新製品レビュー
パナソニック「LUMIX S1II」
部分積層型CMOSセンサーを搭載 広範囲にシーンをカバーするフルサイズミラーレス
2025年6月26日 08:00
6月19日発売のパナソニック「LUMIX S1II」は、約2,410万画素のフルサイズミラーレスカメラです。先行発売で高画素モデルにあたる「LUMIX S1RII」とほぼ同じサイズ感の小型軽量化を達成。シリーズ全体の特長である動画撮影性能も強化されています。
最大の特徴は転送速度に優れた部分積層型センサーを搭載しているところ。これによって、解像性能や高感度性能はもちろん、素早い動きを満足に捉えられるだけの動態撮影性能も手に入れました。
外観デザインとサイズ感
外観をみるに、前モデルの「LUMIX S1」から比べると、大幅なダウンサイジングに成功していると言えるのではないかと思います。質量は約735g(バッテリー、メモリーカード含む)です。
下位モデルである「LUMIX S1II」と、ほとんど変わらないサイズ感に、フラッグシップモデル相当の機能を詰め込んだデジタルカメラ、それが本モデルになります。高画素モデルの兄弟機、「LUMIX S1RII」(約4,590万画素)との違いは、単純に画素数の違いであるといえるでしょう。
部分積層型CMOSセンサーを採用
兄弟機「LUMIX S1RII」と大きく異なるのは撮像センサーです。ただ単に画素数が異なるだけでなく、転送速度が速く処理性能の高い部分積層型センサーを搭載してきたところに大きな意味があります。
約2,410万画素ですので、得られる画像の解像性能は十分に高いものがあります。約4,430万画素の「LUMIX S1RII」に比べればいくらか解像感に劣ることがあるかもしれませんが、実用上でほとんど問題を感じることはないでしょう。
一方で、常用最高感度はISO 51200となっています。
そしてそれで撮影したのが下の画像。さすがにある程度のノイズやディテールの消失が見られるものの、こちらも実用上十分な高感度性能だと言えると思います。
LUMIX S1RIIと同等の優れた操作性
操作性については先に発売されたフラッグシップモデルにして兄弟機の「LUMIX S1RII」とほぼ同じですので、今回は特に特長的な点についてだけ紹介しておきたいと思います。
まずファインダーは、約576万ドットの有機EL液晶(OLED)の高精細です。大変に見え具合がよろしく、フラッグシップモデルのファインダーとして大変に満足できる優れものです。
3.0型約184万ドットの背面モニターもフラッグシップに相応しい仕様。前モデルでも縦位置撮影と横位置撮影の際に光軸をズラさず撮影できる3軸チルト式が採用されていましたが、本機ではさらに進化した、バリアングル式とチルト式を組み合わせた「チルトフリーアングル構造」が採用されています。横位置でも縦位置でも楽な姿勢で撮影することができます。
「チルトフリーアングル構造」の優れたところは、従来に比べてモニターが下向きに大きく展開するようになったところ。静止画でのハイアングル撮影でも光軸をズラさず撮れるようになりました。動画撮影の撮りやすさはいうに及びません。
その他の操作性も基本的に「LUMIX S1RII」と同等で、フラッグシップと呼ぶに相応しいだけの上質な操作感が備えられています。こうしたところは「LUMIX S5」シリーズに対して、メカとしての諸々の優越感を感じられるところなのではないかと思います。
動画撮影中の熱排気のためにペンタ部風の部位に設けられたベンチレーションは、「LUMIX S5」シリーズや「LUMIX S1RII」と同じ仕組みです。
メモリーカードはCFexpress Type Bと、SDXC UHS-IIのダブルスロット。こちらも「LUMIX S1RII」と同じですが、前モデルがXQDだったのに対してCFexpressに対応した意義は、いまどきのメモリーカード事情においてはとても心強いことといえるでしょう。
最新の部分積層型センサーを搭載
部分積層型センサーによって読み出し速度が高速化したおかげで、メカシャッター使用時で最高約10コマ/秒、電子シャッター使用時なら最高約70コマ/秒のAF追従連写が可能となりました。もちろんLUMIX Sシリーズ中では最速です。
「LUMIX S1RII」でも搭載されていた被写体認識も当然あります。
同様に、シャッターボタンを全押しするより前の状態を、電子シャッターの超高速連写で記録できる「SH プリ連写」も備えています。
これらの高度な認識・高速系の機能を使えば、鳥のはばたちのように通常では追いきれないような一瞬の映像も比較的簡単に撮影することができるようになりました(被写体認識「鳥」は認識する被写体の「動物」に含まれます)。
「部分」積層型センサーとはいえ、ローリングシャッター歪みは少なく、ブラックアウトもほとんどないため、実用的に動く被写体をとらえられるのが良いところです。結構な近距離でスズメの飛翔を撮影しても、自然な雰囲気で一瞬を切り撮ることができました。
ただ今回、鳥を撮っていて残念に思えたのが、現状のレンズラインナップでは最大で焦点距離300mmまでしか望遠レンズがないところでした。シグマのLマウント超望遠レンズを使うという手もありますが、LUMIX Sシリーズのレンズロードマップに「超望遠ズームレンズ」があるだけに、純正レンズのさらなる拡大を期待したいところです。
6K 30p動画の記録が可能
前モデル「LUMIX S1」に比べ、動画性能も大幅に進化しています。記録できる最大の解像度とフレームレートは「6K 30p」。一般的な「4K 60p」「4K 30p」ももちろん記録できます。RAW動画のカメラ内部記録(CFexpress type Bのみ)にも対応していますので、シンプルなシステムで自由度の高い高画質な動画撮影が可能です。
手ブレ補正も強力で、多くの最新デジタルカメラが備える電子手ブレ補正はもちろん、「LUMIX S1II」と同じように広角レンズ使用時に電子手ブレ補正であってもクロップされない「クロップレス」が搭載されています。この機能は現状でLUMIX Sシリーズレンズ使用時にのみ設定可能なのですが、決して他社製Lマウントレンズでの設定および使用を排除しているわけではないとのこと。ここも将来的な展開を期待したいところです。
また、フォトスタイルには動画撮影用として「シネライクA2」が加わっています。静止画撮影用とは別の、動画撮影向きのフォトスタイルで、広いダイナミックレンジと豊かな階調表現を特徴としています。
「4K 60p」「シネライクA2」に設定して撮影したのが、以下のサンプル動画になります。
作例
「LUMIX S 50/F1.8」でネコを撮ってみました。フルサイズですので被写界深度はかなり浅くなりますが、部分積層型センサーの処理速度の速さと優れた被写体認識機能のおかげで苦労せず正確に瞳にピントを合わせることができました。
前モデルの「LUMIX S1」に対して、大幅な小型軽量化が達成されたところは、やはり本モデルの特徴なのではないかと思います。兄弟機の「LUMIX S1RII」とほぼ同じサイズ感ですが、画素数が約2,680万ですので、こちらの方が気分的にも軽快感を覚えられるというものです。
うっかり高感度の範疇になるISO 6400でバラの花を撮影してしまいました。それでも豊かな階調で表現してくれているのは、さすが画素ピッチの広い約2,680万画素といったところでしょう。実際の撮影において、なにしろ安心感が大きいです。
色仕上げ設定である豊富な「フォトスタイル」を自由に変更できるのも最新機種ならではです。モノクロ設定のうちのひとつ「LEICAモノクローム」を使って、重厚な雰囲気を演出してみました。
本機はセンサーシフト式のボディ内手ブレ補正機能を備えていますので、低照度下でも多くのシーンで被写体をシャープに写すことができます。作例はそれほど手ブレを心配するシーンではありませんでしたが、シャッター速度1/60秒でしたので、咄嗟に撮影することの多いスナップ撮影ではやはり安心感がありました。
まとめ
先に発売された高画素モデルの「LUMIX S1RII」ともどもですが、下位モデルの「LUMIX S5II」程度にまで小型軽量化されました。前モデル「LUMIX S1」の重厚で頼り甲斐のあるボディが懐かしいとも思いつつ、やっぱり小さくて軽いのは実使用では正義だと思わせてくれます。
高画素な約4,590万画素の「LUMIX S1RII」を選ぶか、約2,680万画素の本機「LUMIX S1II」を選ぶかは使用目的によりますが、スナップ撮影やポートレート撮影などであれば、画質的にも十分な画質性能があると思います。そこに転送速度の速い部分積層型センサーが採用されていますので、動きモノの撮影にも問題なく対応できてしまうのが、本機のカバー範囲の広さといえるでしょう。
動画性能も含めて、S5シリーズの上を狙うならかなりお買い得なモデルなのではないでしょうか。