特別企画

【改めて解説】「速写ストラップ」のメリットとは?

速い・便利・使いやすい…まだの人に伝えたい3つのポイント

読者のみなさんは、いわゆる「速写ストラップ」をご存知だろうか。

たすきがけでカメラを下げることができるストラップで、カメラ底面の三脚穴などを利用してカメラボディを逆さ吊りさせるタイプの製品だ。

長さ調節が簡単で、撮影しないときはカメラとレンズをからだに密着させることができ、撮影時にはかけ直すことなくカメラの移動や構図の縦横の切り替えがすばやくできる。

撮影現場でアクティブに動き回るひとに向くストラップといえるだろう。

今回はBLaKPIXELが取り扱う米Custom SLR製「グライドワンS」(C-Loop回転ストラップマウントシルバー、速写グライドストラップをセットにしたもの)を使いながら、速写ストラップをまだ使ったことのない人向けに、その利点をあらためて紹介してみよう。

「グライドワンS」一式をカメラに装着したところ。カメラ底面の三脚ネジ穴に取り付けることから、一般的なカメラストラップと構造が異なるのがわかる。

写真の「グライドワンS」に加えて、ブラックのC-Loopが付属する「グライドワンB」も用意されている。

メリットその1:すばやく撮影体勢に移ることができる

まず、速写ストラップ一般の最大の利点は、撮影体制にすばやく移行できること。その名の通り「速写性が高い」とでもいうべきか。

通常のネックストラップを長めに調整するか、ロングストラップを使えばカメラをたすきがけにはできる。だが、いざ撮影という場合、カメラをからだの正面に移動させるには、ストラップの滑りが悪いと意外に手間取る。場合によっては、ストラップを首から外す必要があることも。

速写ストラップはその点、たすきがけをしたままで身体の正面にカメラをすっと移動させることができる。

グライドワンSはストラップ内でカメラの移動距離を調節できることと、「C-Loop」とよばれる回転ストラップマウントがあることで、カメラを回転させることが容易なために、カメラをすばやく構えやすい。

メリットその2:移動中も楽で安全

ふたつめの利点は、たすきがけができてカメラとレンズをからだにより密着させられるために、機材がぶらぶらしないこと。両手でつねに機材を押さえておく必要がなく、特に望遠ズームレンズや大口径レンズ、あるいは高倍率ズームレンズのような大柄で重さもある機材を使うときに威力を発揮する。

望遠ズームレンズをつけたボディをネックストラップでずっと首から下げていて肩が凝ったというひとも少なくないはずだ。そのためたすきがけをしていたところ、撮影体勢にすばやく移れず、シャッターチャンスを逃した、というのは惜しい(そんな経験があるのは筆者だけかなあ)。

私見ではあるけれど、サイズの大きく重い機材を使うひとにこそ、速写ストラップは便利だと筆者は思う。また、グライドワンSのストラップは通気性に考慮された幅広の荷重分散パッドが用いられているので、大柄な機材にも使いやすい。

メリットその3「からまりにくくて縦位置撮影にも便利」

3つめの利点は、回転ストラップマウントC-Loopと組み合わせることでストラップがからまりにくいこと。そのために、縦位置撮影への移行も簡単だ。

こちらは「密着ハンドストラップ」を組み合わせた例。C-Loopとカメラのストラップ取り付け部とC-Loopに装着。さらに構えやすくなるのでオススメだ。

ではデメリットは?

ここまでは速写ストラップのメリットを書いてきた。では、デメリットがあるとすれば何だろう。

それは、三脚穴を利用してストラップを固定するために、三脚使用時にはC-Loopを取り外す必要があるということ。速写ストラップは基本的に、手持ちでガンガン移動する人向けのストラップといえるが、三脚での撮影も行うカメラマンにとっては重要な話だ。

だが、三脚を多用するのであれば、別売「M-PLATE PRO マルチクイックリリース カメラプレート」を併用する手がある。

このカメラプレートはC-Loopをつけたままアルカスイス規格、およびマンフロットRC2雲台に、クイックリリースシューと同様に装着できる。

先に挙げた密着ハンドストラップも併用可能だ。

もうひとつ気になることがあるとすれば、C-Loopを三脚穴のみで固定することか。工具が不要で着脱できるが、安全性はどうなのかと考える方もいるだろう。

使用した実感としては、しっかりと締めておけば問題ないと書いておきたい。C-Loopの緩みがないかときどき確認しよう。

まとめ:こんな人にオススメ!

いかがだったろうか。速写ストラップはアクティブ撮影したいユーザーには、とても便利なアイテムだということがご理解いただけたと思う。

移動中はカメラバッグに機材をしまっておき、撮影現場では望遠ズームレンズや大口径レンズをボディに装着して、被写体の動きに応じてあれこれ動き回ながら撮るという用途に向いている。

具体的には、野山や渓流にわけ入って自然風景を撮る、屋外で人物を撮る、人物ポートレート撮影会、祭りや行事の撮影、線路沿いを歩いて撮影地を探す鉄道写真、超望遠レンズを多用する航空機や自動車のレースを撮るといった、ときには三脚も使うような本格的な撮影に向く。

また、「軽装でいたいけれどちゃんと撮りたい」ひとにも使い勝手がよいだろう。

たとえば、運動会で競技に参加する子どもを撮る、高倍率ズームレンズ1本で旅先のようすを撮る、公園や遊園地などで楽しく遊ぶ家族や友人、パートナーを撮るなど、撮影機材以外の荷物がある場合にも便利なはずだ。カメラとレンズをからだに密着させておけば、ほかのひとに機材をぶつける心配も少ない。

速写ストラップを実際に使ってるユーザーたちにいわせると、いちど使うと手放せないという。さらには「これを使うと『さあ、撮るぞ!』と気分がアガる」というユーザーも。

ストラップは目的や気分によって使いわけると楽しいアイテムだ。カメラに付属する純正ストラップしか使ったことがない、というユーザーにはぜひ試してほしい。

協力:BLaKPIXEL(ブラックピクセル)

秋山薫

(あきやまかおる)1973年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科ロシヤ文学専修修士課程修了。月刊カメラ誌編集部、季刊カメラ誌編集長を経験。 Kindle電子書籍のカメラ本『ぼろフォト解決シリーズ』の撮影、執筆、編集を中心におもにカメラ・写真関連記事の編集者・写真家として活動している。