おもしろ写真工房
「宙玉レンズ」で遊んでみよう!
いろんなバリエーションにチャレンジする応用編
(2013/6/12 00:00)
宙玉をカッコよく作る!
宙玉レンズを思いついてから4年経った。このデジカメWatchなどで紹介していただいたおかげもあり、世界中で楽しんでくれている人達がいるようだ。宙玉風のスマホアプリなんかもけっこうあるから、Web上で宙玉写真に遭遇する機会も増えてきた。本人も思いつかなかったような工作法や撮影法も出て来ているので、今回はそんな写真をまとめて紹介してみたい。
まず工作について。初めに私が作ったのは透明なビー玉を塩ビの薄い透明シート2枚に穴をあけて挟み込む方式だった。なかなか面白い描写になったので、ガラスアーティストの知り合いに依頼してガラスフィルターに穴を空け、透明球を接着してもらった。なかなかクオリティーの高いものができたのだが、他の人達にも気軽に楽しんで欲しいと思い、チップスターの箱につける方法を考えた。
チップスターの筒には直径70mmのアクリル円板がピッタリ合い、底には67mmのステップアップリングがピッタリはまった。「チップスターじゃ嫌!」という人もいるけど、筒の長さが調整しやすいし軽く工作できるから、これはこれでオススメの組み合わせです。
ただ、「もうちょっとカッコ良く!」という人にケンコーのメタルフードを紹介したい。この製品のいいところはフードの先端にもネジが切ってあり、筒を連結させて長くすることができる点。私がその前に使っていたのは、ニコンの古い接写リングや「K.P.S. PRO. LENS SHADE」なのだが、どちらも製造中止になってしまっている。
連結するごとにワンサイズずつ太くなるのだが、宙玉レンズにつけるのには何の問題もない。フィルターのガラスをはずして宙玉をはめれば、このメタルフードの先端にネジで留めることができる。まあ、これだったら街中で撮影するのにも恥ずかしくないでしょう。
宙玉にピントを合わせるためには、近いところにピントが合わないといけない。接写リングを使うと最短撮影距離が短くなり、筒の長さも短くできるのだが、その場合はデジタル接写リング(ケンコー)が便利。これは電子接点のついた接写リングなのだが、絞りリングのついていないカメラでも絞りを連動させることが可能だ。
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タイムラプス動画に挑戦
宙玉レンズはムービーと相性がいい。球の内側は天地左右が反転した像が映るので、球の内側と外側で動きも逆になるのだ。たとえば人が右から左へ通過すると、球の外側ではそのまま右から左へ動くが、内側では左から右への動きとなる。これは上下でも一緒で外側で上から下への動きは、内側で下から上への動きとなる。
だから単純にカメラを左右や上下にパンさせながら撮っただけでも、ムービーだと不思議な感じの映像になるのだ。動きのあるものであれば、カメラを固定して撮るだけで構わない。イルミネーションを撮影すれば、背景の光源が丸くボケるし、動きのあるイルミネーションならさらに面白い映像になる。
あるいはタイムラプス撮影での宙玉ムービーもなかなか面白い。タイムラプスというのは微速度撮影のことで、たとえば5秒間に1回とか撮影した写真をつなぎ合わせたコマ撮りムービーのこと。最近はデジタルカメラの機能として搭載されるようになってきたので、後からパソコンでつなぎ合わせる必要なく、ムービーファイルとして記録することができる。
宙玉レンズを使ってイルミネーションを撮影したムービー。ニコンD5000、Ai AF Nikkor 28mm F2.8 D、ケンコーデジタル接写リング
ニコンD600の微速度撮影機能を使ってタイムラプスに挑戦。35mmフルサイズ機にAPS-Cサイズ用のレンズを使っているが、かなりの接写になっているのでケラれない。ニコンD600、トキナーAT-X M35 PRO DX、ケンコーデジタル接写リング
このタイムラプスの手ほどきをしてくれたのが岩本朗さんだ。岩本さんの本業は料理写真家だが、撮影道具を自作してしまうことでも有名な人。ステディカムのようなスタビライザーやモータードライブ・デスクトップドリーなども自作してしまうのだが、市販のものよりもクオリティーが高いというのが凄いところ。今回は宙玉で遊んでみて欲しいとリクエストしたところ、想像していなかったようなものを作ってくれた。
岩本さんが作ったのはペットボトルを使った宙玉レンズ。透明な筒を使ったため、透明球の表面にキラメキが入り立体感が出た。私は反射が入ると画質が下がると思っていたので、球にハイライトを入れることを思いついたという発想に脱帽。やっぱり料理写真家としてふだんから光のコントロールをしている人は違うね。
DIY宙玉レンズ 2(iPhone用)
さらに凄いのは微速度撮影用2軸電動雲台に取り付けたこと。この2軸電動雲台というのは、2方向に回転する雲台のこと。これにカメラを取り付けてタイムラプス撮影をすれば、上下左右の動きが加わるという代物。これももちろん岩本さんの自作です。
DIY Time lapse and Motorized tripod head。2軸でカメラを動かしているので、斜めの動きなども可能。
さらにさまざまなバリエーション
宙玉レンズを使って星景写真を撮っている人は何人かいるようだが、たぶん1番早かったのが山本勝也さんじゃないだろうか。2010年12月にオリオン座や北斗七星を宙玉に閉じ込めることに成功している。私はやりたいと思いつつも、まだ星景写真にチャレンジしていない。長時間露光で星の軌跡を宙玉の中に写し込むというのは、ぜひやってみたい。
以下はご本人からの解説です。
「撮影は全て固定撮影です。赤道儀を用いた追尾は行なっておりません。宙玉部分を大きく入れるために、レンズの最短撮影距離ギリギリに配置。こうすると、ある程度絞り込んだほうが深度がほどよくなるのですが、絞り込むことにより、デジタルカメラにおける一般的な星景色写真とくらべ露光時間が長くなります。目安として、一般的な星景写真をF2.8、ISO1600、20秒程度で撮影する暗い環境でF5.6、ISO1600、1~2分程度の露光が必要となる感覚です。露光時間が長くなることにより、星の流れが気になることを懸念される方もいらっしゃるかもしれませんが、宙玉の中で星の光を目立たせることに繋がっています。小さいサイズで鑑賞するならば、これで程よい具合のようにも思います」
水中写真にチャレンジしている人もいるようだが、その中でもきれいだと思ったのが、松下満俊さんが写したサンゴの写真。色鮮やかな魚とか、水中というのも被写体の宝庫ですね。だけど星景写真よりさらにハードルが高いな。この分野はお任せします!
この水中宙玉の場合は宙玉ごとハウジングに入れるのがポイント。ダイレクトに水中に宙玉を入れた場合、空気と水の屈折率の違いから、思ったような効果は得られません。空気中だと宙玉に映るイメージは天地左右反転しますが、水中だとそのままになります。
最後にご紹介するのは、宙玉サーフィン! これは考えつかなかったなあ。そして私が試すことも絶対にないでしょう(笑)。撮影したのはフォトグラファーの広瀬睦(シーピックスジャパン)さんだが、初めてのサーフィンに宙玉を持っていってくれたそうだ。サーフィンだけでも大変なのにね。アブストラクトな水のイメージと宙玉の相性がいいですね。波打ち際で撮影しても面白そう。ハウジングは買えないけど、ビニール袋かなんかに入れて試せないかなあ。
今回はいろんな宙玉写真のバリエーションを紹介しましたが、興味を持っていただいた方はぜひチャレンジしてみてください。もちろん普通に撮ってもいいけど、“それは思いつかなかった”というようなアイディアを披露していただければ嬉しいです!
「上原ゼンジ写真実験室 in 九州」を開催します
- 内容:宙玉レンズ、万華鏡写真、手ぶれ増幅装置などを紹介。撮影も体験できる。
- 開催日:6月15日(土)
- 時間:13時30分~16時30分(12時30分受付開始)
- 会場:九州産業大学15号館 15104教室
- 住所:福岡県福岡市東区松香台2-3-1
- 受講料:3,000円(学生無料)