写真展
桜井里香写真展「岸辺のアルバム」
(ニコンサロン)
Reported by 本誌:河野知佳(2016/4/26 00:00)
本展の展示作品は、今、作者が住んでいるところに近い多摩川で起こっている日々の出来事(イベント、コミュニティの活動、災害、護岸工事、事件・事故、等々)を、Facebookで写真関係の知人たちに伝えたいという個人的な思いから始まった。
その反響が予想以上に大きく、多くの人たちに励まされながら、毎日多摩川へ出かけて行き、そこで見たことを一日一枚写真でアップしていくという試みを作者はここ2年ほど継続してきた。
東京や川崎郊外の多摩川流域は、1977年にテレビドラマ『岸辺のアルバム』の舞台になった場所だ。作者はその脚本家である山田太一氏の作品に影響を受けてきた世代でもあり、撮り進めていくうちにこの作品の中の八千草薫が扮する母親の感じている疎外感のような不安定な意識にどこか共感する世代になっていることに気が付いた。
撮影方法はセルフポートレイトで、日々変化していく多摩川の河川敷やそこに集う人々の中に分け入って、そんな作者自身の姿を写し込んだ。他者を傍観したり、イベントに関わったり、時には事件に遭遇することもありながら、今そこに生きる人々の中に踏み込む行為を繰り返していたようだ。しかし、やがて、予想もしなかったことに作者は気付いた。それは、作者自身の現在が作品の中に露わになっていることである。
現在という時代に生きる一人の女、母親、個人としてその存在に分け入って考えようとする行為がこの作品に繋がっていったのだと作者は思っている。カラー50点。
会場・スケジュールなど
- ・会場:新宿ニコンサロン
- ・住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
- ・会期:2015年12月22日(火)~2015年12月29日(火)
- ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- ・休館:会期中無休
- ・入場:無料
- ・会場:大阪ニコンサロン(追記)
- ・住所:大阪市北区梅田2-2-2ヒルトンプラザウエスト・オフィスタワー13階
- ・会期:2016年5月5日(木)~5月11日(水)
- ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- ・休館:会期中無休
- ・入場:無料
作者プロフィール
1964年東京都生まれ。83年東京都立工芸高等学校デザイン科卒業。88年東京綜合写真専門学校研究科卒業。
写真展に、86年「CONTEMPOLAROIDO Ⅶ」(ポラロイドギャラリー)、87年「写真と記録展」(オリンパスギャラリー東京)、89年「遊歩都市」(ミノルタフォトスペース新宿)、90年「第二回「期待される若手写真家20人展」」(パルコギャラリー)、91年「私という未知へ向かって-現代女性セルフポートレイト展」(東京都写真美術館)、13年「写真の地層展 vol.15」(世田谷美術館)、13年「スクエア25展 vol.11」(京橋ギャルリーソレイユ)がある。