【新製品レビュー】ヤシカ「EZ Digital F537IR」
EZ Digital F537IR |
エグゼモードが6月に発売したヤシカブランドのコンパクトデジタルカメラ「EZ Digital F537IR」は、実売7,980円と低価格ながらデジタルカメラでは珍しい赤外線撮影にも対応している。
1/3.2型有効503万画素のCMOSセンサー、35mm判換算で40mmの単焦点レンズ(ピントは2焦点切替え式)、オートのみで最大ISO200までの感度、価格、画質などから見て、“トイデジタルカメラ”の範疇になると思われるモデルだ。画質は正直あまりパッとしないのだが、8,000円程度で赤外線撮影が楽しめるのが本機の魅力だろう。
赤外線写真は、通常の可視光とは異なり赤外線によって像を記録する方法だ。高コントラストに撮影できることから風景写真などで使われている。また、赤外線を良く反射する葉などが白く写るため、可視光とは違った独特の描写を得ることができるのも特徴だ。そのほか、一部の天文写真などでも使われている。
これまで赤外線撮影をするには、銀塩カメラと専用フィルムで行なうのが一般的だった。だが、赤外線フィルムは次々に生産を終了し、今では入手が難しくなっている。一方デジタルカメラは、可視光撮影に悪影響のある赤外線を除去する「IRカットフィルター」を撮像素子の前に装備して赤外線感度を落としているのが普通だ。そのため、一般的なデジタルカメラで赤外線撮影を行なうことは困難だった。
その点EZ Digital F537IRは、本体のスイッチ1つで可視光撮影と赤外線撮影を切替えることができるので手軽に赤外線撮影を楽しめる。また、レンズの周囲に6個の赤外線ランプを備えているため、ほとんど真っ暗な場所でも撮影が可能となっている(赤外線ランプが届く範囲で)。本機は動画(最大720×480、30fps)でも赤外線撮影が可能となっている。なお静止画、動画とも赤外線撮影時はモノクロになる。
大きさは一般的な薄型デジタルカメラと同様だ |
■葉が白く写る赤外線独特の描写
通常撮影と赤外線撮影のモード切替は、レンズ上部のレバーで行なう |
赤外線撮影に切替えるには、本体上部のスライドスイッチを「IR」側に入れる。すると、レンズ前面のIRカットフィルターが外れて赤外線撮影モードになる。このとき赤外線ランプも自動的にオンになる。赤外線ランプがオンになっても、明るい場所では発光しているのがほとんどわからない。暗所でもほのかに赤い光が見えるだけだ。
実際に撮影してみると晴天の日中では、木々の葉が雪を被ったように白くなった。また、空が入る構図では雲が可視光撮影よりもくっきり写った。いずれも赤外線写真特有の写り方だ。赤外線で撮ると、見慣れた風景がまったく異なって見えるのが面白い。このカメラは赤外線撮影時に、いわゆる濃赤色のフィルターを付けなくても赤外線写真が撮影できるようだ。
通常撮影時(左)は赤外線カットフィルターがあるが、赤外線撮影(ナイトショット)モード(右)にすると外れる |
赤外線撮影時はレンズ周りの赤外線ランプが点灯する。肉眼では、ほのかに赤く光るのがやっとわかる程度だ | 赤外線撮影時の液晶モニター表示 |
夜間は、赤外線ランプにより真っ暗な状態でも撮影可能。赤外線ランプは5m程度までは十分届くようだ。また赤外線ランプが十分に照射できる近距離では手持ち撮影が可能な高速シャッターで撮影可能。壁を写した写真を見ると、赤外線ランプはほぼ遠景で画面の中央を照らしているのがわかる。今回は居なかったが、木の枝に止まった昆虫などを手持ちで撮影することもできそうだ。ストロボも発光させなくて良いし赤外線ランプの光も見えないはずなので、夜行性動物の撮影には適しているように感じた。
メニュー画面はタブ式 |
■手軽に赤外線撮影が楽しめる
ピントは側面のスイッチで切替える。最短撮影距離は1.2mだが、マクロモードにすると約20cmまで接近できる |
ピントも通常時と20cm以下用のマクロモードとの2焦点切替えとおおざっぱな仕様なため、カッチリとピントのあった写真を撮ることは難しそう。また先にも書いたとおり、今日のコンパクトデジタルカメラ一般の水準から見れば決して良い画質とは言えないが、こうした一芸を持ったカメラも面白いものだ。
赤外線撮影以外では取り立てて大きな特徴はないが、手軽に赤外線撮影にチャレンジしてみようという向きには一考の余地がある。また、夏休みの自由研究用アイテムとして子どもに持たせてみるのも有りだろう。
この価格ながらリチウムイオン充電池を採用 | 充電は本体充電。PCのUSBコネクタでも充電できる |
専用ポーチが付属する |
■実写サンプル
※作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、別ウィンドウに800×600ピクセル前後で表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
●赤外撮影(日中)
可視光 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/354秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 5mm | 赤外線 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/2,000秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 5mm |
可視光 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/444秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 5mm | 赤外線 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/2,000秒 / F3.2 / 0EV / ISO50 / WB:オート / 5mm |
可視光 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/100秒 / F3.2 / 0EV / ISO72 / WB:オート / 5mm | 赤外線 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/445秒 / F3.2 / +1EV / ISO50 / WB:オート / 5mm |
●赤外撮影(夜間)
●カラー効果
通常 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/25秒 / F3.2 / 0EV / ISO54 / WB:オート / 5mm | 白黒 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/25秒 / F3.2 / 0EV / ISO55 / WB:オート / 5mm |
セピア EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/25秒 / F3.2 / 0EV / ISO59 / WB:オート / 5mm | ネガ EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/25秒 / F3.2 / 0EV / ISO57 / WB:オート / 5mm |
●変形モード
変形モードは人物などをスリムに写すことができるモードだ。
通常撮影 EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/50秒 / F3.2 / 0EV / ISO61 / WB:オート / 5mm |
変形モード EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/50秒 / F3.2 / 0EV / ISO54 / WB:オート / 5mm | 縦位置で撮影することで横に引き伸ばした絵も撮れる EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/50秒 / F3.2 / 0EV / ISO72 / WB:オート / 5mm |
●マクロ
EZ Digital F537IR / 2,592×1,944 / 1/50秒 / F3.2 / 0EV / ISO67 / WB:オート / 5mm |
●動画
※サムネイルをクリックすると動画のダウンロードを開始します。
・通常撮影(日中)
約16MB |
・赤外線撮影(日中)
約14MB |
・赤外線撮影(夜間)
約32MB |
2010/7/29 00:00