OLYMPUS AIRの進化を探れ!

第2回:“リア充”っぽい写真を撮ってみる(※ただし1人で)

ウインクで、ジャンプで…新手の自撮りテクニックを検証

〜前回までのあらすじ〜
レンズのような形のレンズ交換式デジカメ「OLYMPUS AIR A01」。第1回は“オープンプラットフォームカメラ”であるOLYMPUS AIRの誕生経緯や可能性について、伊藤浩一氏に解説してもらった。

今回はOLYMPUS AIR用アプリの「AIR FLOW」をお題に荻窪圭氏が考案した、ちょっと変わった自撮りのアイデアについてレポートする。(編集部)

じゃああん。

観覧車でのんびりと景色を楽しむ

こんな写真を撮って参りました。

単焦点の明るいレンズでポートレート

写真だけ見ると極めて普通なんだけど、実はこれ、わたしが撮ったわけじゃないのである。

シャボン玉が膨らんだ瞬間をすかさず

すべて、「自撮り」なのだ。

観覧車でくつろいでるのも、背景がボケたポートレートも、シャボン玉を膨らませてるのも全部自撮り。

リア充っぽい写真に見えて実は彼女の自撮りという楽しいんだかイタいんだかよくわからないアレだけれども、それぞれの撮影風景をバラしてしまおう。

1枚目の観覧車写真はこう。

2枚目のポートレートはこう。

3枚目のシャボン玉写真はこうなのだ。

痛いというなかれ。

もはやこんな写真すらひとりで、しかも大がかりな装備はまったく使わず目立たずに撮れちゃうのだ。なんという文明の利器。そういう楽しい時代に突入しているのである。

OLYMPUS AIR + AIR FLOWでやっちゃうのである。

このカメラはオリンパスのAIR A01。ミニマムカメラであり、世界最小の本格派ミラーレス。中身はレンズマウントとイメージセンサーだけ(もちろんバッテリーや画像処理回路やWi-Fiやメディアスロットは入っているけれども)。

本体は「白い部分」。操作系は電源ボタンとシャッターボタンのみ。マイクロフォーサーズのミラーレスカメラなので、ここにレンズを装着する。Wi-Fiを使ってスマートフォンからコントロールして撮影するのが基本だ。

この白い円筒形がカメラ本体。そこにマイクロフォーサーズのレンズをつけ、適当な三脚なりなんなりで固定しちゃえば完成である。

Bluetooth Smartに対応していて、スマートフォンとA01はBluetoothで常時つながっている。スマートフォン側でA01用アプリを起動すると、そこから電波が飛んでA01が自動的に起動し、A01側でWi-Fiが起動して、そこにスマートフォンからアクセスして撮影可能になるという仕組みだ。

でもスマートフォンから操作して撮影した割には、上記3枚の写真はみなハンズフリーである。セルフタイマーを使って撮ったのかというと、実はそうじゃない。セルフタイマーをいちいち起動してはタイミングを合わせてシャボン玉を膨らませるとか、ちょっとマニアックすぎるじゃないですか。

ここで取り出したるは「AIR FLOW」というiOSアプリ。オリンパスがOLYMPUS AIRをより楽しむために公開しているアプリだ。

AIRはアプリ次第でいろんな撮影を楽しめるのである。発売当初は標準アプリ(といっても機能別に7本ある)のみだったが、徐々にアプリも増えつつある。

AIR FLOWもその一つ。撮影の基本ステップ「撮影のトリガー」「撮影」「出力」の3つを自分でセットできるアプリだ。

AIR FLOWの基本画面。赤がトリガー、緑が撮影、青が保存。この3つを組み合わせてフローを作ってやる

撮影のトリガーといえば、普通はシャッターボタンかセルフタイマーだが、AIRはiPhone側でトリガーをコントロールできるのだ。

撮影は「撮影のタイミング」や「何枚撮影するか」をセットできる。

出力は、当然カメラ内のmicroSDカードには保存するのだが、さらにiPhoneのカメラロールに保存したり、Twitterに投稿したり、Dropboxに保存したりを選べる。

この3つを組み合わせて「撮影フロー」をつくって保存してやれば、いろんな撮影を楽しめるのである。

観覧車の写真はこうやって撮った

最初の観覧車の写真からみてみよう。

最初にどんな写真を撮るか決める。観覧車の中で広く写し、自分と観覧車と窓の外の3つを一緒に撮ろう、というわけで、レンズは9mmの魚眼ボディキャップレンズを選択。これは軽くて薄くて安くて固定フォーカスなのでA01にとても似合う。

トリガーはどうするか。

撮影トリガーは全部で8つ。豊富に用意されている。

8種類のトリガー一覧。

上から、

  • タップ(画面のタップ。一番ベーシックなもの)
  • AIRのShake(A01を振る。内部のジャイロセンサーをトリガーにする)
  • iPhoneをShake(iPhoneのジャイロセンサーをトリガーにする)
  • Audio Input(音声をトリガーにする)
  • Face Detection(顔検出をトリガーにする)
  • Smile Detection(笑顔をトリガーにする)
  • Wink Detection(ウインクをトリガーにする)
  • Move Detection(被写体の動きをトリガーにする)

である。

人を撮るときは一般的に顔検出や笑顔を使うが、今回は全身を写したり、外を見ているシーンも撮りたい。魚眼レンズでは顔がすごく小さく写るので、顔検出系は少々こころもとない。

だったら「これが使えそうじゃない?」となったのが「動き検出」。

Move Detectionを選び、どのくらいの動きで反応するかをスライドバーで決める。まあこの辺は試行錯誤で。一番左が一番敏感。ちょっとした動きで反応する。

実際にカメラの前で手を振ったりしてみると、バーがぐぐっと動くのでそれを目安に。

どのくらい動かすとどのくらい反応するか、試しながらバーをセットできる。

続いてウェイトタイムを決める。トリガーから撮影までの間だ。ここを0にすればすぐ撮影だし、2本指でぐぐっと広げてやると待ち時間をセットできる。ある動作をして1秒後に撮影、ということにすればタイミングをはかれるわけだ。ここは0秒に。その方が面白いものを撮れそうだから。

2番目のShootは1回のトリガーで何回撮影するか。とりあえず、1回だけに。シャッター音はできればオンにした方がいい。音が聞こえないとちゃんとトリガーを認識して撮影されたかどうかわかりづらいから。まあiPhoneの画面を見ていちいちチェックすればいいのだけど、いろんなポーズで何枚も撮りたいときはチェックするのも撮影の流れを妨げるし。

これで、動きをトリガーにし、待ちは0秒で、撮影は1回と決めた。

撮影を「Shoot Once」にしても一度アプリを起動すれば、手動で止めない限り動き続けるので何枚も撮影できるのだ。

3番目の出力は「カメラロールへの保存」に。

そして、名前を付けてフローを保存する。

フローに名前を付ける
保存された

次の作業はカメラのセッティングだ。

観覧車の手すりにこのようにセット。本体が軽いのでこんな小さな三脚でもOKだ。その辺はもう各自の工夫でいい場所を見つけるべし。iPhoneでモニタリングしながらいい位置を決めるべし。

セッティングできたらRUN!

フロー動作中の画面。赤いスライドバーで検出した動きを表示している。

そしてカメラに向かって上の写真のように手を振ると、その動きがトリガーとなってこんな風に撮れるのである。

「動き検出」で撮れた!

あとは調子に乗ったもん勝ち!

これが、

「動き検出」撮影例

こうなるのである。

ポーズを変えるたびに動きを検出して自動的に撮ってくれるので遊び放題である。

「動き検出」撮影例

ウインク検出や笑顔検出でポートレート

お次は2番目のポートレート。

ひとりポートレートだと、笑顔かウインク検出が基本かなと思う。ウインク検出を選んでみた。そうすると「人数」も指定できる。3人が同時にウインクしたら撮影、的な遊び方もできるのだ。今回は「おひとりさま」撮影なのでひとりで。

ウインクを選んだら(笑顔時も同様)、何人のウインクが揃ったら撮影のトリガーになるかをセット。

レンズは45mm F1.8のファミリーポートレートレンズを。このレンズ、安くて軽くてよく写るのでオリンパスユーザー必携だ。軽いのでこんな風にマグネット付三脚で簡単に固定できる。

マグネットでの装着はリスクが伴うのでみなさま自己責任でどうぞ。

目立つ本格的三脚ではなく、こういうミニ三脚で工夫するのが楽しい。写真だけ見たらまさかこんなとこから撮ってるとは思うまい、的なものだ。

そして撮影したのがこちら。

「ウインク検出」で撮れた!

ウインクを検出したら2秒で撮影、としてやると少し待ち時間ができるので、その間に表情を変えたりポーズを決めたりできる。

2秒間のウェイトを入れてみた
「ウインク検出」+「ウェイト2秒」で撮影

ウインク検出はけっこう敏感。油断してると、こんなシーンを撮られちゃうことも。

ウェイト2秒で油断の図

フローはいくつでも登録できるので、シチュエーション別にたくさん作っておくと次回から便利だ。

シャボン玉写真も動き検出で

シャボン玉写真も動き検出を使ってみた。こちらは自撮り棒にミニ三脚を付けてこんな風に。

ミニ三脚に自撮り棒をつけて無理矢理三脚っぽくしてみた。AIRは軽いので風が吹かない限り(さらに重いレンズをつけない限り)なんとかなるのだ。

三脚としては極めて不安定な使い方で推奨はしないのだけど、A01が軽くてコンパクトなので強風が吹かない限りはこんな簡易セットでも撮れちゃうのだ。

レンズは電動パンケーキズームレンズを使用。このレンズは薄くて軽いのでA01向きだ。
そしてシャボン玉がぷくーっと膨らむと、その様子をカメラが「被写体が動いた」と検出して撮ってくれるのである。

「動き検出」でシャボン玉写真

やるのはカメラをセッティングして、あとはシャボン玉で遊ぶだけ。素晴らしい。
シャッターのタイミングはカメラ任せなので思わぬ瞬間が撮れるのも楽しさである。

「動き検出」で思わぬ瞬間

自撮り棒との相性ももちろんよし

本体がコンパクトで軽いので自撮り棒との相性もよし。普通のデジカメだと自撮り棒するにはちと重いが、これなら手もあまり疲れない。その上クオリティはマイクロフォーサーズである。

顔検出やスマイル検出をトリガーにしておけば、あとはもうカメラ任せでOk。

こんな何気ない自然な写真、まさか右手に自撮り棒を持ってるとは誰も思うまい。

自撮りらしからぬ何気なさ

咲いてる梅を見つけたのでこんなハイアングルのカットも。

梅を前に入れたカット(もちろん自撮り)

一脚に自撮り棒をつけて超ロング自撮りにも挑戦してみた。

自撮り棒に三脚用のネジ穴があるのでそこに一脚をつけて延長してみたが重すぎたもよう。

だがしかし、重くてちょっと無理筋でした申し訳ない。

両手でこれを支えてどうやって撮ったのかというと、カメラのシェイクをトリガーとしたのだ。カメラを左右に振って1秒後に撮れる、というフローにすると、両手がふさがってても撮れるのである。

「カメラ本体の動き検出」で超ロング自撮り

でもちょっと工夫すれば、御花畑の菜の花を真上から狙うとか、そういう技も使えるのが面白さである。

柵を超えずに、菜の花を真上から撮影

マイク付のイヤホンを使えば、音声トリガーでも撮れる。両手がふさがった状態で任意のタイミングでシャッターを切りたいときは、音声シャッターもお勧めだ。

ジャンプ写真に挑戦

という感じでいろんな写真を撮って遊んでたら、AIRのバッテリーが切れた。ああ、バッテリーの持ちが……と思ったら、すみません、すでに500枚も撮ってました。自動撮影が面白くてやたら撮りまくってたらいつのまにか500枚である。やばい。

そんなときはこれである。モバイルバッテリー。

モバイルバッテリーをつないでそこから給電すればOKである。

モバイルバッテリーで給電しながらの撮影もOK

ミニ三脚にAIR。レンズは9-18mmの広角ズーム(これも小さくてコンパクトなのでAIR向き)。

これで何を撮ろうとしているか。ジャンプ写真である。

「iPhoneをシェイクする」をトリガーにすれば、ジャンプしたときのiPhoneの揺れでシャッターが切れて、ジャンプ写真を簡単に最高のタイミングで撮れるんじゃないか、というわけである。

「iPhoneをシェイクする」でジャンプ写真!

動きを検出してからシャッターが切れるまでのタイムラグが発生するので、飛ぶタイミングはちと難しいが、ひとりで撮れるジャンプ写真である。

ぜひお楽しみあれ。

これを参考に自分で拡張しちゃおう

AIR FLOWでいろいろと遊んでみたが、被写体の動き検出がけっこう応用が効いて面白い。友達同士で楽しく遊ぶなら、ウインクや笑顔検出を人数分用意して、せーのってやるのも一興。

でも使っていると不満が出てくる。バシバシ連写したいとか、撮影時にシャッタースピード優先にしたいとか、露出補正したいとか、フォーカスを固定したいとか。トリガーももうちょっと違うのを使ってみたいよね、とか。

オリンパスに機能要望しようか……というところで思い出した。このアプリ、「OPC Hack & Make Project」のひとつなのである。

AIRの仕様を公開し、自由にハックして遊ぼう、という趣旨なのだ。AIR FLOWはその一環として作られた、ある種のプロトタイプアプリ、あるいはサンプルアプリなのだ。AIR用アプリを書くためのSDKも、AIR FLOWのソースコードも公開されているのである。

OLYMPUS AIRでこういうことをしてみたいけどアプリがない?……だったら作っちゃえ、と。自分で作れない人は作れる人と手を組みましょう、と。そういう楽しいプロジェクトなのだ。

モデル:高実茉衣
撮影協力:ダイヤと花の大観覧車(葛西臨海公園)
制作協力:オリンパス

荻窪圭