新製品レビュー

EOS M5(実写編)

ストレスの無いAF 高感度画質も良好

EOS M一桁機としては4代目にあたるEOS M5は高速な像面位相差AFが行える待望のデュアルピクセルCMOSセンサー(約2,420万画素、APS-C相当)を搭載し、画像処理エンジンは最新のDIGIC 7、EVF内蔵、ボタン、ダイヤル類の増加、ホールド性の増したグリップなど従来のEOS M3から全方位で機能向上が見られる充実のスペックを擁している。

新製品レビュー:EOS M5(外観・機能編)~全方位で機能向上!一眼レフのサブ機にも違和感なく
http://dc.watch.impress.co.jp/docs/review/newproduct/1045458.html

そのEOS M5の主な機能や外観については先日公開した「外観・機能編」に詳しくまとめたが、今回は実写を通じてEOS M5の実力を紹介していこうと思う。DIGIC 7で高感度ノイズや回折補正など撮影後のカメラ内処理が大きく強化された画質やデュアルピクセルCMOS AFで高速で正確さを増したAFあたりが主な見所だ。

ダイナミックレンジ

今回実写で使用したレンズはすべてEF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STMとなる。まずはビルの壁面に反射した太陽を入れた輝度差の大きなシーンを撮影してみた。

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/640秒 / F11 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 81mm

流石に反射の中心部は白飛びしてしまうが、ハイライトからシャドウにかけての階調はよく繋がっている。また、日陰となっているシャドウ部も潰れずにしっかりとディティールが保たれている。

今回の作例はすべてカメラ内で生成されたJPEGのものだが、RAWで撮影後シャドウ部を大きく持ち上げてもノイズの出方はEOS M3よりも抑えられていることから、画素数は同じでも新型センサーになったことでダイナミックレンジは改善しているとみて良さそうだ。

高感度

EOS M5に搭載されている画像処理エンジンは最新のDIGIC 7であり、高感度ノイズの除去機能に磨きがかかっている。最高ISO感度は25600だ。

ISO3200からISO25600までを撮影してみた。うっすらと見える雲の部分とビルの窓などディティールがはっきりした部分に着目してほしい。

※共通設定:EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / F6.3 / 0EV / 絞り優先AE / 22mm

ISO3200
ISO6400
ISO12800
ISO25600

一般的な高感度のISO3200程度であれば問題なく使用できるレベルで、ISO6400でも細かなディティールやグラデーションを保ったまま撮影可能。ISO12800になるとやや立体感が減少してくるもののノイズ自体は良く補正されていると感じる仕上がりだ。大きく見せるのでなければこのあたりでも実用の範囲内かと思う。

さすがに最高感度のISO25600までくると空など特に変化の少ない場所でノイズがしっかり出てくるが、ビルなど込み入った部分ではよく補正されている印象だ。

歩道脇の影でひっそり咲く花をISO6400で撮影した。風の影響でやや被写体ブレを起こしているが夜の直接ライトアップされていない被写体でも十分撮影できる。

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/40秒 / F6.3 / -0.7EV / ISO6400 / 絞り優先AE / 150mm

EF-Mレンズ群には明るいレンズのラインアップがまだ少ないが、高感度側が強くなったことで手持ちの夜景スナップも軽々こなせるのが嬉しい。

AF性能

EOS M5からはデュアルピクセルCMOS AFが搭載されたことで、被写体の補足性能も大きくアップしている。

EOS M5で使えるAFモードは「顔+追尾優先AF」「スムーズゾーンAF」「1点AF」の3つでそれぞれにワンショットとサーボの2つのAF動作を組み合わせて使うことが可能だ。

全域で位相差AFを使うことができるようになったおかげで、AFに関するストレスはほぼ無くなり、一眼レフカメラに肩を並べるまでになったと言える。どの被写体に対してもピントがスッと合うのは撮影していて非常に気持ちよい。

EOS M5のサーボAFには一眼レフカメラのEOSで培った動体予測AFの技術も取り入れており、前後に動き続ける被写体への合焦精度が上がっているのも特徴だ。

こちらへ向かってくる電車の前面に「顔+追尾優先AF」でターゲッティングしてサーボAFで連写したところバッファフルになるまできちんとピントが合焦した。EOS Mがこれまで苦手だった動体撮影能力も十分実用できる。

連写した中の1枚。EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/1,000秒 / F6.3 / +0.3EV / ISO640 / シャッター優先AE / 135mm

回折補正

レンズは絞り込んで撮影すると光の回折による影響で僅かにぼけた輪郭の甘い仕上がりになってしまう。これは高級なレンズを使っても避けられない厄介な問題だがDIGIC 7ではこの回折による小絞りボケも自動で補正可能だ。

小絞りボケはF16あたりから顕著に出てくるが、回折補正をON(デフォルトでONとなる)とOFFで比較すると失われたディティールが蘇っているのがよくわかる。風景や光源から光条を出したいシーンなど絞り込んで撮影する場合に心強い機能だ。

※共通設定:EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/60秒 / F16 / +0.3EV / ISO125 / 絞り優先AE / 18mm

回折補正OFF(F16)
回折補正ON(F16)

作品

35mm換算約100mm相当で撮影することで工事現場のクレーンに圧縮効果を付けて密に撮影した。オートライティングオプティマイザも適度に効いており逆光でありながらちょうど良いコントラストと色が出た。

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/500秒 / F8 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 64mm

EOS M5では1点AF時にAFフレームサイズ「小」も使用できる。花やマクロなど細かなピント合わせが必要なときに確実にピントを合わせる事が可能だ。花の中央の黄色い部分にピンポイントでピントを合わせた。

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/500秒 / F6.3 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 115mm

軽量で液晶モニターがチルトできるため地面スレスレのような変則的なアングルでも自然な体勢で撮影することができる。道端でアスファルトの隙間から顔を出す雑草も同じ目線から撮影すると普段とは違った存在感のある印象となる。

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/250秒 / F5.6 / +1EV / ISO100 / 絞り優先AE / 50mm

空を飛ぶヘリコプターをサーボAFで追いかけて撮影していたところ、ちょうど太陽に重なってしまう場面があったが、このくらい強い逆光のシーンでもヘリコプターのピントを外さず食いついていたのは少々驚きだった。

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/3,200秒 / F6.3 / +0.7EV / ISO100 / 絞り優先AE / 150mm

高感度が強化されたことで夜のスナップ撮影の可能性は大きく広がった。このような被写体ブレを抑えたいシーンでも気軽に感度を上げてシャッタースピードを稼ぐことができる。

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/125秒 / F6.3 / -0.7EV / ISO8000 / 絞り優先AE / 150mm

DIGIC 7世代のカメラに搭載された面白い機能が「流し撮りモード」だ。これはイメージセンサーからの画像情報を元に被写体の動きを検出し、被写体ブレをレンズで補正する技術を用いている。高度な技術を必要とする流し撮りも、カメラのAF枠に被写体を捕らえカメラを振りながらシャッターを押せば、カメラと被写体のスピードが完全に同じでなくても高い精度で流し撮りが成功する。流し撮りが苦手な人はぜひ試してみるといいだろう。

EF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STM / 1/25秒 / F4 / 0EV / ISO5000 / 26mm

まとめ

以上、外観・機能編と実写編の2回にわたってEOS M5についてレビューした。EOS M3とは良い意味で別モノのカメラになっており、新たなキヤノンミラーレスのフラッグシップが誕生した。

実際にEOS M5使ってみて感じたのは普段EOS 5Dシリーズをメインで使う私にも違和感なく使え快適だったことだ。特に一眼レフカメラの高速AFに慣れた身としてはデュアルピクセルCMOS AFがもたらすAF速度の満足度が非常に高い。

また、背面液晶をドラッグすることでグリグリと直感的にAFフレームの移動ができるやタッチ&ドラッグAFに関しては一眼レフカメラを超える操作性で快適そのものだ。画質面でもセンサーの素性が良くJPEGでもRAWでも使いやすい絵が得られた。

ミラーレスカメラでは他社に対して一歩遅れた感じのあったキヤノンだが、今回のEOS M5は他社の10万円クラスのミラーレス機と比較しても遜色のない仕上がりになっている。先日はほぼ同等の機能でEVFのないEOS M6も発表され、いよいよキヤノンがミラーレスに本腰を入れ始めたなと感じてくる。

まだミラーレスカメラは発展の余地が大いに残っているので、今後さらなる発展を期待したい。

中原一雄

1982年北海道生まれ。化学メーカー勤務を経て写真の道へ。バンタンデザイン研究所フォトグラフィ専攻卒業。広告写真撮影の傍ら写真ワーク ショップやセミナー講師として活動。写真情報サイトstudio9を主催