈だが、シャープなレンズと冬の透明度の良さに助けられ、暗 い星まで写し出すことができた
キヤノン EOS 5Ds / EF11-24mm F4L USM /11mm /マニュアル露出(F4、8秒 )/ ISO 1600

−−月を入れて撮影するような、いわゆる逆光の条件での画質はいかがでしたか?

星景撮影は常に逆光といえばそうなのですが、実は月が非常に強烈な逆光になります。実際にほぼ満月の夜に月を画面内に入れて撮影したのですが、わずかなゴーストが見られただけで、とてもいい結果が得られました。超広角にも関わらず、こういったあまりよくない条件下でもフレアやゴーストの心配をせずに撮影することができます。光学設計の優秀さはもちろん、コーティング技術の素晴らしさが、この描写力を支えていると思いますね。

iPad用アプリで情報を得ることも

−−これから星空の撮影を始めたい初心者に、アドバイスをお願いします。

まずは北極星の位置が分かれば方角が分かります。また、基本的な星の動きは知っていた方が撮影もしやすいと思いますね。

また、これからの季節ならオリオン座など、季節の代表的な星座は知っているといいですね。ときどき、とてもいい写真なのに、星座のいちばん端の星が切れていたりするのを見ると、とてももったいないと思うんです。

もちろん、星景写真ですから、地形も含めて全体の構図を考えられているんだと思いますが、せっかく星を入れるなら、星座にも気を配ってみると面白いと思いますよ。

ピント合わせも最初は難しいかもしれませんが、街の灯りや月など、まずは遠くにあって明るいものにざっくり合わせた後、微調整をするとうまくいきます。

日中とは違い、暗いなかで長時間露光を行なうので、ほんの少しの風でもブレに繋がってしまいます。できるだけしっかりとした三脚があるといいですね。そして、三脚もできるだけ低くしておくと安定します。カメラを三脚に取り付けたら、風にあおられないよう、ストラップも外すか三脚にしっかりと巻き付けるなど工夫が必要です。

乾燥していて気温が低く、晴れているときが撮影に向いています。これからの冬の時期には、星景撮影にぴったりの時期です。機材が結露してしまわないよう、カイロなどの小物の準備も大切ですね。

また、現在ではスマートフォンやタブレット向けに、星の位置や動きの分かる便利なアプリケーションがいろいろラインナップされています。キヤノンにもiPad用の「SHOOTING STARS」というアプリがあります。そういったものを上手に利用して、その季節、その時期ならではの星景写真を撮って欲しいですね。

iPad用アプリ「SHOOTING STARS」。星の位置や動きを確認できるので、星空撮影で便利。

月刊誌「デジタルカメラマガジン」でも連動企画「Canon EF LENS 写真家7人のSEVEN SENSES」が連載中です。今回紹介した中西昭雄さんをはじめ、EFレンズを知り尽くした写真家によるレンズテクニックが収録されています。

笠井里香

出版社の編集者として、メカニカルカメラのムック編集、ライティング、『旅するカメラ(渡部さとる)』、『旅、ときどきライカ(稲垣徳文)』など、多数の書籍編集に携わる。2008年、出産と同時に独立。現在は、カメラ関連の雑誌、書籍、ウェブサイトを中心に編集、ライティング、撮影を務める。渡部さとる氏のworkshop2B/42期、平間至氏のフォトスタンダード/1期に参加。