デジカメアイテム丼
レンズベビー サーキュラー フィッシュアイ
円周魚眼レンズの世界を手軽に
Reported by 秋山薫(2015/3/19 08:00)
「レンズベビー サーキュラー フィッシュアイ」は、先ごろ発表された円周魚眼レンズ。レンズベビーシリーズのラインナップに加わったものだ。
「レンズベビーってアレだろ、鏡筒をぐりぐりするやつだろ」と思った読者は、ちょっと待ってほしい。これは光軸を曲げることができるレンズではない。APS-Cサイズフォーマットに最適化された円周魚眼レンズだ。
焦点距離は5.8mm、画角は185度。ピント合わせはマニュアルフォーカス(MF)。キヤノンEF、ソニーA、ソニーE、ニコンF、ペンタックスK、マイクロフォーサーズ用の6種類が用意されている。価格はいずれも税別5万円だ。
円周魚眼レンズとは、おそらく読者の大多数のみなさんはご存知だろう。画角180度からそれ以上を丸く画面上に写しこむレンズだ。本レンズはAPS-Cサイズフォーマット用なので、35mm判フルサイズのボディで用いると画面周辺部の黒い部分が多くなる。また、マイクロフォーサーズボディでは円周の上下部分が多少欠ける。
最短撮影距離はたいへん短く、レンズ先端から約6mm。被写体までぐっと迫ることができる。
ケンコー・トキナーによると「被写体に強い光源を入れると、画像の外周にカラフルなフレアーの輪ができるのも特長です。フラットな光では、被写体の一部が画像の外周に反映します」という。そういう特徴だけ見ると「レンズベビーっぽい」印象を持たれるかもしれない。
じっくり撮るならライブビューと中央部重点測光で
筆者が試用したのはニコンマウントのもの。外観はプラスチックとラバーが多用されているが、鏡筒部分は金属でしっかりしている。ピントリングのトルクはほどよい感じ。ピントリングのトルクについて語るべきレンズではないかもしれないが、オートフォーカス用レンズをMFで用いるときのあのスカスカ感はない。
マウント部側には絞り環があり、絞りはここで制御する。ただしカメラボディに絞り値を連動する仕組みはいっさいなく、手動絞りでの撮影となる。したがって、ニコンボディで絞り連動を機械的に行うAiレンズに対応したボディでなくても使い勝手はかわらないだろう。いちおう、Exif表示をさせるために「レンズ情報手動設定」は入力した。なお、使用可能な露出モードはマニュアル(M)と絞り優先(A)だ。
ピント合わせは前述のようにMFだが、光学ファインダーではピントはわかりにくい。とはいえ被写界深度が深いことから、あまり神経質にピント合わせにこだわるのではなく、むしろある程度絞っておいてぐいぐい被写体に近寄っていくほうが楽しく扱うことができるだろう。ライブビューを使って拡大表示すればピント合わせを追い込むことができる。三脚を立ててじっくり狙うことができるならば、水準器表示やライブビューを活用したい。
画質的には、F8程度まで絞るとほぼ均一に解像感が増す。F11以上は回折の影響か、やや甘くなるように思えた。筆者はローパスフィルターつきボディで撮影したが、ローパスフィルターのない最新ボディであればもっと鮮鋭度が増すだろう。
測光方式はできれば中央部重点測光やスポット測光で用いるほうがいいだろう。マルチパターン測光(多分割測光)ではイメージサークルの関係で周辺部の黒い部分を測りがちなので、マイナス補正を多用することになるからだ。
ただし多分割測光を常用しレンズ交換をひんぱんにする人は、レンズ交換時にこの測光の切り替えを忘れないこと。撮影前に確認せずに「たぶん勝つ速攻!」と、根拠のない自信を全開(?)にして撮影しないように。筆者のようにあとであわてることになるから(苦笑)。
WB、露出、画像効果を工夫しよう
さて、筆者が小型三脚を持って向かったのは埼玉県川越市。以前も円周魚眼レンズを川越で撮ったことがあるので、違う製品とはいえ使い勝手を比べてみたいという思いもあった。
ただし、試用期間中はずっと天候に恵まれず、白い空に泣かされた。空が大きく写るレンズを用いて白い空をたくさん写すことは筆者としてはできれば避けたい。ホワイトバランス(WB)や露出、あるいは画像効果を工夫するといいだろう。スクエアフォーマットにしてトリミングして仕上げるのも楽しい。
寺社の境内に残されている古木をあれこれ写したあとは、喜多院近くにある川越歴史博物館に立ち寄った。館内の撮影も可能というからだ。そして、あくまでも私見ではあるが、超広角レンズや魚眼レンズは筆者には「狭いところで撮影するとおもしろい」と思えるからでもある。
というのも、遠近感を強調するおもしろさをより強く感じるからだ。そこで、博物館で許可を得てからあれこれ展示物を撮影した。展示物はもちろんデフォルメされてしまうが、おもしろい写りを体感することができた。
そのあと日没後に空に多少の表情が出てから、時の鐘を写した。こちらは無限遠域での撮影だ。通りの中央からカメラを向けても鐘楼の上まで収めることができるのは、画角の広さゆえだ。
意外と高画質!ぐいぐい近寄ってどんどん撮ろう
試用した感想は、わりとまじめな使い方をしてもけっこう高画質だなあというもの。画面四隅に目を配らないといろいろなものが写り込むし、自分の足や三脚、あるいは指先も写りかねない。だからこそ、被写体にぐいぐい近寄り、いろいろなものをどんどん撮ってみるほうが向いている。
魚眼レンズとしては比較的安価なので、画像効果ではない「ほんものの魚眼レンズ」で撮ってみたい方にはおすすめできる。というのも、デジタルカメラに搭載されている「魚眼風」にする画像効果は、ゆがみは作り出すが画角は広くならないのだ。そして、ファインダーや背面液晶を見ながら、画像効果やWB、トリミングも併用しつつ楽しんでもらいたい。
協力:川越歴史博物館