【新製品レビュー】ニコンD3200
エントリークラスながら、有効2,416万画素CMOSセンサーや最新スペックの画像処理エンジンEXPEED 3を搭載。液晶モニターの高解像度化や連写スピードの向上、ガイドモードの強化といった改良が加えられている。
ボディカラーはブラックと光沢のあるレッドの2色。大手量販店の店頭価格は、ボディ単体で8万4,800円、AF-S DX 18-55mm F3.5-5.6 G VR付きのレンズキットが9万4,800円。AF-S DX VR ED 55-200mm F4-5.6 Gも同梱のダブルズームキットは11万9,700円となっている。
■エントリークラス唯一のオーバー2,000万画素機
前身といえるD3100が併売とのことなので、厳密には後継モデルとはいえないものの、本機もクラスとしてはローエンドに当たる。そこにニコンのDXフォーマットでは最多画素数となる有効2,416万画素CMOSセンサーを搭載してきたところが興味深い。D3100は有効1,420万画素なので、一気に1,000万画素ほど増えたことになる。
画像処理エンジンは最新スペックのEXPEED 3。処理能力が大幅にアップしたことから、ノイズ処理も高度化。感度設定範囲はISO100〜6400。増感モードのHi1でISO12800相当となる。これはD3100よりも1段高い。また、連写スピードも3コマ/秒から4コマ/秒にアップしている。
背面右手側の操作系に若干手が加えられており、D3100ではモードダイヤル基部にあったレリーズモードセレクターが、本機では背面のレリーズモードボタンに変わっているし、レバー式だったライブビューのスイッチもボタンに置きかえられた。また、上面右手側に動画撮影ボタンが新設されている。液晶モニターは23万ドットから92万ドットにスペックアップ。これはうれしい点だ。
電源はリチウムイオン電池EN-EL14を使用する。CIPA基準の撮影可能コマ数は540コマ。実写では、静止画と動画合わせて350カットほど撮って、バッテリーの残量マークが1コマ減ったというぐらい(ストロボは使用していない)。
記録メディアはSD/SDHC/SDXCメモリーカードで、Eye-Fiにも対応している。実写でのJPEGの最高画質(Lサイズ、FINE画質)の平均ファイルサイズは約9.75MB。RAWの平均ファイルサイズは約20.4MB。大量撮影派やRAW中心、あるいは動画を多用するユーザーはなるべく大容量のカードを用意したほうがいいだろう。
DXフォーマット初の有効2,416万画素CMOSセンサー。最大記録画素数は6,016×4,000ピクセル。エンジンには最新のEXPEED 3を搭載している。 | ISO感度設定の画面。感度自動制御のオンオフ、オート時の上限感となどを設定する。 |
感度の設定範囲はISO100から増感モードのHi1(ISO12,800相当)で、D3100よりも1段アップした。画素数から考えればすごい進歩だ。 |
背面右手側の操作部。ライブビューの操作が、レバー式からボタン式に変更された。滑り止めのパーツは若干大きくなっている。 | D3100ではライブビュースイッチの中央にあった動画撮影ボタンが、本機ではシャッターボタンそばに移動してきた。 |
背面左手側の操作部。D3100と違って、拡大ボタンと縮小ボタンの上下が入れ替わっている。 | エプロン部にはフラッシュモード/調光補正ボタン、ファンクションボタンが並ぶ。機種名のロゴの上の穴は内蔵マイクのものだ。 |
右手親指が当たる部分の滑り止めパーツは、D3100よりも若干大型化。まあ、ホールド感にそんなに違いはないが。 |
ファンクションボタンの機能は4項目から選べる。筆者個人はISO感度設定がいちばん便利だと思う。 | 背面のAE/AFロックボタンの機能の設定画面。いちばん下の「AF-ON」を選べば“親指AF”も利用できる。 |
シャッターボタン半押しでAEロックを行なうかどうかも選択できる。フォーカスロックを多用するなら「する」が便利。 |
電源のEN-EL14は容量1,030mAh。CIPA基準で540コマの撮影が可能だ。 | 記録メディアはSD/SDHC/SDXCメモリーカード。画素数の分だけファイルサイズも大きいので、容量にも余裕があったほうがいい。 |
スマートフォンなどと通信ができるワイヤレスモバイルアダプターWU-1aに対応したのもトピック。これについては、こちらのレビュー記事をご参照いただきたい。 |
■動画機能に改良の跡あり
D3100に搭載されていた「ガイドモード」を本機も継承。撮りたいシーンや試してみたい撮影テクニックを選び、あとは画面に表示される指示に従って操作することで、目的に合った機能の組み合わせがセットされる。カメラに慣れていないユーザーにも簡単にさまざまな機能が楽しめるのがいいところだ。「テクニックを使って撮る」に「夕日を赤く撮る」「明るい雰囲気で撮る」「落ち着いた雰囲気で撮る」「ブレを防いで撮る」が追加され、「場面にあわせて撮る」と合計で18種類に増えている。
アート系作風機能が楽しめる「画像編集メニュー」にも、新しく「カラースケッチ」「セレクトカラー」が追加され、撮ったあとの楽しさも増えたといえる。
個人的に感心したのは、動画まわりの小改良がいくつか見られたこと。
例えば、D3100のライブビュー画面には、動画の撮影範囲を示すマークやマスクなどはまったくなく、どこからどこまでが写るのかがよくわからなかった。おかげで、撮りはじめてから被写体が切れてしまうことに気付いたりといった失敗が起きやすかった(なので、フレーミングを決めるために動画を撮るという面倒なことをやらないといけなかったのだ)。
それが、本機には動画用の情報表示モードが新しく追加。画面の上下にグレーのマスクが付くほか、画面左側にマイクレベルも表示されるようになった。
また、D3100は内蔵のモノラルマイクだけだったが、本機は内蔵モノラルマイクに加えて、外部ステレオマイクにも対応。臨場感のある音声を楽しめる。
フルHD解像度でのフレームレートも24pから30pに向上したほか、連続で撮れる時間もD3100の10分から20分に倍加した。どちらかといえば、小さな改良だが、動画機能を重視するユーザーにとっては大きな意味を持つ改良だと思う。
ただ、操作性の部分で、若干首をかしげる点もある。特に不便に感じたのはセルフタイマーが1コマ撮るごとに強制的に解除されてしまうこと。夜景などを撮るときには、何コマも連続的にセルフタイマーやリモコンを使うことになるのに、本機は(D5100もそうだけど)毎回毎回設定を変えないといけない。D3100はレリーズモード(ドライブモード)がレバー式だったので便利だったのになぁと思う。
まあ、メインのターゲットユーザーが初心者で、レバー式だと戻し忘れるというクレームが多かったとかの理由かもしれないが、それなら自動解除するかどうかを選択できるメニュー項目を用意してもらいたいと思う。
「ガイドモード」の初期画面。 | 「撮る」を選んだら次は「場面にあわせて撮る」か「テクニックを使って撮る」を選ぶ。 |
新しく追加された「夕日を赤く撮る」。ホワイトバランスが調整される。 | 同じく「明るい雰囲気で撮る」。プラス補正して撮る項目。 |
同じく「落ち着いた雰囲気で撮る」はマイナス補正。 | 同じく「ブレを防いで撮る」。感度自動制御機能がオンになってブレにくいシャッター速度に制御される。 |
画像編集メニューにはアート系の項目がいろいろある。 |
「動画の設定」の画面。 | フルHD解像度でのフレームレートに30pが追加された。 |
「動画のマニュアル設定」で「する」を選ぶと、シャッター速度とISO感度を手動設定できるようになる。 | ライブビュー時の画面。コントラスト検出AFのスピードは変わってない印象。 |
「動画情報」表示の画面。上下にグレーのマスクが付いて、動画の撮影範囲がつかめる。また、音量レベルもチェックできる。 | こちらは動画撮影中の画面。連続で撮れるのは最長20分まで。 |
再生時の画面。 | 各種撮影情報とヒストグラムが見られる「統合表示」の画面。 |
「RGBヒストグラム」の画面。このモードではヒストグラムを表示したまま部分拡大ができる。 |
■まとめ
細かい部分で気になる点はあるものの、エントリークラスだけに重箱の隅をつつくようなレベルの苦言はある程度仕方がないところか。また、画素数増に対してキットの標準ズームの力不足が歴然と感じられるのも気になる点ではある。
が、高感度撮影時のノイズは画素数が増えているにもかかわらず、かなり減っている印象を受けた。レンズさえ選べば見た目以上に活躍してくれるのではないかと思う。
実売価格がD3100の発売当初よりも2万円アップしているのがちょっと引っかかるものの、予算さえクリアできるなら買って損はしないカメラだ。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
ベース感度のISO100から感度を上げるにつれてノイズは増えてくるが、ISO1600まではわりとクリーンな画面で十分に常用可能だ。
ISO3200になると、特に暗めの部分のザラツキが気になりはじめるが、解像感の低下はあまり目立たない。ISO6400でも小サイズのプリントなら使えそうな印象。さすがにHi1(ISO12,800相当)になると用途はかなり限定されそうだが、それでもかなり解像感が保たれているのは見事だと思う。
撮像素子の素性がいいのとEXPEED 3の処理能力のすごさ、それからノイズ処理がよくなったからだろう。
・ピクチャーコントロール
画像の仕上がりを決めるピクチャーコントロールは「スタンダード」「ニュートラル」「ビビッド」「モノクローム」「ポートレート」「風景」の6種類。
・作例
・動画
- 動画作例のサムネイルをクリックすると、未編集の撮影動画をダウンロードします。再生についてのお問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
2012/6/13 00:00