何がすごいの? キヤノンのアプリ

Vol.03 Digital Photo Professional Express×山本春花

スマートフォンでRAW現像をしたい

RAW現像は思い通りの写真に仕上げるために欠かせない作業。カメラ内でも行えますが、スマートフォン用のアプリを使うことで、直感的でさらに細かく明るさや色を調整できます。ロケ現場でポートレートを撮ることが多い山本春花さんに「Digital Photo Professional Express」を試してもらいました。

山本春花

フリーランスフォトグラファーとして雑誌、CDジャケット、広告の撮影などで幅広く活動中。2014年より女性モデルを被写体としたポートレートシリーズ「乙女グラフィー」の連載を開始。2025年4月に『MY LOVE is COOL』を上梓

※本企画は『デジタルカメラマガジン2025年11月号』より転載・加筆したものです。

場所と時間を選ばずにRAW現像ができる

Digital Photo Professional ExpressはiPhoneやiPad用に開発されたRAW現像アプリ。撮影時の空いた時間などを使って気軽に補正処理ができる。撮影後、Camera Connectアプリを使ってiPhoneやiPadに画像を転送する。アプリを起動し、転送した画像ファイルを開くと補正が始められる。

Digital Photo Professional Express
[対応OS]
iOS 17.7/18.3
iPadOS 17.7/18.3
[利用料金]
100円/31日間
対応機種と環境をチェック

本アプリは対応するカメラが限定されているほか、iOSも必要な仕様を満たす必要があるので、事前にWebページを確認して、使用できるかを確認しておこう。

Digital Photo Professional Express

パソコン版のDigital Photo Professionalに比べると機能は絞られているが、その代わりに補正で写真が破綻することがなく、思い描いたイメージに仕上げられる。基本的に無料で使えるが、編集内容を記録したり、補正した画像を書き出す場合は定期利用の登録が必要となる。30日の無料トライアルも用意されている。

タッチ操作で直感的にRAW画像の閲覧・編集・現像が可能

画面内の「レンズ補正」「明るさとガンマ」「カラー」などの編集機能のアイコンをクリックすると調整メニューが表示される。スライダーを動かすと結果がすぐに反映される点が良い。写真をダブルタップすると拡大され、スワイプすると写真を切り替えられる。動作はスムーズでレスポンス良く補正ができる。

CR3で保存できるの?

アプリで保存するときはJPEGに変換されてCR2/3保存はできない。

SCENE 01|肌の色を健康的に処理して自然な印象に

撮影時のホワイトバランスのままだと少しクールな印象で、肌も青白く見えてしまう。血色を良くしてモデルの肌の色を健康的に見せつつ、背景の抜けの良さ、爽やかさは保ちたい。ホワイトバランスと、特定色の調整で暖色の補正を行う。

BEFORE
AFTER
キヤノン EOS R5/RF50mm F1.2 L USM/50mm/絞り優先AE(F1.4、1/2,000秒、+0.7EV)/ISO 100/WB:4,550K

ホワイトバランスを「5,000K」にして温かみのある色合いに

肌を健康的に見せるためWBを少しアンバーへ。ただし、背景が黄色くなりすぎないようバランスを見よう

赤とオレンジの彩度と輝度を上げて肌を健康的な色に

特定色の調整で、暖色のみ彩度を上げる。背景とのバランスを保ったまま、肌の色の血色を良くする

SCENE 02|ハイライトを抑えてしっとりとした雨を表現

この日は雨が降っていたため、窓についている細かい雨の雫と、しっとりとした空気感を伝えたいと考えた。元データでは窓についた雨粒のディテールが見えなかったので、ハイライトを抑えて白飛びを軽減した。さらにホワイトバランスをブルー側へ調整し、露出を少し抑えることで雨のしっとりとした雰囲気を作り出した。

BEFORE
AFTER
キヤノン EOS R5/RF50mm F1.2 L USM/50mm/マニュアル露出(F1.8、1/2,500秒)/ISO 640/WB:4,950K

明るさを下げてハイライトを抑える

窓の外とモデルのワンピースの明るい部分が白飛びしているので、明るさを補正する。ここは微調整で良い

ハイライトとシャドウで階調をフラットに整える

暗くなったモデルを浮き立たせるためシャドウを持ち上げ、ハイライトを下げて窓のディテールを出した

トーンカーブで髪の毛を少し持ち上げる

髪の毛の黒つぶれを戻すためにトーンカーブで微調整した。交差している箇所に点を打つと調整しやすい

パソコンよりも手軽で高速にキヤノンの色がその場で手に入る

iPad/iPhone用RAW現像アプリDigital Photo Professional Expressは、撮影現場でとても頼りになる存在だ。撮影後にキヤノンのカメラからアプリを経由してRAWデータを転送でき、その場で露出やホワイトバランスを調整できるのが大きな魅力。

私はキヤノンの色を好んでおり、現像時もJPEGを見ながらその色に合わせるように補正している。Digital Photo Professional Expressは純正アプリゆえにキヤノンらしい色再現がそのまま反映され、肌の血色や質感を正確に確認できるため、モデルやクライアントに即座に仕上がりイメージを見せられる。

ロケ撮影の合間や移動先でもiPadやiPhoneで補正作業を進められるのも心強い。現場でおおまかな仕上げを固めておくことで、帰宅後のパソコンでのRAW現像作業を効率化できるのも利点だ。出先でも“キヤノンの色”を確実に再現できる点が、このアプリの強みである。

山本春花のメイン機材

RF50mm F1.2 L USM
EOS R5

高解像と大口径の魅力を存分に生かせる組み合わせである。EOS R5の精細な描写力と高速AFにより、開放F1.2でも被写体の表情を正確に捉えられる。大きなボケは柔らかく立体感があり、ポートレートから日常スナップまで被写体を印象的に際立たせる。

(やまもとはるか)東京都生まれ。フリーランスフォトグラファーとして雑誌、CDジャケット、広告の撮影などで幅広く活動中。2014年よりブログで女性モデルを被写体としたポートレートシリーズ「乙女グラフィー」の連載を開始。若い女性に対するコンプレックスの解消や自らの「老い」に向き合うことをテーマとしており、同年開催されたアートフェア「台湾フォト」に出展。2018年8月に『乙女グラフィー』(スタンダーズ)、2023年4月に『乙女グラフィー2』(メタ・ブレーン)、2025年4月に『MY LOVE is COOL 』を上梓