特別企画
澄んだ空気に少ない人出…冬こそ花火撮影がオススメ!
そして明るすぎる花火とニコンD810の関係性についての考察
2015年12月11日 17:22
冬に撮る被写体といえば、イルミネーションに星空、初日の出……ちょっと待ってください! 花火を忘れていませんか? そう、夏の風物詩の代表格、あの花火です。
ここでは花火写真家の金武さんに、冬の花火作品とその魅力についてご寄稿いただきました。
加えて後半には、ニコンD810による花火撮影について検証をお願いしています。D810の性能は、金武さんが最近悩んでいるという「明るすぎる花火」の問題を解消してくれるのでしょうか。(編集部)
秋冬の花火の魅力
「花火は夏」とイメージする人は多いと思うが、花火大会は秋や冬でも開催されている。実は花火写真を撮る上で、夏以外の花火にはオススメしたい点がある。
1)湿気が少ないため煙が少ない。
2)空気が澄んでいるため、花火が色鮮やか。
3)混雑していない。
写真撮影の点で見ると、夏よりも秋冬の花火大会の方が実はオススメなのだ。混雑していないのも有利な点で、例えば日中から場所をとらずとも、夕方に到着して場所の確保ができる会場が多い。三脚を立てる場所での争いごとも少ないのだ。
12月は全国で花火が開催されている。
今年、撮影に行った花火大会は、長野えびす講煙火大会(11月23日)、秩父夜祭(12月3日)、お台場レインボー花火(12月5日)、熱海海上花火(12月6日)の4回。
この写真は長野県のえびす講煙火大会(11月23日)のものだ。風下で撮影していたため銀冠菊の火の粉が覆い被さる様に降り注いだ。
長野えびす講煙火大会の見所の一つはワイドスターマインだ。音楽とのシンクロも素晴らしい。
ワイドスターマインの一場面。花火が風で流され空全体を包み込むような感覚になった。
秩父夜祭では美しい尺玉が対打ち(2発ずつ)で次々と打ち上げる。
熱海海上花火大会のデジタルスターマインは物凄く明るい。どんな花火が上がるかを前もって分かっていたので、ND8フィルターを使用して適正露出で撮った。次の花火の明るさが事前に分かっていると対策がとれる。大きな花火大会では花火プログラムが販売されているので利用するのも良いだろう。
お台場レインボー花火は、毎週土曜19時から10分間だけ打ち上げがある。熱海では12月に3回ほど。1回あたり25分間だ。岐阜県の下呂温泉でも打ち上げがあり、12月と1月に花火が上がる。
クリスマスや大晦日に花火が打ち上げられる地域は多い。「花火は夏のもの」と決め付けず、ぜひ冬の色鮮やかな花火を楽しんでいただきたい。ただし、防寒対策はしっかりと。
D810なら小絞りボケを回避できるか
ところで、花火はとても明るい被写体だ。特に明るいのが、銀冠菊のスターマインやナイアガラ、花雷。最近、銀冠菊や花雷はどこの花火大会でも必ずと言っていいほど打ち上がっている。明るいので小規模の大会でも賑やかさを演出できるのだ。
こうした最近の花火は明るいを通り越して、もはや「眩しい」レベルの花火だといえる。これまでの花火と同じ露出ではオーバーになるため、私は常にISO100にND4フィルターを装着し、その上でF16以上に絞って撮影することが多い。
よく知られている通り、絞り込むと回折現象が生じて、シャープネスが低減する。絞れば絞るほど回折現象の影響が大きくなる。しかし明るめの花火はどうしても小絞りを使用することになる。
では、絞り込む必要を少しでも減らすため、低感度側の拡張感度で撮影するとどうなるか。
良いと考え試してみたが、減感して撮った写真はダイナミックレンジが狭くなったり、コントラストがキツくなったり、色乗りが悪くなってしまう。やはり拡張ではない、標準感度の中で一番低い感度を選んだ方が良いと感じている。
一般的なカメラの最低感度はISO100に設定できるカメラが多いが、ニコンD810の最低標準感度はISO64。ISO64ならば小絞りを多少なりとも回避できるはずだ。D810で花火を撮ると、回折現象とダイナミックレンジがどうなるか検証してみた。
使用した機材はD810、AF-S NIKKOR 14-24mm f/2.8G ED、リモートコードMC-36A、三脚。
F20で撮影した写真を見ると充分に綺麗な写真が撮れている。拡大して見ると多少の回折現象が現れているが、私の使用範囲では問題ないと感じてる。
参考までに、回折現象が明らかに分かる写真を掲載しておく。拡大してみてほしい。
花火の明るさは様々だ。暗い和火花火から眩しい花雷まで、明暗差が激しい。
明暗差の激しい花火が一緒に上がるスターマインの場合、暗い花火が露出アンダーになるか、または明るい花火が露出オーバーになってしまうことが多々ある。どちらも適正露出で撮るのは至難の業だ。
ダイナミックレンジが広いカメラなら、多少なりとも露出アンダーや露出オーバーが回避できるのではないだろうか。35mm判フルサイズの撮像素子を採用するD810は、どの程度のダイナミックレンジが広いかを見てみよう。
いつも使っているD600でも、同じような花火を撮影してみた。撮影の都合上、D810とはレンズが異なっているのは注意されたい。
設定の違う2台のカメラでどちらも適正露出で写るように絞りを選び同時にリモートコードのシャッターを押して撮影した。全く同じ露出にはならなかったが、ダイナミックレンジの判断はできる。
結果はD600に比べてD810はダイナミックレンジが広い。D600も健闘しているが、スターマインなどで花火が重なり露出オーバになってしまう場面でも、D810ならばわずかに有利だと感じた。
まとめ:やはりD810は「明るい花火」に有利だった
ISO100やISO200がベース感度のモデルに比べ、ISO64が標準感度として使えるD810。NDフィルターはいまだ必要なものの、他のモデルより絞らなくて良いため、小絞りボケに強いのはうれしい点だ。ダイナミックレンジも広く、花火の撮影には適したカメラだと判断したい。
もちろん、D810以外のカメラでも花火撮影は可能だ。最新モデルが出るたびに花火撮影は進化するだろう。D810以外のモデルや、他の機種だとどんな結果が出るのか? いずれ検証してみたい。