写真展
中川隆司写真展「Historic Road Route 66」
(ニコンサロン)
Reported by 本誌:河野知佳(2015/7/27 08:00)
その道は、すでに地図上から姿と表記の両方が消滅し、文字通りヒストリックな道となりつつあるRoute66。歴史が浅いアメリカという新しい国にあって、かつてのフロンティアスピリットの歴史をアナログな姿で垣間見ることのできるこの道は、過去に断片的ではあるが何度も走っていた。今回は全走破を試みる事によって、あらためて時空を超越した旅の中に身を浸してみたかった。
この数千キロの長い道の途中には、いくつものヒストリックポイントが点在している。 自分も含め人はどんな小さく些細な歴史でも、それを大切に胸に秘める傾向がある。過去を振り返ることは、ノスタルジーだけにとどまらない、その時に経験した思いと時間が蘇り、胸かきむしられるほどの情感が込み上げてくる事も多々ある。
数十年の時を経てヒストリックポイントのモニュメントは、見事に時代の中で本来の役目を終え、静かに余生を送っている。しかしその反面、アメリカ人はこのように短い歴史の中でも建国スピリットを大切に現代に受け継いでいて、それが人々の中で未だに流れ続けていることも事実だ。それは彼らが作り上げた合衆国という多民族国家が、 短期間に出身国の違う白人が先住民と打ち解けかつ力で制圧し、西へ向かって進出しなければならない使命を完結させているということだ。赤の他人と友人関係を結ぶツールは笑顔と親しみやすいそのキャラクターだっただろう。この道はそんな親しみの最大公約数のアイコンを各地に刻み、整備されながら西へ向かって伸びていった。
アメリカンノスタルジックだけで語れない道、そして今は寸断され、役目を終えたRoute66。古いダイナーやおんぼろピックアップ、ビルボードにアメリカングラフィティに彩られる古き良きアメリカのイメージがすっかり定着した日本で、それらだけがこの道を代表するものではない事を知ることは大切なことだろう。
人々の明日への想いを乗せて大陸を切り開き、その役目を終えたヒストリックロード。 多くの人々の思いはこの道の路面に塗り込められノスタルジーとなり中空を風と共に舞っていた。(中川隆司)
カラー約50点。
(写真展情報より)
会場・スケジュールなど
- ・会場:新宿ニコンサロン
- ・住所:東京都新宿区西新宿1-6-1新宿エルタワー28階
- ・会期:2015年8月4日火曜日~2015年8月15日土曜日
- ・時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
- ・休館:16日日曜日、17日月曜日
- ・入場:無料
作者プロフィール
1959年岡山県生まれ。78年東京造形大学映像学科卒業。
写真展(個展)に、91年「put them side by side」(スタジオエビスフォトギャラリー)、92年同展(佐賀町ブリュス)、98 年「analog and digital photography BMX Free style」(スタジオエビスフォトギャラリー)、04年「N・Y・O」(ギャラリーロケット)、06年「Border Line 」(銀座ニコンサロン)、06年「Border Line 」(ギャラリーローカス)、09年「On The Road」(gallery bauhaus)、13年「american suburbia」(銀座ニコンサロン)、グループ展に10年「THE COLLECTION」(gallery bauhaus)、11年「THE COLLECTION 4周年展」(gallery bauhaus)、14年「THE COLLECTION」」(gallery bauhaus)、同年「フォトマルシェ展」(アクシスギャラリー)がある。