写真展
大森一也写真展「祈りの島々 八重山」
(JCIIフォトサロン)
Reported by 本誌:河野知佳(2016/4/25 19:00)
沖縄県の八重山諸島は、沖縄本島から400kmほど南に位置する島々の総称で、石垣島をはじめ、西表島、与那国島、竹富島、波照間島など11の有人島と、複数の無人島から形成されています。豊かな自然と独自の歴史や文化を育んできた八重山の島々には、古から受け継がれる伝統的な祭祀行事が数多く存在します。
2000年に東京から石垣島に移住した大森一也氏は、八重山の人と神と自然の深いつながりに心打たれ、以来、祭祀や年中行事があるたびに各島を訪れ撮影を重ねていきました。
本展では、11年間の撮影をまとめた写真集、『来夏世―祈りの島々八重山―』より、選りすぐった作品の数々をご覧いただきます。
「来夏世(クナチィユ)」とは「来る夏の世」という意味で、八重山ではなじみ深い豊穣を願う言葉です。台風や干ばつなどの過酷な環境や社会状況による困難のなかでも、常に自然と神への畏敬を忘れずに生きてきた先人たちの祈りの言葉は、時代が変わっても島人の精神に深く根付いています。
南国特有の樹木が生い茂る神聖な杜で静かに瞑目する神司や、瑠璃色の海が輝く砂浜で神への供え物である歌や踊りに一心不乱になる人々など、自然と密接に関わる暮らしのなかで慎ましく生きる島人の真摯な祈りの姿が写し出されています。「人と神とのつながりは特殊な聖地、特定の司祭者だけのものではなく、八重山に暮らす誰しもが大切に受け継いできた『祈りの光』にこそある」と氏が語るように、先人から受け継いだ祈りの集積が、各人のひたむきなまなざしや立ち居振る舞いに表れています。
過去から現在、そして未来へと続いていく八重山の精神文化の原点を、島の暮らしに寄り添いながら丁寧に写しとめた作品ばかりです。
会場・スケジュールなど
- ・会場:JCIIフォトサロン
- ・住所:東京都千代田区一番町25番地JCIIビル
- ・会期:2016年4月26日(火)〜5月29日(日)
- ・時間:10時〜17時
- ・休館:月曜日
- ・入場:無料
作者プロフィール
1962年、秋田県秋田市生まれ。1988年、早稲田大学第一文学部卒業。自然保護団体職員などを経て、2000年に沖縄県の石垣島へ移住、八重山諸島の祭祀行事の撮影を始める。2011年、第45回キヤノンフォトコンテスト自由部門大賞を受賞。2015年~「石垣島写真研究会」会長。
<写真展>
「来夏世」(2013・竹富島ゆがふ館)、「来夏世」(2014・竹富島ゆがふ館)、戦後70年沖縄写真「まぶいぐみ展」参加(2015・那覇市民ギャラリー)、「来夏世」(2015・福岡市 手の間ギャラリー)など。
<写真集・著作>
『来夏世―祈りの島々 八重山―』(2013・南山舎)、『来夏世―祈りの島々 八重山―[新装版]』(2014・南山舎)、ポストカード集『YAEYAMA MINSAH』(2014・みんさー工芸館)、『島の手仕事 ―八重山染織紀行―』安本千夏/著、大森一也/写真(2015・南山舎)など。