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オリンパス交換レンズ特別レビュー(その1)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO
画質・使い勝手に大満足! 持っていて損なしの大口径ズームレンズ
Reported by 礒村浩一(2014/6/20 12:28)
「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」は、オリンパスOM-Dシリーズをはじめマイクロフォーサーズシステム規格を採用しているデジタルカメラにおいて使用することができる大口径標準ズームレンズだ。
35mm判換算の焦点距離は24-80mmとなり、広角から中望遠までの使用頻度の高い焦点距離域となる。開放絞りはズーム全域においてF2.8。焦点距離による絞り値の変化が生じない。
レンズ構成は非球面EDレンズ1枚,非球面レンズ2枚、DSAレンズ1枚、EDレンズ2枚 HDレンズ1枚、HRレンズ2枚を使用した9群14枚と、高性能レンズを巧みに組み合わせたもの。オリンパスではこのレンズを、プロフェッショナル仕様の「M.ZUIKO PRO」レンズシリーズのひとつとして位置づけている。
単体での発売は2013年11月29日。実勢価格は税込9万2,500円前後。
発売時、OLYMPUS OM-D E-M1のキットレンズとして人気を博し、品不足まで巻き起こした人気レンズでもある。E-M1との組み合わせで、その人気の秘密を考えてみたい。
デザインと操作感について
「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」は、それまでのオリンパスのマイクロフォーサーズ用レンズとは少し趣が異なる。軽量でコンパクト、鏡筒もスリムでストレートな印象のレンズが多かった従来のラインナップとは一線を画し、比較的大柄なサイズとなっているからだ。最大径は69.9mm、長さは84mm。質量は382gとなっている。
OM-Dシリーズの中ではいちばん大柄となるフラグシップ機「OM-D E-M1」との組み合わせであっても、このレンズの存在感はそれなりに際立つ。
とはいえ、これまでのラインナップになかったズーム全域でF2.8の明るさを実現したことを考えると、妥当なサイズなのかもしれない。むしろ他のフォーマットの全域F2.8の標準ズームレンズからすると、健闘しているといえるだろう。
デザイン面では、金属製のリングの表面に直接刻み込まれているローレットパターンも、レンズに無骨で堅牢な印象を与える。特にズームリングの縦線と横線を組み合わせたローレットパターンは、あまり他に類を見ないものだ。
一般的なゴムや樹脂製のリングのパターンとは見た目も、指先でつかんで回したときの触感も大きく違う。指でリングを回したときに起こる、ローレットパターンが指の腹で回転する触感が、高すぎない摩擦抵抗としっかりとした追随力となりムダのない操作感となる。
マイクロフォーサーズの標準ズームレンズとしては比較的大きなレンズだが、実際にE-M1に装着してカメラを構えると意外な程に素直なホールディングとなる。おそらくこれは、EVFをしっかり覗いて撮影するスタイルに向いたレンズであるということだ。
もちろん背面モニターでの撮影にも使用できるが、その際は同じくオリンパスのマイクロフォーサーズ用標準ズームレンズ「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-50mm F3.5-6.3 EZ」程度の細身のレンズが程よい(最大径57mm、質量212g)。
やはり「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」は、EVFを覗きながらガシガシとシャッターを切る本気度の高い撮影スタイルに向くレンズだと感じる。
扱いやすい焦点距離域
撮影可能な焦点距離は、広角端12mmから望遠端40mm。35mm判換算で24mm相当から80mm相当の焦点距離域となる。
ポートレート撮影においても、人物の周囲の光景から風景をも同時に収めるワイド撮影から、人物の表情にぐっと寄るバストアップ撮影まで幅広く対応できる。
また、ズーム全域においてF2.8の明るい開放絞り値を選択できるので、人物の手前や背景をぼかした撮影も可能だ。
解像力とボケの傾向を見る
描写力を見るため、カメラを三脚に据え付けて、開放絞りのF2.8から最少絞りF22までひと絞りごと変えながら撮影してみた。ピントはMFで右側の花に固定している。
まずその解像力の高さに驚く。開放絞りF2.8から花びらのエッジがクッキリと解像されていることが判る。そこからF4、F5.6と絞っていくと全体の解像力が上がりF8付近が解像力のピークとなるようだ。
さらにF11、F16と絞っても、回折の影響による解像力の低下は非常に少ない。さすがに最少絞り値であるF22まで絞ると、若干だが回折による緩さは認められるようになるが、その劣化具合は非常に少ないといえる。
また、比較的ボケにくいといわれているマイクロフォーサーズでも、望遠端40mmとF2.8の組み合わせにより、ここまで背景の花や緑の草を柔らかくボカすことができるのがわかる。
逆光性能を見る
画面内に強い光が入るように、あえて空抜けのアングルでのポートレート撮影を行なった。
レンズとしてはかなり厳しい状況での撮影となるが、人物の顔の明るさに合わせるような露出補正を行なっても、極端な滲みやフレアは発生していない。
わずかながら暗部が白っぽくなってはいるが、ポートレート撮影においては、むしろふんわりとした雰囲気の写真とするのに都合のよい描写だ。
最短撮影距離での画質を見る
梅雨時の雨滴を蓄えみずみずしい紫陽花にぐっと寄り撮影。広角端12mmでピントが合う最短距離まで近づいた。
色づいた萼の柔らかさがわかるほど、立体的かつクリアな描写。広角レンズだが、最短距離付近まで近づくことで、背景もここまで大きくボカせる。
作品集
モデルの正面からストレートに向かう。40mmの画角でのバストアップ撮影では、お互いの意思を対等に向かい合うことができる距離となる。
モデルの表情を最大限に活かす為、時にはさらに一歩踏む込むことも必要。最短距離に余裕のあるレンズなら、思い切ったクローズアップも可能だ。
明るさが限られた室内では、レンズの明るさに助けられることも少なくない。ブレないギリギリのシャッタースピードまで落として撮影。E-M1の手ブレ補正にも助けられている。
石造りの建物の奥行き感を活かすため、広角端12mmで撮影。F5.6まで絞り被写界深度を深めて遠近感を出す。カメラを垂直に構えて人物のゆがみを最少に抑えることも重要だ。
同じ石造りの建物の前で、こちらは望遠端40mmで撮影。開放絞りF2.8により背景をぼかす。目元や髪の解像感と背景の柔らかなぼけが心地よい。
広角レンズのパースを活かして、モデルをローアングルから見上げるように撮影。鉄骨のみとなった屋根の硬質とモデルの延びた肢体を遠近感を交えて表現した。広角から望遠まで幅広く表現できる高性能ズームレンズは、現場で様々なシーンに対応ができる。
古いレンガの建物を背景にモデルの全身撮影。人物を引き立てる為にもレンガの質感を隅々までしっかりと描写してくれるレンズが必要。
ゆがみの少ないレンズなので、素直な気持ちで女性に視線を誘導できる。
梅雨の晴れ間、すでに初夏の陽射しとなったなかでの撮影。強めの日の光がモデルの顔に影を落とすが、極端な陰影とはならずに済んだ。それでいて目元や髪の描写は非常に高い。ポートレートには扱いやすい描写のレンズといえる。
まとめ:待望の「明るい標準ズーム」!使いどころは多い
筆者はマイクロフォーサーズのカメラを初期の頃より撮影に使用してきている。OM-DシリーズもE-M5からの付き合いで、ポートレートのみならず、様々な被写体を撮影してきた。
同時に、マイクロフォーサーズ用レンズの多くも使用している。その中で熱望していたのが、明るい標準ズームレンズの登場であった。ズームでF値が変わらない明るい標準ズームレンズの必要性は、撮影によってはとても大きい。そのため必要に応じて、フォーサーズ用のレンズをマウントアダプターを介して使うこともあったのだ。
その経験からも、今回レポートした「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」は、まさしく待望のレンズであった。
発売と同時に購入しOM-D E-M1と組み合わせすでに多くの撮影を行なってきているが、これまでに画質およびAFの反応などで不満に感じたことは一度も無い。
リニアモーターを採用したAF駆動はE-M1の速いコントラストAFとのマッチングもよくとても正確だ。サイズも手の小さめな私にとっては大きすぎず小さすぎない。何よりカメラシステムが軽くて済むのは非常にありがたいことだ。
さらに忘れてはいけないのが、防塵防滴対応のレンズであることだ。おなじく防塵防滴対応のE-M1やE-M5と組み合わせると、最強のアウトドアカメラとなる。水辺でのモデル撮影や、森の中での朝露に輝く草花の撮影、果ては零下となる雪の中での撮影などでもまったく問題なく撮影が可能である。
この強みは間違いなく写真の表現の幅を広げてくれるものだ。「M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PRO」はミラーレスカメラに表現の自由と力を与えてくれる、そんなレンズだといえる。
モデル:夏弥
(協力:オリンパスイメージング株式会社)