特別企画
大口径標準ズームレンズが描く旅の情景
深まる秋の気配を捉えた「手ブレ補正+F2.8ズーム」の実力
2017年11月7日 07:00
タムロンの大口径標準ズームレンズ「SP 24-70mmF/2.8 Di VC USD G2」を持って、新潟県の中越地方を巡りながら撮影をしてきた。
新潟県第2の街である長岡市を中心に、錦鯉の養殖で近年有名になった山古志地区、風が強い港町越前浜、古くからの神社が鎮座する弥彦など、3日間の小さな旅。
旅撮影に持っていくレンズといえば、高倍率ズームレンズ、もしくはそれに明るめの単焦点レンズをプラスした組合せという手があるだろう。ただ、単焦点レンズを欲張って揃えると、それでそれでかさばってしまう。
移動の多い旅の場合、やはり荷物はシンプルにしたいところ。例えばF2.8の明るい大口径ズームレンズ1本だけという旅はどうだろうか。
レンズ交換の煩わしさから解放され、構図や被写体に対峙しどう捉えるかということに集中して撮影するというのも、旅写真のひとつのスタイルではないだろうか。
進化した大口径ズームレンズの実力
さて、この1本だけと決めて撮影した「SP 24-70mmF/2.8 Di VC USD G2」はどうだったか。
何よりもボクが好む撮影シーンの多くは逆光なのだが、前モデルと比べると確実に耐逆光性能が向上している。新モデルから使用されているeBANDコーティングによるものだろう。嬉しい限りである。
また、要所要所に施されたシーリングによる簡易防滴構造、前面レンズの防汚コーティングといった堅牢性も旅向きだ。強風の中で飛沫が吹き荒ぶような海辺でも、ひるむことなく安心して撮影ができた。付属の専用フードにはロック機構が備わったこともうれしい。
AFも素早く静か。どんな場面でもAFは静かで迅速に動いてくれ、耳障りな音が気になることはない。気持ちよく撮影を進められた。
そして、開放絞り値F2.8による多彩な被写界深度の表現。加えて5段分の手ブレ補正効果もありがたい。暗い環境でも手ブレすることなく撮影ができるのは、三脚を持たない旅の強い味方になるだろう。
作品集
秋の日本海沿いの街道を走りながら撮影場所を探す。F11まで絞ってのワイド側での撮影。木造の漁師小屋とコンクリートでできた防波堤、そして雲。それぞれ異なったマテリアルだが、高い質感描写にレンズの解像力の高さを感じる。
焦点距離70mm、開放F2.8で半逆光のねこじゃらし(本当はエノコログサというらしい)を寄り気味で撮影。フォーカス合焦部分はキリリとしながらも、前後のボケは柔らかく自然な印象。
ガラスを伝う水滴を焦点距離50mmで。中間絞りのF5.6だが、窓の手前にあるレースや屋外に見える街路樹のボケも美しい。
大学構内の緑に包まれた遊歩道をローアングルで捉える。24mmは自然な広がりを感じられる焦点距離だ。雨上がりの舗道に落ちた葉っぱの色が秋の気配になっている。
山古志の高台から西陽が傾いた山脈や人工池とススキを逆光線で撮る。新しいコーティングの性能なのか、逆光でのフレアゴーストの出方は前モデルよりも少ないようだ
越前、日本海ではかなり強い風が吹いていた。荒れ始めた海のうねりや沈む夕陽を取り巻く表情豊かな雲の流れ。心地好い風景に出会うと旅の気分が盛り上がる。なぜか演歌が聞こえてきそうに感じるのは歳をとったせいなのか(笑)
夕方になってから降り出した雨。三条市から長岡市へ向かう国道を走りながら助手席からフロントガラスにフォーカスして、街の明かりやクルマのライトをボカして撮影。低速でもブレ防止効果が発揮してくれるので便利だ。逆光にも強く丸ボケも美しい。
空が澄んで晴れ渡った朝。季節はずれの朝顔の青い花が満開に咲いていた。F2.8の絞り開放で撮影。ワイド側でも前後に充分なボケ味を楽しむことができる。
長岡市郊外にある、古い街並みの旧道で見つけた畳屋さん。午後3時半なのにカーテンが閉まっている。休みなのか、それともすでに店終いをしたのか。西日が射す店の看板やガラス扉に、枝葉の影が揺れていた。
天気がころころ変わりやすい秋の入口。雨上がりの夕暮れ時、西の空が赤く焼けたから、明日はきっと晴れるのだろう。国道沿いのガソリンスタンドに明かりが灯り始めた時間帯だが、大口径+手ブレ補正の恩恵によりISO感度100でも速いシャッターが切れる。
旅の終わりはいつだって晴れて欲しいもの。夕暮れから夜へと変わる頃。ガタゴトガタゴトって過ぎて行くいつもの通勤電車だって、少しの夢を乗せて走れば、かつて谷内六郎画伯が描いた銀河鉄道の夜を駆けるように見えなくもないはずだ(笑)