神保町写真教室の教科書「写真総合」by 岡嶋和幸先生

オートホワイトバランス(カメラ基礎:色)

インプレス・フォトスクール 神保町写真教室で講師を務める岡嶋和幸さん(中央)

一歩進んだ“自分らしい”“伝わる”写真表現が学べる「インプレス・フォトスクール 神保町写真教室」。その分かりやすく実践的な講座内容に定評のある岡嶋和幸さんが12回にわたって本誌Web特別講座を連載。写真撮影の基本となるピント、露出、色、レンズ、光、構図、そして実践的な撮影方法の中からトピックを厳選してお届けします。(編集部)

写真・文:岡嶋和幸

カメラが環境に合わせて自動的に色合いを調整する

オートホワイトバランス(AWB)とは光の状況などをカメラが自動で判断し、適正な色合いを再現する機能。条件によっては補正が足りない、あるいは補正しすぎることもあるなど、機種によってその精度や安定性に差があります。決して万能ではありませんが、着実に高性能になっていて、最近のデジタルカメラはいずれも良好な結果が得られるので安心して利用できます。

できるだけ正確な色温度に近づけて「白いものを白く写す」ためには、AWBより「太陽光」「くもり」などのプリセットホワイトバランス(プリセットWB)の方が有利な面もありますが、光源にはいろいろな種類や状態があり、プリセットWBで全ての条件をカバーすることはできません。カメラによって用意されているプリセットWBの種類が異なるなど、その使い分けには限界がありますが、写真表現において必ずしも忠実な色再現が正解ではなく、結果的に自分のイメージにマッチした色合いに仕上がれば問題ないケースがほとんどです。

最近では「白いものを白く写す」ための自動調整をする従来からのAWBに加えて、光の色を残すなど雰囲気を優先した調整を行うAWBも選べるなど、AWBが複数ある機種も登場。プリセットWBだけでなく、それらのAWBも効果的に使い分けることで、「忠実」と「好み」のどちらの色合いにもより柔軟に対応できるようになります。

プリセットWBはRAW現像のときに必要に応じて選ぶことができるため、撮影のときはAWBを積極的に利用するといいでしょう。自分の好みや伝えたい色合いが得られていれば、厳密にホワイトバランスが取れていなくても問題はありませんが、電子ビューファインダーや背面モニターの表示傾向を把握しておくことも大切です。

RAW現像ではAWBを選べないことがある

RAW現像では画質への影響なしにホワイトバランスを自由に変更できます。ところが、RAW現像ソフトによってはAWBが選べないものもあり、その効果が得られるのは「撮影時の設定」、つまりAWBで撮影したRAWファイルのみということになります。AWBへの対応、撮影時とRAW現像時のAWBの効果は全く同じであるのかなど、自分の環境でチェックしましょう。

カメラのAWB
RAW現像ソフトの自動

オートホワイトバランスは不自然な色味になりにくい

状況に合ったプリセットWBを選んでも、肉眼で見たままの自然な色合いになるとは限りません。厳密な色再現はAWBでも難しいものの、不自然な色合いになることは少なく、プリセットWBより好ましく感じる場合もあります。

オート
太陽光

ミックス光はオートホワイトバランスを使う

自然光が差し込む室内照明(電球)下で撮影。WBを「太陽光」にすると電球、「電球」にすると太陽光の影響で色かぶりが生じます。色温度の異なる複数の光が混じっているミックス光の条件下では、最適なプリセットWBの設定がないためAWBを利用しましょう。

オート
太陽光
電球

白色重視のオートと雰囲気重視のオート

ホワイト優先のAWBは「白いものを白く写す」ための調整を行います。雰囲気優先のAWBは光の色の感じを自然に残した仕上がりに。前者は忠実な色、後者は好ましい色に仕上げたいときに利用しましょう

ホワイト優先
使用例:花やケーキなどの白を正確に出す、雪景色、など
雰囲気優先
使用例:レストランなどでの室内の温かみを出す、夕景のオレンジを強調する、など

写真撮影の総合教科書『写真総合』を発売予定!

カメラの基礎から実践、作品制作、展示までを網羅的にまとめた写真撮影に関する総合教科書『写真総合』を発売。その一部を本連載で紹介しています。「インプレス・フォトスクール 神保町写真教室」の公式テキストしても採用予定です。ぜひご期待ください。(編集部)

仕様
『写真総合』岡嶋和幸 著
2017年9月発売予定/定価:本体3,680円+税
B5変型判/320ページ

内容
第1章 カメラ基礎/第2章 撮影基礎/第3章 撮影実践/第4章 写真制作/第5章 写真表現/第6章 プレゼンテーション/写真関連用語集

※本書の仕様、発売日、内容は変更になる場合があります。

岡嶋和幸