特別企画

ポートレートは“レンズ交換”がポイント!

便利アイテムで素早く・身軽にレンズを変える

屋外のポートレート撮影では、24-70mmクラスのズームレンズ1本で撮りきってしまう強者もいるが、作品撮影では画質にこだわる写真家やベテラン勢は単焦点レンズを使い分ける。

事実、僕も撮影のほとんどが単焦点レンズだ。単焦点レンズは、ポートレート撮影の要ともいえる美しいボケに有利な大口径の明るいレンズが多く、感度を低く抑えながらシャッタースピードを稼げるのも大きな魅力といえる。

「究極の1本は?」と問われると、寄り引きの自由度や最短撮影距離なども加味して50mmレンズと答えるが、ボケや遠近感などに変化をつけにくくバリエーションにかけてしまう。自然な引きと、魅力的な寄りのカットなどバリエーションを考えると、50mmと85mmの2本のレンズをおすすめしたい。

そこで今回は、ポートレートレンズにおける50mmと85mmレンズの使い分けを、「GoWingレンズホルダー」とともにお伝えする。

今回のカメラはFXフォーマットのニコンD750。レンズはAF-S NIKKOR 50mm f/1.4G(奥)とAF-S NIKKOR 85mm f/1.4G(手前)だ

モデル:Sheena(お掃除ユニット 東京CLEAR'S)

同じ撮影位置でもレンズが変わると写る範囲が変わる

まずは実写作品をご覧頂きたい。50mmレンズでフルショット撮影をした後、同じ位置で85mmにレンズ交換をして撮影している。

50mmレンズは85mmレンズに比べて写る範囲が広く、周りの風景も活かしやすい。

D750 / AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G / 1/500秒 / F2.2 / ISO100 / マニュアル / 50mm

同じ位置から85mmレンズで撮影。50mmレンズに比べて被写体をクローズアップできる。

D750 / AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G / 1/500秒 / F2.2 / ISO100 / マニュアル / 85mm

両カットとも構図の良い作画ができ、背景表現や描写範囲に加え雰囲気も大きく変わった。同じ位置でもレンズ交換だけでこれだけの変化が得られる点がこの2本の組み合わせを提案した大きな理由だ。

いずれのカットも撮影距離は3mほど

レンズ交換すると背景のぼかし方も変えられる

今度は、モデルの大きさがほぼ同じになるようにフレーミングして撮影してみた。モデルの配置は同じだが、背景の写り方やボケ量が違っている。

85mmレンズでは背景が大きくボケ、人物が浮き立つ描写になった。

D750 / AF-S NIKKOR 85mm f/1.4G / 1/250秒 / F2.2 / ISO100 / マニュアル / 85mm

続いて50mmレンズで撮影。85mmレンズに比べると、人物の大きさは同じだが背景を広く写し込むことができる。

D750 / AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G / 1/250秒 / F2.2 / ISO100 / マニュアル / 50mm

表情を狙い人物を強調するなら85mm、背景をぼかしながら自然な空間演出を狙うなら50mmレンズを選択すべきだ。

画面内で人物の大きさが同じであれば、85mmレンズは、50mmレンズよりも被写体から離れることができる。焦点距離の長いレンズで距離を置いて撮ればパースによる歪みが少なくなり、より小顔に写せるメリットもある。

85mmレンズ(左)、50mmレンズ(右)での撮影距離

身軽な撮影を可能にした「GoWingレンズホルダー」

単焦点レンズではこのように撮影意図や狙いに応じて撮影場所を細かく移動し、レンズも頻繁に交換して作品のバリエーションを膨らませている。

しかし、レンズ交換の間もモデルはその場所で自分にレンズが向くのを待っているので、レンズ交換に手間取るわけにはいかない。仕事では助手がサポートをしてくれるが、休日の個人の作品撮影では荷物の移動から、確実なレンズ交換まで全て1人で行わねばならない。そこで僕がおすすめしたいのが「GoWingレンズホルダー」だ。

BLaKPIXELが販売している「GoWingレンズホルダー」。ラインナップはキヤノンEF/EF-Sマウント、ニコンFマウント、ソニーAマウント、ソニーEマウント、マイクロフォーサーズ用。希望小売価格は各税込1万1,000円

GoWingレンズホルダーは一言でいうと、「携帯レンズホルダー」だ。両サイドがカメラのマウント状になっており、交換レンズを装着できる。下の写真の様に、同梱のストラップを使って提げる。

ホルダー両サイドで2本のレンズが装着できるが、カメラへの装着交換作業を考えると、レンズホルダーへのレンズ装着は1本にして片面はフリーにしておくのがよい。

空いている側にカメラから取り外したレンズを装着して、装着していたレンズをリリースボタンを押しながら外してカメラに装着すればいい。空いている面には埃の侵入を防ぐラバーキャップが付いているので安心だ。

GoWingレンズホルダーによるレンズ交換の手順
ホルダーについているキャップを外す
カメラから外したレンズをホルダーに付ける
カメラに付けたいレンズをホルダーから外す
レンズを外したところにキャップをはめる
カメラにレンズを付ける
レンズ交換が完了した

ホルダー本体にストラップを装着する金具は回転式。レンズの重みで回転して装着したレンズが常に下になるので、レンズを装着しての移動も違和感を感じない。

ストラップのリングを留めている金具(棒)は内部で貫通しており堅牢な作りとなっている。

大切なレンズを装着してぶら下げた状態で移動や撮影をするので、一番の心配はレンズの落下や脱着の確実性という部分だろう。レンズホルダーの品質が気になり、レンズのリリースボタンやマウントに実際にレンズを装着して各部を確認してみた。

マウント面の鏡面も十分。平面性も保たれているようで、レンズもスムーズに脱着でき、レンズ側マウントなどへの傷ひきの心配もない。リリースボタンの抵抗も適度にありロックの感覚を確かに実感できた。

なお今回は、GoWingレンズホルダーと同じBLaKPIXELが販売している速写ストラップ「Custom SLRグライドワン」を使用した

同じレンズでもカメラの高さを変えるだけで写真が変わる

人物撮影ではカメラポジションの違いでバリエーションを作ることもできる。ここでは撮影者が立った状態としゃがんだ状態で撮影した。

まず立った状態で撮影。歩道が大きく写り込む構図になり、奥行きが感じられる写真になった。

D750 / AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G / 1/250秒 / F2.5 / ISO100 / マニュアル / 50mm

同じ場所でもしゃがめば写り方は一変する。木々が画面の多くを占める構図で、新緑の中のさわやかさが表現できた。モデルの脚も長く写せる。

D750 / AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G / 1/250秒 / F2.5 / ISO100 / マニュアル / 50mm

同じレンズでも、立つ/しゃがむというカメラポジションの違いだけで大きく写りを変えられるのがおわかり頂けたと思う。

こういったシーンでは、最初にストラップを斜め掛けしてレンズホルダーがウエストに来るように調整しておけば、よほど長いレンズを付けない限りしゃがんでもレンズが地面に接することはまずない。そのため、立ち/しゃがみに関わらず軽快な撮影ができる。

ここがカメラバックを持ちながら撮影するのと大きく異なるポイントだ。レンズホルダーは交換レンズ1本携えていればすむが、カメラバッグはバック自体の重量もあって不必要な“荷物”を持ちながら撮影することになり、機動性は確実に落ちてしまう。

もちろん、GoWingレンズホルダーはしゃがんだ状態でも問題なくレンズ交換ができる。

身軽になればモデルと一緒に動きながらの撮影も!

荷物(カメラバッグ)を持たない身軽な撮影では何も気にすることなく、モデルとともに移動しながら撮影できる。モデルの動きに合わせながら撮影できる身軽さは、新たなバリエーションを捉えられる可能性が高まる。

続いては、下の状況写真のようにモデルの動きに合わせて撮影者も動きながら連写した。結果、モデルの自然な表情と動きを収めることができた。

共通設定:D750 / AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G / 1/1,000秒 / F2.8 / ISO200 / マニュアル / 50mm

まとめ

ポートレート撮影ではモデルの表情やテンション感がとても重要で、作品そのものを左右する。テンションを保ち表情を維持するには“待ち時間”を抑えて集中力を途切れさせないことが大きなポイントだ。

そのためには、頻度の多いレンズ交換を素早く確実に行う必要がある。今回の撮影でも実感したがGoWingレンズホルダーは間違いなく、サポーター的な役割を担うと感じた。

また何より、カメラバックのない身軽さは撮影では大きな武器となり、モデルはもちろん撮影者の集中力も高められ、今までにない表情や魅力の引き出せる可能性が期待できる。単焦点レンズとGoWingレンズホルダーの身軽さを試してみてはいかがだろうか?

D750 / AF-S NIKKOR 50mm f/1.4G / 1/250秒 / F2.2 / ISO100 / マニュアル / 50mm

制作協力:BLaKPIXEL

河野英喜

こうのひでき:1968年島根県生まれ。人物写真をメインに撮影。現在は女優やタレントの撮影が多く、D3からのニコンユーザー。今はデジタルカメラが主流だが、銀塩写真もこよなく愛するハイブリッドな写真家。

http://www.kono-hideki.com/