Leofoto FIELD REPORT 三脚のある美しい写真
山岳に持ち出せる軽量性と強風に耐える安定感
菊池哲男さんが愛用する「LSR-324C」+「LH-40」
2022年12月20日 10:40
撮影に持ち出す機材は、より小さく、そして軽いものがよい、というのが昨今の潮流といえるかもしれない。カメラやレンズなど、“小型軽量”を謳う製品も多く見られる。
山岳地帯で撮影をする菊池哲男さんにとっても、アイテムの軽量化は長年のテーマだったようだ。厳しい気象条件での撮影が多い菊池さんに、山岳撮影における三脚選びの考え方を聞いた。
1961年、東京都生まれ。立教大学理学部物理学科卒。写真集を始め、雑誌やカレンダー、ポスターなどに作品を発表し、写真展を多数開催。長野県白馬村和田野の森に菊池哲男山岳フォトアートギャラリーがある。東京都写真美術館収蔵作家。公益社団法人日本写真家協会会員(JPS)、日本写真協会会員(PSJ)
※本企画は『デジタルカメラマガジン2023年1月号』より転載・加筆したものです。
厳しい気象条件でも安心感のある三脚
中判、大判カメラによるフィルム時代、山の撮影で三脚は必須だった。大きくプリントを伸ばした際に特に問題になるのがピントで、いかにぶらさずに撮影するか、全面をシャープに描けるかが重要なテクニックだった。その後、デジタルカメラが本流となり、高感度や防振機能を使い、三脚レスで撮影する機会が増え、自由なフレーミングを得てシャッターチャンスに強くなった。
では、いずれ三脚は過去のものになるのか? その答えはノーだ! 感度を上げることは、単に電気的なゲインを上げているだけで、上げ過ぎるとノイズの原因となる。やはり三脚を使って露光時間を延ばし、撮像素子に届く光を増やすのがベストだ。また私が得意とする山岳夜景では、数十秒から数十分単位の長時間露光が必要になり、やはり三脚は手放せない。
一方、撮影機材を含めた装備を自分の肩で担ぎ上げなければならない山岳撮影では、すべてのアイテムに軽量化が求められている。安全に登山するために必要な装備は多く、時には命に関わるので外せないものも多い。装備の軽量化は安全性の向上につながるのでとても重要で、撮影機材も例外ではない。
2004年にデジタル一眼レフを使い出してから、長らくフィルムとデジタルの併用時代を経て、今はデジタルカメラが撮影のメインパートナー。2019年からはミラーレスも導入し、ボディとレンズの軽量化に役立った。
次に手を付けたのが三脚で、最初にレオフォトのLS-284CLを採用した。パイプ径が28mmで本体は1,210gととにかく軽い。雲台も長年親しんだ3Wayタイプから自由雲台LH-36に変え、いっそうの軽量化に成功した。
しかし、気象条件の厳しい山岳地帯では時には台風並みの強風が吹く。求めてきた軽量化には逆行するが、もう少しだけ頑丈な三脚も欲しくなり、今回導入したのがLSR-324Cだ。
パイプ径は32mmで重さは1,540gと少しがっちりした印象で、特に変わったのはナットロック式からレバーロック式になったこと。実際に使うとナットロック式はそれなりに力を入れて回さないと緩むことがあったが、テコのようにしてレバーを操作するレバーロック式は、比較的力を入れなくても止めやすい。
雲台は手になじんできたLH-36よりひと回り大きいLH-40へ。使い方はまったく同じなので安心だ。今後は行く山と季節に応じてLS-284CLとLSR-324Cを使い分けていくつもりだ。
レバーロック式を採用しスムーズに操作可能な三脚
脚パイプの伸縮にレバーロック方式を採用していて、ロックのオン/オフを視覚的に確認できる。センターポールがないため、コンパクトかつ軽量化を実現したほか、ほぼ180度近くに開脚するので高山植物などローアングルでの撮影に有効だ。脚パイプは10層カーボンを使用して強度を確保している。自由雲台LH-40は3つのノブで滑らかに動き、固定力も十分で扱いやすい。
レバーロック式が採用されているため、少ない操作で確実にロックと解除が行える。スムーズなセッティングはもちろん、ロックが甘くてバランスが崩れるなどの事故を防げるメリットもある
センターポールは着脱可能なので、通常時は開脚角度を全開にするだけでスムーズにローポジション撮影に移行できる。付属のセンターポールを装着すると180cmまで全伸高を上げられる
脚部には六角レンチが標準装備されているので、撮影地でのメンテナンスもスムーズ。
脚部にはゴム製のすべり止めがついているので、持ちやすい。また寒冷地で冷えたカーボンパイプを直接触らなくて良いので快適。
LH-40は手のひらサイズで非常にコンパクト。取り回しが良く、三脚の携行性が損なわれない。質量は約540gと軽量ながら、剛性も高い。
制作協力:株式会社ワイドトレード