【新製品レビュー】パナソニックLUMIX DMC-FX90
パナソニックのコンパクトデジタルカメラの新製品「LUMIX DMC-FX90」が登場した。焦点距離24mm相当(35mm判換算)からの広角ズームレンズやタッチパネルを搭載する今時のデジカメだが、最大の特徴は無線LAN機能をスマートに内蔵した点。そのメリットを中心にレビューしてみた。
発売は9月22日。実勢価格は2万9,700円前後。カラーバリエーションはレッドとブラック。
■明るい広角レンズとタッチパネル
DMC-FX90は、同社のコンパクトデジタルカメラとしてはミドルクラスに位置づけられるモデルで、新開発の有効画素数1,210万画素1/2.33型ハイスピードCCDを搭載する。読み出し速度が向上し、フルHD動画や最大10コマ/秒の連写などの高速動作が可能になった。1,210万画素と画素数が抑えめで、「1画素あたりの受講面積を大きく設計」したとあり、画質も期待できそう。
搭載されている画像処理エンジンは、おなじみの「ヴィーナスエンジン」で、高速なAF速度、AVCHD・Dolby DigitalのフルHD動画、ピクセル単位で補正する暗部補正、個人認識といった機能を実現している。また、デジタルズーム時や高感度時などで解像感を向上させる「超解像技術」も搭載している。
レンズは35mm判換算24-120mmの光学5倍ズームLEICA DC VARIO-SUMMARITレンズで、F値はF2.5-F5.9、光学手ブレ補正も内蔵する。少々テレ端が暗いが、広角端はF2.5と明るいのは嬉しいところ。光学ズームに加えて、iAズームを併用することで、さらに1.3倍相当のズーム効果が得られる。
本体はシンプルなLUMIXらしい外観で、正面から見て左寄りに大きくレンズを配置し、上部には電源スイッチを配置。薄型化を図っているため、シャッターボタンは細く、ズームレバーは角に小さく収められている。
ボタン類は必要最小限 |
背面はボタン1つだけでシンプル。操作はすべてタッチパネルで行ない、3型約46万ドットの液晶画面に触れて操作する。タッチパネルは感圧式(抵抗膜方式)なので、今時のスマートフォンのように軽く触れただけでするすると動くといった感じではなく、しっかりタッチすることで反応する。スマートフォンのような指先ではなく、爪のような固い部分でタッチした方が操作しやすい。静電容量式に比べると反応は鈍いが、しっかりタッチするように心がければきちんと反応してくれる。
タッチパネルで操作する。右側のカメラアイコンからモードを変更したり、左側のMENUアイコンから各種設定を変更できる |
■無線LAN搭載で新たな使い方を提案
さて、肝心の無線LAN機能である。DMC-FX90に搭載された無線LAN機能は、再生時に動作する仕組みで、撮影した画像を無線LANを使って転送する機能を備えている。撮影した画像を、その場でスマートフォンやWebの画像共有サービスにワイヤレスで転送でき、そのままほかの人と共有したり、スマートフォン経由でTwitterなどのSNSに投稿する、といったことも可能だ。
無線LANは本体正面から見て左側に配置されている |
最近は、携帯電話のカメラも高画質化していることに加え、スマートフォンの登場で、撮影画像をすぐにSNSなどに投稿するといった使い方が一般的になってきた。それに対して今までデジカメは、一部無線LAN搭載カメラもあったほか、Eye-Fiのような無線LAN内蔵SDカードといったソリューションも存在していたものの、スマートフォンのような手軽さはなかった。
DMC-FX90は、カメラ本体に無線LANを内蔵し、タッチパネル液晶を搭載することで、より手軽に無線LANを使って画像を活用しようと配慮しているのが特徴だ。
最も簡単なのが、カメラの画像をスマートフォンに転送する機能だ。前準備としては、iOSまたはAndroid用のアプリ「LUMIX LINK」をダウンロードしておく。続いて、カメラを起動したら再生モードに切り替え、「MENU」→「Wi-Fi設定」と移動する。
再生モードのMENUアイコンをタッチし、メニューのWi-Fi設定を選ぶ |
「かんたん設定」と「詳細設定」があるので、今回はかんたん設定をタッチ。さらに「スマートフォン」、「Webサービス」、「AV機器」、「パソコン」が並ぶので、「スマートフォン」を選択し、「次へ」をタッチする。すると、カメラに割り当てられたSSIDと暗号化キーが表示されるので、その画面のまま、スマートフォンの無線LAN設定に登録する。
Wi-Fi設定からはかんたん設定を選択し、送信先にスマートフォンを選ぶ |
SSIDと暗号化キーが表示されるので、これをスマートフォンに登録する |
例えばiPhoneなら、「設定」→「Wi-Fi」と進み、「ネットワークを選択」の欄に上記のSSIDが表示されるので、それを選択して暗号化キーを入力すれば接続されるので、インストールしておいたLUMIX LINKアプリを起動しておく。
iPhoneの無線LAN設定の画面。「FX90……」のSSIDが出ているので、これを選び、先ほどの暗号化キーを使って登録する |
その後カメラ側の再生中に本体の「Wi-Fi」ボタンを押すと、無線LANでの転送先を選択する画面になるので、「スマートフォン」を選び、登録したスマートフォンの一覧が表示されたら、任意のスマートフォンを選択。最後に「はい」を押すと転送が開始される。1枚の画像の転送時間は数秒程度だ。
側面のWi-Fiボタン |
送信先の選択画面 |
先ほど登録したスマートフォンを選択すると、自動的に送信が始まる |
iPhone側に送信されると、一覧画面に表示される |
複数枚の画像を転送したい場合、再生画面の「Wi-Fi」アイコンをタッチし、転送したい画像にタッチして複数画像を選択。画面の上部に向かって画像をドラッグ&ドロップすると、複数の動画像が転送状態になる。その後、「今からWi-Fiで送る」にタッチすれば、あとは前述の画像転送の方法で、送信先選択画面から「スマートフォン」を選んでいけばいい。グループ会社のパナソニック モバイルコミュニケーションズ製の携帯やスマートフォンに搭載された「ピクチャジャンプ」に似た機能と言っていいだろう。
アップロードしたい画像を複数選択できる |
複数の画像を選択したら、画面情報に向かってドラッグ&ドロップする | 「今からWi-Fiで送る」を選べば、すぐに複数画像をスマートフォンに送信できる |
基本的には、一度無線LANの設定をしておけば、次回からスマートフォン側の設定は必要がない。あらかじめスマートフォン側は無線LANをオンにしてスマートフォンのアプリを起動しておけばいい。基本的にはアプリはバックグラウンド状態でも転送できるようだ。
通常では、転送先でスマートフォンを選んだ時点でカメラの無線LANが起動してアクセスポイント(AP)として動作し、自動的にスマートフォン側はそのAPに接続しにいくので、いちいち接続動作はいらない。
画像がスマートフォンに転送されたら、画像アプリなどで編集したり、Twitterなどに投稿することが可能になる。スマートフォンでは画像編集やSNSへの投稿がやりやすいように豊富なアプリがあるので、それを活用すればいい。もちろん、カメラより画面が大きく、画像閲覧がしやすいスマートフォンやタブレットでベストショットを確認したり人に見せたりといったことも可能だ。ただし、iOS 5未対応のためか、iPhoneでは転送された画像がカメラロールに表示されず、活用できなかった(Android版は正常に動作した)。これは早期のアップデートを期待したい。
(編集部注:10月31日にiOS 5対応のアップデートがありました)
スマートフォンだけでなく、パソコンに対しても、同様に転送が可能。付属のソフトウェアをインストールし、そこから設定できる。パソコンの場合はメモリカード経由で取り込んでもいいが、出先でカードスロットのないモバイルパソコンなどに転送する際に便利だろう。
もう1つの機能が、直接インターネットに画像をアップロードする機能。スマートフォンへの転送は、閲覧や再利用を目的としたものだが、直接画像共有サービスなどへアップロードできるので、バックアップや共有にも活用できる。
この場合、前準備として必要なのが、パナソニックのWebサービスである「CLUB Panasonic」へ加入し、同じID・パスワードを使って「LUMIX CLUB PicMate」にアクセスして利用登録をしておくこと。
その後、カメラの再生時に再生時に「MENU」アイコンにタッチし、「Wi-Fi設定」を選択から「詳細設定」を選び、「無線設定」→「登録」と進み、無線LAN環境に接続する。自宅の無線LANでもいいし、外出先であればPocket WiFiのようなポータブル無線LANルーターを使うことで、どこでも画像のアップロードが可能になる。
無線設定から登録を選び、WPSでの接続かアクセスポイントの検索を行って登録する |
ルーターの設定では、ボタンを押すだけで簡単にルーター設定ができるWPS方式(PUSH方式)などが利用できる。SSIDを選択して暗号化キーを直接入力することも可能で、画面のソフトキーボードをタッチしてキー入力が可能。最近のスマートフォンを使っていると、反応の良さやフリック入力のような快適な入力というわけではないが、カーソルで入力するよりははるかに楽にできる。
アクセスポイントの検索を行った場合、一覧からAPを選び、暗号化キーをソフトウェアキーボードから登録する |
一度設定をしておけば、ルーター経由でインターネットに接続できるようになるので、アップロードの設定を行なう。
まず、再び「詳細設定」から「PicMate設定」→「新規登録」をタッチ。カメラ連携用のPicMateのIDが自動的に表示され、あらかじめ設定したパスワードを入力する。
PicMateの新規登録からログインIDを取得し、パスワードを入力しておく |
続いてLUMIX LINKアプリを起動し、設定画面から「PicMateサービスユーザ登録」を選び、先ほどのIDとパスワードを登録しておく。これでカメラから直接Webサービスに転送するだけでなく、いったんスマートフォンに転送して、それをWebサービスにアップロードすることが可能になる。
転送できるのは、Facebook、mixi、Flickr、Picasa、YouTubeで、画像をスマホに転送し、LUMIX LINKアプリからそれぞれのサービスに投稿できるようになる。設定はPCからも可能だが、スマートフォンから設定できるようになったことで、出先でもすぐに送信先を設定して投稿できる。無線LAN環境があれば、カメラから直接Webサービスに転送することもできる。ポータブル無線LANルーターがあれば、スマートフォンがなくても転送できるのがメリットだ。
無線LAN経由で、直接Webサービスに画像を転送することもできる |
同様に、PicMate対応のAV機器があれば、そこに対して画像を送信することもできる。自宅内の機器だけでなく、インターネット経由で自宅外の機器にも送信できるので、「家族の写真を遠方の両親に見せる」といった用途にも使えそうだ。
今まで無線LANを使ったカメラ用ソリューションでは、一部に無線LANを内蔵したカメラはあったものの、現在はEye-Fiのような無線LAN内蔵SDカードを使うのが一般的だ。それに対して、スマートフォンのカメラが高画質化するとともに、簡単にインターネット経由で画像投稿ができるため、より手軽に画像投稿で利用されるようになっている。特にTwitterなどのSNSの普及で、画像にコメントしてみんなと共有するという使い方において、スマートフォンの普及はめざましい。
今回の場合、そのスマートフォンのカメラの代わりにデジカメを使うことができるようになるのがメリットだ。スマートフォンのカメラが高画質化したとはいえ、光学ズーム、より高画質なレンズ、より自由度の高い撮影機能など、コンパクトデジカメにかなわない部分は多い。
その反面、より大画面で、より快適な操作で画像を閲覧できたり、文字が入力できたり、画像をインターネット経由で投稿したりといった部分はスマートフォンが得意とする分野だ。
その2つを無線LANで結びつけることによって、それぞれの得意分野で活用するという今回のソリューションは、コンパクトデジカメをさらに活用できる機能だ。デジカメで快適に撮影し、ベストショットをスマートフォンに送信し、それをSNSに投稿するといった動作が実現できる。
タッチパネルの反応がスマートフォンレベルにまでは達しておらず、文字入力で面倒だったり、やや動作にキビキビさが足りない点もあり、もう一頑張りという印象もあるが、画像を簡単に送信できる点は大きなメリットだろう。
ちなみに海外では、サムスンがすでに同様のソリューションを提供しており、こちらはさらにカメラの液晶モニター代わりにスマートフォンの画面をファインダーとして利用し、リモートでシャッターを切る、といったことも可能になっている。さらに、スマートフォンには高速な現在位置取得機能も備えており、それを撮影した画像に埋め込むといった機能も搭載している。
スマートフォンの機能をカメラで活用するというのは、今後さらに期待できる分野だ。これを使えば、カメラにGPS機能を搭載する必要はなくなるし、スマートフォンからリモートコントロールできれば、新しい使い方が生み出せると思う。パナソニックグループは携帯事業も抱えているし、今回のDMC-FX90も、操作性を含めてより密な連携が必要になってくるだろう。
■定番の機能を盛り込んだカメラ
カメラに関しては、先述の通り2ch読み出しに対応したハイスピードCCDセンサーを搭載することで、高速動作を実現。連写速度は通常だと約3.7コマ/秒で、高速連写だと速度優先で約10コマ/秒、画質優先だと約6コマ/秒で撮影できる。ただし、いずれも画像サイズとアスペクト比が3M(4:3)、2.5M(3:2)、2M(16:9)、2.5M(1:1)に制限されるが、最大100コマまで撮影可能だ。
タッチパネルを採用し、任意の位置をタッチしてピントを合わせられる。顔検出機能ももちろん対応する | 豊富なシーンモードも搭載 |
フルHD動画の撮影にも対応しており、AVCHD方式で1,920×1,080/60i、1,280×720/60p(それぞれ約17Mbps、センサー出力は30コマ/秒)で記録できる。AVCHDの場合は1回の撮影で29分59秒までの記録になる。
撮影メニュー。タッチパネルでほとんどの設定を行なう | 例えば露出補正では、矢印アイコンのタッチだけでなく、露出変更バーをタッチしても変更でき、一気に変更できる |
撮影時、画面左側に常時表示されている設定はカスタマイズが可能。ドラッグ&ドロップで変更できるのはタッチパネルならでは | レンズには従来通り強力な光学式手ブレ補正機能を搭載しており、さらに動画撮影時に効果を発揮する「アクティブモード」も備えており、特に広角端で歩きながらの撮影に威力を発揮する |
タッチ操作に対応し、フリックで画像切り替えなども可能。画面にタッチしてのお絵かきにも対応する |
撮影時は、基本的な操作はすべてタッチパネル経由で行なう。もちろん画面にタッチしてピントを合わせ、シャッターを切る「タッチでシャッター」機能も搭載する。動画撮影中でも、画面にタッチするとその場にピントを合わせて撮影してくれるのは便利だ。
タッチパネルを採用する利点の1つは、十字キーでひとつずつカーソルを動かさなくても、すぐに希望の機能を選択できるという点のはずだ。ただ、その割にFX90では、メニューのアイコンが下に横一列に並び、一覧性がよくない。矢印アイコンをタッチしてアイコンを探していくのでは、タッチパネルの利点が活かし切れていないように思える。この辺りは改善を期待したい部分だ。
■無線LANとスマートフォンの連携がトレンドになるか
DMC-FX90は、無線LANを搭載したコンパクトデジカメという点が最大の特徴だ。タッチパネル、広角24mm相当からの広角ズームレンズ、フルHD動画撮影機能と、基本機能は抑えつつ、無線LAN搭載による新たな使い方の提案がなされている。
無線LANの利用は、Eye-FiのようなSDカードベースのソリューションだと、機種を問わずに利用できるというメリットがあるが、カメラに内蔵することでカメラからより詳細な設定を行なったり、よりカメラと連携した機能を実現できるのがメリットだ。
コンパクトデジカメには毎年のようにさまざまなトレンドが搭載されてきているが、今後、無線LANとスマートフォンの連携がひとつのトレンドになりそうな製品だ。
■実写サンプル
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
・感度
・作例
2011/11/1 00:00