交換レンズレビュー
TAMRON SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(Model A032)
5段分の手ブレ補正は伊達じゃない!テレ端手持ちで1/3秒が切れた
2017年9月28日 07:00
SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2(Model A032)は、35mmフルサイズ対応の一眼レフカメラ用大口径標準ズームレンズだ。
2012年発売のSP 24-70mm F/2.8 Di VC USD(Model A007)の後継モデルとなる。ラインナップはキヤノン用とニコン用の2機種。
レンズ構成は12群17枚。絞り羽根は9枚(円形絞り)。従来モデルから引き継ぐ格好でXR(高屈折)ガラス、LD(異常低分散)レンズ、GM(ガラスモールド非球面)レンズなどの高性能レンズが潤沢に使用されている。
また、ナノテクノロジーのeBANDコーティングを採用し、逆光に強くなったのも従来モデルからの大きな進化だ。鏡筒には簡易防滴構造、レンズ前面には防汚コートが適用されていて、屋外撮影での利便性も追求されている。
発売日:2017年8月2日(ニコン用)、2017年9月2日(キヤノン用)
実勢価格:税込13万円前後
マウント:キヤノンEF、ニコンF
最短撮影距離:0.38m
フィルター径:82mm
外形寸法:約88.4×111mm(キヤノン用)
重量:約905g(キヤノン用)
デザイン
まず注目すべきはその外観デザインだ。端的に言って、従来モデルよりスタイリッシュでとてもかっこよくなった。箱から取り出した瞬間「おお! カッコイイ!」と声が出たほどだ。全体的にメタリックで高級感が漂う。
ここではキヤノンEOS 5D Mark IVに装着して使用したが、ホールドの感覚もよく、手触りがいい。このクラスのズームレンズに共通する、ほどよい重量感も魅力だ。
スペック的には、特段重かったり大きいという印象はない。フルサイズ機に見合う非常に扱いやすいサイズ感になっている。
手ブレ補正
本レンズは、クラス最高となる5段分の手ブレ補正効果を実現しているのも大きなポイントだ。汎用性の高い標準ズームレンズにおいて、このスペックは非常に有効な戦力となる。
タムロン独自の手ブレ補正機構「VC」(Vibration Compensation)の搭載は従来モデルから引き継がれたものだが、新たに手ブレ補正処理専用にMPUが追加。デュアルMPUでの対応となり、制御アルゴリズムも一新されている。
操作性
ズームリングやフォーカスリングもしっくりと指に馴染む。ズーミングは程よい重さでトルク感も良好。フォーカスリングもスムーズで微調整しやすい。
搭載スイッチは3つ。VCの切り替えを行うVCスイッチとAF/MFの切り替えスイッチ、そしてズームリングをロックできるズームロックスイッチだが、いずれのスイッチも大きくて切り替え操作がしやすい。
距離目盛は表示窓や文字が大きくなり、非常に見やすくなった。
また、レンズフードにはロック機構としてフード取り外しボタンが新搭載された。誤ってフードが外れてしまう心配もなくなった。
AF
デュアルMPUになったことで、AFも精度が高くスピーディーになった。ストレスを感じることは全くない。
特に画面中心でのAF性能は秀逸だった。低照度の場所でもピントの山を的確に、高速で捉えてくれる。これは信号処理能力の高いDSP(Digital Signal Processor)ブロック内蔵MPUを採用した成果でもある。
作品
今回はポートレート撮影でこのレンズの能力を探ってみた。
まず画面中心付近の画質だが、しっかりコントラストがありシャープな印象だ。特にF4くらいまで絞った際の画質が非常にクリアで良好に思えた。ポートレートでは画面中心付近に被写体を配置することも多い。このキレのある描写力は非常にインパクトがある。
ワイド端で撮影してみたが、画面周辺部も色収差などの諸収差が最小限にとどまっていて自然な仕上がりだ。本レンズは特殊硝材を贅沢に使用し、優れた色再現と描写性を実現しているとのことだが、それも頷ける内容だ。
ISO400まで感度を上げてみたが、被写体輪郭部のキレの良さなど画面全体で画質は何の遜色もなく優れている。私はポートレートを中/高感度で撮ることも多いのでこの描写力は非常に頼もしい。
背後の壁画も併せて見せたくて、F5.6まで絞って撮影した。日陰の軟らかい光質を生かしながらマットな雰囲気で切り取った。描写力のあるレンズはどんな場面でも美しくシーンを再現できる。
元々ポートレートではあまり絞り込むことはないが、時に被写界深度の深い描写を求めることもある。ここではF9まで絞ったが、味のある壁面も非常に解像感があり、シャープでいい感じだ。
全焦点域で利用できるF2.8の開放値は、やはりポートレートでは大きな武器だ。テレ端で撮影してみたが、背景のボケが非常に滑らかで美しい。AFでのピント合わせも素早くて正確。フルサイズだと中望遠の70mmでも開放付近ではピント合わせに注意を払いたいが、このレンズならば直感的にピントが合わせられ、撮影へと集中できる。
標準域となる50mmでのボケを確認してみた。絞り開放で撮影したが、明るい雰囲気で透明感がある。きれいな背景ボケでモデルが浮き上がって見える。
ワイド端でも被写体にグッと近づけば、開放絞りを使ってボケを演出できる。こうした奥行きのないシーンでも十分立体感が表現できるレンズだ。
テレ端を利用し最短撮影距離で撮影。本レンズでは0.38mまで近づける。絞りはF4まで絞ったが、画質を考慮するとこのくらいまで絞って使うのがいいように思う。接写の効果で十分被写界深度は浅くできる。非常にドラマチックに仕上がっている。
ややローアングル気味に狙った。逆光線が強くレンズに入る場面だったが、フレアやゴーストは生じていない。ポートレートにおいて逆光は最高のライティング。このレンズを使えば、最良の逆光ポートレートが残せそうだ。eBANDコーティングの採用で、フレアやゴーストはさらに遠い存在になったと言える。
やや光量の少ない場面。低感度を維持したまま、テレ端を用い1/30秒でシャッターを切ったが、手持ちでブラさずに撮影できた。望遠側でも手ブレはもう怖くない。強化された手ブレ補正機能は、高画質を得るためにも大きな役割を発揮しそうだ。
薄暗いトンネルの中で、背後に走り去る車をブラして入れ込んでみた。手持ち撮影でシャッター速度は1/3秒だ。モデルをほとんどブラさずに撮影できていることに驚愕する。しかも、70mmのテレ端だ。普通に考えたら1/3秒の手持ち撮影などブレブレになるところ。5段分の手ブレ補正は最強だ。
まとめ
24-70mm F2.8のレンズは、ある意味標準ズームレンズの王道を行くハイスペックモデルだ。最も汎用性が高く実践的で、競合も多い。それだけに性能や画質には妥協したくないし、必然的に使う側の見立てもシビアになる。
今回SP 24-70mm F/2.8 Di VC USD G2を試用してみての感想は、まずその卓越したバランス感覚だ。高画質、優れたAF性能、5段分の手ブレ補正機能にとどまらず、扱いやすい操作性やデザインなど、落ち度がどこにも見当たらない。
それでいてコストパフォーマンスがとてもいい。10万円台前半で購入できることも、フォトグラファーにとっては大きな魅力になるだろう。
このバランスの取れた仕上がりが標準ズームレンズでは大事な要素なのだ。アベレージが高いからこそ、被写体を選ばずガンガン撮影できる。高級感のあるフォルムだが、あえてそこは普段使いの強力アイテムとして使い倒してみたい。シビアな見立てにも、十分応える納得の1本だ。
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モデル:Arly