メーカー直撃インタビュー:伊達淳一の技術のフカボリ!

キヤノンEOS-1D X Mark II

旗艦モデルとしての意地 究極のメカ機構とAF性能

EOS-1D X Mark II
発売予定日:2016年4月下旬/予想実勢価格:税別73万円前後
イメージセンサー:有効約2,020万画素35mm判フルサイズCMOSセンサー/ISO感度:ISO 100~51200(ISO 50~409600まで拡張)/ファインダー視野率:約100%/シャッター速度:1/8,000~30秒、バルブ/連続撮影速度:最高約14コマ/秒(ファインダー撮影時)/背面液晶モニター:ワイド3.2型TFT、約162万ドット/AF:61点測距(うち、クロスセンサーは41点)、EV-3~18(ISO 100、常温)/動画:最高4K、60p/バッテリー:LP-E19、LP-E4N、LP-E4/大きさ:約158(W)×167.6×(H)×82.6(D)mm/重さ:約1,530g(メモリーカード、バッテリー含む)

約14コマ/秒でAF、AE追従の高速連写ができる35mmフルサイズ一眼レフで、ミラーアップ(ライブビュー)時には約16コマ/秒を達成。36万画素RGB+IR測光センサーの採用で、色や形で被写体を追うEOS iTR AFの追尾性能も向上しているほか、61点AFすべてがF8測距に対応するので、エクステンダー使用時でも多点AFで撮影できる。

常用最高感度はISO 51200で従来のEOS-1D Xと同じだが、画素数が約2,020万画素に増えており、実質的な高感度画質はわずかに向上。記録メディアはCFとCFast。フルサイズEOS初となるデュアルピクセルCMOS AFでライブビューAFも高速化。60pという業務用シネカメラも顔負けの高フレームレートの4K撮影にも対応しており、動きのあるシーンも精細感のある4K撮影ができるのも特徴だ。

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本インタビューは「デジタルカメラマガジン2016年5月号」(4月20日発売、インプレス刊)に掲載されたものに、誌面の都合で掲載できなかった内容を加筆して収録したものです。(聞き手:伊達淳一、本文中敬称略)
(写真左から)
服部光明氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部

阪口武士氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部

正村友也氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二事業部

清田真人氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部

大門照幸氏
キヤノン株式会社 イメージコミュニケーション事業本部 ICP第二開発センター


“快速”“快適”“高画質”の3本柱をバランス良く向上させる

――今年(2016年)はリオデジャネイロオリンピックが開催される年ですが、やはりオリンピックに合わせてEOS-1D X Mark IIを開発したのでしょうか?

正村:フラッグシップ機は高い性能を達成するため、開発に長い期間を要します。EOS-1D X Mark IIが前機種から十分な進化を遂げるために必要な期間を鑑みた結果、今回リオデジャネイロオリンピック前の発表、発売となりました。

――EOS-1D Xから EOS-1D X Mark IIへの進化のポイントとは? これまでのEOS-1D Xに対し、どのような要望が寄せられ、それに対して、EOS-1D X Mark IIでは、どのような機能強化や改善が図られているのでしょうか?

正村:従来のEOS-1D Xは、AFや連写性能、画質で高い評価をいただいていますが、もっと高画質にしてほしい、もっとAF性能を高めてほしい、あるいはもっと連写スピードを速くしてほしい、といった要望は継続していただいていました。

そうした要望に応えるべく、フラッグシップモデルとしてさらなる高性能化を図り、EOSの基本コンセプトである“快速”“快適”“高画質”という3本の柱を高い次元で実現させたカメラが、EOS-1D X Mark IIです。

具体的な進化点としては、画素数を約1,810万画素から約2,020万画素に増やし、静止画の画質向上を図りつつ、連続撮影速度は約12コマ/秒から約14コマ/秒と、さらなる高速化を実現しています。AFの測距点数は61点と同じですが、測距エリアを上下に拡大し、-3EVの低輝度への対応や、エクステンダーIII型使用で開放F8となる一部のレンズにおいても61点すべての測距点が使えるようになりました。

測光センサーには、EOS-1D Xの約3倍の画素数を備えた“36万画素RGB+IR測光センサー”を採用し、センサーから得られた情報を専用のDIGIC 6で処理することで、被写体の色や形を認識し、AEやAF、オートホワイトバランス調整などを最適に制御する“EOSシーン解析システム”の能力も向上しています。特に、これまでよりも小さな顔でも検出できるので、自動選択AFやゾーンAFで顔にピントが合う率が高くなっています。

36万画素RGB+IR測光センサー:測光センサーをカラー化&高画素化することで、ファインダー撮影時に被写体の色や形を詳細に検知でき、それをAFやAEの制御に活用。近赤外光も検知することで日陰の緑の再現性も高い。フリッカー検知にも利用される

また、測光センサーで人工光源の明滅周期を検出することで、フリッカーを伴う光源下でもコマ間の露出のバラツキや色ムラを抑えた撮影ができる“フリッカーレス撮影”も搭載しています。

細かいところでは、手の小さな人でも握りやすいようにグリップの形状を見直したり、EOS-1D Mark IV以前と同様、ファインダー内の選択測距点を赤く光るようにかつての仕様に戻すなど、“快適”の部分にもこだわっています。

――EOS-1D X、EOS-1D X Mark IIのユーザーとしては、まず報道やスポーツカメラマンが挙げられると思いますが、それ以外ではどのようなカスタマー像を想像しているのでしょう?

正村:EOS-1系は非常に幅広いジャンルをカバーできるカメラですので、こちらとしては何か特定のジャンルに限定して開発しているわけではありません。報道やスポーツのイメージが強いとは思いますが、実際にはEOS-1系はモータースポーツや野鳥などワイルドライフの撮影、ポートレート・ウエディングなど幅広い撮影分野に使われております。

――EOS-1D X以前は、究極の高画質を目指した“EOS-1Ds”系と、極限の高速連写を追求した“EOS-1D”系と、2系統のフラッグシップモデルが存在しました。それをEOS-1D Xで統合したわけですが、現実的には、高画質、とりわけ高解像度を追求したモデルは、EOS 5D系にその役割が移ってきたように見えます。

正村:確かに、画素数や解像度という点では、約5,060万画素のEOS5Ds/5Ds Rがその役割を担っているのは間違いありませんが、画質というのは画素数だけでは語れない部分もあります。高解像度描写ではEOS 5Dsに譲りますが、総合的な画質ではEOS-1D X Mark IIがトップを目指しているのは間違いありません。

清田:高感度での画質ですね。画素数を抑えているので、高感度での画質はナンバーワンです。


バネからモーター駆動になって細やかなミラー制御が可能に

――EOS-1D X Mark IIの約14コマ/秒というコマ速は、どういう経緯で決まったのでしょう?

正村:フラッグシップモデルの歴史は、連写の高速化の歴史でもあります。2001年12月発売のEOS-1Dは約8コマ/秒でしたが、2004年4月発売のEOS-1D Mark IIで約8.5コマ/秒、2007年5月発売のEOS-1D Mark IIIで約10コマ/秒、そして、2012年6月発売のEOS-1D Xでは約12コマ/秒と、連続撮影速度を向上させてきました。

“もうこれ以上コマ速を高速にする必要はないよ”と仰っていたお客さまも、さらに高速化されたカメラが発売され、そのカメラをご使用になられると、“やっぱりコマ速が速い方が良いね”という声をよく頂戴します。ユーザーの普遍的な要望、欲望である、瞬間をとらえるためには連写性能が高いに越したことはありません。

また、決定的瞬間をとらえるということだけではなく、良い写真をより多く入手できるという点で仕事の生産性も上がるということで、プロからもコマ速が速いというのはメリットがあると評価されています。

清田:EOS-1D Xでコマ速が約10コマ/秒から約12コマ/秒と速くなったときに、プロの方々も含め皆さんから、すごく進化したね、ととらえていただけたので、我々としてもコマ速が変わらないよりは少しでも高速化できたらいいな、と考えていました。

目標としてもっと限りなく高いところも検討はしてみましたが、振動であるとか、消費電力であるとか、ファインダーの見えなどを考えて、なんとか約14コマ/秒を実現すべく開発に取り組みました。

――とはいえ、EOS-1D Xの約12コマ/秒というのは、一眼レフとしてはまだまだトップレベルのコマ速です。ミラー駆動を伴う一眼レフでこの約12コマ/秒から約14コマ/秒に連写スピードを高速化させるのは、非常に大変だったと思いますが、約14コマ/秒の高速化を実現できた技術的ポイントとは何でしょう?

清田:いろいろありますが、1つはミラーを中心とするメカ設計の進化ですね。EOS-1D Xでは、サブミラーに対するバランサー機構を初めて採用しましたが、本機ではそれをさらに進化させて、主ミラー、サブミラーをうまく止められるメカ機構として、モーターとカムを組み合わせて直接ミラーの動きを制御するような機構を採用しています。

EOS-1D X Mark IIと従来モデルのミラー機構の違い
EOS-1D Xはバネの瞬発力でミラーを高速駆動していたが、ミラーの減速が難しく、ロック機構やバランサーでバウンドを抑制。EOS-1D X Mark IIは、モーターとカムでミラーを直接制御し、ミラーのムダな動きをなくして高速化

すでに、EOS 7D Mark IIで同様の機構を採り入れていますが、フルサイズ、しかも、フラッグシップモデルでは求められる性能、耐久性が違います。そのため、ゼロから設計し直して、試作も何回も繰り返して、いろいろなものにトライしながらバランス良く仕上げられたかな、と。

また、ミラーまわりのメカだけでなく、AF、AEがきちんと協調して動作するかとか、電磁絞りが連写に追従しきれないという問題に対しても、最新のプロが使うようなレンズであれば開放から3段まではきちんと約14コマ/秒の連写に追従するように、内部のシステムをゼロから見直しています。そういったすべてのバランスが取れる現時点で最速のコマ速が約14コマ/秒でした。

――物理的にミラーや絞りやシャッターを1秒間に14回も往復運動させなければならないので、可動部が少ないミラーレスカメラに比べると、コマ速を上げるのも大変ですよね。

ところで、最近は、モーターとカム制御によるミラー駆動がトレンドになっていますが、これまでのフラッグシップモデルは瞬発力を重視して、バネの力を利用し、ミラーをストッパーで掴んで力技で動きを止める手法がどちらかといえば主流でした。なぜ、モーターとカムによるミラー制御がEOS-1D X Mark IIにも採用できるようになったのでしょう?

清田:先ほどのミラー関連に加えて、モーターの進化があります。形はほとんど変わっていませんが、中身は進化していて、パワーがあり、応答性も良いコアレスモーターが開発できたことが大きいと思います。

EOS-1D X Mark IIの約14コマ/秒という高速連写に耐えるには、より高い耐久性も求められますし、発熱の問題もありますので、モーター自体もEOS-1D Xから改良しています。

それと、いまミラーがどういう位相(位置や状態)にいるかを非接触のセンサーで読み取ってミラーの状態に応じたモーター制御を行えるようにしています。これにより、ミラーのアップ、ダウンに対する加速や減速を適切にコントロールできるようになりました。
――ミラーの動きというのは、カム形状で決まってくるのでは? なぜ、ミラーの状態を細かく知る必要があるのでしょう?

清田:ミラーの動きはカム形状だけでなく、連動するリンク機構によって決まるような構造になっています。そして、ミラーの位相を細かく知ることで、高速連写時のミラーの停止制御をより細かく行えるようにしています。

また、EOS-1D X Mark IIから「ソフトモード」というレリーズ音を低減する機能が搭載されていますが、これまでのバネによるミラー駆動だと、ゆっくりとミラーアップできないので緩やかに静止させることが難しかったのですが、モーターとカムによるダイレクト制御であれば、ミラーの位相を見ながらモーターに流す電力をコントロールすることで、通常よりもミラーをゆっくりと動かし、カメラの作動音を小さくすることができます。

――なるほど。モーターに対し、いつ加減速をすれば良いか、そのタイミングを詳細に見極めるために、ミラーの位相を検出するセンサーを設けているわけですね。

清田:バネ駆動だとできなかったことが、モーターによるダイレクト駆動だとよりソフトモードを作りやすくなっている面はあります。

――バネの力を利用してミラー駆動するEOS-1D Xと、モーターによるダイレクト制御を全面的に採用したEOS-1D X Mark IIとでは、ミラーの挙動というか、動きにどういう違いがあるのでしょうか? 瞬発力はバネの方がありそうですが?

清田:動き出しに関してはモーターの方が速いですね。バネ駆動は確かに瞬発力はありますが、(モーターに比べると)初動が少し遅いので、ミラーアップ開始時はモーター駆動が速く、途中でバネ駆動が追い抜いていく感じです。

――バネの力を解放するロック機構を解除させるのに、ほんの少しだけ時間がかかるわけですね?

清田:そうですね。ただ、ミラーアップが完了して静止するまでの時間はEOS-1D X Mark IIの方が短くなっています。バネ駆動だと減速させるのも難しく、ミラーバウンドが収まるまで時間がかかります。その点、モーターによるダイレクト制御であれば、ミラーアップ完了直前に適切にミラーを減速できるので、ミラーのバウンドを最小限に抑えられます。

――ミラーダウン時はどうですか?

清田:同じですね。EOS-1D Xはミラーアップもダウンもバネの力を利用していますので、ミラーダウンの速さは速いのですが、動き出しとミラーバウンドが収まる時間を考慮すると、モーターによるダイレクト制御を行っているEOS-1D X Mark IIの方が像消失時間は短くなっています。

像消失時間:シャッターレリーズ時にファインダー像が見えなくなる時間。一眼レフではミラーアップし始めてからシャッターが切れ、ミラーダウンしてミラーが完全に戻るまでの時間で、これが短いほど被写体の動きをとらえやすくなる

――像消失時間の具体的な数値を教えていただけますか?

清田:申し訳ありませんが、像消失時間については公表しておりません。なお、コマ速が約12コマ/秒から約14コマ/秒に高速化してもミラーがダウンしている時間はほぼ同じです。ここを短くしてしまうと、連写中のファインダーの見えや、AF測距に影響が出てしまいます。

そのため、ミラーアップする時間、ミラーダウンする時間をギュッと短くして、連写中にAFする時間やファインダーで被写体を確認できる視認性をしっかり確保させています。

――レリーズタイムラグは変わっていますか?

清田:EOS-1D Xと同じです。カスタムファンクションで最短のレリーズタイムラグに設定すれば、36m秒、デフォルトでは55m秒です。この55m秒というレリーズタイムラグは、初代のEOS-1からずっと踏襲されている数値です。


カメラ・レンズシステムの拡張で61点全点がF8測距に対応

――瞬間を写し止める機種だけに、世代が変わるごとに微妙にレリーズタイムラグが変化したのでは、撮影者の経験に基づいた勘が狂ってしまいます。そういう意味では、最速と継続の2つのレリーズタイムラグを選べるのは良いですね。

さて、次にAFについてお伺いします。測距エリアが上下方向に少し広がっていますが、測距点の数やレイアウトパターンは基本的にEOS-1D Xと同じですよね? 最近のAPS-C一眼レフやミラーレスカメラは、測距エリアが画面周辺まで広くカバーしているので、欲をいえば、もっと測距エリアが広くなってほしいのですが、今回、やはりフルサイズの一眼レフでは、これ以上、測距エリアを拡大させるのは難しいのでしょうか?

阪口:できるだけセンサー面を広げるような工夫を取り入れることで、上下方向に測距エリアを広げることができましたが、これ以上はカメラのサイズを大きくせずに対応することは非常に難しいです。

清田:サブミラーをもう少し大きくできないかと、AF担当からいわれていましたが、もうこれ以上、ミラーを大きくできるスペースの余地はありませんでした。そのため、EOS-1D Xのときよりもサブミラー周辺のギリギリの光束まで使うようにして、少しでも測距エリアを広げるようにしています。

EOS-1D X Mark IIのAF概念図
測距エリア全体を中央と左右の3ブロックに分け、それぞれのブロックの中心は捕捉性能の高いクロスセンサーを配置。とりわけ中央の縦5点は、縦横斜めのデュアルクロス測距が行えるので、特に高精度な測距が行える

――EOS-1D X Mark IIでは、EOS 7D Mark IIと同様、AFエリアモードに「ラージゾーンAF」が追加されていますが、ちょっと気になったのが、中央の測距ゾーンが縦に細長い点です。

画面中央に主要被写体を配置するのは日の丸構図と揶揄されますが、中央の測距点が最も高精度に測距できますし、動きの激しい被写体を確実にとらえるという点では、中央の測距ゾーンがもっと幅広な方が動く被写体をより確実にとらえ続けられると思うのですが、なぜ、このようなゾーン配置になっているのでしょう?

また、ゾーンをまたいで複数の測距点をグループ化することはできないのでしょうか?

阪口:高精度化のためにメガネレンズの形状やAFセンサーのレイアウトを最適化した結果、中央のブロックと左右のブロックという分離した配置になっています。

ブロックをまたぐ形で複数の測距点を束ねられないか、という点については、中央のブロックに隣接する左右のブロックに属する測距点はシングル測距なので、被写体の捕捉力、追従性を考えたときに、クロス測距でない部分をまたいでしまうのはあまり好ましくないと考えています。

ラージゾーンAFの測距ゾーン
EOS-1D Xにはなかった「ラージゾーンAF」を追加。中央ブロックがやや縦長なのが惜しいが、被写体の動きが激しく従来の「ゾーンAF」では測距エリア内にとらえきれないときに重宝する

――測距点の数は61点とEOS-1D Xと同じですが、61点全点がF8測距に対応したのはスゴイですね。EOS-1D Xは発売当初は開放F8測距非対応でしたが、その後のファームウェアアップデートで中央1点と、領域拡大AFでは加えて上下左右4点がF8測距対応になりました。

今回、EOS-1D X Mark IIで、61点すべてで開放F8測距を実現できたポイントとは何ですか?

阪口:F8測距を要望されるお客さまが多かったので、EOS-1D Xのときは限定的な対応しかできませんでしたが、今回は開発当初からF8測距に対応させるということで取り組んできました。

カメラとレンズのシステムを拡張してF8の光束を最大限活用できるようにしたことで、F8で測距できるだけでなく、十分なピント精度が得られるようにしています。

ただ、レンズによっては、特性上、最外周は使えないとか、61点すべてを使えない組み合わせもあります。

F8測距対応:一眼レフの位相差AFセンサーはF5.6光束で測距を行うものが多いが、中央付近の測距点はF8光束まで測距できる機種が増えてきた。EOS-1D X Mark IIはカメラとレンズのシステムを拡張して61点すべてでF8測距を実現

正村:EF600mm F4L IS II USMやEF500mm F4L IS II USM、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMなど最新のレンズであれば、エクステンダーを使用して開放F8になる組み合わせでも、61点すべての測距点が使えます。ただし、エクステンダーはIII型をお使いください。

――EOS 80Dも45点すべてではありませんが、最外周を除いた27点でF8測距ができるようになり、EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMにエクステンダーX1.4 IIIを装着しても、画面中央以外でも測距できるので非常に快適に超望遠撮影ができるようになりました。

EOS 7D Mark IIユーザーとしては、正直うらやましく思うのですが、EOS 7D Mark IIでも全点とはいわないまでも、中央以外でF8測距できるようにファームウェアで対応するのは難しいのでしょうか? EOS 7Dがファームウェア2.0で大幅に性能アップしたように、EOS 7D Mark IIでも画期的なファームウェアアップデートの再来に期待したいところですが……。

阪口:EOS-1D X Mark IIで61点すべてでF8測距対応できたのは、先ほどご説明したように、カメラとレンズのシステムで成り立っているものなので、ファームウェアのアップデートでF8測距できる測距点を増やすのはちょっと敷居が高いですね。

――中央の測距点は-3EV対応ということですが、周辺の測距点はどれくらいの暗さまで対応していますか?

阪口:EV-3対応は中央1点で開放F2.8以上明るいレンズを組み合わせた場合です。周辺の測距点はそれよりも約1~2.5段ほど落ちます。

――低輝度に強くなっているのは、AFセンサーの世代が上がるにつれ、センサーの感度が高くなっているからですか?

阪口:AFセンサーの感度を高くしたのと、低輝度で一番精度に影響する要因はノイズですので、ノイズを大幅に減らすようなAFセンサーに作り替えています。

――AIサーボAFが「III+」に進化していますが、この「+」とはどういう意味ですか?

阪口:これまでのAIサーボAF IIIは、単調に近づいてくる、あるいは遠ざかる被写体に対しての追従性は非常に良かったのですが、急激に速度が変化したり、動く方向が急に変わってしまう被写体に対しては、追従が遅れるケースもありました。

こうした被写体の急激な速度変化、動く方向の変化に対しても、動体予測の追従性を高めたのがAIサーボAF III+です。例えば、モータースポーツのコーナーリングのように、高速で近づいてくる被写体がコーナーに突入し、走行する向きが変わり、遠ざかっていくシーンのように、急激に動く方向と速度が変化する場合でも、動体予測AFのアルゴリズムを見直し、被写体の動く方向や速度変化にすばやく対応できるようにしました。

――「AFカスタム設定ガイド」Case1~6までありますが、どの設定を選んでも、被写体の動きの変化に対する追従性が良くなっている、ということですか?

阪口:はい。どの設定でも、被写体の動きの軌跡を追いながら、そこから変化があったときに即時に追従できるようにアルゴリズムを改善しています。

――AIサーボAFの測距点自動選択で撮影するときは、撮影者が選択した開始測距点で撮りたい被写体をまずとらえてから、シャッターボタンを半押ししてAIサーボAFを開始する、というのが古くからのお約束でした。

しかし、EOS 7D Mark IIからだと思いますが、AIサーボAFの開始測距点に「自動」という選択肢が追加されました。この「自動」というのは、どのような優先順位で主要被写体と判断しているのでしょうか?

阪口:AIサーボAFの開始測距点を「自動」にした場合、ワンショットAFと同様、基本的には一番手前の被写体を主要被写体と判断して、測距点が選択されます。

ただ、EOS iTR AFを「する(顔優先)」設定時には、36万画素RGB+IRセンサーで画面内から人の顔を検出した場合、人の顔にピントが合うように測距点を選択するので、手前に別の被写体があっても、人の顔にピントが合いやすくなります。

撮りたい構図がほぼ決まっていて、ピントを合わせるべき被写体が画面のどの位置に来るのかが分かっている場合は、手動で開始測距点を選んで撮影した方が良いと思いますが、被写体の動きがランダムでとらえづらい、という場合は、「自動」を選ぶとできるだけ手前の被写体を優先してピントを合わせてくれます。

EOS iTR AF:36万画素RGB+IR測光センサーからの情報を使って、最初にピントを合わせた被写体の顔や色をカメラが認識、その情報を利用して被写体の動きを追いかけ、適切に測距点を自動的に切り替えたり、動体予測を行う

清田:EOS iTR AFの顔認識に関しては、測光センサーが36万画素と黎明期のデジタルカメラ並みの画素数なので、画面に占める顔の面積が少なくてもしっかり認識でき、人物が遠くにいる場合でもしっかりと自動で人物にピントを合わせてくれます。

――確かに、顔の大きさが1つの測距点を占めるか、占めないかくらいの大きさでも、的確に顔の位置にある測距点が自動的に選択され、被写体の動きに応じて測距点が自動的に切り替わるのは驚きました。

阪口:EOS-1D Xでは、ポイントでしか被写体を追尾していませんでしたが、EOS 7D Mark IIからEOS iTR AFの追尾アルゴリズムを見直し、エリアで被写体を追いかけるような形に変わっているので、特徴的な色があれば、その色の動きに追従して測距点が切り替わるように改良されています。

――野鳥のように、小さく動きも不規則ですばやい被写体は、選択した測距点にとらえ続けるのが難しく、ちょっと油断すると画面からフレームアウトしてしまうこともしばしばです。

測距点から被写体が外れれば、当然、カメラは被写体を探してAFサーチを行うので、本来、被写体がいる撮影距離とはまったく違った位置にフォーカスが移動してしまい、被写界深度が浅く、画角も狭い超望遠レンズでは、再び被写体をフレーム内にとらえるのも困難になってしまいます。

このように、測距点から被写体をロストしてしまい、AFサーチを一巡して被写体を見つけられないときは、レンズは最短撮影距離で停止するんですか? それとも無限遠ですか?

阪口:至近の方向に被写体をサーチしに行って、無限遠に戻って止まるようになっています。

――被写体にもよりますが、できれば被写体をロストする直前の撮影距離にフォーカスを戻してくれると、再び被写体をファインダーで見つけやすくなるケースもあると思うのですが……。

阪口:メニューの「AF測距不能時のレンズ動作」での選択で、サーチ駆動を行わない設定もできます。

――約14コマ/秒の高速連写を実現するために、ミラー駆動とAFシステム以外にも、ここの部分が重要という設計上のポイントはありますか?

清田:4K 60p対応を含め、連写を高速化するにあたって、イメージセンサーや画像処理エンジン等が熱を帯びてきますので、それを効率良く逃がすための放熱対策を徹底しています。

カタログ等にも載っていますが、画像処理エンジンが載った基板にヒートパイプを設置し、バッテリー室上部のアルミ合金に熱を逃がしています。ヒートパイプ以外にも金属ボディに内部の熱を逃がす導線をしっかり確保していますが、ここまでの熱対策はEOS-1D Xにはなかった部分です。

放熱を行うヒートパイプ
高速読み出しのため、イメージセンサーのすぐ後ろに画像処理エンジンを設置。熱源が2つ重なった形になっており、ここにヒートパイプを設けて、ボディの各所に効率的に熱を逃がす構造になっている

――まるでハイスペックのパソコンのマザーボードやグラフィックカード周りのようですね。ところで、最初に伺うのを忘れていましたが、画素数を約2,020万画素としたのはどういった経緯からでしょう?

大門:画素数(解像度)と高感度とコマ速の3つのバランスですね。画素数を上げると信号の読み出し速度が遅くなってコマ速を上げにくくなりますし、画素サイズも小さくなるので感度の向上も難しくなります。

――従来のEOS-1D Xが約1,800万画素だったので、微増に留まったという印象を受けます。

正村:画素数は現状維持で良いかというと、より画素数が欲しいというお客さまもいらっしゃいます。フラッグシップ機として、多くのユーザーニーズを満足させるためには、たとえ微増であっても高画素化できたことには意味があると我々は考えております。

――4K 60pの動画との親和性というか、4K 60pを処理するのに最適な画素数だったという要素はありませんか?

大門:4K動画とは無関係ですね。

――最高感度ですが、センサーや画像処理エンジンが新しくなって世代が上がると、画素数が増えても常用最高感度は1段ほどアップするケースが多いと思いますが、今回のEOS-1D X Mark IIの常用最高感度は従来と同じISO 51200と、意外に控えめなスペックですね。

服部:画素数が増えているので、原理的にはノイズ的に不利となります。それを補うため、センサーの構造を改良したり、最新の画像処理エンジンを使って高度な画像処理を行って、従来と同じISO 51200の常用最高感度を維持しています。

本当は1段最高感度を上げられれば良かったのですが、残念ながらそこまでのレベルには至りませんでした。ただし、EOS-1D XとEOS-1D X Mark IIで同じISO感度で撮り比べていただくと分かりますが、高ISOの場合同じISO感度でもEOS-1D X Mark IIの方が色ノイズが抑えられています。

――EOS-1D XのISO 25600はちょっと使うのを躊躇いましたが、EOS-1D X Mark IIのISO 25600は色ムラやバンディングノイズが少なく、シーンによっては十分使えると思いました。

ところで、フルサイズのEOSとしては初めて“デュアルピクセルCMOS AF”を採用していますが、デュアルピクセルCMOS AFの画素構造が画質や最高感度に影響を与えたということはないんでしょうか?

大門:確かに像面位相差AFを行うために画素が分離されていますが、この構造を採用することでS/N比が低下するといったことはありません。

バンディングノイズ:筋状にムラになったノイズのこと。全体のノイズレベルが低くても、筋状にノイズが生じると画像を縮小してもノイズが目立つので、できるだけノイズにムラがない方が総合的に上質な高感度画質となる

――APS-CとフルサイズでデュアルピクセルCMOS AF実現の難易度は異なりますか?

大門:フルサイズという大きなセンサーで、デュアルピクセル構造の画素性能を全領域で同じように保ちながら製造するのは、かなりハードルが高かったです。

デュアルピクセルCMOS AF:各画素が2つのフォトダイオードに分割された構造になっていて、すべての画素が“像面位相差AF”と“撮像”の機能を兼ね備えているのが特徴。画質に影響を与えることなく、像面位相差AFで高速なライブビューAFが行える

――そもそもデュアルピクセルCMOS AFを高速連写を得意とするフラッグシップモデルに採用した理由って何ですか?

正村:プロカメラマンでも静止画だけでなく動画を撮られる方が増えています。動画撮影でもAFが使用可能か否か、というのは使い勝手の面で重要な要素になってきます。

EOS-1D X Mark IIを使って動画を撮る場合、映画やドラマ撮影のように大人数でチームを組んで撮影するわけではなく、どちらかといえば、1人で写真も動画も撮影するケースを想定しております。

ピント合わせ専門のスタッフがいるわけでもありませんので、動画撮影でも自動でカメラがピントを合わせられると非常に便利です。そのような動画撮影でも高品位なピント合わせが自動でできるよう、デュアルピクセルCMOS AFを採用しました。

――デュアルピクセルCMOS AFといえば、同じく今春の新製品のEOS 80Dは、静止画のライブビューAF撮影でも最高約5コマ/秒のサーボAFが可能になりました。開発時期が違うので、1D X Mark IIに搭載されなかったのは仕方がないのかもしれませんが、今後、ファームウェアアップデートでライブビュー撮影時のサーボAFを実現できる可能性はあるのでしょうか?

阪口:やはりEOS-1系に載るサーボAFとなると、ファインダー撮影時のサーボAFと同程度の精度が求められると思っています。ファインダー撮影、ライブビュー撮影を切り換えたときに、違和感なく撮れることが求められると思っています。

今回、EOS-1D X Mark IIのデュアルピクセルCMOS AFが静止画撮影時のサーボAFに対応していないのは、そのレベルまで到達できなかったというのが一番大きな理由で、コマ速であるとか、(動体に対する)追従性であるとか、求められる性能、精度というのが異なります。

――中途半端な形では載せたくなかった、というわけですね。ちなみに、EOS 80DのライブビューAFですが、サーボAFで高速連写する際にどのタイミングで測距しているのか、非常に気になります。

阪口:連写の合間にライブビュー画像を挟み込んで測距を行い、動体予測制御を行っています。追従性を高めるためには挟み込むライブビュー画像は最新に更新しています。

――EOS-1D XはCFのデュアルスロットでしたが、EOS-1D X Mark IIは、CFast2.0とCFのデュアルスロットが採用されています。従来のCFカードや形状や大きさが似ていますが互換性はなく、メディアを取り違えて持って出たり、メディア交換の際に一瞬、どちらのスロットに入れれば良いのか混乱する懸念もあると思うのですが……。

正村:まず、CFastを採用した理由は高速化に対応するためです。EOS-1D Xでも、RAWあるいはRAW+JPEGで高速連写すると、連続撮影枚数があまり多くないよね、という声がありました。これはメモリカードへの書き込みがボトルネックになっているのですが、CFカードの高速化ではもう対応しきれない状況になっています。

そこで、CFast2.0という次世代の高速記録メディアを採用することで、連続撮影枚数を大幅に増やすことができました。約14コマ/秒の高速連写でRAW記録する場合、UDMA7対応のCFカードでは約73コマの連続撮影できますが、CFast2.0カードを使えば約170コマと大幅に連続撮影枚数を増やすことができます。

また、4K 60pの動画に対応するためにもCFast2.0の採用は不可欠です。CFカードですと最長で10秒程度しか4K 60p動画を撮ることができません。

次世代の高速記録メディアの中で、CFastカードを採用した理由は、弊社の業務用デジタルビデオカメラ XC10等ですでにCFastカードを採用しており、その実績からEOS-1D X Mark IIでもCFastを採用しています。

清田:なお、スロットの誤挿入対策はされていますので、それぞれ誤った位置、向きで装着されてしまうことはありません。


一眼レフではハイスペックの4K動画機能を搭載

――キヤノンにはCINEMA EOS SYSTEMという動画撮影に特化したシリーズがあるので、正直、静止画メインのEOSシリーズに4K 60pという際立った動画撮影機能が搭載されるとは予想もしていませんでした。ここまでの4K動画撮影機能を搭載した理由とは?

正村:一眼レフで動画を撮りたいという方は、動画の画質にも相当なこだわりを持っていて、高精細でなめらかな映像を撮りたい、というのは、本質的に一眼レフユーザーが求めている欲求だと思います。

これまでのEOSはフルHDまでの対応でしたが、動画でもどこまで高い性能を実現できるかを追求した結果、単に4Kというだけでなく、60pという高フレームレートでの記録を実現できました。一眼レフカメラとしてはほかにはない動画のスペックなので、ユーザーにとってもかなり魅力があるのでは、と思っています。

――4K動画からの静止画切り出し、という使い方を重視して、より一瞬をとらえやすい60p記録にこだわったのかと思っていたのですが……。

正村:4K動画の用途としては、通常の動画として記録する使い方と、撮影した動画からの静止画切り出しという両方を想定しております。デュアルピクセルCMOS AFにより動画撮影時でもAFが使えることで、静止画切り出しの際、ピントがしっかり合った画像を得られやすいのも、この機種の特徴です。

――静止画と動画では求められる画作りが異なると思うのですが、EOS-1D X Mark IIに限らず、EOSムービーは、静止画でも動画でも同じピクチャースタイルが適用されますよね?

服部:基本的には、静止画も動画も同じ画作りで設計しています。確かに、16-235というビデオレンジで記録するという考え方もありますが、広いレンジで記録された映像を狭いレンジに圧縮するのは後からでもできますが、狭いレンジで記録したものを後から広げるのは画質的に不利です。

そのため、EOSムービーでは、静止画と同様、動画でも0-255のフルレンジで記録しています。ただ、HDMI出力に関しては、ビデオレンジで出力していますので、外部モニターを装着した際に、白飛びや黒つぶれが生じる心配はありません。

また、静止画と動画の画作りは違うのでは、という点については、ビデオの画作りを見慣れている人からは、EOSムービーは少しコントラストが高すぎる、という意見をいただくこともあります。その一方で、メリハリの効いた静止画の画作りで動画が撮れることも好評で、現状のEOSムービーは静止画と同じ画作りの動画が撮れる、という考え方で設計しています。

それと、あまり知られていないのですが、実は弊社のWebサイトで「ビデオカメラ Xシリーズ風」というピクチャースタイルファイルを無償で提供しています。このピクチャースタイルファイルをカメラに登録し、動画撮影時に選択していただければ、ビデオカメラの画作りに近い階調で動画撮影することが可能です。

――それは知りませんでした。そうなると、ますます静止画と動画でそれぞれ別のピクチャースタイル設定を記憶できるようにしてほしいですね。あと欲をいえば、ここまで際立った動画撮影機能を搭載したのなら、最近、動画撮影で流行りのLog記録にも対応してほしかったところです。

正村:Log記録を搭載しなかった理由としては、EOS-1D X Mark IIはEOS-1D Cの後継シネマ機ではなく、あくまでEOS-1D Xの後継機として位置付けられるカメラですので、静止画の画作りで動画が撮れるというEOSムービーの設計思想を踏襲しています。グレーディングを前提としたLog記録は、CINEMA EOS SYSTEMなど業務用機をお使いいただければと思います。

 ◇           ◇

【実写ミニレビュー】圧倒的なコマ速とAF性能は動体撮影の歩留まりを上げる一番の近道

野鳥や飛行機など、超望遠レンズで動体を撮影するカメラマンにとって、キヤノンのEOS-1系は憧れの存在だ。EOS 7D Mark IIも、APS-CサイズのカメラとしてはEOS-1D Xに迫るAFと高速連写性能を有しているが、あくまで“迫る”であって、“匹敵”や“追い越す”存在ではない。とりわけEOS-1D XからEOS-1D X Mark IIになって、その差はますます広がった。

約14コマ/秒のコマ速は、ミラー駆動を伴う一眼レフではこれまで未知の領域で、高速連写中のファインダーは8mm映写を見ているような感覚。ほとんどブラックアウトを感じずにすむので、横方向に動く被写体も追いやすい。AFの瞬発力もさすが1系ならではで、EF100-400mm F4.5-5.6L IS IIUSMのような開放F値があまり明るくない超望遠ズームレンズでも、向かってくる被写体に瞬時にピントを合わせてくれる。

これまでなかなかとらえるのが難しかった檻越しの鷲も、樹木や檻の陰に隠れ、突如現れても、的確に向かってくる鷲にピントを合わせてくれる

ただ、画面に占める測距エリアの広さは、やはりAPS-Cに比べると狭く、もっと周辺まで測距エリアがあれば良いのに、と思うこともしきり。画素数が約2,020万画素とそれほど多くないためか、EOS 5Dsで採用されたクロップ機能は搭載されていないが、かつてのEOS-1Dユーザー向けにAPS-Hクロップくらいは付けてほしかった。

なかなか手が出せない価格ではあるが、本気で動体を撮影したいなら、あれこれ回り道をせずに思い切ってフラッグシップを買うのが一番の早道。さもなければ、自分の腕を磨くしかない。

デジタルカメラマガジン
2016年5月号
キヤノン EOS 80D
完全ガイド
さぁ、写真をはじめよう
写真の教科書

伊達淳一

(だてじゅんいち):1962年広島県生まれ。千葉大学工学部画像工学科卒。写真誌などでカメラマンとして活動する一方、専門知識を活かしてライターとしても活躍。黎明期からデジカメに強く、カメラマンよりライター業が多くなる。