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ニコン Z 9で選びたいCFexpressとは?上田晃司さんに聞いたプログレードデジタル「COBALT」の実力

Z 9を愛用する上田晃司さん。自身が運営するショップ「MONO GRAPHY Camera & Art」にて

ニコン Z 9(以下Z 9)は、有効4,571万画素で約20コマ/秒の連写性能と、4K UHD/120pでの動画撮影可能な同社フラッグシップミラーレス機だ。しかしその性能を生かすには、記録媒体であるCFexpressの性能も重要になってくる。ニコンでは連続撮影可能コマ数を「メモリーカードProGrade Digital COBALT 1700R 325GBを使用した場合」として公開している。

Z 9のテストに開発段階から関わり、現在は3台のZ 9を業務で活用する写真家の上田晃司さんに、プログレードデジタルのCFexpress「COBALT」(コバルト)シリーズについての感想を聞いた。またインタビューには、プログレードデジタル日本代表の大木和彦さんにも参加してもらっている。

上田さんが所有する3台のZ 9

やっぱり速かった「COBALT」

——発売前からZ 9をテストしていた上田さんですが、COBALTとの組み合わせで使われたことはありますか?

上田晃司さん: Z 9のテスト機に付属していたCFexpressがCOBALTでした。ニコンはZ 9の最大連続撮影可能コマ数を「RAW(高効率)で1,000コマ以上」と公式に発表していて、これはCOBALTを使用したときの数値だと記載されていますね。

テストの最中、実際にZ 9にCOBALTを装着し、連写速度が落ちるまで連写を続けてみたことがあります。記録は「RAW(高効率)」に設定、もちろん連続撮影コマ数はZ 9で最大の約20コマ/秒です。

すると1,000コマどころではなく、平均で1,200コマくらいまで撮れてしまいました。一方他社のCFexpressだと、高速記録をうたっているものでも450コマくらい、中には80コマで連写速度が落ちるものもありました。80コマではXQDを使うのと変わらないですよね。

そのテストでは静止した被写体のほか、走り去る電車も撮っていたのですが、20コマ/秒で1,200コマというと、単純計算で最高速度のまま1分間連写し続けられます。電車が通り過ぎてもまだ撮れちゃうんです。

Z 9の設定で「RAW(高効率★)」にした場合でも、COBALTなら500コマ以上撮れています(編集部注:ニコン公式発表では685コマ)。こちらも他社の高速カードでは164コマくらいと差がありました。他社のCFexpressと比べて、COBALTはだいたい3倍くらい余裕がある印象です。

650GBが必要なわけ

——CFexpressのCOBALTには325GBと650GBがあります。

上田晃司さん: ちょっと中途半端な数字ですよね。これ何か理由があるんでしょうか。

大木和彦さん: 現在のフラッシュメモリーは3D NANDという、垂直にも積層した構造になっています。従来の2Dの構造では128などキリのよい数字は必然だったのですが、3D NANDでは関係なくなっています。実はなんでもいいのですが、やはり今までの慣例からして変えちゃうのは変かなというところはありますよね。

実のところ325GBは、1TBの3分の1です。1TBぶんのフラッシュメモリーを使って325GBのSLCとしています。ちなみに、650GBでは2TBの3分の1という具合です。

——写真だと325GBでも十分という気がしてしまいますが、650GBの使い道について上田さんはどう思いますか?

上田晃司さん: そうですね。ただZ 9は動画撮影で使うことが多いので、325GBだとちょっと心もとない。長めのインタビューやセミナーの場合は2時間くらいなので、その長さを録り切れるかどうかは重要になってきます。650GBのカードなら8Kで2時間59分撮れるようなので安心です。

もちろん、Apple ProRes 422 HQ(10bit)での4K撮影だったり、今後ファームウェアアップデートで対応するという8K UHD/60p(12bit)のRAW動画だったりで撮るとなると、もう少し容量が欲しくなるかもしれませんけどね。

——Z 9にはCFexpressを2枚入れているそうですが、動画撮影だと写真のように同時記録ができませんよね。

上田晃司さん: 確かに動画の場合、Z 9であっても2枚のカードへの同時記録は不可能です。でも1枚がいっぱいになると連続で次に切り替わるので、やはり最初から2枚入れておくほうが安心ですね。動画撮影の現場では10枚くらいカードを持って行くのですが、その場で抜き差ししなくて済むのは助かります。

Z 9はCFexpress Type B用のスロットを2つ備えている

速さを引き出す純正カードリーダー

——動画記録のためであればCOBALTのような高速カードでなくてもいいのでは?

上田晃司さん: むしろファイルサイズが大きくなる動画だからこそ、高速なカードが必要です。撮影したデータは、まずパソコンの外付けSSDにコピーするのですが、COBALTのような高速なカードなら、時間を大幅に短縮できます。写真だと1日撮り続けてもそれほどではないですが、動画は複数のカメラで同時に撮影していることもありますし、データ量は大きくなりがちです。とにかくメディアからSSDまでの転送が、現地だったりホテルだったり、自宅ででもですが、一番時間がかかるところなので、その時間が短縮できれば効率はいいですよね。

——そういう意味では、パソコンにデータを送るカードリーダーの性能も重要になりますね。

色々試してみて、プログレードデジタルの純正カードリーダーに落ち着きました。CFexpressの場合はまだ選択肢が少ないこともありますが、カードの性能を引き出すには、しっかりしたブランドのカードリーダー、結局はメディアメーカーの純正品を使うようにしています。

大木和彦さん: ありがとうございます。若干、手前味噌にはなるのですが(笑)、CFアソシエーションやSDアソシエーションに所属しているメーカーのカードリーダーなら、カードの性能を熟知しているので安心だと思いますよ。

プログレードデジタルのCFexpress対応カードリーダー。左がCFexpress Type B/SD UHS-IIデュアルスロットタイプ(USB 3.2 Gen2対応)、右がCFexpress Type Bシングルスロットタイプ(Thunderbolt 3専用)

“UNSTOPPABLE”はカード次第?

——先日私もZ 9で撮ることがあったのですが、写真でもつい撮り過ぎてしまうカメラに思えます。

上田晃司さん: メカシャッターがなくて、シャッター音がないのはたしかに理想なのですが、音がしないぶんちょっと撮り過ぎちゃう感じはあります。連写でなく単写でもポンポン撮ってしまいます。1枚でいいところを5枚くらい撮ってしまったり。もちろん約20コマ/秒の連写だと、たった2秒でも約40コマに。カードの性能が重要なカメラだと感じます。

先程も話に出ましたがCOBALTなら1,200コマですから、ニコンの宣伝文句じゃないけど、ほんとUNSTOPPABLE(止められない)です。ただ、他社のカードだとちょっとSTOPPABLE(止められちゃう)な感じになるかもしれません。

Z 9を持っている人も増えているんですが、まだXQDという方も多いんですよね。Z 9のポテンシャルはメモリーカードの性能に大きく左右されますから、XQDからCFexpressに買い替えるいい機会かもしれません。

ニコン公式ページより。“UNSTOPPABLE”はZ 9の可能性と先進性を表現する強烈なキャッチコピーだ

動画を撮る人こそ「RefreshPro」を

上田晃司さん: そういえば大木さんに聞きたいのですが、動画を撮る場合も「RefreshPro」を活用した方が良いのでしょうか?

大木和彦さん: はい。静止画だけでなく、動画こそ撮る前にRefreshProでメモリーカードのリフレッシュをしておいて欲しいです。

何度も書いたり消したりしていると、いわばメモリーカードは(内部的に)汚れている状態になります。これを奇麗にして書き込める状態にするためにガベージコレクションというお掃除がフラッシュメモリーのコントローラーによって自動的に行われます。

メモリーカードいっぱい近くまで大量のデータを連続して書き続ける動画撮影は、ガベージコレクションが発生しやすい条件となり、速度が大幅に低下してしまうことがあります。なので撮影前のリフレッシュが有効です。

上田晃司さん: すぐ使うようにします。インタビューの撮影だと、途中で止まってもちょっと声かけづらいですしね。

大木和彦さん: リフレッシュはWindowsやmacOSが持っている機能でもできますが、すごく時間がかかります。一方プログレードデジタルの対応カードとカードリーダーの組み合わせなら、RefreshProのサニタイズ機能を使うことで、最大でも3分程度で終わりますよ。

カメラの進化でメモリーカードの重要性を再認識

——お話を総合すると、Z 9の性能を引き出して使用するには、やはりCOBALTを使うのが良いと思われますか?

そうですね。ミラーレスカメラが高速化する一方、4Kや8Kといった大きなサイズの動画を撮る機会も増えました。カメラとメモリーカードの組み合わせが、より大切になってきた印象です。ニコンも公式の資料で取り上げていることもありますが、実感としてもZ 9でUNSTOPPABLEでいきたいなら、現状ではCOBALT一択といって良いでしょう。

人物・製品撮影:曽根原昇
制作協力:プログレードデジタル