特別企画
沖縄2泊3日旅行!開放感のせいで撮り過ぎたかも…
2,000枚の写真を楽々さばくPCスペックとは?
Reported by 曽根原昇(2015/4/24 12:17)
カメラマン、ライターなどと呼ばれる仕事をしていると、数日ぽっかり予定のない日ができてしまうことが間々あるものだ。フリーランスという身分なので喜んでばかりもいられないが、せっかくできたお休みは有意義に過ごさねば!と考え、旅にでることにした。
目的地として選んだのは沖縄。学生時代(もう20年ほど昔の話である……)に飛行機代を大奮発して訪れたことがあるけれども、今は低価格で飛行機に乗れるLCCがあるので、時間さえあればわりと気軽に行くことができる。20年前と比べて、沖縄はどのくらい様変わりしているのだろうか。東京はみごとな雨だったけれども、着いたらきっと晴れてるさと、能天気にワクワクしながら成田を発ったのであった。
ちなみに、今回の旅行に持っていったカメラとレンズはこういう布陣。
ソニー
・α7 II
・Vario-Tessar T* FE 24-70mm F4 ZA OSS
・FE 24-240mm F3.5-6.3 OSS
ニコン
・D810
タムロン
・SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD(ニコン用)
・SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(ニコン用)
軽量なミラーレス機と高画素な一眼レフに、焦点距離15mmの超広角から240mmの望遠まで、いずれも優れた描写性能に手ブレ補正機構を備えているという完璧な布陣に、われながら感心したものである。
しかし、その隙のない装備(全部持つと結構重い)が「気軽な旅」という本来の目的からいきなり逸脱しており、当然のことながら撮れる写真の総数は膨大な量になるということなど、この時点ではちーっとも考えていないのであった。
やちむん通り〜金城町石畳
さて、約3時間のフライトを終えて那覇空港に到着すると、天候は東京と同じく雨。青い空に青い海を期待していただけに、ちょっぴり残念だったが、南国の天気は変わりやすいから直ぐに良くなると勝手に考え、とりあえずは予約したホテルまでレンタカーで向かった。
ホテルは、沖縄で最も活気が溢れる国際通り沿いにとった。さっそく、カメラ片手にホテルをでて、にぎやかな国際通りを散歩してみたのであるが、少し裏通りを奥にいくとノスタルジックな雰囲気を残したフォトジェニックな町並みに出会う。琉球王朝時代からつづく焼き物の町として有名な壺屋地区の「やちむん通り」だ。あちこちにある店舗に並べられたシーサーや壺などの焼き物が、那覇まで来た感覚を盛り上げてくれた。
気分が良くなったところでまだ明るいうちにと思い、今度は足を伸ばして首里城近くの金城町へ行ってみた。金城町には琉球石灰岩が敷き詰められた伝統的な石畳道が広範囲に現存している。しっとり雨に濡れた石畳道は風情があり、写真にすると豊かな質感を表現できるのでますます気持ちを盛り上げてくれたものだった。
ここまでの撮影枚数はすでに405枚。JPEGとRAWの同時記録に設定していたためファイル数は倍の810枚である。
牧志公設市場〜沖縄料理
金城町石畳道を一通り散歩したあたりで夜が近くなったため、いったんホテルへ戻り、直ぐに有名な「牧志公設市場」に出かけてみた。牧志公設市場は戦後の闇市から始まった市場。豚足(テビチ)や豚の顔(チラガー)、南国らしいカラフルな魚や島豆腐などが所狭しと並べられ、独特の活気が場内に満ちている。
冷やかしているだけでも十分楽しく時を過ごすことができるのであるが、朝からあまりモノを食べずに歩き続け、市場で盛りだくさんな食材を目の前にしてしまったため、那覇に来た感よりも空腹感が大きくなり、我慢できずに近くの沖縄料理の居酒屋へと飛び込んだ。
実は筆者は本格的に沖縄料理を食べるのは初めてのことである。20年前の旅行ではあまりのお金のなさに1週間キャンプで過ごし、食事も飯盒炊飯にカレーといった粗末っぷりだったのだ。
というわけで、三枚肉の煮付け(ラフテー)、アオブダイの刺身(イラブチャー)、アイゴ稚魚の塩辛(スクガラス豆腐)、ゴーヤチャンプルなどをつぎつぎに注文したところ、これが出てくる料理出てくる料理すべてがうまい!具のほとんどない質素なソーメンチャンプルーもすごくうまい!20年前のあの時、もっとお金があれば、もっと早くこの素晴らしい体験ができたのにと、悔しくなるほどの美味しさだった。
ここまでの撮影枚数は516枚。RAWも含めたファイル数は1,032枚である。
沖縄美ら海水族館
さてさて2日目。天気は……変わらず朝から雨だった。青い空、青い海……残念ながら天気ばかりは文句を言ってもどうにかなるものではない。雨に濡れながら海を撮りに行っても仕方がないので、評判がよく人気の高い「沖縄美ら海水族館」に車を走らせることにした。
が、仕方がないとは思ったものの、この沖縄美ら海水族館への予定変更は大当たり!ビーチに面した施設は壮大で、館内の水槽や展示の規模には圧倒されるばかり。沖縄の海の美しさを存分に体感できる充実の内容だった。
特に、長さ35m、奥行き27m、深さ10mの巨大な「黒潮の海」水槽で悠々と泳ぐ3尾のジンベエザメの姿は、美しく、優雅で、迫力があり、さまざまな角度から時がたつのを忘れて見惚れつづけてしまった。水槽にはジンベエザメだけでなく、マンタやサメなどたくさんの魚が一緒に泳いでおり、その共演も素晴らしく幻想的であった。
ここまでの撮影枚数は1,004枚。RAWも含めたファイル数は2,008枚である。ジンベエザメに見惚れている間に、知らず知らず大量の写真を撮っていたことにこのときは気づいていない。
撮影協力:沖縄美ら海水族館
フクギ並木〜ステーキハウス
沖縄美ら海水族館で大満足した後は、お腹がすいたので近くの食堂で沖縄そばを食し、しばしの休憩をした。休憩中に地図を見ていると「備瀬のフクギ並木」という観光スポットが近くにあるらしいので、寄ってみることにした。
フクギというのはフィリピン原産の常緑樹で、なんでも琉球王朝時代に防風林として人為的に移植されたものだとか。備瀬では集落の垣根として植えられた、およそ2万本ものフクギが高木となり、トンネルのように路地を覆っている。ここまで生長するには200年以上の時が必要とのこと。戦火を越えて残った貴重な沖縄の景観のひとつというわけだろう。
以前、小雨が降っていたが、散歩中はフクギが雨を除けてくれたので助かる。緑の回廊をゆっくりと散策するのはちょっとした森林浴気分で実に心地がよい。晴れていれば日除けとなって暑さを和らげ、樹間からは青く輝く海が垣間見えたことだろう……
しばらくすると、また雨が強くなってきたので、この日の観光(撮影)はこれにて終了。約3時間をかけて国際通りのホテルへと戻ったのだった。
夜は国際通りの店で名物(?)の1ポンドステーキとタコライスに挑戦。約450gと肉だけで相当な量だ。とても食べきれないと心配したが、案外あっさりと食べ切ってしまった。普段と違う沖縄の空気のために、胃袋まで大きくなっていたのだろうか。こうしたアメリカンな雰囲気が楽しめるのも沖縄の楽しみのひとつである。
ここまでの撮影枚数は1,419枚。RAWも含めたファイル数は2,838枚である。雨だというのに大した数を撮っていたものだ。
玉泉洞〜ジェフハンバーガー〜国際通り
いよいよ沖縄最終日、天気はやっぱり雨。旅の途中で聞いた話によると、沖縄は全国で最も晴天率が低い県なのだそうだ。というわけで、この日の行き先は本島南部の「沖縄ワールド」内に入口がある「玉泉洞」に決定。玉泉洞は総延長5,000mに達する東洋屈指の巨大な鍾乳洞で、そのうち約890mが観光用に公開されている。
ここなら雨なんて関係ない、といいたいところであるが、洞窟に入ったとたん暖かな内気と猛烈な湿気に襲われ、レンズが結露してしまった。しばらくすると洞窟内の環境にレンズが馴染んで結露も晴れたからよかったが、急な予定変更は撮影上思わぬアクシデントを呼ぶので注意が必要だ(勉強になるなあ……)。
鍾乳洞の内部は広く複雑で、100万本以上といわれる鍾乳石の姿は圧巻だった。ルートのところどころに照明が設置されてはいるが、写真撮影にとっては非常に暗い条件だったので高感度撮影は当たり前。今回はすべて手ブレ補正が効く組み合わせで機材を用意したことが功を奏し、手持ちでも躊躇することなくバシバシ奇岩を撮ることができた。
玉泉洞のある沖縄ワールドには、沖縄特有の民家を再現した町並みがつくられている。伝統工芸品などの販売や食事施設も充実しているので、沖縄にいながらも時間がないような場合に、時間をかけず手軽に沖縄を体験するのにもってこいのテーマパークである。
その後、飛行機まではしばらく時間があったので国際通りに戻ってお土産を買い込み、つづいて最後の沖縄料理を楽しむべく「ジェフハンバーガー」と「A&W」という、2店のファーストフード店をはしごした。沖縄でハンバーガーといえば何といってもジェフとA&Wらしい。間違って残ってしまった古きアメリカという感じが、全国チェーンのハンバーガーショップとはまた違った、沖縄らしさを味わわせてくれるのである。
那覇空港を離れた飛行機が成田に到着するまでシャッターを押しつづけ、最終的に写真の総数は2,012枚となった。RAWも含めたファイル数は4,042枚である。
成田についても天気はやっぱり雨だった。
自宅に戻って…パソコンと格闘?
筆者も社会人である。夜に自宅に戻り疲れて寝て、次の日には仕事がまっているわけなので、当然のように即急な社会復帰が求められる。というよりしないとまずい。
ここで困ってしまったのが、撮影したデータの容量が膨大であることだった。JPEGが2,012枚で、RAWも含めると4,042枚。約2,400万画素のα7 IIと約3,600万画素のD810の2台を使って大量の撮影をしたために、サイズはゆうに100GBを超えている。
何でもかんでもバンバン撮ってしまったが、その整理のために膨大な時間を割くことはしたくない。さりとてせっかくの楽しい旅なのだから写真は思う存分撮りたい。でも整理に時間をかけるのはイヤ。いったいどーすればいいの?
と、ほとほと困り果てていたところにタイミングよくデジカメ Watch編集部から電話がかかってきた。本件とは関係のない電話だったが、現状を相談すると「ちょうどいいものがあるので送ります」といわれ、翌日には大きな段ボール箱が届いた。中身は高速でデジタルデータを処理してくれるであろうハイスペックなパソコン本体。「これを使えば効率よくサクサクと写真を整理してRAW現像もこなしてくれるから、その勢いで原稿をお願い(なるべく早く)」ということらしい。
送られてきた自作パソコンのスペックを紹介すると
・OS:Windows 8.1 64bit
・CPU:Intel Core i7-4790
・メインメモリ:DDR3-1600 8GB
・グラフィックカード:AMD Radeon R7 250XE
となっており、筆者が所有するコスパ重視&4年前の自作マシンに比べたら圧倒的な高性能だ。
さっそく、パソコンをセットして作業を開始すると、画像の表示も、RAW現像も驚くほどスムーズで速い。
例えば、自分のパソコンではD810の3,600万画素の重い画像を次々にプレビューしようとすると5、6枚目あたりで動作が遅れることがよくあったのが、送られてきたパソコンではまったくそのようなことがなく何枚でも引っかかりなくコマを送ることができる。
Photoshopで画像をレタッチしようとすると、自分のパソコンでは10枚を越えたあたりで画像の一部が遅れて表示され、部分拡大表示を移動しようとしても時としてガクガクと引っかかっていたのが、送られてきたパソコンでは20枚を超えても表示が遅れることなく、部分拡大表示の移動も流れるようにスムーズに動いてくれた。
その秘密はCPUとグラフィックスカードにありそうだ。CPUには最新のIntel Core i7-4790が採用されており、RAW現像は体感的に1.3倍ほど速くなった印象。数百枚といった大量のRAW現像をすると、現像終了までの時間差はかなり大きくなる。
また、最近のソフトウェアではグラフィックスカードも計算処理に使用されているケースもあり、PhotoshopなどのGPU計算処理に対応したソフトウェアでは、CPU単体よりも「しっかりとした」グラフィックスカードが搭載されているもののほうが快適に使用できるようになる。特にPhotoshopはグラフィックスパフォーマンスによって、拡大・縮小表示やプレビュー表示速度に差が出る上、使用できる機能に制限が入ることもある。
そして先日公開されたLightroom CC。こちらもGPUアクセラレーションに対応している。環境設定でGPUの使用・不使用を設定できる。※下の画像は筆者が試用したパソコンのものとは異なります。
送られてきたパソコンには、グラフィックカードにAMD Radeon R7 250XEが搭載されていた。グラフィックメモリ容量は1GB。写真を扱う上での能力は十分だし、単体では実勢価格1万円前後と導入しやすい。
ここ数年、3,600万画素を超えるような、いわゆる高画素デジタルカメラが多く登場している。さらにエントリークラスであっても、2,000万画素を超えるモデルが見受けられる。せっかく最新のカメラを購入して素晴らしい写真を撮ったというのに、データが重く自宅のパソコンで上手く表示できず、セレクトやRAW現像、レタッチがおざなりになってしまっている人の話を聞く。
最近のスリムタイプのデスクトップパソコンでは、グラフィック能力はマザーボードやCPUが兼任し、グラフィックメモリはメインメモリと兼用となっている場合がほとんど。通常の写真撮影ならこれでも問題がないが、写真を趣味として高画素機で大量に撮影し処理するという人は、メインメモリと共用ではちょっと力不足である。使っているモニターが大きく高解像のものなら、表示する情報量もますます多くなるのでなおのことだ。
自分のパソコンよりスムーズで快適に画像を扱うことができ、旅行の写真を素早く整理して次の仕事に取り掛かれたのは、このグラフィックカード性能差によるところが大きい。
おかげで作業がサクサク進み、普段なら面倒になりあきらめることの多い、SNSに写真を投稿する余裕も生まれた。近年、スマートフォンやタブレットの普及で、パソコンの利用率が下がっている人もいるかもしれないが、CPUとグラフィックスカードのパフォーマンスを考えると、多くの写真を効率よく編集し、RAW現像やレタッチを経て「作品」として仕上げるには、まだパソコンの方が有利だと感じた。
まとめ
話が長くなってしまったので、3行に要約してみよう。
デジタルカメラが高性能化して便利になったおかげで、旅に出るとついたくさん写真を撮ってしまい、帰宅後の写真整理が膨大な量になりがち。
デジタルカメラが高性能化したぶん、パソコンにも相応の高性能が要求される。
案外忘れられがちなのがグラフィックカードの性能で、CPUやメインメモリと兼用タイプでは、写真愛好家の要求性能に追いついていないことが多い。
パソコンに詳しい人は高度なデジタルカメラの現状を知らない人が案外多く、デジタルカメラに詳しい人はパソコンの仕組みなど詳しく知らない人が案外多い。だからカメラ好きがパソコン好きにどんなパソコンを買えばいいかたずねると、「写真ならグラフィック性能はさほど必要ない」と、能力不足のパソコンを勧められてしまうことがあり、そこが落とし穴となってしまっている。
最近のパソコンは意外に安い。今回借りたモデルはいわゆる自作PCなので値段をつけるのは難しいが、同じようなグラフィックスカードが搭載されたBTOパソコンであれば、だいたい5万円台からラインナップが揃っており、交換レンズ1本分程度の価格で快適な現像環境が手に入る。
旅をしやすい季節が近づいてきた今日この頃、そして今後も増えてゆく数多くの思い出のためにも、レンズ1本分の投資でパソコンを強化しておくというのは、実はとても賢い選択ではないだろうか。
制作協力:日本AMD株式会社