久しぶりにデジカメWatchで長期リアルタイムレポートを書くことになった。EOS 40D以来2年半ぶり、コンパクトデジカメではLUMIX DMC-TZ3以来3年ぶりだ。今回選んだのはサイバーショットDSC-HX5V。理由は、数多くの魅力的な機能にある。
先月、筆者はパナソニックのLUMIX DMC-TZ10と、サイバーショットDSC-TX7をそれぞれレビュアーとして試す機会があった。DMC-TZ10は前モデルまでの先進性からややインパクト不足に感じた一方、DSC-TZ7はコンパクトなボディでフルHD動画を搭載するなど、魅力を覚える製品に映った。ただし、色々なシーンをカバーできるDMC-TZ10の12倍ズームレンズも捨てがたい。となると高倍率ズームレンズを搭載しつつ、DSC-TX7の機能を包括するサイバーショットDSC-HX5Vが面白そう。それが選択の理由だ。
実際にDSC-TX7を使ったことを前提として、筆者が気になるDSC-HX5Vの機能は、
- フルHD動画
- スイングパノラマ
- 手持ち夜景、人物ブレ軽減
- 10コマ/秒の高速連写
- GPS機能
- マニュアル撮影
といったところだ。長期レポートということで、撮影日記風にDSC-HX5Vとの関わりを綴っていきたいが、折に触れて上記の諸機能にも触れていきたい。
また、画像にジオタグが付いているので、記事中で掲載した写真を位置情報に対応したアルバムサイト、Panoramioにもアップしてみようと思う。タイミングによっては、記事より早くアップされたり突如消えることもあるうるが、その辺は個人アカウントのアルバムということでご容赦いただきたい(今回Panoramioにアップした写真は こちら )。
さて、第1回目のテーマは桜。昨年LUMIX DMC-TZ7のレビューの際に、岐阜県の揖斐川町、池田町、海津市などに撮影に行ったが、ややタイミングが遅かった。今年こそ満開の時期にに行きたいと思い、3月から開花情報をチェック。3月末に東京へ行った際に、都内の桜はほぼ満開になっていたが、筆者の住む中部地方で桜が満開になったのは4月になってからだ。
地域差はあるが、名古屋市内の桜が満開になったのは、4月最初の週末だと思われる。運悪く、筆者はこの週末に岡山国際サーキットで仕事をしていた。週が明け、撮ってきた写真の整理や原稿書きをしながら、「急がないと桜が散っちゃう」と焦る毎日だった。自宅近所にある山崎川の桜は、原稿書きの合間に撮りに行き、晴天となった8日、やっと岐阜まで出掛けることができた。
■桜を撮る
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像を別ウィンドウで表示します(一部のパノラマ画像はリサイズしています)。
・山崎川の桜
まずは、撮り慣れた山崎川の桜だ。天気は晴れているが、時間が午後ということもあり、空気の透明感や青空は今ひとつ。幸い桜はまだ満開、平日だが多くの人が花見に繰り出していた。名古屋国際女子マラソンや名古屋グランパスの試合が行われる瑞穂陸上競技場のそばにある、人工の滝をバックに入れて最初の1枚。そこから川沿いに北上し、何枚か撮ってみた。
満開の桜を望遠端で狙ってみた DSC-HX5V / 約4.2MB / 3,648×2,736 / 1/500秒 / F5.5 / 0EV / ISO125 / WB:オート / 42.5mm |
山崎川には何本か橋が架かっているが、桜の隙間から隣の橋を望遠で撮ってみた。AFモードをマルチAFにして撮ると目の前の桜にピントが合ってしまうが、スポットAFに変更すると隣の橋にフォーカスすることができる。友達同士なら携帯で連絡しながら100m以上離れた橋から、ちょっと風変わりな記念写真を撮ることもできる。
同じ橋からスイングパノラマで撮ると、川の左右の桜並木を全て撮ることができる。STD(スタンダード)設定では、左右180度が1枚の絵に収まるので丁度いい。実際にはカメラ本体は手を伸ばしているので、橋より少し川の上にはみ出している。従来の三脚を立ててとる方法では橋の上でしか撮れないので、スイングパノラマならではの絵を撮ることが可能だ。
南を向いてスイングパノラマ。橋の上から手を伸ばして撮ったので、三脚を使った従来のステッチとはひと味違う写真になる |
今度は600mほど南の橋から北を向いてスイングパノラマ。右手に某大学の建物が入ってしまう |
・岐阜県の桜
次は岐阜県の桜だ。撮影範囲は広く、揖斐川町からすぐ南の池田町、大垣市内、そこからぐっと南下して海津市まで直線距離で30kmほどとなる。この地域を車で移動すると、いたるところに桜の塊が見られ、まさに桜の宝庫だ。
最初の撮影ポイントは揖斐川町の岡島橋付近の堤防だ。たまたま撮影をしていた年配の方に話を聞くと、60年前、小学生の頃に自分達が植えた桜で、昔よりずいぶん減ってしまったとのこと。インターネットには桜の名所や開花情報を掲載するサイトは多数あるが、この桜は掲載されていない。
堤防に沿っておよそ600mの桜並木は、見事に満開だった。知名度が高くないのか、撮影に訪れる人は1人2人程度なので撮りたい放題だ。端から端まで1往復してお腹いっぱい撮影した。
スイングパノラマで600mの桜並木を撮影。右端に自分の駐めた車が入ったので、この1枚のために移動してから撮った |
途中、動画撮影で手ブレ補正をスタンダードとアクティブを切り替えて撮ってみると、効果はハッキリ確認できた。少々気になったのはカメラ内部のノイズが定期的に録音されていることだ。映写機を回す様な音がカラカラ……カラカラと定期的に入っている。
- 動画再生についての問い合わせは受けかねます。ご了承ください。
AVCHD / 37.2MB / 1,920×1,080 |
AVCHD / 35.3MB / 1,920×1,080 |
車で移動し、次は城山さくらの森を川の反対側から撮影、川沿いの道を戻ってくると桜が満開の公園を見つけたのでUターンして園内に入ってみた。偶然入った朝鳥公園では、川の水深が低かったので、水面ギリギリに三脚を立てて撮影してみた。車を走らせていると、いくつもの撮影ポイントと出会う町だ。
朝鳥公園ではこうやって撮影。液晶モニターが見えないので、水平を確認しながら何度も撮影を繰り返した |
揖斐川の支流、柏川の堤防に桜並木を見つけたので、DSC-HX5Vを車載カメラにして動画を撮ることにした。静止画の場合、電柱や建物、金網といった人工物が写らないように工夫することが多いが、動画の場合は静止画ほど人工物が気にならない。道の左右に色々写り込むものが多かったので、動画の方がこの桜の美しさが伝わる気がした。
車でゆっくり走り抜けた動画を添付ソフトPicture Moiton Browser(PMB)で編集 AVCHD / 35.3MB / 1,920×1,080 |
小型三脚を使ってDSC-HX5Vを車載カメラにしたところ |
弓削寺、大津谷公園、霞間ヶ渓と山沿いの桜をハシゴすると、徐々に満開から散り始めへと変化した。特に霞間ヶ渓はすれ違う車が渋滞するほど人が溢れていたので、何も撮る物はないかと思ったが、茶畑を見つけて近付いてみた。足元に茶畑、頭の上に桜……縦にスイングパノラマで撮ることにした。足元から少し反り返るくらいまでスイングして撮ったが、写真を見るとそれほど不自然ではないので、この手はまた使えそうな気がした。
広角25mmなので普通に撮っても桜の1/3くらいはフレームに入る DSC-HX5V / 約4.2MB / 2,736×3,648 / 1/400秒 / F8 / -0.3EV / ISO125 / WB:オート / 4.2mm | 露出は桜に合わせてから下から上にスイングパノラマ。上下を多く入れることができた |
大垣市内まで南下して1カ所撮影、そこから海津市まで一気に移動した。途中、養老公園をはじめ、何カ所も桜の塊が見え、こまめに回れば、いくらでも撮影ポイントがありそうな景色が続いた。中江川の川沿いに4kmほど続く桜並木は残念ながらピークを過ぎていた。
個々の桜は今ひとつなので、スイングパノラマで撮ることにした。ちなみにスイングパノラマで撮った画像にも位置情報と方位情報が書き込まれている。方位情報に関しては、スイングした画像の中央付近になっているケースもあるが、そうでないケースもある。この点に関しては追々検証してみたい。
スイングパノラマで撮った画像にも位置情報と方位情報が書き込まれている。このケースはスイングの中心方向を指しているが、必ず正しいというわけでもなさそうだ |
■スイングパノラマを検証
筆者はパノラマ写真を撮るのが好きで、これまでにも何度か挑戦している。そんな筆者にとってスイングパノラマは、「従来の手法より桁違いに簡単、だが画質は今一歩」といったところだ。
ここでスイングパノラマと従来手法を比較してみた。撮影方法は次の3種類。
- 手持ちでスイングパノラマ
- 三脚を使用してスイングパノラマ
- 三脚で1枚ずつ撮影し、Panorama Maker 4で合成
スイングパノラマに関しては、手持ちでも三脚使用でも写真の出来にほとんど差はなかった。一方、1枚ずつ撮影する従来からの方法は、10枚の写真を撮るのに1分24秒を要している。スイングパノラマを5秒とすると17倍だ。
DSC-HX5Vにはマニュアル撮影機能があるので、1枚ごとの露出を固定できるが、マニュアル撮影機能のないコンパクトデジカメでは、方向ごとに変化する露出を何度も露出補正で合わせる必要があるので、撮影時の時間はさらにかかることになる。
さらに撮った画像をPanorama Maker 4で合成するのに数分はかかるので、場合によっては100倍近い時間を要する。加えて、繁華街の交差点などを撮ろうと思うと、動くものがたくさんあり、1分半も掛けて撮るとまず間違いなく失敗する。短時間で撮れるスイングパノラマなら、動く被写体が入った場合絵も、上手く撮れる可能性が高い。
ただし画質には歴然とした差があり、1枚ずつ撮ったパノラマの方がはるかに解像度の高い絵を撮ることができる。また、スイングパノラマは撮影時にズームを使用することができないので、画角(縦方向)が一定となるが、1枚ずつ撮る場合はやや望遠にして撮ったりと任意に変えることができる。360度の撮影も可能など、応用範囲も広い。
見方によっては一長一短だが、三脚やソフトを用意してまでパノラマ写真を撮ろうと思う人は少ないと思われるので、便利さ簡単さが画質を上回っていると言えそうだ。
三脚を使用してスイングパノラマで撮影 |
手持ちによるスイングパノラマで撮影。三脚使用と大きな差はない |
広角端で10枚撮影してPanorama Maker 4で合成。13,632×2,269ピクセルの画像を縦を合わせて6,489×1,080ピクセルにリサイズ。リサイズしても解像度は高い |
ズームを1.7倍、44mm(35mm換算)にして、15枚撮影してPanorama Maker 4で合成。24,881×2,244ピクセルの画像を縦を合わせて11,975×1,080ピクセルにリサイズ。 |
今年の桜は、岡島橋付近の堤防や偶然出会った朝鳥公園の桜は満足できたが、それ以外はまた来年頑張ろうといった感じだ。桜の満開の時期と天気と自分自身の時間が一致しないと撮れないのが難しさであり、それもまた楽しさのひとつだと思う。中部地方はそろそろ桜も終わりの時期だが、少し北へ移動すればまだまだ桜を撮ることは可能だ。是非、皆さんも桜を撮りに出掛けていただきたい。
【訂正】記事初出時、「LUMIX DMC-TZ10」のズーム倍率を10倍と記載しておりましたが、正しくは12倍です。
2010/4/14 00:00