フォトコンテスト

第5回キヤノンフォトグラファーズセッション授与式が開催

受賞作品展・ファイナリスト展も開催中

キヤノンの写真ワークショップ「第5回キヤノンフォトグラファーズセッション」のキヤノン賞授与式および写真展のオープニングパーティが9月10日に開催された。

若手写真家の発掘・育成を目的としてキヤノンが実施しているワークショップ。ベテラン写真家によるポートフォリオレビューや写真展の開催を通して、若い写真家の活動を支援する。これまでに5回開催されており、第5回の講師はハービー・山口さんと瀬戸正人さんが務めた。

キヤノン賞は、全3回のセッション中に行なわれるプレゼンテーションの中で、最終的に2名が選出される。第5回では、10名に絞られたファイナリストの中から宛超凡さんと小松里絵さんが受賞した。

宛超凡「水辺にて」より
小松里絵「紡ぐ」より

なお、第5回の開催概要においては、キヤノン賞受賞者の2人に「EOS 5D Mark III」が贈られる予定だったが、授賞式の2日前にあたる9月8日、後継機種にあたる「EOS 5D Mark IV」が発売されたことを受けて、EOS 5D Mark IVが贈られた。

セッションを重ねる中で見られた成長

表彰式ではキヤノン賞受賞者の2人が挨拶したほか、講師として参加したハービー・山口さんと瀬戸正人さんが今回のセッションの総評を述べた。

宛さんの指導にあたったハービー・山口さんは、宛さんの"視点"と、ラフなモノクローム表現を高く評価している。

左からハービー・山口さん、宛超凡さん、小松里絵さん

「宛さんの作品は中国・嘉陵江のほとりで過ごす人々をとらえたものです。きらびやかな経済成長を遂げている中国は我々のよく知っているところですが、その中の一人ひとりに目を留めて、ストーリーを刻んでいる」(ハービー・山口さん)

「これまでのセッションでも、宛さんは私のアドバイスに対応してセレクションを煮詰めて、毎回成長の跡が見られました。彼はこのセッションの間に嘉陵江を再び訪れてはいないということなので、作品を発表する中で、いかにセレクションが大事かということですね」(ハービー・山口さん)

「写真は何でも写しますが、どういう視点を持つのかが写真家にとって大事なこと。それを常に、一生かけて考えていく。そしてそれが正しいのかどうかを、こうしたセッションで確認し、磨きをかけ、時には是正していく。宛さんには今回の受賞を機に、日本と中国の両方を知っている人として、将来的には両国のさらなる友好関係を築く一人になっていただけたらいいな、と思います」(ハービー・山口さん)

第5回フォトグラファーズセッションの授賞式には、過去に実施したセッションの受賞者たちも参列していた。瀬戸正人さんは総評の中で、セッションの参加者全員に向けて、カメラと写真に対する、さらなる理解を促す主旨のメッセージを送っている。

「これまで、3回にわたってみなさんの写真を見てきました。私やハービーさんは長いこと写真に関わって生きてきたので、これがただの石なのか、磨けばダイヤモンドになるのかを直感的に見極められなければならない。そういう目で写真を見ています」(瀬戸正人さん)

瀬戸正人さん

「今回は、最後に2人を選ばなければならなかった。時には、どちらも良いけど、どうしても1人に絞らなければいけないときもあります。そうした時、いつも自分の胸に訊いてみることがあるのです。それは"写真とは、カメラとは何か"ということ」(瀬戸正人さん)

「カメラとは手の中に収まる高性能な"スキャナー"です。写真を撮るとはどういうことかというと、街に出て、世界に出て、自分が目にした世界をスキャンして回ること。写真とは世界をスキャンした結果なのです」(瀬戸正人さん)

「自分の見た範囲ですから、狭い世界です。でも自分の人生の時間、空間の中にカメラがある。カメラの持つ意味を意識して写真を撮ってほしいと思っています。写真は現実を撮った結果ではありますが、現実そのものではありません。間違えやすいのは、現実にそっくりなものが写っているから、現実だと思ってしまうことです」(瀬戸正人さん)

「写真と現実とではまず写っているものの大きさが違うし、色も違う。写真は写真であって、現実に生きてる我々が撮ることのできる、もう"一つの現実"なのです。そこを間違えずに創作活動をしていただけると、もっと自分の表現が自由になると思います。写真は人に見られてこそ強くなります。だから年に1度は展示したり、発表してほしい」(瀬戸正人さん)

キヤノンフォトグラファーズセッションは、第5回で一旦開催を休止する。再開の見込みがない休止というわけではなく、新たな態勢を整えて、しかるべきタイミングで再度募集を行なうという。

受賞作品展が開催中

一旦の区切りとなったフォトグラファーズセッション最後の受賞者となった2人に、キヤノン賞受賞の感想と、プリントを含む作品作りや展示に関して話を聞いた。

「今はただ、嬉しいです。写真展の展示は、琵琶湖を写した2枚の写真を中心に構成しました。今回の展示作品は風景が中心なのですが、被写体となった湖や遠景の山々などの位置が合うように、展示の高さを調整するといった工夫をしています」(小松里絵さん)

「展示準備の段階では、台風の影響で用紙の配送トラブルがあったり、プリントを何度もやり直してもらったりと、なかなか思うようにいかないこともありましたが、結果としてはすごく満足のいくものになりました」(小松里絵さん)

小松里絵さん

「こうして自分の作品が日本のギャラリーに展示されるなんて、これまでは想像もしなかったことです。でもキヤノン賞に選ばれたことでそれが実現し、こうして作品を観に来てくださる方を見ていると、その実感が湧いてきて、今はすごく嬉しい」(宛超凡さん)

「今回の展示作品は、デジタルと銀塩の写真が混在しています。デジタルのプリントはそれほど難しくなかったのですが、銀塩のモノクロプリントはとても難しかったです。特にコントラストやハイライト、シャドーのコントロールに苦労しました。今回の展示作品では、色校正を3回やり直しています」(宛超凡さん)

「いずれは中国でも個展を開きたいのですが、今は日本で"写真力"をつける努力をしたい。さしあたっては、公募展に応募したいと考えています」(宛超凡さん)

宛超凡さん

9月7日より品川のキヤノンギャラリーSではフォトグラファーズセッションのファイナリスト展が、9月8日よりキヤノンギャラリー銀座ではキヤノン賞の受賞作品展がそれぞれ開催されている。

第5回キヤノンフォトグラファーズセッション -キヤノン賞 受賞作品展-

  • ・会場:キヤノンギャラリー銀座
  • ・住所:東京都中央区銀座3-9-7
  • ・会期:2016年9月8日(木)〜9月14日(水)
  • ・時間:10時30分〜18時30分(最終日15時まで)
  • ・休館:日・祝日

第5回キヤノンフォトグラファーズセッション-ファイナリスト展-

  • ・会場:キヤノンオープンギャラリー2(品川)
  • ・住所:東京都中央区銀座3-9-7
  • ・会期:2016年9月7日(木)〜9月26(月)
  • ・時間:10時〜17時30分
  • ・休館:日・祝日