新製品レビュー
RICOH GR II(外観・機能編)
元祖“一点突破型”デジカメの最新形
Reported by澤村徹(2015/6/22 08:00)
2005年に登場した初代GR DIGITALは、一点突破型のデジタルカメラとして一世を風靡した。コンパクト機に画質が期待できなかった当時、35mm判換算28mm相当のGRレンズを引っさげ、高画質コンパクトというカテゴリーを切り開く。ズーム全盛のご時世に、あえて単焦点レンズのコンパクト機を投入したわけだ。あの圧倒的な潔さは、いまだに忘れ得ない。あれからおよそ11年、6世代目となるGR IIが登場する。その変化と継承を見ていこう。
GR IIは前モデルと同様、35mm判換算28mm相当のGRレンズ18.3mm F2.8を搭載する。イメージセンサーは有効画素数1,620万画素のAPC-Sサイズで、画像処理エンジンはGRエンジンVとなる。最大の特徴はシリーズ初となるワイヤレス機能を搭載した点だ。Wi-FiとNFC機能を備え、スマートフォンと連携できるようになった。
発売は7月17日、店頭予想価格は税込10万円前後の見込み。
ブラウザベースのアプリを用意
ワイヤレス機能の搭載に合わせ、「GR Remote」と「Image Sync」という2本のスマートフォン用アプリをリリースした。
「GR Remote」はリモート撮影ソフトで、ライブビューを見ながらのリモート撮影、画像の閲覧、転送などが可能だ。また、各種撮影セッティングの一括設定も行える。これはISO感度、ホワイトバランス、フォーカスモードなど、任意の項目を設定し、「Transmit」ボタンをタップして一括設定変更するものだ。リモート環境では設定変更のたびに通信すると操作が煩雑になる。その点を考慮した機能だろう。ふたつ目の「Image Sync」はSNSへのアップロードに対応したソフトで、デジタルカメラ、スマートフォン、SNSという三者の連携が可能になる。
ワイヤレス機能の搭載にともない、ボディサイズが若干大きくなった。前機種GRの高さが61mmだったのに対し、GR IIは62.8mmだ。単純計算で1.8mm背が高くなった。元々コンパクトなカメラだけに1.8mmの差は無視できないところだが、実機を手にすると、それほど気にならない。軍艦部中央が細長く盛り上がり、サイズアップが目立たないデザインになっている。なお、撮影時の重量はGRが約245gだったのに対し、GR IIは約251gだ。若干重量アップしているが、最小限に抑えられている。
新エフェクトの追加も
描写面ではエフェクトモードに新モードが6つ加わった。「明瞭コントロール」「光沢コントロール」「鮮やか」「人物」「雅」「HDR調」が加わり、エフェクトモードは全17種類になる。従来機同様、側面のエフェクトボタンでダイレクトに呼び出すことが可能だ。また、各種パラメータを変更して効き具合を調整できる。エフェクトモードはカメラ内RAW現像でも選択できるので、撮影後にカメラ内RAW現像でじっくりと取り組むのがお薦めだ。
※今回試用した個体はベータ機のため、作例は縮小掲載しています。
光沢コントロール
光沢感を強調するエフェクトモードで、主にハイライトを調整して光沢の強弱を演出する。
一点突破型から、贅沢なコンパクトカメラに
先に初期のGR DIGITALは一点突破型だと書いた。素のままでも不便はないが、キーアサインで自分流にカスタマイズして使いこなす。そんなカメラだった。高画質でコンパクトという圧倒的なアドバンテージがあったからこそ、操作性をあれこれ工夫してより深く使いたくなり、また、そうしたカスタマイズ自体も楽しみのひとつだった。
しかしながら、世代を重ねるごとにGR DIGITALは多機能化し、DIGITALを取っ払ってGRになった頃には、むしろ使い切れないほどの機能を満載したカメラになっていた。そして今回、ワイヤレス機能の追加である。いまやデジタルカメラにとってワイヤレス機能は必須だが、GRユーザーにとってはどうだろう。一連のGRシリーズにストイックさを求める人には、刻々と多機能化していくことに違和感をおぼえるかもしれない。
ただ、3~4世代目あたりから、GRのあり方が変わったことを理解しておくとよいだろう。当初のGRシリーズは、限られた機能を自分流にカスタマイズして使いやすいツールに育てた。一方、昨今のGRシリーズは、全天候型の機能から必要な機能だけをピックアップし、それらをキーアサインして使う。搭載機能をすべて使う必要はない。自分の撮影スタイルと照らし合わせ、よく使うものを呼び出しやすいキーにアサインしておく。搭載機能を使うか使わないかはユーザーの自由。GR IIは機能的に贅沢なコンパクト機に成長したのだ。
しかも、搭載機能が増えているにも関わらず、ボディサイズはさほど変わらない。おなじみのボディスタイルに、ワイヤレス機能を詰め込む。そのたゆまぬ努力にエールを送りたい。