私はこれを買いました!

約6万円で味わう「収差」の魅力

キヤノン RF45mm F1.2 STM(中原一雄)

年末恒例のお買い物企画として、写真家・ライターの皆さんに、2025年に購入したアイテムを1つだけ紹介していただきました。(編集部)

優等生ばかりの中で出会った「遊び心」

今年「買って良かったレンズ」を挙げるとしたら、迷わず キヤノン RF45mm F1.2 STM です。

EOS Rシステムを本格的に使い出してから5年以上経ち、仕事に必要な高性能レンズはほぼ一通り手元に揃ってしまいましたし、新しく出るRFレンズはエントリーモデルであっても非常によく写る“優等生”ばかり。そんな中で登場したこのRF45mm F1.2 STMは久しぶりに「面白そうだ!」と心を掴まれた1本でした。

最大の理由は、描写の方向性とビックリするような価格。本レンズはあえて収差を残した設計で、逆光ではフレアやゴーストもしっかり出る。オールドレンズを思わせるような“遊び心”を感じさせてくれます。往年の名玉「EF 50mm F1.2L USM」を参考にしたといわれ、確かにあの少し癖のある、しかし忘れがたい描写を体感出来るレンズです。そんなレンズがこの物価高のご時世に約6万円で手に入ってしまうのですからもう買うしかありません(笑)

EF 50mm F1.2L USMはフォーカスシフトもあり、決して扱いやすいレンズではありませんでしたが、このRF45mm F1.2 STMは味のある描写を残しつつ、AFや操作性は現代のRFレンズらしく快適。STM駆動のAFは動きこそおっとりしていますが、スナップ用途では全く気になりません。

F1.2という明るさにもかかわらず、フィルター径は67mm、重量は346gと非常にコンパクトなのも良い点で、日常のスナップに気軽に持ち出せるサイズ感がお気に入り。純正レンズフードは人気すぎて手に入らなかったため、現在はF-Fotoのねじ込み式メタルフードを装着しています。72mmのレンズキャップが装着できるため、フードを付けっぱなしで運用できる点も気に入っています。

開放F1.2ではRFレンズとは思えないほどの球面収差や色収差、フレア、ゴーストが盛大に出ますが……正直、それがいい。全体にボケやすいレンズなので、ピント面は甘めながら画としてのバランスは取れており、不思議と破綻しません。一方でF2.8まで絞ると一気にシャキッとし、F5.6ではLレンズと遜色ない解像感を見せてくれます。この振れ幅の大きさも、このレンズの楽しさです。

エントリー機ですら驚くほどシャープな写真が撮れてしまう現代において、レンズの個性や味を噛みしめながら、それでいてRFシステムの快適な操作性を享受できる。本レンズは、そんな少し贅沢な撮影体験を与えてくれます。実売価格が6万円前後と手に入れやすい点も含め、今年もっとも買って良かったと感じた1本です。

逆光で撮るとこの通り、ふわふわな描写となりますが、発生するゴーストも柔らかく上品なものになることが多いです。この描写をMFのサードパーティーレンズではなく、快適なAFを使いながらRFレンズで撮れることに大きな価値があると感じます
EOS R5 MarkII/RF45mm F1.2 STM/(1/20,000秒、F1.2)/ISO 100

近況報告

今年は地元での撮影の仕事をこなしつつ、YouTuberに転身したような生活を送っていました。写真編集よりも動画編集をしていた時間の方が長いかもしれません(笑)カメラバッグを2つ、Endurance クイックアクセスショルダーと豊岡鞄とコラボしたEnduranceed スリングをリリースしたのでこちらもどうぞよろしくお願いします!

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワークショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主宰。ライフワークは写真をより楽しむための情報を発信すること。2021年より北海道に移住して活動中。