特別企画
「深度合成」がブツ撮りを変える!
OLYMPUS OM-D E-M1が実現する新しいマクロ撮影
2015年12月15日 07:00
OLYMPUS OM-D E-M1のファームウェアVer. 4.0が、11月26日に公開された。今回で3回目になるE-M1の大規模ファームウェアアップデート。早速試してみたが、機能改善だけでなく新機能も加わり、別のカメラかと思うほど進化している。オリンパスがいかにユーザーを大事にしているかがうかがえるアップデートだ。
追加された機能のうち、注目度の高いのが「深度合成モード」だろう。
この機能は、1回の撮影で手前から奥までピント位置を変えながら8回撮影し、撮影後にカメラ内で合成、1枚の画像にしてくれる機能だ。
こういったテクニックはプロの世界では当たり前だったが、今まではフォトグラファーがマニュアルフォーカスでピント位置を変えながら撮影し、Photoshopなどの編集ソフトを使い合成していた。撮影枚数にもよるが、基本的に手間が掛かる。
しかしE-M1の深度合成モードは、自動でフォーカスを変えながら撮影、さらにカメラ内で1枚の画像にしてくれる。編集ソフトによる手法より、簡単かつ便利になっているのだ。
深度合成モードではいくつか制限がある。1つ目は使用できるレンズ。「M.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro」「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」「M.ZUIKO DIGITAL ED 40-150mm F2.8 PRO」の3本のみが利用できる。また、深度合成された画像は、上下左右でそれぞれ約7%画角が狭くなる。この2点は始める前に覚えておこう。
被写体のすべてにピントあわせるには……
こうしたピント位置を変えながら撮影するテクニックが、なぜ便利なのか。それは近接撮影になるほど被写界深度が浅くなるからだ。
被写界深度とは、ピントが合って見える範囲のこと。被写体に近づくほど被写界深度は浅くなり、特に小さな被写体を画面一杯に撮影しようと近づくと、どうしても被写体のすべてが被写界深度に入りきらず、その一部がボケてしまう。
もちろん絞りを最大値まで絞ることで、被写界深度はある程度まで深くなる。ただし今度は、「小絞りボケ」や「回折現象」により、解像感が大幅にダウンする。
プロがフォーカスをずらした写真を撮り、編集ソフトで合成する理由は、こうした理由があるから。レンズのもっとも画質が良くなる絞り値で撮影し、あとから合成。すると回折現象を回避しつつ高画質のまま、被写体の手前から奥までにピントを合わせた写真が得られるのだ。
前置きが長くなったが、E-M1の深度合成モードを使うと、面倒なフォーカスずらし&合成をカメラ内で自動で完了できる。
今回は深度合成を使いながら、自慢のコレクションアイテムを格好良く撮影する方法を紹介しよう。
深度合成モードの使い方
深度合成モードを使うには、メニュー画面から「撮影メニュー2」→「ブラケット撮影」→「Focus BKT」→「深度合成ON」を選択する。
「フォーカスステップ」という項目もあるが、これはフォーカスをずらす間隔を設定するもの。またストロボを使う場合は、ストロボのチャージ時間に合わせて「充電待ち時間」を調整できる。
実際に撮影してみた
今回はボールペン、時計、フィルムカメラを撮影した。その結果を見てもらおう。物撮りの際の定番的なテクニックについても述べている。
ボールペンを撮る
つややかな金属製品を撮影する場合は、ハイライトとシャドーのコントロールが重要だ。ただ単に、ライトを当てただけでは質感が出ない。
シルバーの質感などは白飛びしやすいので黒い紙などを被写体のシルバー部分に入れて引き締めよう。また、黒い紙を入れてハイライト部分が無くなってしまった場合は、鏡やレフ板を入れてハイライトを入れてあげるとよい。
レンズはM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macroを使用した。こうした細長い被写体を作例のように斜めから撮影すると、F22まで絞っても残念ながら被写体全部にピントは合わない。また、回折の影響でシャープさも失われている。
そこで、絞りをF5.6にして深度合成モードを使ってみた。全体にしっかりとピントが合い、全体的にシャープな画像に仕上がっているのが分かるだろう。
時計を撮る
次にクラッシックな時計の文字盤を撮影した。レンズは再びM.ZUIKO DIGITAL ED 60mm F2.8 Macro。
注意したいのは、時計のガラス部分にライトが反射しないこと。ライティングもやや逆光気味で行う。また、時計のギアなどにメリハリをつけるため、レフ板を入れてハイライト部分を強調。さらに、時計のエッジ部分は白飛びしないように黒い紙を入れている。
時計の文字盤まで寄ると、F22にしてもピントが奥まで合わない。
そこでF8に設定し、深度合成モードで撮影してみる。手前から奥までしっかりとピントを合わせることができた。
被写体との距離が近いときは、深度合成モードを使う場合も、F値を少し大きめに設定しておくと安心だ。撮影には時間は掛からないので、被写界深度を確認しながらテスト撮影してみるとよいだろう。
フィルムカメラを撮る
ライティングはカメラの質感を出すためメリハリをつけるようにした。逆光目にメインライトを入れ、シルバーのレフ板を前に起き、金属感が出るようにしている。また、35mm判換算で70-100mm相当の画角で撮影すると、形が変わらず、お薦めだ。今回はM.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROの40mm(80mm相当)で撮影した。
予想はしたものの、F22まで絞っても完璧にはピントが合っていない。回折によりカメラボディの細かな質感は失われていることがわかる。
そこでF7.1に設定し深度合成モードで撮影するとレンズ先端からボディまでしっかりとピントが合っているのが分かる。そして、回折がおこっていないため、ボディーの細かな模様などしっかりと描写できていることがわかる。
なお、カメラを格好良く撮影するには、レンズにキャッチライトをきれいに入れて欲しい。ただし今回の作例ではレンズの前玉が鏡筒の中に入っているため、キャッチライトは入れていない。
まとめ:料理やテーブルフォト、プロユースにも
深度合成モードで被写界深度をカバーできなかったり、さらに細かく合成したい場合も出てくるだろう。その場合は、今回のファームアップの目玉機能の一つである「フォーカスブラケット」でカバーできる。最大で999枚まで撮影でき、レンズにも制限がない。深度合成モードではカバーできない場合や、対応レンズ以外のレンズを使用したい場合に使うとよいだろう。撮影した画像は、市販のソフトで合成可能だ。
今回紹介した被写体以外にも、料理や鉄道模型、雑貨など、あらゆる小物に被写界深度モードは役立ちそうだ。操作もシンプルなので、アマチュアの方からプロまでぜひ活用していただきたい。
協力:オリンパス株式会社