フィルター活用術
桜と水のハーモニー!水辺の桜を撮ってみよう
水面に写る光を味方に フィルターも効果大
2019年3月27日 17:42
日ごとに春めいて、私の家の近所でも春本番を告げる花々が咲き始めてきました。そして今年もまた、桜の季節がやってきます。
気象庁は3月21日、東京都心で桜の開花を発表しました。開花から一週間ほどで見頃を迎えるので、3月末から4月にかけ、各地で満開の便りが届くことでしょう。桜が咲くのは毎年のことなのに、満開の桜を目にすると、心踊らずにはいられませんね。
昨年は身近な桜の撮り方というテーマで桜撮影の基本テクニックをご紹介しましたが、今年はテーマを絞って、「水辺の桜の撮り方」についてお話しします。
昔から桜と水辺は相性が良いようで、川沿いの土手にも桜並木があり、名城のお堀端には立派な桜が植えられているなど、以前から桜と水が織りなす景色に日本人は魅了されてきたのです。
水は桜や空を映したり、輝くボケを添えたり、花びらを浮かべたりと桜写真にプラスアルファの変化を生み出してくれます。
そんな魅力的な水辺の桜をカメラに収めてみましょう。
人工物をいれないように
水路や川と桜並木のパターンの場合、それぞれのバランスが重要になります。
この作品の場合は……
お堀にかかる赤い橋が目を引いたので、ピントは手前の桜に合わせて、橋は少しぼかしました。左に桜、右に橋で左右のバランスを取っています。誰しもシャープなものが主役、ボケたものは脇役と感じるので、シャープ感の差をつけることで、主役が桜であることを伝えることができます。
望遠系のレンズで絞りを開けると、ボケを作り出しやすいです。もちろん、意図によっては橋を主役にするのもいいですね。
橋を上部ぎりぎりに入れた理由は2つあります。
ひとつは手前への広がりを出したかったことと、もう1つは生活感のある人工物をカットするためです。身近な場所とはいえ、ありありと民家や電線が見えると興ざめするものです。
完全に人や人工物を入れたくないなら、左側の桜だけを切り取るパターンもいいでしょう。夕暮れの光と水面に落ちた花びらがとても魅力的です。
広角レンズで手前と奥を入れる
同じ場所で夜を迎えると桜がライトアップされました。手前の桜と奥の桜の両方を入れるために広い画角を選びんでいます。
広角系の画角は、ただ景色を広く写すというより、遠近感をつけたり、背景に広がりを出したい時にも使います。手前の桜はアップではっきりと写しつつ、奥の桜やお堀といった咲いている場所の様子が伝わってきます。
時間帯で輝き・色合いなどが変化
水面は向こう岸の桜を映します。そのため、桜が夕暮れの茜色に染まれば、水面はその色を反射させるのです。枝先の桜の背景を水面にすれば、時間帯の変化によるバリエーションを作り出すことができます。
どちらも同じ枝先を逆光で撮ったものですが、輝きの強さ、そして色合いに違いが見られます。
この写真は15時23分に撮影。
この写真は17時52分に撮影。
同じ逆光でも、光が強い時間ではキラキラとした輝きが感じられ、夕暮れ時は対岸の桜が夕暮れの光で赤く染まって、その温かみのある色を反映しています。
ホワイトバランスで色味を変える
桜を撮るときのホワイトバランスは、基本的に太陽光(晴天)でOK。しかし、夕方やライトアップされた夜桜となると、別のホワイトバランスを試してみるのもよいでしょう。
19時ごろ、空のトーンがまだ残っている時間帯にホワイトバランス=オートで撮ると、桜が茶色っぽく、夕暮れの空もオレンジからグレーのグラデーションになっています。
そこでホワイトバランスを蛍光灯にすると赤紫色が加わり、桜はピンクに空は赤紫から青のグラデーションになりました。水面も綺麗な色の桜や空が映り込んでいます。
夜桜の場合、ホワイトバランスは蛍光灯のほか白熱灯もお勧めです。白熱灯はオレンジ色を補正するので強い青色が加わりますが、オレンジ色の光でライトアップされた桜に対しては補正がかかり、桜が白く写ります。また、空が真っ青になるので、ちょっとクールな夜桜を演出したいときにぴったりです。
ホワイトバランスの違いは撮影後、再生して確認することができますが、ライブビュー画面を見ながら変えるとその場で違いがわかるので、ライブビューで撮影するのが便利です。
水面の丸ボケをつくるには
被写体の背景や前傾に丸ボケを生み出すには、強い点光源が必要です。その役割を果たすひとつが水面。さざ波立った水面に後方から強い光が当たると波頭が輝きます。それをぼかせば丸ボケとなるのです。
もちろんぼかさなければならないので、「絞りを開ける」「望遠系のレンズ使う」「桜に近づく」「桜と水面が離れている」という要素も満たす必要があります。ボケの度合いによりボケの大きさが変わるので、要素を足したり、減らしたりと試してみてください。背景に丸ボケが入ることで、キラキラとした輝きを感じさせることができます。
ライトアップされた夜桜を撮る
夜桜は桜がほのかに照らされているイメージですが、実際に写してみると見た目以上の華やかさを感じます。これは夜景を撮ったことのある人はわかるかもしれません。写真では時間をかけて露光できる(シャッター速度を遅くできる)ので実際よりも被写体が明るく写し出すことができるのです。桜ほどではありませんが、水面も明るく、鮮やかに見えています。
夜の撮影は手持ち撮影だとぶれやすく、感度を上げれば画像が粗くなるので、禁止されていなければなるべく三脚を使いたいところ。夜桜とそれを写す水面のコンビネーションは見た目を超える美しい世界が広がるので、ぜひ挑戦してほしい被写体です。
シャッター速度を変えて水の流れを感じさせる
絶えず流れる川面はシャッター速度によって写り方変化が生じます。小さな波が明部と暗部を作り出しますが、シャッター速度が速いとそれがくっきりと写り、シャッター速度が遅くなるほど平らかに感じられます。これは滝や波を撮るときと同じです。
暗いので日中よりもシャッター速度は遅めになりますが、写真のように0.3秒程度では見た目に近い写りですが、5秒までシャッター速度を遅くすることで、視覚を超えた水面がなだらかなに写るのです。
お堀に散った花びらが浮かんでいたのですが、わずかな水流があるようで、ゆっくりと動いているのが見えました。渦巻いているようでおもしろかったので、何枚か写した中の一枚です。流れが遅くても円を描いたように見せたかったので、シャッター速度は15秒と長めに設定しました。
シャッター速度をここまで遅くするには、日中だとNDフィルターが必要ですが、夜なら容易にシャッター速度を遅くすることができます。
水辺と相性の良いPLフィルター
桜撮影ではPLフィルターが活躍するシーンが多々あります。PLフィルターは青空を強調したり、葉のテカリを取り除くなどの効果のほか、水面の反射を抑えることができます。これを使ってみましょう。
水面は光を反射して白っぽく見えますが、PLフィルターを使うと、それを取り除くことで、本来の水の色を写し出すことができます。
EXUS サーキュラーP.L
今回はマルミ光機の「EXUS サーキュラーP.L」を使用しました。
隅に白い空を入れると画面が締まりません。水面の反射による白い部分も同様。PLフィルターを効かせると、白い反射が取り除かれて濃い緑色になります。PLフィルターを使った方が引き締まった画面になりました。
エメラルド色のダム湖の水を背景に桜をクローズアップしました。逆光で水面が反射しているので、桜が白い背景に溶け込んでしまいます。PLフィルターを使って反射を取り除くと、水面の美しい緑色が現れ、桜が引き立ちました。
家の近くを流れる小川に桜の花びらが浮かんでいました。ここではPLフィルターを使うことで反射が取り除かれ、水面が黒くなりました。水深が浅く、暗い水底の色が出てきたためです。黒い水面に白い花びらが浮かび上がってくるようです。
PLフィルターは水面との角度によって、効果の強さが変わります。水面に対する撮影角度が90度付近、つまり真下を見下ろすと効きにくくなり、30度から40度の角度が最も効果が得られやすくなります。
ソフトフィルターで表現力アップ
ソフトフィルターは光を滲ませることで、画像全体にやわらかな雰囲気をもたらすアクセサリーです。光が強く明るい部分ほど、効果が強く感じられます。
今回私が使ったのは、マルミ光機の「DHG フォギーソフト」と「DHG ソフトファンタジー II」の2種類。
DHG フォギーソフト
「DHG フォギーソフト」は、その名の通り、霧がかったようなにじみが特徴。強目のソフト効果が出ます。
夕暮れ時の、光が弱い状況での撮影です。ソフトフィルターの効果は光がある部分ほど強く出るので、光の弱い条件下では最もソフト効果の高い「DHGフォギーソフト」がおすすめです。優しい光とソフト効果が桜が醸し出す雰囲気にマッチしています。
ライトアップされた夜桜は桜自体が照らされて、強い光を感じるシーンです。ここで「DHGフォギーソフト」を使用すると、効果が最大限に発揮され、霧に包まれたような幻想的な雰囲気に仕上がりました。暗部の明るさも変化し、軽やかな夜桜風景になっています。
こうした桜のアップにも使えます。逆光気味のシーンですが、DHGフォギーソフトの効果がう出て、優しい表現になっています。
まとめ:水辺と桜のコンビネーションは○!!
ただ桜を撮るだけではなく、「水辺の桜」に限定してみてもいろいろなバリエーションのある写真が撮れるものです。時間帯や天候の違いによる写り込みの変化、動いている水ならばシャッター速度の変化、またソフトフィルターを用いてみるなど、さまざまな工夫で桜の魅力をアップさせることができます。
今回撮影していて感じたのは、満開の美しい桜を前にして心が弾むのとともに、水辺のゆったりとした雰囲気が合わさって、恒に心が潤うような心持ち撮影に臨めたこと。桜にも水にも人の心を癒す不思議な効果があるようです。ぜひ、みなさんもこの春、水辺の桜の撮影にチャレンジしてみてください。
制作協力:マルミ光機株式会社