新製品レビュー
FUJIFILM X-T10(実写編)
独自センサーの絵作りとキレのある描写を堪能
Reported by 大浦タケシ(2015/6/19 09:00)
富士フイルムの「X-T10」は、「X-T1」の弟分となるミラーレスモデルである。MFフィルム一眼レフを彷彿させるシェイプの小型軽量なボディに、APS-Cサイズの有効1,630万画素X-Trans CMOS IIセンサーを搭載。視認性の高い236万ドットのEVFや、像面位相差とコントラスト方式を組み合わせたハイブリッドタイプのAF、スマートフォンやタブレット端末との連携を可能とするWi-Fiなど上位モデルに迫る機能を詰め込む。さらに、X-T1では非搭載としていたストロボも内蔵し、撮影シーンを選ばない。
前回のレビューではX-T10の外観と機能をチェックしたが、今回は実写編としてその写りを見てみることにしたい。
キットレンズの遠景描写
X-T10のレンズキットとして付属する「XF18-55mm F2.8-4 R LM OIS」を使って、まずは遠景の描写を見てみよう。段階的に絞りを変えながら撮影を行っているが、掲載した画像はワイド端およびテレ端ともコントラスト、解像感など条件的に良好と思われるF5.6としている。また、フィルムシミュレーションはデフォルトのスタンダード(プロビア)とし、パラメータには手を触れていない。
ワイド端18mmの場合はで、開放値でわずかにコントラストが低く、画面周辺部のシャープネスも甘さが見られるが、絞り込むに従いキリッと締った描写となる。これはX-T10本来の描写性能といってもよい。色のにじみについては、開放値から良好で、よく補正されている。ピントはAF任せで撮影を行っているが、甘さをまったく感じさせないところも特筆してよい部分である。
テレ端55mmについては、ワイド端と同様開放値でコントラストが気持ち低く感じられるものの、画面周辺部までキレは上々。1段絞ったF5.6となるとコントラストが増し、シャープネスもさらにアップする。X-T10の持ち味であるフィルムライクでキレのある描写となる。画面周辺部の色のにじみについてはワイド端と同じく開放値から見当たらない。描写のピークは絞りF8となるが、絞りF5.6でもズームレンズとして文句のつけどころがないほどである。こちらもAF任せで撮影を行っているが、しっかりと合焦している。
ISO感度別の画質
X-T10の設定可能なISO感度は、常用でISO200からISO6400まで。拡張感度としてISO100相当およびISO25600、ISO51200相当の設定を可能としている。掲載した作例の撮影では、1段ステップで、ISO100相当からISO51200相当まで撮影。高感度ノイズリダクションはデフォルトの標準としている。また、フィルムシミュレーションもデフォルトのスタンダード(プロビア)としている。
輝度ノイズ、色ノイズとも顕著になってくるのがISO6400あたりから。空の部分を見くらべると分かりやすいはずだ。解像感の低下や色のにじみが目立つようになるのも同じ感度で、鉄筋のエッジやボルトを見ると違いが分かることと思う。
また、ISO6400では色あいも変化している。少しでも描写を追求したい風景やポートレートなどはベース感度での撮影が望ましいだろうが、スナップのような撮影であればISO3200でもさほど気になることはなさそうだ。
個人的に気になったのが、拡張機能のISO100相当とベース感度の描写の違い。両者の画像を見比べると、今回の条件に限っていえば違いは分かりにくい。ISO100相当のほうがほんのわずかコントラストは高いかな、と思える程度である。X-T10には最高1/32,000秒の電子シャッターが搭載されているが、メカシャッターを使って少しでも絞りを開きたいときなど、この拡張機能のISO100相当で撮影しても問題ないだろう。
フィルムシミュレーションの絵づくりをチェック!
Xシリーズの売りのひとつがフィルムシミュレーションだ。仕上がり設定機能であるが、感材メーカーらしいフィルムライクな仕上がりが人気を博している。さらにいくつかの仕上がりの名称は、プロビア/ベルビア/アスティアと同社のポジフィルムの名前を用いる。
往年の写真愛好家はフィルムを選ぶ感覚で仕上がりが選べ、デジタルしか知らない写真愛好家には新鮮な響きとなっている。もちろんX-T10にもフィルムシミュレーションが搭載され、ローパスレスによるキレのある描写とともに、美しい仕上がりが楽しめる。