交換レンズレビュー
XF90mm F2 R LM WR
開放から滲みなくシャープな描写
Reported by澤村徹(2015/10/27 08:00)
FUJIFILM Xシリーズの単焦点レンズにおいて、焦点距離が最長となるXF 90mm F2 R LM WRが加わった。35mm判換算で137mm相当となる本レンズは、開放F2と明るい設計で、ポートレートやストリートスナップに便利な仕様だ。
レンズ名の末尾に「WR」が付き、防塵防滴ならびに-10度の耐低温構造を採用している。FUJIFILM X-T1と組み合わせれば、シーンや天候を問わないオールラウンドなシステムを構築できるレンズである。
デザインと操作性
開放F2と明るめの中望遠レンズだが、APS-C用ということもあり、約540gと軽量にまとまっている。X-T1に装着した際もハンドリングしやすいサイズ感だ。
フォーカスリングの幅が広く、全域に渡って細かいローレットが施してある。このあたりの仕様はXFレンズらしい高級感のある外観だ。
絞りリングは1/3段刻みで、7枚羽根の円形絞りを採用している。樹脂製フードが付属し、ハレ切り対策も申し分ない。
遠景の描写は?
本レンズは8群11枚の構成で、うち3枚のEDレンズを配し、望遠レンズで発生しやすい色収差を低減している。絞りを変えながら実写してみると、中央部、周辺部を問わず、開放からシャープでコントラストの付き方もよい。
試写した範囲では気になるような色収差も見当たらなかった。特にF2.8以降の描写は安定感がある。
- 作例のサムネイルをクリックすると、リサイズなし・補正なしの撮影画像をダウンロード後、800×600ピクセル前後の縮小画像を表示します。その後、クリックした箇所をピクセル等倍で表示します。
- 縦位置で撮影した写真のみ、無劣化での回転処理を施しています。
ボケ味は?
ボケ味はこのレンズのアドバンテージを実感できる部分だ。開放F2のボケ量の多さは無論、円形絞りによる玉ボケの美しさ、そしてとろけるような滑らかなボケが目を奪う。
ポートレートはもちろん、ストリートスナップで被写体を立体的に捉えられるのが本レンズの強みだ。ボケ方は滑らかで、合焦部からゆっくり自然にボケていく。被写体が切り立つというよりは、合焦部からなだらかにボケていくタイプのレンズだ。
逆光耐性は?
逆光性能は、望遠ということもあり、いくぶんフレアが多めの印象だ。レンズフードを装着した状態でも、光源を写し込むとシャドウが浮く。光源を外しても逆光ではシャドウが浮きやすく、光を読みながらの撮影が大切になりそうだ。
見方を変えると、女性ポートレートなどでやわらかい光がほしいとき、このフレアが功を奏するかもしれない。
作品
遠方にピントを送り、手前を大きくボカす。多少二線ボケっぽい見え方だが、うまく持ちこたえている雰囲気だ。夏雲の淡い陰影の付き方が心地良い。
1段絞ってスカイツリーにピントを合わせる。開放近辺でも申し分ないシャープさだ。対岸の建物全域にわたってシャープに描かれている。
F5.6まで絞ると、細部まで緻密な描き方だ。レンガ1枚1枚をていねいに描き、濃淡のちがいもしっかりと伝わってくる。
開放は自然なシャープさで、滲みがない反面、過度に硬くなることもない。背景のボケに目を転じると、その滑らかな描き方にこのレンズの利点が見て取れる。
テールランプの近辺にピントを合わせる。合焦部から横に視線を動かすと、自然とボケていくのがわかるだろう。合焦部とボケのつらなりはなだらかな描き方だ。
夕刻の虹を濃厚に捉えることができた。建物の右半分がストンと影になり、力強い陰影で立体的な描き方だ。
まとめ
本レンズは新開発のクアッド・リニアモーターを採用し、高速かつ静粛なAF動作を実現している。試写した際もAF動作でストレスを感じることはなく、積極的に被写体を追っていけるレンズだ。
35mm判換算137mm相当という焦点距離は手ブレ補正がほしくなるが、開放から滲みなくシャープに撮れるため、薄暗いシーンでもさほどISO感度を上げずに済む。滑らかなボケ味といい、開放描写の安定感といい、光学性能の良さを実感しやすい中望遠レンズである。