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東京都写真美術館がリニューアルオープン

エレベーターを2基に増設 初回展示は杉本博司氏と世界報道写真展

9月3日のリニューアルオープンに先立ち、9月1日に関係者を招いて内覧会が開催された。内覧会の様子を交えつつリニューアルの全貌をお伝えしよう。同館は2014年9月からの約2年間、大規模改修工事のため全館で休館していた。

  • 住所:東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
  • 開館時間:10時〜18時(木・金曜は20時まで)、ただし9月9日(金)・9月10日(土)は21時まで。2017年1月2日(月・振休)・3日(火)は11時〜18時
  • 休館日:月曜(月曜が祝日の場合は開館し、翌火曜休館)、年末年始 2016年12月29日(木)〜2017年1月1日(日・祝)
  • 観覧料:展覧会・上映によって異なる

「TOP MUSEUM」が目印

JR恵比寿駅からガーデンプレイスに向かっていくと美術館の建物が見えてくる。外観に大きな変化はないが、外壁には新たに「TOP MUSEUM」(トップミュージアム)の文字が設置されている。

東京都写真美術館の英語館名「Tokyo Photographic Art Museum」から頭文字をとったもので、同美術館の新しい愛称だ。

愛称の決定とともに新しいシンボルマークも誕生した。写真と映像を生み出す「光」で表現したシンボルマークは、「TOP」の文字がドアを開くようにも見える。

恵比寿駅側の出入口を入ると1階エントランスホールが広がる。以前の美術館を知っている人には、印象がガラッと変わったように感じられるだろう。天井にはライン状の照明が入口から奥へと続き、来館者を招き入れているように見える。明るく開放的な雰囲気なので待ち合わせにも最適だ。

内覧会では、ホールにて施設紹介がされた。荒木誠副館長からはリニューアルの概要が説明された。今回のリニューアルでは内装のほか空調や照明などの設備も更新。エレベーターは1基から2基に増設され、来館者がより快適に過ごせるよう配慮したという。

荒木誠副館長

笠原美智子事業企画課長からは、今後の事業計画が説明された。総合開館から20周年を迎えた記念事業として、国際シンポジウムが今秋から来年春にかけて予定しているという。

また「トップミュージアム」という愛称について、自らトップと名乗るのは気恥ずかしいが、本当に「トップ」と言われるような美術館にしていきたいと豊富が語られた。

笠原美智子事業企画課長

2階、3階展示室は床材がフローリングに更新。また作品保護と環境負荷の低減に配慮し、LED照明を導入した。地下1階展示室は、多様な展示に対応するため可動壁を更新した。

ショップは2階に移動しアイテムが充実

2階エントランスホールには映像・音響機器を導入。可動式の大型スクリーンが出入口側に設置された。また1階にあったミュージアムショップがこちらに移り、広く取った間口により、一段と出入りしやすくなった。

ショップ名は以前と同じ「ナディッフ バイテン」だが、表記が「NADiff×10」から「NADiff BAITEN」に変わり、より読みやすくなった。写真集や写真・映像関連書籍、美術館ならではのユーモアとセンスにあふれる商品が充実するほか、新たにトップミュージアムのオリジナルグッズも登場した。

ここでしか買えないNADiff BAITENとMIDORIKABANのコラボによる帆布製ショルダーバッグも。鮮やかな色と幅広の紐が印象的だ。

1階には天然酵母パンや自家製スープが人気のカフェ「メゾン・イチ」が美術館初出店。ドリンク、軽食などを提供する(写真のメニューは内覧会用に用意されたもの)。テイクアウトもでき、テラス席や館外からの出入口もあるので、美術館入館者だけでなく幅広い人が気軽に立ち寄れる雰囲気だ。

1階カフェの奥に位置するスタジオでは、ワークショップやスクールプログラムなどに利用される。暗室も設けられている。

初回展示は「杉本博司氏 ロスト・ヒューマン」と「世界報道写真展2016」

リニューアルオープン初回の展示は「杉本博司 ロスト・ヒューマン」を開催。リニューアルオープン総合開館20周年記念として催される。

人類と文明の終焉という壮大なテーマを掲げ、世界初発表となる新シリーズ〈廃墟劇場〉に加え、日本初公開の〈今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない〉、新インスタレーション〈仏の海〉を2階・3階両展示室を使って展示する(11月13日まで)。

〈今日 世界は死んだ もしかすると昨日かもしれない〉は、展示室内をトタン壁で仕切り、杉本氏の作品や蒐集した古美術、化石、書籍、歴史的資料などで構成した壮大なインスタレーション。展示室に足を踏み入れた瞬間から独特の世界観に包まれる。全身で味わいたい作品だ。

2階展示場では〈廃墟劇場〉と〈仏の海〉を展示。〈廃墟劇場〉は、氏が1970年代から制作している〈劇場〉が発展した新シリーズ。廃墟と化したアメリカ各地の劇場で自らスクリーンを張り直して映画を投影し、上映1本分の光量で長時間露光した作品だ。

10年以上にわたり取り組んでいる千手観音を撮影した〈仏の海〉とともに大型のゼラチン・シルバー・プリントに仕上げられている。暗い空間に浮き上がる美しいモノクロームをぜひ堪能してほしい。

杉本博司氏

リニューアルオープン初回のもう1つの展示は、地下1階展示室で開催される「世界報道写真展2016」(10月23日まで)。

世界各地の6,000人近いフォトグラファーによる8万点超の作品から選ばれた約150点を紹介する。世界を駆け巡ったニュースや現代社会が抱える問題、スポーツの決定的瞬間など普段目にすることが少ない現実を写真で知ることができる貴重な展覧会だ。

内覧会にはオランダの世界報道写真財団・展示部長のラウレンス・コルトウェーグ氏が来日し、ギャラリートークが行われた。氏が主だった作品を選び出し、撮影の背景や作者のエピソードなどをつぶさに紹介するとともにドキュメンタリー写真の意味や価値についても語られた。

大賞受賞作の前で解説するラウレンス・コルトウェーグ氏