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キヤノン、約3,040万画素になった定番フルサイズ機「EOS 5D Mark IV」

"デュアルピクセルRAW"で解像感補正やボケ移動 Wi-Fi/NFC/GPS搭載

キヤノンは、35mmフルサイズセンサーを搭載するデジタル一眼レフカメラ「EOS 5D Mark IV」を9月8日に発売する。2012年に発売された「EOS 5D Mark III」の後継。

価格は、税別での直販参考価格がボディ単体で43万2,500円、24-70 F4Lレンズキットが54万7,500円、24-70 F2.8L IIレンズキットが61万7,500円、10月下旬に追加発売する24-105 F4L IIレンズキットが55万7,500円。

EOS 5Dシリーズは、2005年発売の「EOS 5D」から"手が届くフルサイズ機"として位置づけられてきた、同社デジタル一眼レフカメラの中心的存在。EOS 5D Mark IIIの派生として2015年に登場した高画素モデル「EOS 5Ds」および「EOS 5Ds R」とあわせ、3機種のラインナップになる。

24-105 F4L IIレンズキットの「EF24-105mm F4L IS II USM」(10月下旬発売)は、初代EOS 5Dと同時期に登場した「EF24-105mm F4L IS USM」を11年ぶりに置き換える標準ズームレンズ。最新の高画素機と組み合わせても不満がない性能や、信頼性・堅牢性の向上を目指した。

デュアルピクセルCMOS AF対応の約3,040万画素。動画は4K・30p動画

撮像素子は有効3,040万画素の35mmフルサイズCMOSセンサーを採用。EOS 5Dシリーズ初の「デュアルピクセルCMOS AF」対応とし、像面位相差AFによる高速ライブビューAF撮影や、後述する「DPRAW」(デュアルピクセルRAW)での解像感補正機能などを利用できる。感度はISO100〜32000(拡張最高ISO102400)。

参考までに、既存の5Dシリーズの有効画素数は、EOS 5D Mark IIIが約2,230万画素、EOS 5Ds/Rがいずれも約5,060万画素。現在でも愛用者の多い「EOS 5D Mark II」(2008年発売)は約2,110万画素。

動画記録は4K・30p、フルHD・60p、HD・120pに対応(EOS-1D X Mark IIは4K・60p対応)。フルHDでのHDR動画記録も可能(60pキャプチャー、30p記録)。4K動画から約880万画素の静止画を切り出す「4Kフレームキャプチャー」機能を搭載する。動画記録中の静止画撮影機能は、動画撮影機能への制限が多くなるとの判断から省略した。

4K記録は汎用性に優れるというDCI 4K(17:9)。シネマ用素材として使える点を特徴としている。4,096×2,160ピクセルをドット・バイ・ドットでクロップ記録する。動画撮影時もデュアルピクセルCMOS AFによる動画サーボAFが使える。追従特性はカスタマイズ可能。

EOS-1D X Mark II並みの画像処理・高速性能

画像処理エンジンはEOS-1D X Mark IIと同じ「DIGIC 6+」に一新。高感度撮影時の低輝度ノイズを低減したほか、画像処理能力の向上に伴い、パソコン上のDPPでのみ可能だった「回折補正」「Digital Lens Optimizer(DLO)」をカメラ内で利用可能とした。いずれもEOS-1D X Mark IIで搭載された機能だが、EOS 5D Mark IVのDLOはカメラ内RAW現像時のみならず、JPEG撮影時にも使える点が異なる。

連写速度は約7コマ/秒。EOS 5D Mark IIIの約6コマ/秒を上回り、EOS-1D X Mark IIとEOS 7D Mark IIに続くスペック。ミラーの動作に、高画素モデルのEOS 5Dsシリーズで先に採用したモーターとギアカムによる駆動をさらに向上させた機構を採用。サブミラーのたわみを抑制し、コマ速アップを実現した。ファインダー像消失時間も短縮している。

ミラーボックス

AFおよびAEセンサーもEOS-1D X Mark IIと同様。AF測距点の配置エリアはEOS 5D Mark IIIと比べて縦にワイド化している。全点F8光束対応で、例えば600mm F4レンズに2倍エクステンダーを装着して開放F8となってもAF撮影が可能。照明のちらつきによる露出ムラなどを抑える「フリッカーレス撮影」も搭載している。

充実したライブビュー機能。サーボAF連写も

本機は5Dシリーズで初めてタッチパネル式の背面モニターを採用。デュアルピクセルCMOS AFとタッチ操作の組み合わせが可能となった。

デュアルピクセルCMOS AFは、ミラーアップにより一眼レフの位相差AFを使えないライブビュー撮影や動画記録時でも、像面位相差AFで不自然なフォーカスの前後駆動のないスムーズなAF動作を可能とする。また、視野内の縦横80%の範囲をどこでもAFポイントにできる自由度の高さが、静物撮影時にもメリットとなる。

ライブビュー拡大表示と組み合わせたピントの追い込みも可能とし、ライブビュー+MFでピントを追い込むユーザーにもAFの利便性を訴求する。操作手順としては、ライブビュー中にタッチ操作でAFフレームを移動し、表示を拡大。スティック状のマルチコントローラーでフレーム位置を微調整したあと、シャッターボタン半押しでAFを行う。

ライブビューで動体にピントを合わせ続けながら連写する場合、速度優先の設定では4.3コマ/秒、被写体追従優先の設定では3コマ/秒のサーボAF連写が可能。ミラーアップしたままメカ先幕で露光する。

AFが動作する最低輝度は、ファインダー撮影時が-3EV、ライブビュー撮影時が-4EV。

"デュアルピクセルRAW"で解像感補正など

初登場の新機能として、撮像素子から得たデュアルピクセル情報を利用し、DPPでの現像時に「解像感補正」、「ボケシフト」、「ゴースト低減」の3つを使えるようになる。

解像感補正は被写体の奥行き情報に基づいて解像感の微調整が可能だという。解像感が低い印象の人物撮影などで有効としている。

ボケシフトは、カメラの撮影視点の微調整により、前景の映り込みボケを横方向にシフトする機能。背景のボケもそれに伴って変化する。意図せず被写体にかかってしまった前ボケを移動し、画像を救える可能性があるという。

ゴースト低減は、調整したい領域を選択することで利用可能。人工光源下や逆光時の撮影で有効だという。これにより、画像に現れたゴーストやフレアを低減できる場合があるとしている。

いずれも、デュアルピクセル情報が付加された「DPRAW」という特別なRAWデータで撮影しておくことが必要。

GPSを内蔵。Wi-Fi機能も

GPSおよびWi-Fiモジュールはボディのファインダーブロック上部に搭載。ペンタプリズムの頂点から左右方向に向かう斜面部分に収まる。

GPS機能は5Dシリーズ初搭載。カメラ単体で位置情報を取得して、撮影画像のExifデータに付与する。ロシアのGLONASS、日本の準天頂衛星みちびきにも対応。カメラの電源がオンになっている間だけ測位して電池消費を抑えるモードも選べる。一定間隔で位置情報を記録するロガー機能も利用可能。

Wi-Fi/NFCも5Dシリーズ初搭載。パソコン上の「EOS Utility」スマートフォンの「Camera Connect」アプリとの連携を利用できる。カメラ単体でも通信可能だが、用途によっては引き続きワイヤレスファイルトランスミッター(別売)も有効としている。

ファインダーは約0.71倍・視野率約100%で、フォーカシングスクリーンは固定式。アイポイントは接眼レンズ中心から約21mm。電子水準器やカメラ設定状況の専用表示など、視野内の情報表示を充実させた「インテリジェントビューファインダーII」とした。EOS 7D Mark IIやEOS-1D X Mark IIに採用例がある。

タッチパネル式モニターを搭載

液晶モニターは3.2型・約162万ドット。新たにタッチパネル式とした。従来より低反射・高強度としたほか、新たに背面モニターの色調整機能も搭載した(暖色〜寒色の4段階。EOS-1D X Mark IIにも新ファームウェアで追加)。

従来のクリアビュー液晶は、液晶パネルの保護カバーの両面に反射防止コーティングを施し、液晶パネル自体にも表面に反射防止コーティングを施していた。新しいクリアビュー液晶IIでは、コーティングのない保護カバーと液晶パネルの隙間を光学弾性体で埋め、最表面に汚れ防止と反射防止のコーティングを施した。これにより、偏光サングラスをかけていてもモニター表示が見えるようになったという。

メニュー画面のレイアウトはこれまでのEOSを継承しているが、タッチ操作に対応。撮影時に使えるクイック設定画面は、好みに配置を変えられるなどカスタマイズ性の高さも特徴。

ボタン新設、60gの本体軽量化など

背面のマルチコントローラー(スティック状)とサブ電子ダイヤル(ホイール状)の間に「測距エリア選択ボタン」が新設。操作ボタンのカスタマイズで機能を割り当てられる。

記録メディアはCFとSDのデュアルスロット。UDMAモード7およびUHS-Iに対応。EOS-1D X Mark IIで採用されたCFastは見送られた。

外形寸法は150.7×116.4×75.9mm、重量は約890g(バッテリー、CF/SDを含む)、約800g(本体のみ)。

強度と耐久性を維持したまま、部材の見直しによりボディ重量をEOS 5D Mark IIIの約860gから、EOS 5D Mark IVでは約800gに軽量化した。

バッテリーはLP-E6N/LP-E6に対応。EOS 5D Mark IIIやEOS 5Ds/Rと共通で、EOS 5D Mark II、EOS 6D、EOS 7D Mark II、EOS 80D、EOS 70Dなどと共用できる。

ファインダー使用時の撮影可能枚数は約900枚。ライブビュー撮影時は約300枚(いずれも常温の23度時)。

別売で専用バッテリーグリップ「BG-E20」(税別3万3,000円)を用意。端子部をカメラのバッテリー室に挿入するタイプで、LP-E6/LP-E6Lが2つ入る。ビデオ三脚のビデオボス穴を備えるなど、動画撮影への配慮もなされた。

専用バッテリーグリップBG-E20(別売)