新製品レビュー
OM SYSTEM OM-3
スタイリッシュなボディに上位機種並の機能を搭載
2025年6月16日 08:00
OM SYSTEMの「OM-3」は、4/3型センサーを搭載したマイクロフォーサーズ規格のミラーレスカメラです。
最大の特徴はクラシカルなデザインを前面に押し出した趣味性の高さ……に見えますが、実際のところ、その正体はフラッグシップモデルと同等の最新スペックにあったりします。
外観デザインと操作性
「OM-３」の本体は、フラッグシップモデルの「OM-1 Mark II」に比べると随分と小さく軽くなっています。日常使いにも程よいサイズ感が良いですね。
なぜ、上位機種である「OM-1 Mark II」と比べたかと言えば、それは本モデルのスペックが基本的には上位機種と同等であるから。クラシックな魅力的なデザインでありながら、本質的には最高スペックの最新ミラーレスカメラというのが本モデル最大の特長なのです。
しかし、操作性については、本モデルならではのオリジナリティがあるのも事実です。
まず、ファインダー（EVF）は約236万ドットになります。通常使うぶんにおいては問題のない詳細感であることは間違いありませんが、「OM-1 Mark II」の約576万ドットと比べるとやはり劣ってしまいます。ファインダー倍率にしても上位モデルである「OM-1 Mark II」が高く、被写体を大きく分かりやすく視認できます。
モニターはバリアングル式の可動式で約162万ドット。こちらについてはサイズも含めて上位モデルとの差はありません。タッチパネルを採用しているところも同様です。
その他の違いとしては、「マルチセレクター」（いわゆるジョイスティック）が搭載されていないところでしょうか。「OM-３」は操作性において日常使いに過不足はないないながらも、上位機種に比べるとやや使い勝手の面で制限があるといったところでしょう。
また、本機種では新たに「CPボタン（コンピテーショナルフォトグラフィーボタン）」が搭載されるようになりました。
先行する「OM-1 Mark II」などにも、「ハイレゾショット」「ライブND」「ライブGND」「深度合成」「HDR」「多重露出」といった機能をまとめた「コンピテーショナルフォトグラフィー」は用意されていましたが、本機ではそれをボタンひとつで呼び出せるようにしています。これについては後述します。
OM-1 Mark II同等の積層型センサー
搭載する撮像センサーは「4/3型 裏面照射積層型 Live MOS センサー」で、これは「OM-1 Mark II」と同じです。本機の属するクラスで処理速度に優れた積層型センサーを搭載しているというのは、かなり贅沢なことと言えるでしょう。
画像処理エンジンも同様に、最新の「TruePic X」が搭載されているため、「OM-1 Mark II」同等の高画質が得られます。解像感はもとより階調性も高く、「TruePic X」以前の画像処理エンジンと比べ、繊細で上質な画作りが心地よいため、個人的にもとても好ましく感じています。
裏面照射積層型センサー、すなわち裏面照射型センサーでもあるため、高感度性能も高くなっています。常用最高感度のISO 25600で撮った画像でも、SNS等での使用程度なら十分な高感度耐性があると思います。
オリンパス時代から高評価を得ていたボディ内手ブレ補正機構ももちろん健在。協調して手ブレを抑えるレンズの組み合わせにもよりますが、焦点距離25mm（35mm判換算50mm相当）でしたら、1秒程度のシャッター速度でも比較的簡単にブラさず手持ちで撮影することができました。
さらには、処理速度が格段に速い積層型センサーを搭載していることから、野生動物やスポーツといった、動態撮影にも強いところがポイントになります。「AI被写体認識AF」や、最高約120コマ/秒の高速連写が可能な「プロキャプチャー」といった機能と組み合わせて使えば、鳥の羽ばたきのような一瞬を捉えることも可能です。
「PEN-F」を彷彿とさせるクリエイティブダイヤル
「OM-３」の特徴の1つが、前述した「クリエイティブダイヤル」の搭載になります。これはオリンパスの「PEN-F」に搭載されていたものとほぼ同じで、ダイヤルを回すだけで「カラープロファイルコントロール（COLOR）」「モノクロプロファイルコントロール（MONO）」「アートフィルター（ART）」「カラークリエーター（CRT）」といった、4種類の色仕上げ設定を選ぶことができるという趣向。
例えば、ダイヤルを「COLOR（カラープロファイルコントロール）」にすると…
カラー写真を細かく調整するための項目が分かりやすく表示され、「12色の彩度」、「シェーディング」、「ハイライト＆シャドウ」などをダイヤルで随意に微調整できるようになります。オリンパス時代の「PEN-F」独自機能を彷彿とさせてくれますね。
調整を重ねて設定した「カラープロファイルコントロール（COLOR）」で撮影してみたのが、以下の作例。通常の色仕上げ設定よりも細かく微調整でき、しかも直感的で、なおかつ調整した結果を保存できますので、自分好みの色仕上げを育てていくことができます。
また、ダイヤルを「MONO（モノクロプロファイルコントロール）」にすると…
同じように、モノクロ写真を細かく調整するための項目が分かりやすく表示され、「カラーフィルター効果」、「シェーディング効果」、「粒状フィルム効果」などを多彩な設定をダイヤルで随意に微調整できるようになります。こちらも（少しややこしいのが難点ですが）オリンパス時代の「PEN-F」の良さをシミジミと感じさせてくれる良機能を思い起こしさせてくれます。
そんな「モノクロプロファイルコントロール（MONO）」の機能を使い、調整を重ねたうえで撮影した作例が以下になります。最近では奥深いモノクロの色仕上げ設定があらかじめ用意されたデジタルカメラも多くなってきましたが、自分で試行錯誤して設定を重ねた写真は、味わいもまたひとしおと言ったところではないでしょうか。
「カラークリエーター（CRT）」は主に写真の温調（温かみがあり赤っぽい）と冷調（寒々しく青っぽい）を調整するための機能です。「アートフィルター（ART）」はオリンパスおよびOM SYSTEMの製品でおなじみでしょう。
いずれも写真表現をする上での重要な機能であるとともに、それをカメラ上で簡単に調整できる優れた機能でもありますので、ぜひ大いに活用してもらいたいと思います。
動画機能も充実
いかにも静止画撮影に比重を置いたデザインではありますが、動画撮影機能もなかなかに充実したものがあります。静止画と動画のモードを独立した専用ダイヤル（静止画/動画/S&Qダイヤル）で切り換えられることもそのひとつ。迷わず簡単に切り換えられるのは便利ですね。
「OM-3」の動画モードで設定できる最高画質はC4K 30pになりますが、もちろん４K 60pやFHD 60pといった、より一般的でよくつかわれる画像サイズを選択することも可能です。
今回は、そうした動画設定のうちから4K 60pで記録したサンプル動画を作ってみましたので、以下に掲載します。
作例
いろいろなことができるOM-3ですが、メインとして使いたいのはスナップ撮影の時ではないかと思います。クラシカルで小柄なボディは使っていて気分良く、操作していて楽しくなりました。
今回主に使用したレンズは、「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-45mm F4.0 PRO」です。こちらも小柄ながら使いやすくて写りも良いです。豊富なラインナップを誇る交換レンズの中から、本機にあった1本を選ぶのもまた楽しみのひとつになります。
「カラープロファイルコントロール（COLOR）」を使い、冷調でシュールな表現を目指してみました。今回試用させてもらった期間ではこの程度ですが、時間をかけてプロファイルを育てていけばさらに自分にとって理想的な仕上がりになると思います。カラーの調整としては直感的で分かりやすいですし、RAWデータがあれば後から適用することも可能です。
同じく「モノクロプロファイルコントロール（MONO）」を使い、力強い硬調なモノクロ表現を目指してみました。カラー写真から単純に色を抜いただけのモノクロ写真でなく、モノクロ写真ならではの作品としての本格的な表現を創出できるところが素晴らしい。調整に慣れないうちは「カラープロファイルコントロール」と同じくプリセットも用意されています。
まとめ
その外観から、クラシカルなデザインを愉しむだけの趣味性の高いミラーレスカメラかと思いきや、実のところフラッグシップ「OM-1 Mark II」と同等のスペックをもった凄いやつというのが本機「OM-3」でした。まさに羊の皮を被った狼ですね。
それでいて、サイズは「OM-1 Mark II」に比べて小型・軽量になっていますし、PEN-Fから「クリエイティブダイヤル」までも継承しています。
ある意味「もうひとつのフラッグシップモデル」と言ってもよいのかもしれません。意外に良心的なしかも価格がであるところも嬉しい。本機の本性に気づくことができれば、お買い得なカメラであることを理解できることでしょう。