PENTAX Qの発売から約1年が経過し、待望の新モデルPENTAX Q10が登場した。全般にマイナーチェンジ的な進化だが、AF性能の向上、ボディデザインの刷新、100通りのカラーバリエーションなど、注目すべきポイントがいくつもある。また、オールドレンズ撮影への配慮も見られ、興味深いブラッシュアップモデルに仕上がっている。
■新型センサーで解像感アップ
まず撮影性能に関する部分は、新しくなった裏面照射型CMOSセンサーの採用がポイントとなる。従来機同様1/2.3型約1,240万画素というスペックだが、アルゴリズムの改良も相まって、従来機より解像感が改善しているという。実写してみると、合焦部に緻密さがあり、特に中近距離のカットでディテールの良さが実感できた。コンパクトカメラをそのままレンズ交換式にしたようなカメラだが、クラスを超えた高画質がPENTAX Q10の魅力といえるだろう。
もうひとつの変化はボディデザインの刷新だ。PENTAX Qはマグネシウム合金ボディと貼り革を組み合わせていたのに対し、PENTAX Q10は樹脂製ボディとラバーを組み合わせている。樹脂製ボディを採用した理由は、塗装の自由度を高めるためだという。PENTAX Q10はオーダーカラーが可能で、ボディ20色、グリップ5色で100通りのカラーバリエーションに対応する。このオーダーカラーに合わせたボディマテリアルの変更というわけだ。
操作系は従来機を踏襲しており、大きな変更はない。前面のクイックダイヤルも健在だ。ダイヤルやボタンはやや硬めのフィーリングで、小さいながらも誤操作が少ない。PENTAX Qはエフェクト機能はとかく充実していたが、これもPENTAX Q10に受け継がれている。仕上がりモードに相当するカスタムイメージ11種を筆頭に、スマートエフェクト9種、デジタルフィルター19種を備え、モードダイヤルにボケコントロールも搭載している。これらのエフェクト機能は従来機同様、クイックダイヤルなどから呼び出せるが、なぜこのような仕分けになっているのか、ユーザーが理解しづらい点は否めない。後継機ではエフェクト機能の整理を期待していただけに、そのまま継承してしまったのは惜しまれる。
新たな裏面照射型CMOSセンサーを採用し、解像感の向上を目指している | モードダイヤルを「BC」にセットすると、ボケコントロールを呼び出せる |
クイックダイヤルはスマートエフェクトやデジタルフィルターの呼び出しが可能だ |
従来機とサイズを比較すると、外寸はほぼ同等であることがわかる。 | 従来機はマグネシウム合金ボディ、PENTAX Q10は樹脂製ボディを採用している |
■待望の望遠ズームが登場
PENTAX Q10の登場に同時に、望遠ズーム「06 TELEPHOTO ZOOM(SMC PENTAX 15-45mm F2.8 ED [IF] )」がレンズラインナップに加わった。35mm判換算83~249mm相当となり、ズーム全域を通じて開放F2.8を実現した贅沢な望遠ズームレンズだ。
大口径望遠ズームのわりに、そのサイズ感は標準ズームとさほど変わらない | 沈胴構造を採用しているため、撮影時は前玉が鏡胴からせり出す |
大口径望遠ズームのわりに、鏡胴は02 STANDARD ZOOMよりわずかに長い程度である。このようにコンパクトにまとまっているのは沈胴構造を採用しているためだ。収納状態からズームリングをまわすと、前玉がせり出して15mmの位置でクリック感がある。この状態で前玉は固定され、全長が変わることなく15~45mmの間でズーミング可能だ。また、クイックシフト・フォーカス・システムを搭載しているので、AF状態から切り替え不要でMF操作できる。MFアシストを有効にしておくと、ピントリングに触れると同時に拡大表示できて便利だ。
今回はレンズフードなしで撮影してみたが、逆光に近い状態でもフレアがよく抑えられ、開放近辺では大きなボケ味が楽しめた。シャープさについてもセンサーサイズのわりに健闘しているといえるだろう。
■オールドレンズ撮影の便利機能
非正規の使い方だが、PENTAX Qシリーズはマウントアダプターを介してオールドレンズ撮影が可能だ。1/2.3型センサーは8mmフィルムとサイズが近いこともあり、Dマウントレンズのベースボディとして密かな人気がある。こうした使い方はPENTAX Q10でも可能で、当初のPENTAX Qより快適なオールドレンズ撮影を実現している。
Dマウントのアンジェニューを装着したみた。サイズ的にPENTAX Q10とバランスがよい |
まずオールドレンズ装着時に手ぶれ補正が使えるようになった。オールドレンズを付けてPENTAX Q10を起動すると、はじめに焦点距離設定画面があらわれる。ここで装着したレンズの焦点距離を設定し、レンズに応じて手ぶれ補正を最適化するという仕組みだ。PENTAX Q10は焦点距離倍率5.5倍と軒並み望遠よりになるため、手ぶれ補正が使えるのは実にありがたい。
ふたつめはフォーカスアシストの導入だ。従来から2倍/4倍の拡大表示が可能だったが、新たに輪郭強調タイプのピーキングに対応している。従来機は4倍表示の画像が粗く、ピントの山がつかみづらかった。フォーカスアシストと拡大表示を併用することで、MFでのピント合わせが快適になるだろう。なお、手ぶれ補正とフォーカスアシストは、最新ファームウェアを導入するとPENTAX Qでも利用可能だ。
オールドレンズを付けて起動すると、この画面があらわれる。装着したレンズの焦点距離を設定しよう | 右上のアイコンを見ると、手ぶれ補正が有効になっているのがわかる |
「フォーカス設定」の「フォーカスアシスト」をONにすると、ピーキングが可能だ | フォーカスアシストをONにしたところ。合焦部分のエッジが強調され、ピントの山がつかみやすい |
■まとめ
PENTAX Q10の強化ポイントは、端的にいうと新型イメージセンサーによる高画質化だ。新ボディデザインも改善点といえるが、樹脂製ボディになってしまったため、質感が落ちたという印象は否めない。どのメーカーもセカンドモデルはコストパフォーマンスを重視する傾向があり、これはやむを得ない部分だろうか。軽量化がされていれば話は別だが、PENTAX QとPENTAX Q10は同重量である。
こうしたことを踏まえると、PENTAX Qからの買い換え需要を喚起するのは難しいそうだが、新規購入であれば、超小型レンズ交換式カメラを高画質に楽しめる。むしろスペック的な部分ではなく、100通りのオーダーカラーを主目的として購入するのも一興だろう。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・ISO感度
ISO100 | ISO200 |
ISO400 | ISO800 |
ISO1600 | ISO3200 |
ISO6400 |
・02 STANDARD ZOOM
・06 TELEPHOTO ZOOM
・オールドレンズ実写サンプル
【2012年11月16日】記事初出時、冒頭部分に「待望の後継機」と記載していましたが、PENTAX Q10はPENTAX Qの後継機ではないため、表現を改めました。
2012/11/16 00:00