トピック
LUMIX S9で使いたい「フォクトレンダーVMレンズ」7選
小型ボディにぴったりの総金属マニュアルフォーカスレンズたち
- 提供:
- 株式会社コシナ
2024年9月19日 07:00
EVFを持たないシンプルなフラットタイプのフルサイズミラーレス機LUMIX S9。
本機の登場時には「フォクトレンダー含め、どのMマウント互換レンズと組み合わせると良さそうか?」みたいな話がチラホラとあり、同志の間で妄想を膨らませ合っておりました。
やはり、こうした佇まいのカメラには同様にクラシックスタイルのレンズを組み合わせたくなるのは仕方のないことなのでしょう。
ということで、LUMIX S9ユーザーと、S9検討中の方々に向けて「フォクトレンダーレンズとS9を組み合わせると楽しいぞ」と背中を推す企画となっています。
それでは、今回は7本のフォクトレンダーレンズを紹介したいと思いますが、Mマウント互換レンズをLマウントのS9に装着するためにはマウントアダプターが必要です。
今回はLeica 18771(L用Mレンズアダプター ブラック)を使用しました。
ライカ純正のもので、Mレンズの6ビットコードを読み取るセンサーを装備しています。
このマウントアダプタでなくてもレンズ側がライカMマウント/ボディ側がLマウントのアダプターであればS9に装着出来ますので、自身の用途や予算に応じて探してみて下さい。
SUPER WIDE−HELIAR 15mm F4.5 Aspherical III
本レンズの画角は対角画角110°・水平画角100°の超ワイド画角となります。一般的にこうした超ワイドレンズはある程度の体躯があるものですが、本レンズは驚くほど控えめな存在感で、固定式の花形フードによって密やかに超ワイドであることをアピールしています。
LUMIX S9のフォトスタイル「風景」で、ビルの合間から空を見上げてパチリ。テレセントリック性に配慮されたレンズ設計であることと、S9は裏面照射型のCMOSセンサーということもあり、周辺部の色付きはほとんど気になりませんし、公式ページでも「絞り開放状態から画面隅々までコントラスト、解像力に優れ……」とアピールされている通り、画面の周辺まで切れ味鋭いシャープな写りを楽しめました。
しかも歪曲が極めて少なく、ビシッとまっすぐに描写される様子は眺めていて気持ちの良いものです。
ビル景のショットでは切れ味鋭いシャープな描写でしたが、近距離では少し柔らかさのある表現も楽しめます。そこでLUT「Old Cinema−S」に粒状 Lowと色ノイズを加えることで、少し昭和の雰囲気を狙ってみました。壁の塗装の風合いから、対象が経験してきた時間を表現できているのでは? と自画自賛してしまいます。
LUMIX S9ではスマートフォンアプリ「LUMIX Lab」との連携でLUTを追加することができますので、このショットでは「LEICAモノクローム」にLUMIX Labから反映させた「Old Cinema−S」というLUTを組み合わせてみました。絵作りをハードボイルドに調整していますが、いわゆるアートフィルター系のやや立体感に欠ける再現とは異なる ”深み” を感じさせる表現をフォトスタイル+LUTで簡単に実現できました。
感想
超ワイドレンズではありますが人間の両目での視野角に近い画角のレンズということもあり、ピント合わせをする指が写り込んだり、自身の足が写り込んだりといったことが少なく、超ワイドとしてはフレンドリーな焦点距離だと思います。
S9はファインダーを持たないので、超ワイドレンズで精密なピント合わせをするためには慣れやコツが必要ですが、それでも超ワイド画角にキレ味鋭い描写性+ハードな絵作りの相性はとても楽しく、思わずたくさん撮ってしまいます。S9は電子シャッター機ですので、シャッターの寿命を気にすることなく撮影ができるのも魅力でしょう。日常風景を少し特別にしてくれる1本として長く楽しむことが出来そうです。
登場は2015年3月と、もう少しで10周年を迎えるレンズではありますが、いまだに印象的な描写性能であり、さらに全長約55mm・重さ約250gのコンパクトサイズでこの描写性能を実現していることは驚異的です。
NOKTON Vintage Line 28mm F1.5 Aspherical
コシナには同じレンズ光学設計でありながら、鏡筒の素材が異なるバリエーションのレンズをリリースするという情熱的な一面があります。
このレンズもそうした情熱によって、アルミ外装で軽量なType Iと真鍮製で重厚感のあるType IIの2種類が存在するだけでなく、それぞれのタイプにブラックとシルバーのカラーバリエーションが設けられ、合計4つの仕上げが用意されています。
しかもブラックカラーには違いがあり、Type Iではマットブラック、Type IIでは光沢感のあるブラックペイント。
カラバリだけでも「どちらにしよう?」とその選択は困難を極めますが、さらに素材も違うとなると、もはや売りたいのか惑わせたいのか分かりません。
筆者の意見としては、アルミ製のType Iは軽快な使用感が魅力。真鍮製のType IIでは操作感がしっとりしていて官能的ですが、組み合わせるボディによっては重さが気になるかも知れません。
少し絞り込んだF2.8で撮影しました。ヴィンテージラインの製品ですので、写りも年代物の雰囲気があるのかな? と思いきや、光学性能は全くもって最新世代そのもの。クラシカルなのはスタイリングだけという、いわば「羊の皮を被った狼」的なキャラクターに思わず口角が上がります。
LUMIXシリーズの絵作りとのマッチングも良く、印象的なシャドートーンが気持ちの良い仕上がりになりました。
至近端かつ開放絞りで撮影しましたが、高いシャープネスで応えてくれました。自然公園の林の中という光量が潤沢とは言えないシーンでは、開放F1.5の口径によってISO 感度設定やシャッター速度の設定に自由度がある点が強力な武器となってくれました。
キレの良い描写ということもありピントの山が掴みやすく、MFがやりやすく感じました。
ピント面の解像感は見事のひとこと。ハイコントラストな絵作りと組み合わせてもボケが騒がしくならず、懐の深さを感じさせてくれます。
キリリとした写りに見えるカットが採用されていますが、例えば開放絞りで遠くにピントをあわせると状況によっては周辺部にはやや滲みが生じることもあります。純正レンズのような安定した描写性を想像していると少し驚くかも知れませんが、F2.8で撮影したカットのように絞り込むことで解消されます。
今回紹介した作例のように撮り方によっては目立たせなくすることもできますので、試行錯誤する楽しさのあるレンズです。
NOKTON classic 35mm F1.4 II
昨今の絞り値に依らず安定したシャープネスを得られるレンズとは異なり、敢えて収差を残存させることによって、開放絞りでは柔らかく、絞り込めばシャープに描写する、いわばクラシカルな特性をもたせたレンズとなっています。こうした描写性をコントロールする範囲のあるレンズのことを筆者などは「絞りの利くレンズ」と表現しています。
さらに本レンズにはシングルコート仕上げのSCと、シングルコートに加えて適宜マルチコート面を設けることでニュートラルな色再現性をもたせたMC版の2つのラインナップがあります。簡単に言えば、少し味のあるSCと扱い易いMCです。
今回紹介するのはSC版です。
本レンズの特徴がもっとも如実に現れたカットを紹介します。特定の位置に太陽のような強い光源を配置するとこのように特徴的なフレア・ゴーストが発生し、光芒はもちろんですが、フレアによって暖色で柔らかな表現となっています。
至近側かつ開放絞りで撮影していますので、描写にはユルさもあります。そうした最近のレンズでは味わえない”光学レンズならでは”の特性なので、表現としてだけでなく、撮影時には太陽の位置とフレア・ゴーストの出方を見ながら構図を工夫したり、距離や絞りを調整するという「撮影体験」も面白いと思います。
少し絞り込めばご覧の通り切れ味鋭い描写も楽しめます。さきほどのカットと同じレンズで撮影したとは思えない2面性もまたこのレンズの魅力のひとつでしょう。
表現意図に合わせて絞りや撮影距離、光源の位置を工夫して、狙いがハマった時の達成感や、想像以上の表現が得られた時の驚きを味わいたくて写真をやっているのでは? と思うことがあります。
コントラストが強くなる光の角度で撮影していますので、切れ味鋭いピント面がさらに強調されて見えます。ユルさやエモさにばかり注目されがちなレンズではありますが、高いポテンシャルを持っていることがこの2枚から分かるかと思います。
感想
伝統的な対称形の光学系、少し専門的な言い回しをすると「ガウスタイプ(ダブルガウスとも言う)」の設計となっています。ガウスタイプの特徴としては色収差と歪曲が少ないこととなりますが、本レンズもその特徴が現れており歪曲が少なく輪郭部の色ズレもほぼありません。悩ましいのは、フォクトレンダーには他にも35mmレンズがラインナップされていることでしょう。ですが、ガウスタイプのお手本のような光学設計の本レンズでしか楽しめない味わいがこの魅力です。
絞りと撮影距離、光線の位置や強さによって描写の変化味わえるレンズですので学びが多く、このレンズを経験することによって将来的にオールドレンズを手に入れた時でも問題なく使い熟せる土壌を育む事ができます。
また現代のレンズの設計の凄さに対する気付きもあるので、レンズにもっと興味が湧くかも知れません。
COLOR-SKOPAR 50mm F2.2
今回紹介する7本の中で最新となる、2024年7月に登場した出来立てホヤホヤのレンズです。
フォクトレンダーブランドレンズの魅力のひとつに、多くの製品にシルバーとブラックのカラバリが用意されていることが挙げられますが、本レンズもそのひとつ。通常1色だけでも開発・製造は大変なのですが、2色も用意するのは採算性という観点では褒められません。しかし、ユーザーとしては選ぶ楽しさがありますので、コシナがどれだけユーザーの気持ちを汲んで製品開発を行っているか? を察することができます。
程々の明るさに抑えたことが効いているのか、付属の金属フードを装着した状態でも、マウント面からの全長は約40mm・重さもフード込で150g未満と、大変コンパクトに仕上がっています。実際にカメラバッグに入れたかどうか不安になる存在感しかないので、作例撮影時には「あれ、持ってくるの忘れた?」とドキッとしました。
「レンズの味わい」に振ったNOKTON classic 35mm F1.4 IIとは異なる素直な描写です。パンチの強い方がクセになりそうですが、扱い易い特性もまた魅力的で、自分色に染める楽しさがあります。また条件問わず収差が少なくピントの山が掴みやすいことも、このレンズをフレンドリーに感じる要素のひとつでしょう。
素晴らしくクリアで立体的な表現をしてくれました。このサイズのレンズでこういった描写性を得られるとは本当に驚かされます。昨今のレンズは申し分のない性能を持っていますが、高性能と引き換えに普段使いするにはやや大きく重いことがネックとなることがあります。特にS9のようなコンパクトなボディと組み合わせるには、そうした高性能レンズは時にバランスが良いとは言い難い場合もあるのですが、本レンズであれば日常使いに美しい描写のレンズを、というワガママを叶えてくれそうです。
ピント位置を至近端に合わせ、草むらにカメラを突っ込んでパチリ。こういった撮り方はコンパクトなカメラとレンズの組み合わせならではの楽しみ方だと思います。開放絞りかつ至近端でもピント位置はシャープで浮き上がるように表現できています。自然で扱い易い描写特性なので、いろいろな絵作り設定と組み合わせてみたくなりました。
HELIAR classic 50mm F1.5
今回紹介するレンズの中では最も極端な特徴を持つレンズです。というのも、そもそも大口径化に向いていないレンズ構成を敢えて選択することで収差を楽しむコンセプトという、現代のレンズとしては方向性の異なる設計思想を採用しているからです。
言葉で説明するよりも実際に写真を見た方が分かり易いと思いますので、作例をどうぞ。
Exifに記録されているレンズデータはNOKTONとなっていますが、撮影時にLUMIX S9の設定を変更し忘れていたためその様になっていますのでその旨ご理解下さい。
LUMIX S9では電子接点を持たないレンズであっても、レンズ名称を登録しExifに反映させることができるのは良いところでしょう。
ご覧の通り、ポワポワで幻想的な描写となっています。収差を楽しむというコンセプトが存分に表現されていますが、こうした写りを見ると「精度が悪いのでは?」と思うかも知れません。しかし、これは意図してこの性能を厳密に狙って設計・製造したものであり、やっていることとしては高性能なレンズづくりと同等の難しさである、という面白さがあります。
このレンズはSC仕様ということもあるせいか、先に紹介した「NOKTON classic 35mm F1.4 II」と同様に逆光時に特徴的なフレア・ゴーストが出る場合があります。
日陰の部分の描写に注目してみると、柔らかな描写とは裏腹に芯のあるシャープな解像をしていることが分かります。
「絞りの利く」レンズではありますが、絞りや光線状態だけでなく露出によっても見え方に変化があり、撮るごとに新鮮な発見があります。
作例の下部、中央あたり位置する固定部がシャープに解像している通り、本レンズはF4.0よりも絞り込むことによって申し分のない解像感を得ることができます。ここでは柔らかさと解像感のバランスでF2.8と4.0の間を選びました。
こうした側面を目の当たりにすると、本レンズの紹介冒頭で「やってることは高性能レンズと同じ」というフレーズに対する納得感があるかと思います。
NOKTON 50mm F1 Aspherical
フォクトレンダーのフルサイズ用レンズとしては最も明るいF1.0のスペックを持っていることで、このレンズに興味を持っている人もいるのではないでしょうか。
このレンズは超高精度なGA(研削非球面)レンズを第一面に採用することで、超大口径でありながら性能とサイズバランスを両立することが出来ています。
ちなみに「GAレンズが採用されたレンズがバカ売れすると困ります」と担当者が語るくらいにはコストと時間の掛かるレンズ部材だったりもします。高価な製品ではありますが、そうした製品の裏側を知ると、一転してとてもお買い得に感じられるから面白いものです。
薄暗い林の中でもISO 感度設定やシャッタースピードで妥協することなく撮影ができるのが、F1.0の真骨頂でしょう。
F1.0の開放絞りでもピント位置は非常にシャープ。超大口径レンズに触れたことがあるユーザーにとっては信じられないくらいの性能であることが分かるかと思います。というのも、レンズを明るくすると収差も大きくなるので、これを抑える工夫を設計でしなくてはならないからです。他社さんのF1.2のレンズが押し並べて巨大であることを目の当たりにすると、各社困難なミッションにチャレンジしていることはが分かるかと思います。
AFレンズとMFレンズでは要求されるものが異なるので、同列に語るのは不適切ではありますが、それでも本レンズは500g未満で高性能なF1.0を実現しているということに驚きを禁じえません。
F2.0であっても不思議と凄く絞り込んでいる気持ちになってくるのが本レンズの特徴かも知れません。
精度の非常に高いレンズなので、撮影時の微妙な前後動によってピントが壁に行ってしまったことが拡大すると分かります。
意図通りに黄色いオブジェクトにピントが合焦したカットもありましたが、全景で見るとコチラのほうが雰囲気良く思えましたので敢えて選びました。ピント位置の僅かな違いによる表情の違いが楽しめますし、被写体に合焦させることが必ずしも正解ではないという発見があります。
軟調な絵作りのL.クラシックネオとの相性も良さそうだと感じました。F1.0の非常に薄いピントと相まって独特の表現となりました。木の幹を撮った写真と同じ絞り値であっても光線状態や絵作り設定と構図によって全くことなる表情をみせてくれるので、使いこなし甲斐があります。
LUMIX S9は最高で1/8,000秒までしか選択出来ませんので、晴天日中シーンでは絞るかNDフィルターなどを用意したいシーンもあるでしょう。
ULTRON 75mm F1.9 MC
最後に紹介するのが「ULTRON 75mmF1.9 MC」となります。名称にMCと付いていることから、ここまで読み進めていただいた方であれば「これはSCもあるのだな」とピンと来るハズです。
MCはマットブラックの仕上げですが、SCでは少し光沢感のあるブラックペイントとなり、シルバーカラーは現状では用意されていません。
本レンズも75mmのF1.9というスペックにも関わらず、本体重量は僅か290gに抑えられています。
ところでフォクトレンダーレンズの開放F値の設定は、一般的なレンズのように(写真的な観点では)キリの良いF2.0やF1.4となっていないことに「あれ?」と思うかも知れません。これは性能とサイズバランスを追求した結果として、例えばF1.8としては性能保証できないからF1.9としよう、と真摯に検討した結果によるものです。カタログスペックだけで言えば訴求力に欠けてしまいますが、コシナの真面目さを表しているようで、筆者としては頼もしく感じます。
ほぼ至近端で撮影しています。ピント位置では繊細に解像し、そこから離れるに従って柔らかく滲む美しい描写であることが分かります。中望遠レンズですが、LUMIX S9の手ブレ補正が強力なのでかなり気楽に撮影できました。
撮影中は描写性能が高いことと画角のちょうど良さから、手の届く範囲のモノに視線を集中させているかのような感触がありました。レンズがコンパクトなので大袈裟な感じがなく、しかも大口径なので、まさに痛快でした。
ガラス越しのシーンではAFよりもMFの方が撮影が快適だったりもします。こうした輪郭のハッキリした対象を狙っていると、僅かなピントコントロールで光が滲んだりシャープに結像したりする様子がLV表示からも分かります。体験として面白く、慣れてくると敢えてピントを甘くしたり、といった描写のコントロールを積極的にやりたくなります。AFレンズではこうした発見に至りにくいということもあり、マニュアルレンズとミラーレス機の組み合わせが持つ醍醐味のひとつではないでしょうか。
都市のビル景なども本レンズの得意分野だと感じました。艶のある描写で肉眼よりも美しく感じられ、出先にも関わらず思わずニヤリと表情が緩みます。
MF時には被写体が浮き上がってくる感が強く、背面モニターを眺めていても没入感があります。この感覚はやはり中望遠レンズならではのものでしょう。
まとめ
フォクトレンダーレンズに触れてみると操作感の良さに感激すると思います。例えば、ピントリングの滑らかでしっとりとした感触は、公式でもアピールされている通り、熟練の技によるヘリコイドラッピング」という作業により実現されています。
一例として紹介しましたが、こうした数値性能に現れない、いわば非効率な部分にも真摯なこだわりを持って取り組まれていることが、どの製品に触れてみても同様に伝わってきます。