新製品レビュー

ひとつのレンズでさまざまなボケ

ボケブレード採用のLensbaby SOL 45

ケンコー・トキナーから発売されているLensbabyシリーズに、新たなラインナップとして「SOL 45」が加わった。ソフトな描写、独特の美しいボケはもちろん、ピントのエリアを移動できるティルト機能と、背景のボケを自分好みに変えることができるボケブレードを搭載している。

焦点距離は45mm、明るさはF値固定でF3.5(ボケブレード使用時はF5相当)、最短撮影距離は0.34mで最大撮影倍率は約0.16倍、ピント合わせはすべてマニュアルフォーカスで行う。

一眼レフ用で約150gと小型軽量なので遊べるレンズとして持ち歩きもしやすい。

ティルト機能

まず特筆すべきはコンパクトなティルト機能だ。レンズを任意の角度と方向に傾けることによってピントの合う位置を中央以外のどこにでも変えることができる。ティルト角は8.5度だ。

従来のレンズベビーシリーズでは「コンポーザープロII」シリーズがティルト機能を搭載しており、ピントの位置を画面内のどこにでも移動することができた。が、レンズを曲げられるようにしているためか、銅鏡が長くなっているように感じていた。しかし、本製品ではティルトするのが信じがたいほど銅鏡が短くなっている。かといって操作性が悪いかというとそうでもない。長さから生じる重みがない分、上のほうにティルトして手を放しても自重で下がってくることもなく使えて便利だった。特に一眼レフカメラ用のものは、パンケーキレンズのように薄く仕上がっている。

ちなみにレンズベビーシリーズには、以前レビューした「Velvet 85」のように、中心部のみにピントの芯を残せるタイプもある。

本製品では、センターロック機構を有しているため、ピント位置を中央に固定して使用したいときは、ティルトしないようにロックしてしまえば良い。

ボケブレードを搭載

そして本製品で何より楽しいのが「ボケブレード」だ。レンズに被さるようにして双方向から付いており、長細い切り絵のようなデザインとなっている。レンズに被せるの量と、被せる方向を手動で自在に変えることができる。ボケブレード装置自体を縦や横に回転させることも可能。

ボケブレード使用時は波立つような勢いのあるボケ味を、使わないときはふんわりとした優しいボケ味を作り出せる、レンズひとつで2種類の違ったムードが味わえる、欲張りなギミックだ。

まず、ボケブレードなしで撮影した場合。ボケブレードをレンズにかからないようにすることで、レンズベビーらしいふんわりとしたドリーミーな描写が得られる。

D850 / SOL 45 / 45mm 絞り優先AE(1/1600秒・F3.5・+1.3EV)ISO200 / ピクチャーコントロール:ビビッド

ボケブレードありの場合。ボケブレードは縦にも横にも斜めにも自在に設置することができ、レンズにかかる分量も調節できる。

D850 / SOL 45 / 45mm 絞り優先AE(1/500秒・F5[相当]・+1.3EV)ISO200 / ピクチャーコントロール:ビビッド

作品

遠景を撮るとミニチュアのような写真になるので旅行などで使うのも楽しいだろう。

D850 / SOL 45 / 45mm 絞り優先AE(1/4000秒・F5[相当]・+0.7EV)ISO64 / ピクチャーコントロール:風景

ピントの位置はティルトすることで移動させられるので、画面内のどの被写体を主役にしてもOKだ。

D850 / SOL 45 / 45mm 絞り優先AE(1/1000秒・F5[相当]・+1.0EV)ISO64 / ピクチャーコントロール:ビビッド

ボケブレードは木漏れ日やイルミネーションに使用するとその不思議な面白さがさらに活かされる

D850 / SOL 45 / 45mm 絞り優先AE(1/30秒・F5[相当]・+1.3EV)ISO1100 / ピクチャーコントロール:風景

フォーカスリングの動作はかなり滑らか。遠距離の被写体はフォーカスリングの操作で、近距離の被写体はフォーカスリングである程度ピントを合わせた後に自分の体を前後するような形でピント位置を追い込むといいだろう

D850 / SOL 45 / 45mm 絞り優先AE(1/640秒・F5[相当]・+0.3EV)ISO64 / ピクチャーコントロール:風景

まとめ

数多くあるレンズベビーシリーズの中でも本製品は、望遠画角ではマニュアルフォーカスでのピント合わせに自信がない人でも使いやすい標準画角で、ピントの位置の移動ができることからレンズベビーに興味はあったけどなんだか難しそうと感じている方にも扱いやすい製品に仕上がっている。

水咲奈々

東京都出身。大学卒業後、舞台俳優として活動するがモデルとしてカメラの前に立つうちに撮る側に興味が湧き、作品を持ち込んだカメラ雑誌の出版社に入社し編集と写真を学ぶ。現在はフリーの写真家として雑誌やWEB、CP+などのイベントや、ニコンカレッジ、LUMIXフォトスクールなどの写真教室で活動中。興味を持った被写体に積極的にアプローチするので撮影ジャンルは赤ちゃんから戦闘機までと幅広い。(社)日本写真家協会(JPS)会員。